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シナリオ詳細

<大樹の嘆き>マスクドなるお殿様を鬼のようなる精霊が連れて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●翡翠の異変
 『翡翠』方面のサクラメントが、突如一斉に停止した。
 サクラメントの機能停止により、イレギュラーズ達は翡翠に直接転移することができなくなった――更にサクラメントのみならず、R.O.Oの世界でも翡翠に入れなくなっている。
 恐らく翡翠の国境線が封鎖されたと思わしい。何か異常事態が翡翠内部で発生したのではないか――?
 数少ない取引を翡翠の一部のキャラバンと交わしていた伝承国。翡翠の内情を探ろうとする者らは、各所に調査の依頼を張り出した。
 元々現実の『深緑』よりもはるかに排他的であり、過激な性質を持つのが翡翠だが――翡翠では、一体何が起こっているのか?

●『変な兜をかぶった奴』
「よそ者め……!」
「何しにここへ来た?!」
 翡翠の国境線――迷宮森林に訪れたある男は、近隣の村人や森の警備隊に囲まれた。その圧倒的な数に押され、男はなす術なく捕らえられてしまった。
「そなたら、話を聞かぬか! 麿は何もやましいことなどしておらぬ」
 男はたまたま森の中を放浪していたのだが、翡翠の住人、幻想種たちは聞く耳を持たない。
「うるさい! お前みたいな変な兜をかぶった奴、信用できるか」
 村民は男が身につけた『変な兜』――ちょんまげ付きの特徴的なヘルメットを指して言った。覆面の妙な和服の男――一条 夢心地は窮地に陥っていた。
 村民たちは一時的に夢心地を監禁した後、森のとある場所へと連行した。
「お前が悪人でないかどうかは、森に判断してもらう」
 村民たちは夢心地の言い分を聞かず、それだけを一方的に告げた。そして、夢心地の体を木の幹に縛り付けると、その場から立ち去ってしまった。
 身動きが取れない夢心地は嘆息すると、どこかのん気な口調でつぶやいた。
「弱ったのう……あの者ら、全員花粉症にでもなってくれんかの」

 翡翠の異変を調査するため、R.O.Oにログインしたイレギュラーズたちは、迷宮森林に向かった。その内の1人である『なよ丈の』かぐや (p3x008344)は、どこか見覚えのある姿を見つけた。
「あれは……?」
 かぐやの視線の先には、木の幹に縛り付けられ、身動きできずに助けを求める夢心地の姿があった。
 夢心地の下まで距離を縮めようと、かぐやたちは踏み出したが、目の前の風景に違和感を覚えた。
 周辺の風景が、蜃気楼のように歪み始めた。というよりは、風景が動いている。
 木漏れ日差す森の風景に溶け込む何かが存在する。かぐやたちは、地面を這う複数の輪郭を捉え始めていた。

GMコメント

●R.O.Oとは
https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●『死に戻り』について
 近辺のサクラメントは砂嵐方面のものしか機能していないため、死に戻りで戦線に復帰するにはかなりの時間を要します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●シナリオ導入
 あなたたちはネクスト内の翡翠の異変を調査するために、迷宮森林へと出向いた。そこで翡翠の民に捕えられ、助けを求める風変わりな男、獰猛な魔物らと相見える――。

●成功条件
 一条 夢心地を救出し、迷宮森林から脱出させること。

●戦闘場所について
 まばらに木々が並ぶ場所。
 周囲にはまだ魔物以外の気配はない。

●敵について
 夢心地の周囲には、森の魔物(計6体)が集まり始めている。姿や動きはコモドオオトカゲに似ているが、カメレオンのような擬態能力を持っている。
 風景と一体化する擬態能力(付自単:回避能力を高める)に優れているが、動いている状態なら見つけやすい。
 猛毒の牙(物至単【猛毒】【失血】)を持ち、硬い皮膚に覆われた尻尾を打ち付ける(物近単)などの攻撃を用いる。
 敵はトカゲの魔物だけではない。国境線である迷宮森林を警備するレンジャー部隊――幻想種たちは厳戒態勢を敷いている。外からの侵入者は徹底的に排除する構えで、イレギュラーズを見つければ問答無用で攻撃してくるだろう。弓矢(通常レンジ3)を用いて攻撃を行う。
 50人規模で攻めてくるので、国境線を越えて逃げるのが懸命だぞ☆


 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。

  • <大樹の嘆き>マスクドなるお殿様を鬼のようなる精霊が連れて完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
WYA7371(p3x007371)
人型戦車
オルタニア(p3x008202)
砲撃上手
かぐや(p3x008344)
なよ竹の
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
アマト(p3x009185)
うさぎははねる
フィーネ(p3x009867)
ヒーラー

リプレイ

 木の幹に縛り付けられた状態の一条 夢心地の周囲には、すでに6体の魔物が集まり始めていた。
 優れた擬態能力で森の風景と同化し、見え隠れする魔物の気配――。
 『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)は自らの意思で自在に1体のドローンを飛行させ、ドローンは周囲を俯瞰できるほどの高さから魔物らを見下ろす。
「完璧な擬態って訳では無さそうだな。動いている時は見つけ易そうだぜ」
 Tethはドローンの視界からもわかる風景の違和感を把握しながら、すべての魔物の姿を捕捉しようとする。
 厄介な魔物から夢心地を守るため、Teth以外の者らもそれぞれの能力を駆使する。
 うさ耳を生やした『うさぎははねる』アマト(p3x009185)も、不意を突かれないよう鋭敏な聴覚を働かせる。
「はわ、お殿様……マスクドお殿様……」
 夢心地と対面したアマトは、ヘルメット型の覆面マスクにちょんまげという出で立ちに惹かれているようだった。
 ――離れていても感じられる神々しきオーラ……!
 『なよ竹の』かぐや(p3x008344)は大袈裟なほどに感極まり、今にも夢心地の姿を拝みそうな様子だった。
 ――まさしくこの世界の王、否、殿上人である事は間違いなく。
「ここで救出する、以外の選択肢はございませんわね」
 かぐやはその一言からもやる気をにじませ、神経を研ぎ澄ませて索敵を試みる。
 一方で、『殉教者』九重ツルギ(p3x007105)は森の精霊と心を通わせることを試みる。ツルギは常人には感じ取ることのできない精霊たちのざわめきを感じ取った。精霊たちのざわめき――それは森の侵入者たちに向けられた明らかな敵意であることにツルギは気づいた。
 『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)はツルギの表情の変化に気づいたのか、ツルギの顔を覗き込む。ツルギはイズルを見つめ返すと、首を横に振りながら言った。
「森の精霊たちも、幻想種たちと変わりないようです。外の人間を敵視している……」
 精霊の協力を仰ぐことは不可能だったが、不可視の魔物に対抗できる力は充分にそろっていた。
 AI搭載の二足歩行戦車――『人型戦車』WYA7371(p3x007371)は、周囲のデータのスキャンを開始する。
「該当データとの類似を把握――」
 WYAはトカゲ型の魔物の姿を把握し、センサーによって確実にその輪郭を捉えることができた。同時に、WYAは小鳥の姿に擬態したドローンを放ち、周囲の警戒を怠ることはなかった。
 『砲兵隊長』オルタニア(p3x008202)は視覚に意識を集中させ、常人を遥かに超えた能力を発揮する。極めてわずかな風景の歪みも、オルタニアの目ははっきりと捉えた。
 ツルギとイズルはオルタニアが指し示す方角に向けて、あるものを投げつけた。割れやすい容器に詰まったカラフルな液体――イズルが精製したポーションは激しく飛び散り、魔物の輪郭を鮮やかに染め上げる。
 魔物に目印をつけようとする2人にTethも加わり、両手にロケットランチャー型の武器を構えた。発射口からは無数の小型ロケットが放たれ、地面諸共魔物を爆発に巻き込む。爆破の衝撃と共に、辺りは冷気に包まれた。一部の魔物の体は、ロケットの影響により霜が生えるほど凍結していた。
 凍りついた魔物の体表を認めたWYAは、攻撃に徹する構えを見せると、
「さあ、Step on it。さっさと終わらせましょう」
 弾幕を張るWYAの掃射は、夢心地に接近していた魔物の1体に向けられた。夢心地の周囲の魔物が一掃された瞬間を狙い、『ヒーラー』フィーネ(p3x009867)は夢心地のそばまで駆けつけた。
「急いでこの森を出ましょう!」
 そう言って、フィーネは自らの細剣で夢心地を縛り付けている縄を引きちぎるようにほどいていく。その間にも、フィーネは這い寄る魔物の気配を感じていた。
 フィーネが焦るまでもなく、オルタニアは構えた長弓から次々と矢を放ち、魔物の動きをけん制する。かぐやもどこからともなく竹槍を投てきし、目の前の魔物らを蹴散らして夢心地の下へ向かった。
 かぐやはフィーネと協力し、夢心地の拘束を解くのを手伝う。
「私はかぐやと申します。そして、その仲間たちですわ――」
 縄を解きながら、かぐやは殿様然とした夢心地に森から脱出する計画を伝えた。
「――という訳で、ふた手に分かれて行動しましょう。ところで、あなたのように貴品あふれる方が、なぜこのような場所に?」
「そなたら、よくぞ助けに参ったな。ほめてしんぜよう。麿はただ――」
 夢心地が森に入った理由を話しかけたところで、フィーネは無数の足音がこの場に向かっていることに気づいた。
 気配を感じ取ったのはフィーネだけではなく――。
「皆さん、ここから離れましょう!」
 アマトも接近する気配を危惧し、皆に行動を促した。ツルギは布をフードのようにして目深にかぶり、早速計画通りに囮の役目を果たそうとやる気を見せる。
「殿と姫には指一本触れさせません!」
 ――影武者としての役目、必ず果たしてみせます。
 現実世界のプレイヤーとしての戦国時代フェチがうずくツルギは、どこか輝く眼差しを夢心地に向けていた。
 WYAは小鳥型ドローンの視界を通して、森の奥から進軍してくるレンジャー部隊の姿を捉えた。
 Tethは即座に逃走の準備を促す。
「目的を果たしたら長居無用ってな。クソ絡みされる前に脱出すんぞ!」
 イレギュラーズ一行は、ひとまず魔物の縄張りから遠ざかる。魔物らは夢心地を伴うイレギュラーズの後を追いかけてきたが、エネルギー弾や矢の雨がその行く手を阻んだ。
 ある物を手にしたアマトは、振り返り様にそれらを魔物に向かって投げつけた。アマトが投げつけた色鮮やかな複数のイースターエッグは、煙幕のように大量の煙を発生させる。ドギツいピンク色の煙は、魔物の動きを鈍らせるほどの毒性を発揮した。
 レンジャー部隊に囲まれる前に魔物の縄張りを脱したイレギュラーズだったが、間もなく追いつかれる。
「侵入者だ!!」
「森を荒らすよそ者め!」
 レンジャー部隊である幻想種たちは対話する素振りも見せず、続々とイレギュラーズに向けて矢を放つ。
 弓を向ける者を迎撃する、木の影に身を伏せるなど、各々が弓矢の攻撃に対処する。きらびやかな装飾の盾を掲げたツルギは、臆することなく前に出る。ことごとく放たれた矢を弾き続け、幻想種たちを引きつけようとするツルギは堂々と言い放つ。
「そなたら、この俺……麿をあれで捕えたつもりだったか?」
 顔を覆い隠した状態のツルギは、自在に夢心地の声色を真似し、幻想種たちをかく乱しようとする。
「悔しければ捕まえてみせよ!」
 そのツルギの一言を合図に、皆は2チームに分かれる計画を実行した。
 Teth、かぐや、アマト、フィーネは夢心地を連れて森の外を目指した。WYA、オルタニア、イズルは、夢心地のフリをしたツルギと連れ立って、真逆の方向へ――更に森の奥へと向かう進路を取った。
 レンジャー部隊も二手に別れたようで、多くの足音が背後に続くのがわかった。矢を射掛ける多くの幻想種の勢いを削ごうと、WYAは瞬時に向き直る。電磁接続によって機体の周囲を浮遊する複数の砲身を掲げ、WYAは無数のエネルギー弾を射出した。
 激しい攻撃に晒されながらも、屈しない幻想種たちの追撃は続く。
 共に森の中を駆け回りながら、イズルは水晶のごとく輝く刃を幻想種たちに向けて降り注がせる。イズルはその背に聖晶の翼――七色の輝きを帯びた翼を展開し、自在に身を翻しては飛び交う矢を巧みにかわした。
 同様に弓をさばくオルタニアは、自身の魔眼の力を発揮すること、でレンジャー部隊の戦力を削いでいく。神速に適するオルタニアの弓さばきは、相手に矢を放つ隙を与えないほどの勢いだった。
 しばらくレンジャー部隊の勢いを削ぎながら逃げ続けていたが、4人に差し向けられた人数を比べると、多くの幻想種は夢心地たちの方に流れているようだった。
 オルタニアは木の幹を遮蔽物として利用し、その間を移動しながらツルギの近くまで追いつくと、
「『森の精霊は協力的ではない』……そう言ってたよね?」
 ツルギが何気なく話していた内容を思い出したオルタニアは、ツルギに尋ねた。
 足元の地面に矢が突き刺さるのを認めつつも、ツルギはオルタニアの言葉を肯定する。
「私たちに協力的でないということは、つまり――」
 すぐ近くの木の影に身を伏せながら、イズルもオルタニアと同様の懸念を口にした。
「幻想種たちに肩入れしているということじゃないか?」
 周囲の植物たちの声に耳を傾けていたオルタニアは、そのことを確信していた。

「頑張れよ、殿様。もうちっとだからな!」
 夢心地を護衛する内の1人――役目を果たそうと動くTethは、迫り来る矢の雨を凌ごうと攻撃に出る。弓矢を遥かに凌ぐ化学の利器――Tethのロケットランチャーから射出される無数の小型ミサイルは、放たれた矢諸共レンジャー部隊を吹き飛ばす。
「この……これ以上森を荒らすな!!」
「二度と踏み入れないようにしてやる!!」
 殺気立つレンジャー部隊はそれでもなお押し寄せ、脱出を図る5人の進路を阻もうとする。
「ごめんなさい! でも――」
 相手の進撃を止めようとするアマトは、イースターエッグを手榴弾のごとく放り投げる。
「先にひどいことをしたのは、あなたたちの方です」
 アマトのイースターエッグは、爆破の衝撃と共にカラフルな煙をもうもうと立ち上らせた。
 一行は追手との距離を充分に維持しつつ、森の中を駆け抜けていく。
 どこからともなく飛んでくるかぐやの竹槍は、何度となく幻想種らの攻撃を阻んできた。唐突に地面に突き刺さった竹槍を利用するかぐやは、その優れた槍さばきで自身を狙うすべての矢を弾き落として見せた。
 各々が抜きん出た動きでレンジャー部隊の猛攻をかわしていくが、相手も一向に激しい攻めを崩さない。かすめる矢に動じている暇はなく、木の幹を盾にして一時的にやり過ごそうとするフィーネは、手を組んで祈る仕草を見せた。
 フィーネは全身に光を帯びると同時に、負傷した者を癒す力を送り込む。
 フィーネは移動を再開し、自らも盾と剣を振りかざしながら、
「何人敵が来ようとも、守り切ります!」
 癒しの力を駆使し、傷を負った者のために全力で対処する構えを見せた。
「しつこいのう――」
 途切れることのない追撃に辟易したように、夢心地はつぶやいた。その直後に停止した夢心地は、着物の袂(たもと)におもむろに手を突っ込んだ。袂の中は四次元空間とでもいうのか――夢心地は中から刀を取り出し、即座に居合の構えを見せた。夢心地から瞬く間に放たれた斬撃は、衝撃波となって射線上の幻想種を打ち払った。幻想種らは怯まずに反撃に出ようとしたが、目の前に突き刺さるかぐやの竹槍から逃れることに必死になっていた。
 反撃と逃亡を繰り返してきたが、レンジャー部隊は予想以上に夢心地に対して数を割いているようだった。5人の進路上へと回り込もうとする者らを抑えつけるのも限界があり、誰もが事態の打開のために必死に思考を巡らせていた。
 脱出の最中、アマトは遠く森の奥から聞こえた微かな声も聞き逃さなかった。アマトらの進路上に回り込もうとした幻想種たちも直前で動きを止め、その声に反応したように顔色を変える。
 何やらどよめく幻想種たちは一斉に方向転換し、森の奥へと引き返していく。アマトも声が聞こえた方角を一瞬振り返り、囮として反対方向に向かった者らを案じた。
 ――無事脱出できそうですが、あちらは大丈夫でしょうか?

「作戦変更! このまま一気に攻め入ります!」
 WYAは辺りに響き渡るように声を張り上げ、翡翠方面に向かって進み始めた。4人はWYAを先頭にして移動を開始した。
 慌てて4人を止めようとするレンジャー部隊の怒号を背に受けながら、オルタニアは植物たちの声を聞き取る。
 オルタニアが予想した通り、森の植物たちは、夢心地たちを狙った別働隊に向けて、WYAの行動を伝達していた。
 4人はレンジャー部隊を引きつけつつ、森の中を大回りして、砂嵐方面への脱出を実行しようとしていた。
 引き返してくるであろう別働隊と鉢合わせしないよう、4人は逃走経路の確保に傾注する。しかし、その動きを幻想種たちに告げ知らせる植物たちにより、思うようにはいかない。
 ――すべてのレンジャー部隊はこちらに引き寄せられた。恐らく殿の方は安心だろう。
 夢心地たちの安全を見越したツルギは、植物に聞こえないように、木々の間に隠れながら矢をやり過ごす皆に耳打ちして回った。
 4人そろって無闇にデスカウントを増やすよりは――イズルはツルギから伝えられた作戦に従うことにした。
 イズルが傷を癒やすための薬液をツルギに手渡そうとすると、ツルギは恭(うやうや)しくイズルの手を取り、
「殿と姫は必ず守ります……無論、イズルのことですよ」
 ツルギの言葉に対し、イズルは口元にぽかんとした表情を浮かべたが、直後に微笑を見せた。
「姫はツルギさんの方じゃないの?」
 そう言って、イズルは即座に踵を返した。
 イズルは大木の影に身を寄せていたオルタニアと合流し、秘かに何事かを示し合わせる。頷き返したオルタニアは、身を伏せながら幻想種の動向を窺う。
 ――森の植物は幻想種たちに味方しているし、思っていたよりも厄介だね。
 作戦決行に備えるWYAは、機体から一層激しい駆動音を響かせながら、心中でつぶやく。
 ――正面からぶつかっていては、疲弊するばかり……全滅するよりは、かき回してやりましょう。
 植物の声を聞くレンジャー部隊に対抗するため、WYAはツルギと共に行動に出る。
 矢の雨が途切れた瞬間を狙い、ツルギは幻想種たちに向けて声高に言い放つ。
「これ以上攻撃するなら、この森諸共爆破しますよ!!」
 幻想種たちは、自爆のためのスイッチを掲げるツルギに身構え、矢尻を下げた。
 「それでは、派手にいきましょうか」とスイッチを押すような素振りを見せるツルギに慌てふためく幻想種らだったが、WYAは透かさず動揺した部隊を狙ってエネルギー弾を掃射する。イズルとオルタニアは、その混乱に乗じて逃走を図った。オルタニアの肩を抱き寄せ、共に駆け出したイズルは自らの擬態能力を展開する。レンジャー部隊の注意がツルギとWYAに逸れていることもあり、包囲の外へと向かった2人はうまく相手を撒くことができた。

 夢心地とイレギュラーズ一行は、森を抜けて砂漠地帯にたどり着いた。やがて迷宮森林のどこか遠くから爆発音が響き渡り、一行はその方角を注視した。
 ――ひとまず、救出には成功しましたね。
 アマトは森の奥に向かった4人を心配しつつも、夢心地に尋ねる。
「……ところで、あなたはどうして森にいたのですか?」
 きょろきょろと辺りを見回す夢心地は、捜し物をしていたらしく、
「ほんの少し目を離した隙に見失ってのう――」
 そう言いかけたところで、夢心地は視線の先に何かを見つけて駆け出した。
 森の境から走り出してきた白い影――1頭の白馬が5人の前に姿を現す。夢心地は喜々として白馬の下に駆け寄った。
「まったくどこへ行っておったのだ?」
 馬に声をかけながら、夢心地は颯爽と馬の鞍にまたがる。
「そなたらには世話になったのう、礼を言うぞ」
 別れの言葉を送る夢心地に対し、かぐやは名残惜しそうに最後の言葉をかける。
「あの、せめてお名前を……!」
 その言動や見た目からして、明らかに現実世界の一条 夢心地に違いない特徴を持っているが――。
「名乗るほどの名前はないが、あえて呼ばれるなら『マスクドお殿様』じゃ」
 目の前の本人は「またどこかで会おうぞ!」と言い残してその場を去る。夢心地を乗せた白馬は、某時代劇の将軍を彷彿とさせる勢いで砂漠を駆けていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

九重ツルギ(p3x007105)[死亡]
殉教者
WYA7371(p3x007371)[死亡]
人型戦車

あとがき

ご参加ありがとうございました。
タイトルはあれですね、真田幸村の有名な歌をもじったものです。

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