シナリオ詳細
メイドさん放浪記
オープニング
●流しのメイドさん
街道を、メイドさんが歩く。
長い金髪を後ろで結び、青い目は光を受けて煌いて。
10人中8人は振り返るような、そんな女性。
ちょっと特殊なところをあげるなら……黒を基調としたメイド服を纏っている、というところだろうか?
そう、それはメイドさんだった。
カタナと呼ばれる武器を腰に下げ、大きな荷物を背負ってはいるが……明らかにメイドさんだった。
一体何故メイドさんが?
分からない。何処かに仕えているという様子でもなさそうだ。
むしろ、追い出されたという感じだが……メイドさんの様子からは、そんな感じは微塵も出ていない。
鼻歌などを歌いながら、メイドさんは街道を歩く。
そして……そんなメイドさんはカモにでも見えるのだろうか。
ゴブリンたちがその行く手を塞ぐ。
「あらら……」
しかし、メイドさんには慌てた様子すらない。
困ったように首を傾げると、荷物をその場において腰のカタナに手をかける。
「仕方ありませんねえ……どうせお話も通じないでしょうし」
何度かカタナが閃いた後、メイドさんは再び荷物を背負って歩き出す。
「さてさて、ご奉仕の相手は何処にいらっしゃるやら。まだまだ道は長そうですねぇ」
●流しのメイドさんからの依頼
「というわけで、依頼です」
「初めまして。流しのメイドのメイと申します」
流しのメイド。メイドはそんな流れるものだったかイマイチ不明だが、そういうメイドもいるかもしれない。
いや、此処にいるからいるのだろう。逆説的帰結である。それはさておいて。
「このメイドの人は世界のあちこちを放浪するメイドの人でして。まあ、優秀故に居つけない、そういう人です」
流しのメイド、メイ。その道では有名な放浪メイドである。
完璧な仕事っぷりとその美しさから、勤務中の引き抜き工作、愛人要請、仕えた家の若旦那にお坊ちゃま、お嬢様の性癖を何もしていないのに歪める事……各4桁以上。
長くいればいるほど家人達が手放したくなくなるという、そのメイドっぷり故に自ら放浪メイドの道を選んだスーパーメイドである……と語られている。
「資料によるとメイド流抜刀術開祖……なんですかこれ」
「鍛冶に没頭しすぎてカタナしか刃物がなくなったお家がございまして、その時に必要に駆られて」
「とまあ、こういう人ですが……狙われる事も多いです」
メイの事を忘れられずに誘拐事件を企てる者も多く、それもメイの放浪の一因になっている。
「とはいえ、次にご奉仕すべきお家を見つけてしまいまして。3日ほど、お手伝いいただければと」
メイの次の逗留地は幻想貴族……の中でも没落しきった貧乏貴族マウエス家。
そこでメイがご奉仕する間の助けが、必要なのだ。
- メイドさん放浪記完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年09月27日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●メイドさんとしての活動
「荒れ放題に好き放題。お金が集まる要素は微塵もなく。正しく没落貴族の屋敷ですな。先んじて掃除ですかね、電子妖精も活用してさっさと終わらしましょう。ついでに周辺警戒です」
『ゲーミングしゅぴちゃん』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)はそう言って掃除を始めるが、その掃除には怪しげな連中の掃除も含まれる。
すでに屋敷を監視していた怪しげな黒ずくめを1人排除しているし、ウロウロしていた自称自警団も数人排除している。
いや、排除ではない。お掃除だ。今のSpiegelⅡはメイドだから。
「メイドさんッスか、メイドさんッスね! メイさん程ではないですが、頑張ってご奉仕させていただきますッス! しとーちゃんも居るし、負ける気がしないッスね!」
『仕込みバッター』紫乃宮・奈々(p3p008028)はメイド服を纏いながらも、腰には「ランドリーや清掃のお手伝い愛用のバット」を装着している。
「これは、遥か東の国に伝わる布団叩きッス!」と言い張っての装着だが、そもそも一緒に動いている流しのメイドのメイからして刀を装着しているので、あまり違和感はない。
メイさん達の仕事ぶりを勉強しつつお屋敷を綺麗にしようと奮闘しようと、そう考えている奈々だが……「しとーちゃん」と呼んだ本人は今、執務室にいたりする。
「んーーーーーーーー混沌は広いですねえええええええホント。まさかのまさか、私の他にも流『し』のメイドをされている方がおられるとは。なお私は流『れ』のメイドなのでアイデンティティはクライシスりません。やったね」
言いながら執務室を掃除しているのは『Anonym Animus』観音打 至東(p3p008495)だ。
マウエス家は一応幻想貴族であり、当主たるジェイにも一応仕事というものがある。
だからこそ執務室でやるべき仕事が存在し、至東は旦那様であるジェイの短期専属メイドとして、身辺警護ならびに『家具』として常時つきま……もとい、付き添っているのだ。
その中で掃除も当然含まれており、手入れがほとんどされていなかった執務室は急速に綺麗になっていた。
至東の仕事は凄まじいまでにプロの仕事であり、そこに一切の手抜きはない。
「そう、やわらかで、あたたかく、巻き付いて離さない、毛布のような家具。いえ、えっちな意味ではなく。旦那様、今は御家にとっての冬。私の間は、このような『家具』も必要でしょうが……いずれ来る春に向けて、毛布にさよならを言う準備も、しなければなりませんよ。そこはお忘れなく。それまではどうぞご愛用を、旦那様」
メイの事を交えながら至東がそう言えば、ジェイはチラリと顔を上げて「分かっている」と答える。
「当家は給料すら満足に出せていない。メイを巡る事情も聞いている……他家の愚行をなぞるつもりはないよ」
それはまだ幼いが才能を感じさせる答えで、至東は満足げに笑う。
それを見ていた『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)も、静かに頷く。
初めて会った時は「覇気がない」がルクトの正直な感想だったのだが……衣食足りて礼節を知る、という言葉が示すように余裕というものは大事なのだとルクトに思わせた。
この調子なら、ちょっとくらいは「旦那様」と呼んでもいいかもしれない。
そんな事を考えるルクトはメイドの格好をしているが、まあ本来はメイがその役目を1人で担っていたのだろう。
ちなみに、そのメイ……流れのメイドは「此処は1人いれば十分」と別の個所に回っている。
(同じメイドですし、きっと気が合うと思います。気が合うといいなあ。旦那様性癖歪めレースとかはじまらないといいなあ。あ、今回襲われるのはメイ君でしたね)
そんなある意味で物騒な事を考えながら職務に励む至東だが……時折トンテンカンとハンマーの音が聞こえてくるのは、『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)が屋敷の修理をしているからだ。
あまり開ける機会のなかった窓も全て開けられ、空気の入れ替え中だ。
「取り敢えず、拙は建物の整備修繕に取り掛かろうかと。その為にもまずはお屋敷の中を一頻り確認ですね。お掃除は勿論ですが、窓や扉の出入り口の類いはガタが来ていれば確り直しておかないと行けませんしね。そうしておけば、侵入者のリスクも減らせるでしょうし! でもその前に確認しつつ窓は片っ端から開けますが! 換気しないと、幾らなんでも埃がひどいのでは!? 建物だけでなく、序でに家具や内装諸々も可能な限り直しちゃいましょう……」
そう言っていたステラだったが、まさに有言実行。
家具も部屋も使わなければ痛むものであり、寝具も手入れしなければ嫌な臭いが溜まっていくものだ。
食器とて磨かなければポテンシャルを保てはしない。
「庭が有るならお手入れは必須ですよね……思ってたより忙しいヤツでは?」
「キノコでも生えていそうなほど汚いですね……もし本当に生えているのであれば隔離してキノコ栽培ができるようにしてしまいましょうか。売れるかもしれませんので」
「家に生えてるキノコに売れるものがあったら、それはそれで悩みどころですが……」
冗談めかして言う『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)にステラは笑い、トンテンカンとハンマーを振るう。
そんなリュティスは今まさに掃除の真っ最中だ。
「御主人様は一人だけと決めておりますが、依頼とあれば仕方ないですね。やるのであれば全力で本職のお仕事を見せつけて差し上げましょう」
そう、忠義と依頼は別だ。そう自分を納得させながらリュティスは掃除をしていく。
その腕はまさに凄まじいもので、あっという間に屋敷が綺麗になっていく。
床はしっかりと埃をとった上で磨かれ、壁も天井の照明も輝きを取り戻していく。
普段どれだけ本来の主人にリュティスが尽くしているかという証明だろうか?
……ちなみにキノコ、という単語が出たが。この狭い領地で獲れる珍しい食用キノコがあるという話を聞き、『自称パッショニスタ』メルバ・サジタリウス・サーペンタリウス(p3p007737)と『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)はキノコ探しに出ていた。
「んふふ! メイドさんのお洋服って憧れてたんだぁ……汚れても目立たないし、動きやすいし…はっ…! 実は作品制作時にピッタリなのでは!?」
まあ、メイド服というのは基本的にはそういうものなので、メルバの意見は正しかったりする。
丈夫で汚れに強く、されど綺麗に整えるもの。それがメイド服である。
「コャー。なるほどメイドさん。郷に入っては郷に従えとも言うの。わたしもメイドさんとして働いてみるの。わたしの普段の職業はなんだろ、無職、ニート、家事手伝い、野生動物、マスコット……? 本職ではないけれど、頑張ってみるの」
胡桃もそんな事を言うが…無職とニートと野生動物は職業ではない。たぶん。どうだろう。
ちなみにメルバと胡桃もメイド服を纏っているが……まあ、嗜みというものだろう。
ちなみにキノコを探すにあたりジェイや町の人、そしてメイなどに情報を聞いたうえで可能性の高そうなものを絵にメルバが起こしている。
「キノコは食べられるかどうかもそうだし、生で食べられるかも色々で下手に手を出すのは危険なの。自然知識とサバイバルで判別できるかしら……珍しい食材と聞いて気になってしまったの」
「というか……もしかして、これ?」
メルバの「信じられない」といった風の言葉に胡桃も振り向き、木の根元を見る。
そこには……確かに聞いた条件に全てあうキノコが生えている。
「ちょ、ちょっと待って! スケッチするから!」
生育状況をスケッチしておけば、後々育てる助けになる。
場所も丁度領主管理の雑木林で……思わぬ発見に胡桃は、メルバがスケッチする横で思わず「コャー」と鳴いていた。
●メイドさんはなんだって解決できる
「こ、これは……!」
高そうなケースに収められたキノコ……メルバと胡桃が見つけてきたソレを見て、商人の男ホーキンはゴクリと唾を飲み込む。
「コレを特産品とするつもりです。そこで……専売権を買い取って頂きたく」
SpiegelⅡの言葉に、ホーキンは頭の中で素早くソロバンをはじき始める。
確かに、このキノコは充分すぎる程に儲けになるだろう。
専売権を買えるというのであれば、ケチな仕事よりもその方が余程良い。
「上手く行けば莫大な利益が生まれるでしょう。貴方にとって悪い話では無い筈ですよ。もし契約に心配があるようでしたらローレットを見届け人として改めて契約するのも1番公平ですかね」
「まあ、あくまで悪い商売にこだわるのであれば……こう見えても顔が広いので商売ができなくなるかもしれませんがよろしいですか?」
リュティスも加わりそう軽く脅せば、ホーキンは含み笑いをしながら両手を上げる。
「それは恐ろしい。しかしそんな事をされずとも、これは真っ当な商売の形でやったほうが儲かります」
「このお屋敷の貧乏脱出に一役買えるようなら、今後にも繋がるッスよ?」
「ええ、勿論です」
奈々にも頷き、ホーキンは金額交渉に移り始める。その金額は至東からしても充分に納得のいくもので。
一気に経済問題は解決の方向へ向かう形になった。
これは悪徳商人ホーキンを単純に排除するのではなく利用しようと考えた成果だろう。
胡桃の提案した領内パトロールにより、すでに自警団気取りの連中も捕縛し、キノコを栽培させる方向での利用をSpiegelⅡが提案し、実施させている。
更にはキノコの売り上げがあれば使用人や衛兵など、必要な人材の雇用も進んでいくだろう。
金がないのが全ての問題だったのだ。しかしホーキンを抱き込んだことで、彼は可能な限り儲けるように動いてくれるだろう。
全ては良い方向に進んでいた。あと残る懸念は襲ってこなくなった黒ずくめ達だけ、なのだが。
このままではマズいと思ったのだろう。その日の夜。彼等はついに行動を開始した。
「……よし、行くぞ」
裏口の鍵をあっという間に開錠し、中へと潜入していく黒ずくめたち。
どうやら戦えないジェイの暗殺を優先した方が良いと判断したのだろう。
しかし……それは元々警戒されていた。
だからこそ、その背後にSpiegelⅡは立っていた。やはり来たか、と。すでに戦闘態勢に入っている。
「しまった! 先に行け!」
1人がその場に残り襲い掛かるが……敵うはずもない。
「生半可な攻撃は我が装甲を抜けないと心得て下さい。アナタ方が取るべき選択が何か、利口であれば分かる筈です」
「五月蠅い!」
説得は無用。それが分かれば、充分で。しかも中に入った者も慌てていたせいかルクトの用意してバラまいた空き缶を踏んで鳴らしてしまう。
「しまっ……!」
そんな声をあげるが、それも念の為とルクトが仕掛けたものに過ぎない。
屋敷の中でも、待ち構えていたかのように……実際待ち構えていたのだが、リュティスのレインヘイルファランクスが放たれる。
「覚悟はよろしいでしょうか? 降伏するなら今のうちです。仕掛けてきたのはそちらですので死んでも恨まないで下さいね」
「ぐっ……くそっ!」
「容赦はしませんとも!」
それでも進もうとした最後の1人をステラが打ち倒して。全ての黒ずくめを倒し、更には捕縛する事にも成功していた。
「メイドの敵は旦那様の敵。旦那様の敵はメイドの敵。すなわち私の敵です……が。ここまで辿り着かないのであれば、私の出番もありませんね」
「その方がいいさ。しかし……」
何事か考える様子のジェイだったが……とにかく、捕縛した黒ずくめによれば雇い人はかつてメイと関わった商人だったようで……ライバルが増える事を恐れていてのものだったようだ。
それだけメイが魅力的ということだったのだろう。
しかし、3日間の「ご奉仕」が終わった後。ジェイはメイに笑って「ありがとう。君は行くんだろう?」と、何の未練もない表情でそう聞いたのだ。
「はい。もうこの家に私は必要ありません。故に、これにてお暇を頂きたく」
「勿論だ。君は素晴らしいメイドではあるが、僕には君を継続雇用できる実力がない」
それは領主としては必要なリスク管理ではあるだろう。
至東たちが介入したせいでメイへの依存度が低かったのもあるのだろうが……そうして、ジェイは立派な領主としての一歩を踏み出して。
「メイさん、もしよろしかったら……一度お手合わせを願いたいのですが!」
早々に荷物を纏めて次に行こうとするメイに、ステラは最後にそう声をかけてみる。
しかしメイは、笑って至東へと視線を向ける。
「私よりも……たぶん、そちらの方の方が強いですよ?」
そう言って、鼻歌などを歌いながらメイは去っていく。
流しのメイド、メイの行く先は誰も知らず。きっと、またどこかで困っているご主人様に仕えるのだろう。
その先でまたいつか出会えるかもしれない。なんとなく……誰もが、そう思ったのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
コングラチュレーション!
見事に問題を解決しました!
GMコメント
流しのメイド、メイはマウエス家で3日間のご奉仕を行います。
……が、そんなメイを狙って様々な妨害がきます。見事退けましょう!
退け方は自由です。どうせならメイドになっちゃえってことですよ?
・マウエス家
幻想の、とある町とその周囲の僅かな土地を治めるだけに没落した幻想貴族。
お家は2階建てのお屋敷。
現在の当主は14歳のジェイ・マウエス君。たった1人で日々溜息が出るばかり。
・流しのメイド・メイ
なんか色んな技を修めたスーパーメイド。メイド流抜刀術は頑固なリンゴも一瞬でウサギさんに仕上げます。
【今回の妨害】
・悪い商人
出入りの商人ホーキン。色々と相場より高い食材とか、変な幸運を呼ぶ道具とかを売りに来ます。
・チンピラ集団【鳳翼団】×20人
自称自警団。町中を我がもの顔で出歩いています。実際には市場でショバ代とかを巻き上げるクズ野郎です。
メイさんのことも何処かで聞きつけているようです。
・黒ずくめ×8
何処かの貴族か商人か、その辺に雇われたプロ。
メイさんの誘拐、あるいはジェイ君の暗殺などを企てます。
・古くて汚いお屋敷
執事もメイドも居ないので埃が溜まり、蜘蛛の巣の張ったお屋敷。
お布団もくちゃーい。あとお金もないです。
領地では何か珍しい食用キノコが採れるらしいですが……?
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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