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シナリオ詳細

再現性東京2010:シニャコルゲンガー合宿会

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――R.O.O内でログインをして居る現場・ネイコ(p3x008689)の姿を見つけ周囲を見回したのは指差・ヨシカ (p3x009033)こと越智内 定 (p3p009033)であった。
「ひとり?」
「うん。ちょっとスライムと遊んでお部屋作ろうかなってー」
 黒狼隊の居城たるファブニル城(仮)で優雅にハウジングを楽しんでいるネイコにヨシカは「成程ね」と頷いた。周囲にはあまり人影もない。
「あ、でさ、花丸ちゃん、この前のお泊まり会の件なのだけれど」
「ああ、うん。それならひよのさんに段取り付けて貰ったよ! なじみさんもオッケーって?」
 普通にリアルネームを呼んでしまったがどちらかと言えばネイコは気にしない。ヨシカは呼ばれると発狂するのだが……。
 段取りを考えている。一泊のお泊まりを楽しみにするなじみの提案にノったは良いが夜妖退治が付随する。ちゃっかりしたところもひよのらしいと言えばそうなのだが。
「一応、倒す夜妖は居るみたい。キャラは濃いけど、そんなに強くないよって」
「へえ……一応ひよのさんも気を遣ってくれたのかな? それじゃあ、明日の夜かな」
「うん。明日の夜に、集合場所がー……」
 ザコとも呼べるスライムを室内から片付ける二人に「なんだ、依頼か?」と声を掛けたのはリュカ・ファブニル(p3x007268)であった。
「あ、うん。そうなんだ。明日なんだけど、ルカさんも来る?」
「明日……ああ、良いぜ。暇だから手伝ってやるよ」
 快諾するリュカにヨシカは「良いの? それじゃあ、お願いしようかしら」と微笑んだ。
 この時、ヨシカはリュカの『リアル』を知らない。ネイコこと笹木 花丸 (p3p008689)の友達だというのだから屹度同年代だろうと踏んでの返答なのだった――


 集合時間になってから、定は気軽にOKしたことを後悔した。
「あ、来たみたい」と花丸が気軽に指さすものだから其方を見ればカスタムされたバイクがマフラー音を響かせてやってくる。
 しかも、二台である。この時、定は花丸からバイクが好きな友達が居ると聞いていた。
 そうだ、伊達 千尋 (p3p007569)の事である。彼の背後からひょこっと顔を出したしにゃこ (p3p008456)が彼と同じタイミングで「ちーっす!」とキメたポーズをしてる様子を茫然と眺めることしか出来ない。
「ああ、全員揃ったようだな」
 誘いを掛けておいたベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)が普通に受入れている。――どうして?
 定は混乱していた。「誰を誘ったのかと思えば」とひよのも普通に受入れている。
 少し時間を戻そう。

 現川・夢華が同行を申し出た時に「夜妖退治だよ? 夢華さん退治されちゃうぜ?」と定はジョークを言ったのである。
「それに、夢華さん、年齢不詳だけど結構高齢でしょ。同年代ばっかりだぜ、今日は」
「おやおや、聞いていれば『結構大変ご立派な感じの方』もいらっしゃるのでは?」
「それって、ロト先生のこと? 良いんだよ。保護者枠も必要だろ。それに、ベネディクトさんだって来てくれるんだ」
「あ、ベネディクトさんと千尋さんは保護者枠だよね。あと、皆居た方が楽しいし」
 にんまり笑った花丸に定は頷いた。あと数人誘ったけど、と指折り数える定が「リュカさんってどんなひと?」と問うたのだ。
「ベネディクトさんの弟って事は、僕等と同年代かな」
「「……」」
 ――花丸とひよのは笑みを堪えるだけだった。

「待たせたな」
 バイクから察そうに降り立ったのはルカ・ガンビーノ (p3p007268)だった。その背にはフラン・ヴィラネル (p3p006816)が「びい」と声にならない声を発してしがみ付いていた。どうやら、待ち合わせ地点に来る際に後ろに乗れよと言われて緊張の余り硬直していたのだろう。
「駐輪場はあっちにあるからバイクを停めておいで」
 いらっしゃいと微笑んだロト (p3p008480)に定は何も言えなかった。
「おやおや、先輩ったら。同年代ばっかりだって嘯いて。いやだ、もしかして、誰の中身が誰なのかさえ分かっていなかったんですか? ええ、年齢なんて所詮は飾り。種族だってそうですよ。ならば、この私だって合宿に参加しても」
「え、えええええええ――――――――!?」

 ……そうして、楽しい楽しい合宿の始まりなのである。
 ここは希望ヶ浜市に存在する希望ヶ浜市立白真砂小学校である。つまり、なじみの母校だ。
 此の地に嘗て友達に弄られ続けた少女の夜妖が出るらしい。
 桃色の髪の毛で蒼い瞳。利発的でテンションさえマッハな……そう、丁度しにゃこに似た夜妖だ。
「つまり、そのシニャコルゲンガーを倒せば良いってワケか」
「むむ!? ルカさん、シニャコルゲンガーってなんですか!? こんな可愛い可愛いしにゃあああああああ」
 取り敢えず、高い高いと持ち上げられたしにゃこが暴れている。その様子を見ていたなじみが「定くん、私にもあれやって」とウキウキした様子で『高い高い』を所望してくるのだった。
「いや、無理だよ。なじみさん。僕はひ弱な男子高校生だぜ? とりあえず、晩ご飯は調理室でカレーでいいかな?」
「ああ。一先ず材料は揃えておいた。布団もロトが準備してくれたようだな。学校の許可も取ってある。
 一晩、教室などで布団を敷いて合宿するのも面白いな。探検しても良いだろう」
 頷いたベネディクトに「楽しみだなあ」とフランが頬を緩ませる。最高にロックな夜の学校探検をするために懐中電灯を揃えてきた千尋は「早速始めようぜ!」と号令を掛けたのだった。

GMコメント

 学校で合宿するのいいですよね。夏あかねです。

●目的
 シニャコルゲンガーを撃破!(ワンパン)

●シニャコルゲンガー
 嘗ては友達に弄られ続けて『ウギャアアア』と奮起した夜妖です。
 ワンパンで倒せます。桃色の髪をして蒼い瞳。まるで外見だけみるとしにゃこさんです。
 近付くまでは結構な勢いで話しかけてくれます。いやー、今日も可愛いですね! 攻撃方法はラブリービーム。
 倒されそうになると、凄い勢いで逃走します。逃げ足は速い。

●白真砂小学校
 希望ヶ浜の東浦区白真砂に存在する小学校です。余り綺麗とは言えませんが古めかしさが同居した風情のある小学校です。
 全てが小学生サイズですので、しゃがんだりする必要があるかも知れませんが、それも良い経験だと思ってあげてください。
 なじみは「なつかしー!」と笑っています。因みに彼女は6年2組出席番号は1番です。
 シニャコルゲンガーは学校内の何処かに居ますので肝試しでもして探してあげてください。

●合宿のススメ
 時刻は夕方(集合時)から翌朝です。翌日は日曜日ですのでお片付けして解散です。
 小学校内の全ての施設を使い放題です。ロトさんとひよのが掛け合っておきました。おばけ騒ぎを希望ヶ浜学園の学生が鎮めに来たんだ!
 夕飯は調理室でカレーを作りましょう。ひよのは料理は上手です。なじみはあまり得意では無いです。夢華さんは(ニコッ)。
 何処かの教室に布団を持ち込んで寝泊まりしましょう。部屋や班分けなどなど、色々お任せします。
 何でも出来ますので、何でもやってみてくださいね。足りないものがあればコンビニに買い出しも行けます。
 季節外れですが校庭で花火をする事や小さなキャンプファイヤーを楽しむのも良いかもしれません。
 翌朝までのフリー時間の間でひよのがお願いしているのはシニャコルゲンガーの撃破、ただそれだけなので自由に過ごしてください!

●NPC
 音呂木ひよの、綾敷なじみ(体操服着用)に加えて定さんの関係者の現川・夢華が同行します。
 ひよのとなじみは体操服を着用しています。お泊まり会なので動きやすさ重視のようです。
 夢華はお願いすると着てくれますがスタンダードでは無ヶ丘高校生服です。
 ひよのやなじみ、夢華はそれなりに行動してくれます。何かお願いすることややって欲しいことがあれば特別伝えてあげてください。
 ちなみに、夢華ちゃんに色々質問してもにこっと笑うだけです。彼女はなじみにべったりのようです。

 それでは楽しい合宿にしましょうね!

  • 再現性東京2010:シニャコルゲンガー合宿会完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年10月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談9日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
ロト(p3p008480)
精霊教師
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
越智内 定(p3p009033)
約束

リプレイ


 颯爽と華麗なる登場をキめた『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)の背中にしがみついて腕をぷるぷるとさせていた『緑の治癒士』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は足も攣りそうだったと叫ぶ。
「でも今日は合宿! こういう学校、ってあたしの村にはなくて本で読んだだけだったから楽しみだー!」
「合宿か、皆で泊って何かをして楽しむという事だな。皆中々満喫しているな。よし、俺も少し肩の力を抜いてこの雰囲気を味合わせて貰うか」
 希望ヶ浜の学校で寝泊まりをすると言うだけでも非日常を満喫できる物だと『黒狼の勇者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は微笑んだ。
「マナーとルールを守って皆、楽しもうね。もちろん、夜妖退治も頑張ろう!
 大丈夫! 僕は頼りないけど頼もしい人達が沢山居るから! ……なんてね、あははは」
 からからと笑った『精霊教師』ロト(p3p008480)は学校側との渉外をしっかり終えてきていたのだろう。今回の合宿の保護者枠である。
 沢山のお菓子をリュックに詰め込んで――現時点で綾敷・なじみに更にぐいぐいと詰められている――『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)は瞳をきらりと輝かす。

 \合宿の時間だーっ!/

「あの時合宿のお話をしてから花丸ちゃんずっと楽しみにしてたんだっ!
 夜妖退治はちょっと面倒だけどもこれも一種のイベントって思えばきっと楽しいよね」
「ええ。仕事をして楽しめて。宿代まで浮くんですから素敵なイベントでしょう?」
 自慢げな音呂木・ひよのに「悪ですなあ」と花丸は揶揄うように声をかけた。「そちらこそ」と笑うひよのに花丸はそういえばと言わんばかりに呆然としている『凡人』越智内 定(p3p009033)を見遣る。
「カーッ! 石油王とかべーやんはいいよな! 登場するだけで女の子から黄色い声援もらっちゃってよ!」
 ルカの肩をばしんと叩いた『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)にルカは「ん?」と首を捻った。
 石油王ことルカ・ガンビーノ――こと、リュカ・ファブニル。
 ROOではベネディクトを兄と呼んだ彼を定はあろう事か同年代の少年であろうと認識していたのだ。だが、出てきたのは千尋の言葉を借りれば石油王である。アラブの石油王めいたイケメンがバイクで女連れで現れた。一体どういう……定は理解できずに宇宙を漂うかのように呆然としていた。
「こっちでもよろしく頼むぜジョー!」
 肩を組んでバンバンと腹を叩けば「ぐっ」と呻く声がする。陰の者である自覚のある定、ちょっぴり心のパンドラが削れたのであった。
「確か花丸がジョーって呼んでたからジョーでいいんだよな?」
「うんうん。定くんでも、ジョーくんでもいいらしいよ。なじみさんは定くんって呼ぶけどね」
「私は先輩と呼んでます」
 なじみと現川・夢華が楽しげに話しかけ、花丸も「ジョーさんで良いと思う!」と頷いている。和やかな合宿の始まりに千尋は「おいおい、俺を無視しちゃだめだぜ?」とフランクに微笑んだ。
「ひよのちゃん、なじみちゃん、夢華ちゃんは初めましてか? 俺は千尋。『悠久ーUQー』の伊達千尋だ。覚えといてくれよな!
 さて、チャッチャと夜妖退治して、皆でパーッとやるか!」
「千尋さん!」
「先輩」
 なじみと夢華がやんややんやと盛り上げる。そんな様子も余所に定は気を取り直していた。
 普通にお泊まり合宿をしようと思っていたら顔面偏差値もテンションも高いパーリィが完成していた。普通に女性陣に挨拶の出来る千尋に顔面偏差値の高いベネディクトとルカ。隠れファンも多いと聞いているロト先生。
「いや、でもなんか、こういうのもいいよね。合宿+オフ会みたいでさ」
「……それにしてもヨシカさんが……あ、ええとこういうのはねっとりてらしー! 内緒だよね!」
「そう。そう。でもROOの話は出来るだけナシで、わかるだろ? ね?」
 フランにずいずいと詰め寄る定は『ヨシカちゃんなんて知らなかった、いいね』と言わんばかりの様子であった。


『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)は衝撃を覚えていた。『シニャコルゲンガー』と仮の名を付けれれた夜妖を倒さねばならないというのだ。
「いやいや、偽物なんかより本物が一番可愛いなんて一目見れば解るじゃないですか! 審美眼がダメダメですよ皆さん!」
 まさか、夜妖如きにこの可愛さを完コピされるわけがないと言いたげなしにゃこを見下ろしてからルカはまじまじと彼女を見遣った。
「俺は練達でもこっちにはあんまり来ねえんだが…こんな珍妙な事件が起きるもんなんだな。
 いくらしにゃこでも知り合いの顔殴るのは気分良いもんじゃねえが…さっさと片付けちまうか」
「珍妙とは!? 喜んでくださいよ!」
 本物と間違える訳にはいかないとルカがターバンを乱暴にしにゃこにかぶせる。その様子をまじまじ見ていたフランの視線に気付きしにゃこは「ひいー」と小さく声を上げた。
「それで、しにゃこさんはどこに居るんだろう? ぷりちー美少女出ておいでー! 出ないと目玉をほじくるぞー!」
 花丸に引っ付いてプチ肝試し状態でしにゃこを探すフランは『食べ物の恨み』を全力でぶつけるつもりの花丸をまじまじと見遣る。
「肝試しもそろそろおしまいにするか。おーい、しにゃこ。そろそろかくれんぼはやめてご飯の時間にするぞ」
 ベネディクトの知っているしにゃこならこれで顔を出しそうだが、と彼は普通に振り返る。『わんぱん』でお仕置きしておきたいが増殖シニャコルゲンガーは勢いだけで圧倒される。
「なんですか? 呼びましたか?」「いやー、ぷりちーだといつでも呼ばれて困りますねえ!」「はーい! ひめですよー!」
「……いくら夜妖とはいえ、知り合いの顔した女の子の身体とか触れないのだけど……!」
 定は目の前のしにゃこと『向こうに見えたしにゃこ』を見比べた。
「な~~~~にがラブリービームじゃ! おいしにゃこ! 本物のラブリービームを見せたらんかい!」
 叫ぶ千尋にしにゃこが「ふふん、仕方ないですね~!」と満面の笑みを浮かべている。
 まさかしにゃこが増えるとはと呟いているベネディクト。「わー、しにゃこさんがいっぱいだ」と指さすロトに頷いて、ベネディクトは容赦することなく『ぶん殴り』の体制を整える。
「これだけいればちょっとくらい特徴的なのが居たりしそうだがどうなんだろうか。
 ゲーミング的な輝きを放つしにゃこだとか。居ない? そうか、いないのか……」
 光っていて欲しかったのか。そんな雰囲気のベネディクトの側で定は叫んだ。
「夢華ちゃん、ちょっと夢華ちゃん! 君夜妖だよね!? あのゲンガーなんとか出来ない!? いやか弱いのは分かったけどさあ!」
「頑張ってください。せーんぱい」
 夢華ちゃんは可愛くってズルいのだ。同情してばっかりだと『憑かれる』かもしれないと呟いたロトに定の背がぴんと伸びる。
「だ、大丈夫だよね、殴っても?」
「いくよ! これはこの前花丸ちゃんがご褒美に買っておいたケーキをいつの間にかしにゃこさんに食べられてた恨みっ!
 これは……これもっ! って言うか、ちょっとしにゃこさん花丸ちゃんのモノ勝手に食べ過ぎじゃないっ!?」
 花丸は「しにゃこさんのターバンが外れちゃってたら見分けがつかないかもしれないなーっ!」と振り向いた。
 本気で殴られるのは嫌であるしにゃこは「フランさん! ターバン引っ張らないでください! 後であげますから!!」と叫んでいる。
「食べ物の恨み! あとさっきも高い高いされてていいなー! うわーん!」
「あ」
 千尋は大騒ぎの女子組を見遣ってからぽろっと呟いた。ラブリービームを見せ付けたしにゃこのターバンがはらりと落ちている。
「……やべっ、見分けがつかなくなっちまったぞ」
 どうするべーやん! 叫んだ千尋にベネディクトは「もはや止まらないだろううな」と目を伏せる。
「おい、しにゃこ、ターバンを落としやがって!」
「ち、違います。しにゃじゃ、しにゃ……アッ、アーーーー!!!!!?」
 目を見開けば『みんなのうらみ』を乗せた最強の花丸が大きく振りかぶって――「しにゃこさんボンバーっ!」


 酷い目に遭ったとがっくりしていた定の側でぐでんぐでんのしにゃこはふんふんと鼻を揺らした。
「さて、カレーですか! そこに関してはしにゃは戦力外ですので食べる係に専念しますね!」
「……」
「ひよのさん、目が怖いですよ~? あれあれ~?」
 殴られた後なのにと唇を尖らせるしにゃこにひよのは良い笑顔なのであった。
「カレー作りはちょっとずつうまくなってきた腕の見せ所!
 ゲンガーさんももし元気(?)だったら一緒に作って、学校楽しかったなーって思ってもらえたらいいなぁ」
 ゲンガーさんと呼ばれている自分の『分身』らしきものにしにゃこが微妙な顔をしたがフランはいろんな場所で料理を勉強してきたのだと胸を張る。
「男の人いっぱいだしお肉もたっぷりで、量はてんこ盛り! でも野菜も食べなきゃだからサラダも作るよ、えーと男子も手伝ってー!」
 手伝おうかと顔を出したルカにフランはこくこくと頷いた。材料の皮を剥いたり切ったり。基礎なら出来ると言うルカは「折角なんだからなじみも作れよ」と見学中のなじみに声をかけた。
「なじみさん、お料理下手っぴさんだぜ?」
「ほれ、手伝ってやれジョー。多少不味いもん作ったってそれも笑える想い出ってもんだ」
 定の背を押す石油王に微笑ましいと千尋はゴーグルを着用する。バイク用のゴーグルをちゃきりと付けて「タマネギって敵は俺に任せろ!」と包丁を二刀流にする。
「オラオラオラ! ”ひき肉”にしてやんよォ!」
「定くん、なじみさん、あれやりたい!」
「あれは、違うと思う」
 千尋に憧れの視線を向けたなじみに定は首を振る。出来得る限りは皆で思い出を作りたいと考えるベネディクトも辿々しく野菜を切り分ける。メイドのように全て均等とは行かないようだ。
「うっ……玉葱が目に……うっ」
「あ、ロト先生。花丸さん、私はロト先生の『お世話』に行きますからお任せしても?」
「えっ!? はーい! ひよのさんのおうちのカレーアレンジは中辛と甘口ルーを混ぜるんだよね。なじみさんにも聞いてみるね」
 花丸はエプロンを着けて調理室でのカレー作りの先導を。慌てるロトは包丁で手を切り、タマネギによって苦しめられていた。
 ひよのが手当の為の救急箱を取りに行っている最中に涙を滲ませたロトは右往左往し――
「ああっ、料理の邪魔になってないかな、ごめんね! うろちょろして、ごめんなさ――」
 がしゃん、と音がした。ベネディクトが「大丈夫か」とロトを支える。材料は全て揃った。ひよのに手当して貰って鍋の番をしようと誘うベネディクトは非常にスマートなのだった。
「なじみさんはカレー、甘口、中辛、辛口何派?」
「甘口!」
「了解。取り敢えずは中辛で作るけれどね。
 甘いのが好きなら後から別鍋でチョコを溶かしたり、お皿に盛ったルーにマヨネーズをかけたりするとまろやかになって食べやすいんだよね」
「チョコ!?」
 定におねだりをするなじみはチョコレートを入れようよと花丸に背負って貰ってきたリュックから大量のチョコレートを取り出したのだった。
 ――ちなみに、食後は作らなかった組が後片付けの予定であった。美味しかったと腹を叩いた美少女・しにゃこは。
「皿洗いですか……もうお腹いっぱいで動けないんですよ!
 ひぇ、すいません冗談ですから! 真っ暗な廊下に放り出そうとしないでください!」
 ひよのに首根っこを捕まれていたのであった。


「千尋さんは、もしかしたら僕と同じ所から来たのかも知れないな。そういえば悠久ってチームは聞いた事があるような」
 篝火をグラウンドにたいて男子はのんびりと。女子は部屋で寝る準備を。定の隣には少しだけ風に当たりたいとやってきたなじみや夢華の姿がある。
「なんだよ越智内くん、俺の元居た世界の事とか聞きてえの? この練達ってトコはまあ……俺のいた日本に近えよ。特に再現性東京はな。
 色んな時代、俺がまだ生まれる前の時代も再現してる。まあ、夜妖とかはいなかったけどな。中々エキサイティングに過ごさせて貰ってるよ」
 へえ、と。頷く定に千尋は故に、ファンタジー世界からやってきた人々よりはこの場所に慣れているのだとそう言った。
「――僕は、そうだね。此処に来るまでも教師をしていたよ、深緑でね。生徒の皆は可愛いかったけど、1人に嫌われててねー。
 それが原因で……暗い話になっちゃうね! やめよっか、あはは。それより前、は……いや、それが記憶が無くってあー! ごめんねー! 気にしてないから気にしないでー!そんな事より、皆の話に興味が湧くなー!」
 悲痛な表情を見せた定にロトは慌てたように手をぶんぶんと振った。記憶が無いといえども今はなんとなくでも生活できている。
 ロトにとっては対して気にすることでは無かったのだろう。「やさしーじゃん」と頭をぐりぐりと撫でる千尋に定は頬を掻く。
「俺も学園には通った事があったよ。学んだ事は戦う為の術なんかが多かったと思うが、それでも俺にとっては掛け替えの無い場所だったな」
 ベネディクトの語る『出身世界の思い出』は定やなじみにとっては不思議な物語のようである。
「そういえばなじみさんはウォーカーだけれど、この世界で生まれた訳じゃないのかい?」
「なじみさんは希望ヶ浜生まれだよ。パパとママが旅人だったんだ。だから、純種に近いのかなあ?」
 外を知らないのは一緒だねと笑ったなじみに定が頷けば。隣で夢華が「おやおや、先輩ったら、なじみんのことばかりですか?」と笑う。
「夢華ちゃんは茶化さないでくれよ……夢華ちゃんの話も後で聞くから」
 肩を竦める定と楽しげな女子二人。そんな様子を眺めるだけでもルカは青春だと笑みを零す。
「ま、なんだ。こういう時は酒の一杯もやりてえモンだが……ジョーは未成年だから我慢しとくか」
「ですが、こういうときは恋バナが付き合いなのでしょう?」
 夢華の提案にルカは「はあ」と面食らったように彼女を見遣った。不可思議な空気感を纏った夜妖の空気感にルカは頭を悩ませた。
「つーかこのメンツで恋バナ? あんのか? そういうの? ジョーはありそうだが……
 保護者連中の前で学生が恋バナすんの、ちょっとした処刑だな。俺も助けてやりてえが、残念ながらそういう話題は持ち合わせてなくてな」
 定がどうしようかと頭を悩ませている内になじみと夢華も部屋に戻っていた。そろそろ眠たくもなる時間だ。
「それじゃ、僕は見回りに行ってくるよ。夜が1番怖い、ほら、こういうの教師の役目だろう?」
 立ち上がったロトに続いて千尋は「恋バナ……ね」と呟いた。
「おぅ、石油王かべーやん、ちょっとトイレ行きたいから付いてきてくれ。俺夜の学校で一人とか怖ぇんだよ」
 ある意味で『舞台を整えてやる』とでも言わんばかりの調子で立ち上がる千尋にルカも大きく頷いた。
「連れションか? 構わねえぜ。確かに夜のガッコーってやつは独特の不気味さがあるな」
「そうだ、越智内。夜中に寝ぼけて女子達の部屋と此方の部屋を間違えない様にな、と一応言っておくか。一応な。……それもまた青春という奴らしいからな」
 ベネディクトの後半の話は聞こえていない。定は「はーい」と返してからふらふらと部屋を目指すのだった。

 一方で――
「しにゃは自分に恋してます! なんですかその顔は! 笹木さんだって花より団子のくせに!
 フランさんは……まぁ超絶解りやすいですよね。はい、ターバン」
 しにゃこが提案した恋バナにひよのと花丸は顔を見合わせ、フランはきょとんとすることになる。
「恋バナかぁ……えっ自分に恋」
「って恋バナ? この面子で? って言うかしにゃこさん自分に恋してるって自分大好きだよねホント」
 揶揄うように笑った花丸にフランはそんなのもあるんだねえとおめめをぐるぐるとさせていた。
「ぶれないなー、もう。フランさんは確かに分かりやすいし、花丸ちゃんは……ぐぬぬ。ちょっと言い返せない」
「んん、あたしは恋とかよくわかんな……二人ともわかりやすいってなにー!? あ、ターバンえへへ」
 ささっと渡されたターバンを握りしめて『分からない』とは何事かと笑ったしにゃこは「ひよなじさんは?」と問いかける。
「好みとか! 無いんですか!? 例えば今回の参加者内でもし付き合うなら誰がいいですか? なじみさんは越智内さんとかどうですか!?」
「私はどうでしょうね。……なじみは?」
 さらっと躱すひよのは流石だが、その代わりと言って良いほどになじみが標的になっている。
「なじみさんは付き合うとかは分からないけど、仲良しさんは……」
 がら、と扉が開く。女性陣は全員部屋に居るはずなのに、だ。
「――一番は定くんかな?」
 その台詞だけをダイレクトで聞いた定は「え?」と首を捻った。
 なじみの一番が? なんて?
 まじまじと女子部屋を眺めている定にひよのは「花丸さん、フランさん」と声をかけ――

 ――定へと、枕は『良い感じ』に『鋭く』ぶち当たるのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

しにゃこ(p3p008456)[重傷]
可愛いもの好き
越智内 定(p3p009033)[重傷]
約束

あとがき

TOPの画像はpipiさんが「しにゃこさんいっぱい立たせます?」と言ってきたので完成したハイパーシニャコルゲンガー空間でした。
楽しい合宿を満喫していただけたなら幸いです!

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