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シナリオ詳細

<大樹の嘆き>毒をもがれた蠍達

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネクスト、翡翠を臨む砂嵐との国境線。
 移動するにつれて少しずつ草原、木々の生えるサバンナ、そして、迷宮森林と木々が生えていくこの地帯に、日に焼けた人間種達が集団を作りつつ散開しているのが分かる。
 それらは、砂嵐に属するメンバー達である。
 柄の悪い者も多く、盗賊、山賊風の身なりをしている者も少なくない。
 見た目通りに盗賊を生業としていたり、砂嵐に従って行動したり、彼らの思惑はそれぞれだが、ここにいたのはかつて砂蠍に属していた一隊である。
「……チッ」
 隊を率いるのは、赤い狂風の二つ名を得た赤い軽装鎧姿の鉾使いアッシラ。彼は翡翠の方を見つめて舌打ちする。
 あの戦い……<Genius Game Next>まで、とてつもない力を有する念力弾使いの少年について戦っていたアッシラだが、結局砂蠍残党として、砂嵐の傭兵団に身を寄せていた。
 ある程度、やりたいように振舞えるようになった一方で副官として不気味な双子の少女をつかせられ、こうして翡翠との国境付近に配備されている。
「翡翠……か」
 不穏な動きを見せる翡翠の方向を見つめるアッシラの元へ、長らく配下となっている気の知れた部下がやってくる。
「今は近づくことすらままなりませんぜ」
「ああ、今はこの縄張りに踏み入る者から身ぐるみを剥げばそれでいい。国内、翡翠の両方からやってくる者に目を光らせろ」
「へえ」
 頭を垂れて下がる部下。
 近場には幼少から暗殺稼業に手を染めていたという長い髪の少女達がいるが、彼女達は用事がない場合は2人でじっと瞳を閉じて神経を研ぎ澄ましている。その様子は歴戦のアッシラですらも不気味に感じさせた。
(全く、余計な連中を押し付けられたものだ)
 とはいえ、今は不気味な双子の少女達も自分の部下として、指示には従ってくれる。
 今は砂嵐の意に従い、近場を通りがかる者を襲うだけでいい。
 アッシラはそう自分に言い聞かせ、じっと周囲に視線を巡らすのである。


 バージョンアップしたR.O.Oでは、新たなイベントが次々に始まっているのが確認されているが、現状翡翠の地で大きな動きがあっている。
「現状、翡翠のサクラメントが一斉に停止しています」
 ネクスト、伝承へと集まったイレギュラーズのアバターに、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が状況説明を行う。
 おかげで、イレギュラーズは翡翠に直接転移することができなくなっている。
 それだけではなく、翡翠の国境線は封鎖されており、翡翠内部へと入ることが難しい状況になっているのだ。
 この状況を確認すべく翡翠へと向かうことになるのだが、その為には<Genius Game Next>にて大規模な交戦を行った砂嵐の地を越えねばならない。
「今回は、砂嵐を踏破する為の障害排除を願いたいのです」
 砂嵐国内は今も半ば無法地帯となっており、好き勝手に暴れる盗賊まがいの輩が大勢存在する。
 そんな中、翡翠方面の国境線に陣取る集団の中に、アッシラという名の男が率いる隊がある。
 彼らは元々砂蠍所属であったが、<Genius Game Next>において敗走した後、砂嵐に身を寄せて傭兵団内で隊を編成し直し、思うままに活動しているそうなのだが……。
「現状、不穏な状況の翡翠との国境線付近を通りがかる者を襲っているのだそうです」
 砂嵐の利益と合わせ、自分達の懐も潤わせるのが狙いとみられるが……。
 ともあれ、翡翠の状況を確認したいイレギュラーズとしては、邪魔な存在であることに変わりはない。
「アッシラ……ようやく動向を掴めたね」
 じぇい君(p3x001103)は<Genius Game Next>で取り逃がしたアッシラのことを気がけていたが、今回の一件は丁度あの戦いでの心残りを断ち切ることにも繋がると喜んでいた。
 ただ、話によれば、副官となっている双子の暗殺者はツインニードルと呼ばれ、砂嵐内でもその名が通る程の強敵なのだとか……。
 アクアベルはアッシラの率いる隊の情報をイレギュラーズ達へと提供しつつ、<Genius Game Next>で戦った少年に比べれば戦闘力は劣るはずだと語る。
「できるなら、翡翠現状について、彼らが知る情報を引き出したいところですね」
 ともあれ、馬車に乗ったイレギュラーズ達は翡翠の手前にある障害を排除すべく、砂嵐の地を目指すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 R.O.O、<大樹の嘆き>のシナリオをお届けします。
 また、こちらはジェイク・夜乃さんのアフターアクションで発生したシナリオです。

●目的
 翡翠の国境線、砂漠地帯に陣取る砂嵐の集団の討伐。

●敵……砂嵐傭兵団、アッシラ隊
○隊長……赤い狂風アッシラ
 「<Genius Game Next>武力少年は全てを手玉に」の結果、敗走した集団の頭です。現在、砂嵐の傭兵団に所属しているようです
 禍々しい鉾を持つ赤い軽装鎧の人間種男性で、遠近問わず素早い動きで攻め立ててきます。

〇副隊長……ツインニードル:ラーニヤ、ラナー姉妹
 ここしばらくの間、砂蠍で台頭してきた若干12歳の暗殺者の双子姉妹。
 赤く長い髪が特徴的な彼女達は素早く連携して躊躇なく相手を切り捨てることから、ツインニードルの2つ名で恐れられています。

○部隊員……20人
 日に焼けた肌の持つ若い人間種男性達。
 軽装鎧を纏い、半数が曲刀を、半数が小銃、機関銃をメイン武器として武装しています。

●状況
 翡翠と砂嵐の国境線に『砂嵐』の一隊が陣取っています。
 国境近くに散開している彼らの目的は不明ですが、翡翠方面に陣どっていることから、何か状況を握っているものと思われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <大樹の嘆き>毒をもがれた蠍達完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クシィ(p3x000244)
大鴉を追うもの
じぇい君(p3x001103)
オオカミ少年
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
シラス(p3x004421)
竜空
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
WYA7371(p3x007371)
人型戦車
BelethR(p3x008156)
『Cy-LRBo-NO28』
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者

リプレイ


 ネクスト、砂嵐。
 翡翠との国境間際、砂から草へと変化する地面を、イレギュラーズのアバター達が歩いていく。
「翡翠で一体何が起きてるのかな……」
 長いポニーテールの幻想種、アレクシア(p3x004630)は、ベースとなった現実の深緑に排他的なところがあるのは認めながらも、ここまでではないと翡翠の現状を憂いていた。
「ここ最近の翡翠の異変には困惑してたし、渡りに船とはこの事ですねっ」
 赤いフードを被った旅人女性、『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)は前方へと展開する砂嵐の部隊を見据える。
「翡翠の国境封鎖に加えて、盗賊共が好き勝手しやがってよう」
 大柄な女傭兵、『大鴉を追うもの』クシィ(p3x000244)は砂嵐一団の横暴に呆れを隠せない。こんな緊急時に通行人を襲うよりも、平時に通りがかる商人でも襲った方が実入りもいいだろうに、と。
「こんな状況下だ。国境間際は程よい稼ぎポイントなのだろうが……」
 一方で、女性技術将校の姿をした『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)はそれだけの人の行き来がこの近辺にあるのだと踏む。それを狙っているのであれば、砂嵐一団はまさに火事場泥棒である。
「心底鬱陶しいな。さっさと狩り尽くしちまおうぜ?」
 その所業を止めることもそうだが、彼らは多少なりとも翡翠の事情を知っているからこそこの場に展開している可能性が高いとTethは主張する。
「……ま、色々考えるのは戦ってからでいい。そしたら落ち着いて聞き出せるからよぉ!」
「確かめるためにも……悪いけど、ここは突破させてもらわないとね!」
 クシィ、アレクシアも前方の部隊を討伐し、それを聞き出そうと考える。もし彼らが知らずとも、直接翡翠へと踏み込んで確認すればいい話だ。
「とは言え、相手も砂嵐の傭兵団と強敵の様です……」
 カノンが皆に気を引き締めるよう促すのも無理はない。
 今は砂嵐に属しているが、赤い狂風アッシラなる男は以前、そして現実でも砂蠍盗賊団にいた。現実、ROO両方のジーニアス・ゲイムにも参戦経験があるのだ。
「今度こそ、アッシラを捕まえたい」
 子供の獣種、『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)はROO側で一度アッシラと交戦経験がある。
 ただ、罪を憎んで人を憎まずと語るじぇい君。
(僕は彼を救いたい。彼にも僕と同じ義賊として生きる道があるんだ)
 現実では、ジーニアス・ゲイムで命を落としているアッシラだが、じぇい君はアッシラに砂蠍へと身を落とした事情があるはずだと考えていた。
 一方、現実、ROO両方のアッシラと交戦した巨躯の竜、『竜空』シラス(p3x004421)は真っ直ぐ、部隊を統率するアッシラの元へと向かって。
「また会ったなァ!」
「チッ……」
 大きく吠えて自身に喝を入れるシラスに対し、アッシラは舌打ちしていた。
「なぜそこに居座っているがわからんが、今、翡翠のサクラメントが使えん以上あ奴らは侵入の障害にしかならん。早急に排除するぞ」
 2門の砲塔を両肩の上に展開する『『Cy-LRBo-NO28』』BelethR(p3x008156)は、全体作戦に沿って照準を狙うべき敵へと合わせるのである。


 砂漠と森の両方が見えるステップ地帯で、イレギュラーズと砂嵐の部隊がぶつかる。
 敵部隊は、赤い狂風アッシラを筆頭に、赤く長い髪を揺らす双子の暗殺者、ツインニードル……ラーニヤ、ラナー姉妹を副隊長に据え、軽装で遠近戦それぞれを得意とする部隊員20名が布陣している。
「……抑えている間に、なるべく速やかに……」
 イレギュラーズはそれらに対する策を練っており、クシィが最終確認する。
「アッシラは不殺で捕らえたい……だな。了解了解!」
「こちらとしても、情報が欲しいですからね」
 クシィの言葉に同意するカノンは技能を働かせて敵の動きにも注視していた。
「さあ、Step on it。さっさと終わらせましょう」
 向かい来る敵へと真っ先に攻撃を開始したのは、全身機械の女性機兵『人型戦車』WYA7371(p3x007371)だ。
 双子の連携は躊躇なく相手を屠るという。実際、彼女達は頷き合って仕掛けてこようとしていたのだが。
「連携? させません。あなたは手も足も出せず倒れるのです」
 WYA7371はその連携を発つべく、小型浮遊ビットやレーザーライフルを展開し、真っ先に自分から近い位置にいたラーニヤへと接近し、純エネルギーバレットを一斉掃射していく。
「「!?」」
 仰け反るラーニヤにTethも追撃する。
 自動反撃ドローンを展開していたTethがさらにマイクロロケットランチャーを一時召喚し、二基一対のそれから多量のペンシルロケットを発射した。
 次々に着弾していくTethのロケットはラーニヤの体を凍結させた上で大きく体勢を崩す。
 同じタイミング、飛び退く妹のラナーだが、アレクシアが自由にさせない。
「強敵も複数、敵の数も侮れない……だから、速攻で行くよ!」
 WYA7371の動きを注視していたアレクシアはすぐさま、ターゲット外となったラナーへと自分が注意を向けるよう仕向ける。
「あなたの相手は私がするよ!」
 魔力を伴って放った矢がラナーの傍に突き刺さると、その矢が弾けて雲が沸き立つ。
 雲は霧散することなくラナーの周りに留まることで、彼女の気を強く引く。
「『こっち』なら、私だって素早さには自信があるんだから! 勝負しましょ!」
「…………!」
 挑発気味な言葉もあり、ラナーはアレクシア目掛けて刃を繰り出す。
 また、前衛後衛に分かれて攻撃態勢をとっていた砂嵐の部隊員を、じぇい君が纏めて捉えていた。
「さあ、かかってこい!」
 今回、じぇい君は部隊員に対するタンク役となるべく敵のヘイトを買う。
 部隊員が繰り出す曲刀での斬撃や小銃、機関銃による銃撃を一身に受け止めるじぇい君。しばしの間、多数の敵の攻撃にさらされる彼は、アッシラや姉妹から部隊員を引き離す。
 また、隊長であるアッシラはシラスが引き受けていた。
「今回も薙ぎ倒してみせようぞ!」
 ROO側での戦い……<Genius Game Next>で、シラスはアッシラ本人による鉾の一薙ぎによって倒されている。
 ただ、アッシラもシラスが簡単に倒せる相手出ないことは重々承知しているからこそ、舌打ちしてしまったのだ。
(俺は一度こいつの攻撃を見ているんだ)
 先の戦いでの交戦で、シラスは敵の攻撃パターンはある程度読み切っている。加えて、シラス自身戦闘経験を積んで強くなっているのだ。
「前と同じだと思うなよ?」
 高めた防御能力をもって、シラスはこの難敵を抑えきる構えだ。
 その間に、残るメンバーは全力で双子の片割れ……ラーニヤに攻撃を集中させる。
 丁度、仲間と敵がぶつかったところで、BelethRは砲台から光玉を曲射する。
「……あんまりその弾を見ない方がよいぞ。……目をつぶされても、余は何も言わんからな」
 BelethRの言葉の最中、玉は強力な閃光を放つ。
 閃光は近場にいた双子を包み込み、彼女達の動きを鈍らせる。
「厄介な奴はサッサと潰しちまおう!」
 仲間と狙いを合わせるクシィは乙女メンタルによって反撃態勢を整え、ナイフを手にラーニヤへと切りかかる。
 斬撃メインと思いきや、全身を武器とするクシィは格闘術を合わせて敵を攻め立てる。
「神妙に、お縄について貰いましょう!」
 カノンは後方に位置取り、やはり双子の片翼をもいで連携を崩すことを優先する。
 スキルで自己強化したカノンは敵部隊員の一部を巻き込み、魔術的な力を空間に留まらせて動きを束縛しようとする。
 これ以上は乱戦となると踏んだカノンも妨害は初手の身と割り切り、集中しながらも魔弾カスタムで確実にラーニヤを狙っていくのである。

 砂嵐傭兵団所属の部隊員達は戦い慣れしてはいたが、強襲からの強盗などを生業とする彼らのほとんどは短期決戦を得意とする者達。
 イレギュラーズ側も敵の得意とする戦術を避け、早期で勝負を決めるべく攻め立てる。そのカギはいかに双子が攻略できるかだ。
(双子の片割れを仲間が倒せば、アレクシア姉さんが来てくれる筈)
 多数の敵に囲まれるじぇい君はそれまで何とか頑張ろうと奮起し、仲間を巻き込まぬよう徐々に強敵との交戦箇所から離れる。
 ある程度距離を離し、仲間を巻き込まぬと判断すれば、じぇい君は一気に仕込み刃で部隊員を切り捨てていく。
 さらに、その部隊員達だけを狙うようにBelethRが着弾位置を調整し、再度光玉を発射していた。
「敵集団を無力化するための攻撃スキルだからな。威力は大幅に抑えられている分、死にしないであろう」
 BelethRが放つ眩い光で目が眩む部隊員。実際、BelethRがいう様にそのダメージは大きくないようで、部隊員はふらつく程度といったところ。
 そのおかげもあり、じぇい君は幾分楽に敵を倒していたようだ。
 アッシラとの再戦に臨むシラスはというと、用意していた2つの手立てで攻防を行っていて。
 まずは、雷ブレスを吐きかけることで、敵の注意を引き続けること。
 加えて、ブロックすることで、双子への加勢を封じること。
「うおおおおおっ!!」
 シラスの思惑通り、アッシラは禍々しい鉾で彼を薙ぎ払い続ける。
 それはそれで魔法の鱗による再生と合わせ、飛び散る鱗を反撃として浴びせかけることができ、アッシラの体力を上手く削いでいた。
 残るメンバーは双子の相手に注力していたが、アレクシアも妹ラリーをほぼ単騎で抑える形となっていて。
「そのくらいじゃあ、まだまだ! 私は倒せないよ!」
 挑発を続けるアレクシアは妹を自分から注意を逸らさせない。
「……!」
 ほとんど言葉を発せぬ双子は連携をもって相手を瞬殺するのが普段のスタンス。その分、打たれ弱いようである。
 妹がそうであるなら、集中攻撃を浴びる姉はなおさらだ。
「……ううっ」
 嗚咽を漏らす姉ラーニヤ。こんなはずじゃと言わんばかりの表情だ。
「その手の英才教育を受けたクチか。ナリが小せぇからって、油断するつもりは無いからな」
 双子から同時に狙われることも想定していたTeth。ただ、相手にそんな余裕はなかったようだ。
 ラーニヤは刃をWYA7371へと振りかざして仕留めようとするが、WYA7371は執拗に攻撃を重ねて相手が有利な状況には一切させない。
(双子は“素早い”という事前情報がございます)
 それ故に、WYA7371はフルアクティベートした砲装群を展開してエネルギーバレットを掃射し、ラーニャを自由にさせない。
 思うようにスキルが使えぬラーニヤはなんとか抵抗し、隙を見ていくつかの成分を含む毒が塗られた刃をWYA7371に刻み込んでくる。
 ただ、WYA7371はそれも対策済みであり、右腕の兵装から放出する大型レーザーブレードの力で不浄を払いながら敵へと切りかかる。
 合間を見て、カノンが魔弾を叩き込み、確実にラーニヤの体力を削ったところに、クシィが攻め入る。
(消えたり瞬間移動されたら、どうしよ!)
 そんな懸念も抱いていたクシィだったが、WYA7371の攻撃によってスキルを封殺されていたラーニヤだ。
 そのラーニヤばかりに気を取られ、ラナーや部隊員に横っ面を叩かれぬようにとクシィは周囲にも気を配りながら、ナイフ格闘術による斬撃と殴打でラーニヤを攻めていく。
「…………っ」
 弱ってくれば、自慢の素早さも生かせない。
 そこを、Tethが地上3m程度を浮遊し、撃ち下ろすようにペンシルロケットを乱射する。
「あ、ぁぁ……っ」
 ついに、双子の姉ラーニャは意識を失い、ぱたりと地面に伏してしまったのだった。


 双子の片割れが落ちた後は、イレギュラーズ側へと一気に流れが傾く。
 アレクシアが抑えから抜け、じぇい君の抑える部隊員側へと向かって。
「あなた達に、みんなの邪魔はさせないから!」
 まだかなりの部隊員が残っている。無茶を承知ではあるが、シラスだって強敵相手に踏ん張っていることもあり、倒れてはいられないとアレクシアは踏ん張って見せる。
 双子の妹ラナーにはWYA7371が当たり、姉と同様にその力を封殺する。
(多少は攻撃を分散させねば、如何に抑え役のシラスが堅牢強固と言えど身が保ちません故)
 それもあって、カノンは攻撃の手を緩めずラナーに魔弾を叩き込む。
 体力が尽きた彼女もまた姉と同様にぱたりと倒れこんでしまった。
 一息つくカノンだが、周囲に光らす目は健在。仮に逃げ出そうとする者がいれば、すぐさま魔弾を撃ち込む為だ。
 WYA7371も敗走を防ぐべく、執拗にエネルギーバレットを掃射する。
 BelethRも閃光玉での敵の無力化を進めており、部隊員達の掃討は時間の問題といったところだ。
 クシィも前線で敵に殴りかかっており、できる範囲で気絶させる。
 途中でアッシラ側にその拳を向け、そちらの戦いを一気にイレギュラーズ側が有利となるよう進める。
 それというのも、ここまでシラスは自らの回復を挟み、アッシラの攻撃に耐えて見せていた事が大きい。
「く、化け物め……!」
 部隊員が倒れる中、1人も攻略できぬ状況に、アッシラは悔しがる。
 しかし、翡翠の……ROOでの深緑の変わりようが気がかりなメンバーはこんなところで止まってはいられないのだ。
「情報収集したいって話なんでね。悪いが、ここらでとっ捕まって貰おうか!」
 Tethも加わり、ペンシルロケットを乱射して相手を追い込む。
 おそらく、翡翠の状況をアッシラは知っているはず。それだけに、シラスも雷ブレスで相手の動きを止めていたのだ。
 そこで、部隊員をほとんど倒し、じぇい君も他メンバーと共に駆けつける。
「今度は絶対に逃がさない」
 仲間達の攻撃に合わせ、仕込み刀の柄で思いっきり腹を殴りつける。
「ぐ、うっ……」
 ついに鉾を落とし、アッシラもまた気を失って地面へと転がったのだった。


 砂嵐の部隊員全てを掃討したイレギュラーズ。
 シラスはアッシラから身辺調査し、口内に毒物など仕込んで自殺しないかと確認する。
 カノンも警戒は解かず、アクセスファンタズム「レリックインベントリー」で取り出したロープを使って部隊員を拘束する。
 同じく、クシィも相手から武器を取り上げ、仲間からロープをもらい、一部足りない分は敵の衣服を裂いて代用する。
「長い髪の毛をどっかに縛っとくのは……流石に可哀想か?」
 特に、双子は縄抜けを警戒して念入りに縛るが、まだ幼さも感じさせる彼女達には些かの憐憫も抱くクシィである。
「まだ子供だ。更生の余地はあるかもな」
 うな垂れる子供達を保護すべきだろうと、Tethはこの双子の処遇について仲間と共に決めることにしていたようだ。
「砂蠍に身を落としたのは、何かしらの事情があっての事でしょう」
「……」
 そして、もう1人、肩を落とす隊長……赤い狂い風アッシラには、じぇい君がアクセスファンタズム「みんな笑って」を使って呼びかけていた。
「僕は貴方の罪を憎んでいますが、貴方自身を憎んではいません。もう人殺しなんてやめて下さい!」
「生憎とこれしか知らずに生きてきたのでな」
 自嘲するように笑うアッシラは今更真っ当な生き方などできないとしながらも、こうなったからにはイレギュラーズに従うとのこと。砂嵐にも一時身を寄せていただけとあって、戻る気はない様だ。
 アッシラの今後についてはさておき、イレギュラーズが聞きたいのはやはり……。
「翡翠では一体何が起こっているのですか? 多くの人を救う為にも僕は翡翠の現状を知りたい」
「翡翠か、目的はそんなことだろうと思っていたがな」
 アッシラの語る翡翠の現状。排他主義を強めるこの国には、一切の行商人すらも立ち入れないという。
「その原因を、『大樹の嘆き』と彼らは呼ぶらしい」
 どうやら、森では精霊とも魔物ともとれるような個体が出現しているらしく、翡翠の民は警戒を非常に強めているとのこと。
「なんでも、森の自然を荒らす輩は全て余所者の仕業だと決めつけて、全てを排除しようとしているらしい」
 場合によっては捕縛され、過激な翡翠の民は私刑まで行うなどという話も……。
 そんなアッシラの言葉に、イレギュラーズは顔を見つめ合う。
 一体、翡翠の地で何が起こっているのだろうか。
 実際にそれを確かめに向かおうと考えるのである。

成否

成功

MVP

シラス(p3x004421)
竜空

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは<Genius Game Next>での雪辱を晴らした貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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