シナリオ詳細
再現性沖縄20XX:いわゆる特訓パートなわけでして
オープニング
●再現性沖縄とは
そこはまるで……《沖縄》であった。
練達の一区画に存在する再現性沖縄。さらにその一区画には翔波と呼ばれる地域が存在する。
それは異世界『地球』よりこの世界に召喚された人々の言う《沖縄》を何か凄い勘違いして、「大体こんな感じだろう」というイメージで出来上がった魔境である。
沖縄にはあらゆる夢がある。沖縄は食べ物が美味しい。
そんなイメージを植え付けられた料理人たちは「沖縄こそは料理人に約束されし聖地である」と思い込み、事実翔波ではあらゆる食材が手に入る。
そして全ての物事は料理でのみ解決され、あらゆる暴力は此処では排除される。
料理こそ全て。料理が世界を救う。
火と油、水と調味料に囲まれた世界こそ我が人生……それに気付かないなど料理人として愚かだし何なら皿洗いからやり直せばいい出直してこいやド素人が……その境地に至らなければ料理人としては未熟に過ぎ、究極の一皿になど永遠に届きはしない。だからこそ、街は今日も料理バトルの音が鳴り響いているのであった。
●修行しようぜ! 相手はお前な!
「クッキングバトルに備えて特訓しよう!」
再現性沖縄<アデプト・オキナワ>翔波に当然のように存在しているカフェ・ローレットでミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)はそう叫んだ。
ちなみに翔波のカフェ・ローレットのレギュラーメニューはかき氷とパイナップルジュース、そしてコーヒーだ。
何故かは不明だが、たぶん考えるだけ無駄なタイプのアレだ。
ともかく、そんなカフェ・ローレットでミルキィが特訓を提案した理由は1つ。
イレギュラーズの面々は再現性沖縄を……そして翔波を知らなさすぎる。
何しろ、このカフェ・ローレットの中に飾られている観葉植物が何やら赤い花かと思いきやベーコンの花弁だったりするのだ。つやっと輝く油が実にジューシーだ。
街中には精米されたお米の詰まった実の成る木があったり、卵が必要になった時に丁度近くに卵を産み落としていくニワトリ、カツオの生る植物や、その他諸々……欲しい食材がその辺で手に入る場所なのだ。
そして何より、あらゆるステータスは無意味、ギフトもスキルも無効化され、しかし調理に必要なものは、なんかそれっぽい掛け声をかければ調理台ごと湧いて出る。
全ての争いが料理の腕で解決するこの場所は、此処に生息するクッキングモンスターとの勝負のことを思えば……特訓が必要だというのは、当然の意見とも言えた。
そして幸いにも、此処には同じカフェ・ローレットに集まる翔波初心者……イレギュラーズの仲間がいる。
大丈夫、負けても死にはしない。
海老ぞりで天高く吹っ飛ばされるだけ……「あ、アイツ負けたな」と広く知られるだけの、そんな簡単なリスクしかないのだ。
そして……負けは此処では恥ではない。だからこそ、皆で勝ったり負けたりすればいいのだ。
- 再現性沖縄20XX:いわゆる特訓パートなわけでして完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年09月23日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●新田 寛治の策謀
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は、翔波を歩いていた。
今日この場に集まったイレギュラーズは、赤チームと青チームで競い腕を磨くために……ひいては、この再現性沖縄に慣れるために集まった者達。
しかし、寛治はそこでこう宣言した。
「私はチーム黒(一人)で。別に、全員倒してしまっても構わないのでしょう?」
勿論、そこには寛治なりの勝算というものがある。
再現性沖縄のルールであるギフトもスキルも無効化とあるが、料理に関係するものは例外と見るべきだ。
ならば、これから私が活用するスキルも全て「料理に使う」から問題ない……と、つまりはそういうことだ。
まずは《地元のダチコー》のコネで翔波の最高の料理人達を《散財》《袖の下》で買収し、自分の手足となる料理人として配下に付かせ、さらに食材の入手場所をよく知る者達も《地元のダチコー》で渡りを付け《袖の下》を使って味方に付け、《散財》で最高の食材を買い占める。この作戦が成功すれば、寛治の勝ちは動かないはずだ。
「最高の料理のために最高の食材を買い集めることの、どこに問題が?」
そう、まさに完璧な理論だ。何処に行っても寛治の作戦は最大の効果を発揮しただろう。
ただし……そう、ただし。
「お前の話は分かった」
「ええ、では」
「では早速料理で勝負だ!」
「は?」
「お前が勝ったらその買収の話、のってやろう!」
ただし……ここは沖縄なのだ。
たとえ説得が成功しようと、あらゆる全ては料理がまず大前提である。
そして、翔波最高の料理を食べた寛治が海老ぞりで大空を舞う。
ちなみにこの翔波、道を聞くのにもクッキングバトルが発生したりするので注意が必要である。
そして、何度目かの海老ぞり大空フライが発生していたその頃……『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)もまた、飛波入りしていた。
「再現性沖縄:翔波……うーむ、俺的には割と空気が合う気がするなぁ」
調味料を売って貰えないか交渉に来ていたのだが……職人達からの答えは「自分で採取しろ」だった。
此処では全てが手に入るが故に、調味料の見極めも自分でやらねばならない。
それこそが翔波だと言われてしまえば、ゴリョウも料理人として挑まざるを得ない。
「しかし……買占めがあった場合はどうする?」
「買占めか」
職人はゴリョウにニヤリと笑う。
「此処は外じゃねえ……沖縄なんだよ」
ゴリョウは自分の足元にニョキッと生えたコショウの草を見て……なんとなく、この場所の事が分かったような気がしていた。
●練習バトル、開催!
カフェ・ローレット前の砂浜にて、クッキングバトルに備えた特訓が始まろうとしていた。
まず青チームは『しましま』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)と『ミルキィマジック』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)、『Anonym Animus』観音打 至東(p3p008495)。
赤チームは『お料理しましょ』嶺渡・蘇芳(p3p000520)、ゴリョウ、『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)、『最高の一杯』御子神・天狐(p3p009798)。
黒チームは寛治……そして、何人かの料理人である。
「特訓して料理上手な女子になれば、カッコよくて逞しくてボクシングが得意な素敵な男性からプロポーズされちゃうかも?! きゃ~~♪」
言いながら砂浜を猛然と転がるココロだが、イメージが妙に具体的だ。誰かを想定しているのかもしれない。
まあ、その辺りは不明だが……蘇芳は、軽く首を傾げながら翔波の風景を眺めていた。
「何か、嫌ねぇー……。確かに、お料理に上手い下手はあるけど、もうちょっと楽しんでやるものじゃないかしらー? 大変な世界ねー……」
そう、人によってはそういう感情を抱くのは仕方ない。
しかし、人が集まれば争いが起こるのは必定。
そして料理以外に気を取られたくない料理馬鹿たちは、確かに存在するのだ。
「でも、色んな所に色んな食材があるのは面白いわねー♪ お高そうな食材はあまりなかったけど、普通の食材は豊富でいいわねー♪ 街行く皆に聞いて回ったら、色々教えたりくれたりしたわー♪ 調味料はほら、おばさん使い慣れたのがあるからー」
そしてなんだかんだで楽しんでいる辺り、沖縄に適応しているとも言えるだろう。
「――この観音打至東の料理哲学を、お並びの皆様にお教えしましょう。1に食材2に技術、3・4が道具で、残り90が愛情。すなわち! いっくら敵方が食材を買い占めよーが職人揃えよーが! この溢れんばかりの愛情さえあれば9割型問題ない(注:個人の感想です)のです! ついでに言うと道具もこの腰の村正一本あればいいとかそんな感じです! さあ、流れメイドとして特定多数の旦那様たちの舌を喜ばせてきたこの爛れた愛情に溺れろ再現性沖縄!」
集まってきたギャラリーにアピールする至東に拍手が注がれる。
なんだか寛治が暗躍したり空を舞ったりしていたせいか、何事かと人が集まってきたようである。
そして、やや遅れてやってくるのは……フラーゴラだ。
「ごめん、ちょっと直前までお肉狩ってて…! 使うならいっぱい……ひえっ!?」
波間に海藻みたいなツラして揺れている豚肉の塩漬けを見てフラーゴラが悲鳴をあげるが……その様子を見てミルキィがニヤリと笑う。
「ふっふっふ、ここ沖縄では素材を買うというのが通用するのはビギナーゴブリンレベルまでなのだ! 必要なのは野に溢れるコモン食材を美味しく仕上げる腕かレア食材を探し当てる嗅覚! そこんとこを沖縄ビギナーにしっかり教えてあげないとね!」
言いながらも、楽しいバトルになることを予測していた。
「それにしても……うわぁ♪ これはまた面白いメンバーがそろったね! これはいい訓練になりそうだよ☆ ゴリョウさん、今日は胸を借りさせてもらうからよろしくだよ!」
ゴリョウがサムズアップを返してきたのを確認すると、ミルキィは青チームに声をかける。
「それじゃあ青チームのみんなよろしくね! 黒チームの新田くんが怪しい動きをしてるみたいだけど、ここ再現性沖縄では普通の料理バトルの鉄則は通用しないと教えてあげちゃうよ!」
「それはどうでしょうね。料理はね、金とコネさえあれば最上の一皿が手に入るのですよ!」
「ぶはははっ! よし、そんじゃあやるか!」
そうして、叫ぶ。
「クッキングバトル、スタート!」
生えてくる料理台と調理器具。練習とはいえ、これはクッキングバトル。
そしてこの瞬間に至るまでに、ずっと気合をため込んでいた者もいる。
御子神・天狐。
西へ東へ神様とうどんを追い求める爆裂疾走狐巫女獣人ガールはついに、南へと来てしまった。
うどん。
そう、うどんだ。
小麦粉を練って長く切った、それなりの幅と太さを持つ麺。
うどん。
ああ、うどんなのだ。
遥かなる起源を持ち、歴史を積み重ねてきた料理。
だから、うどんである。
無限に近い派生を持ち、その全てを許容する、懐深き素材。
ならば、うどんしかない。
嫌いな人間を探す方が少ない、もはや神とすら呼べる食べ物。
分かるだろうか。
いいや、分かるはずだ。
全てはうどんから始まり、うどんへ帰るのだと。
その輝く色には、真理が潜んでいるのだと。
「料理とは何か! それは皆を笑顔にするもの也! 料理人とは何か! それは果て無き道を往く修行僧也! 至高の一品とは何か? それは『うどん』也!」
だからこそ、天狐は叫ぶ。
「うどんの起源は遥か過去、唐より渡ってきた『混沌』だと云う。であるならば。この『混沌世界』は言い換えれば『うどん世界』であり故に全ての祖はうどんであるのじゃ! うどんisGOD!」
なんということか、混沌とはすなわちうどんであり、うどんとは混沌であったらしい。
ならばイレギュラーズとはそれを彩るトッピングだろうか。
量を考えるに天かすかもしれない。入れたてはサクッと美味しく時間が立てば汁を吸って凄まじい旨味を蓄える。
そしてどれだけあってもうどんを引き立てる相乗効果しか生み出さない素晴らしい天かす。
うどんとの相性だって最高だ。いや、うどんが最高だから最高になるのだろうか?
この問題は、うどんの美味しさの謎くらいに解けやしないだろう。
そして天狐が作るのはきつねうどん。
原始にして至高たるうどんに油揚げを乗せた、究極メニュー。
「さぁ派手にいくのじゃ! これぞ、きつねうどんじゃ!」
「天狐さんのお出汁味見していい? わぁ、あっさりとしながらも奥深い味……透き通ったスープが熟練さを表してるね」
同じ赤チームのフラーゴラのそんな感想が示す通り、天狐の調理は順調だ。
そして黒チームたる寛治は……なんとか雇った料理人を使いながら沖縄料理を作っているようだった。
その様子を見ながら、ゴリョウは調理を手際よく進めていく。
「俺が作るのは『豚丼』だ! フラーゴラから分けてもらった豚肉をヤシの実の中に入ってた牛乳とその根元に生えてた舞茸をミキサーして漬けこみ、柔らかくする。それを職人達の調味料と、アスファルトから突き出て咲いてた花の根元にあった島ニンニクを使って甘辛く煮て、炊き立てのご飯に豪快に乗せる……!」
「ゴリョウさん手先から繰り出される繊細な作業……! この下ごしらえが今後の味を左右するのかな。絶妙な火加減でいい香り……」
解説者じみたことを言うフラーゴラだが、それはギャラリーに向けたアピールでもある。
そんなフラーゴラが作るのは肉料理だ。
「ワタシは肉尽くし料理! 『スパむすび』『ラフテー』『ミミガー』『ソーキそば』『ステーキ』を作りつつ後学のために味方の手順をお勉強……ってね!」
手を動かしながらも、フラーゴラの解説は止まらない。
「蘇芳さんの包丁さばき久々に見るなあ……! お肉やお魚の血合いや骨、非過食部分がどんどん取り除かれていく……わ、わ、飾り切りすごおい! キレイなお料理!」
そう、蘇芳もまた他のメンバーに劣らぬ凄まじい包丁さばきをみせている。
「ゴリョウくんは手広くやってくれそうだし、ご飯ものは強いわよねー。
天狐ちゃんも、色々やってくれそうねー。フラーゴラちゃんはお肉料理中心で作ってくれるのねー。じゃあ、どうしようかしらー……下処理しながら考えましょー♪」
言いながら、蘇芳は集めた食材の下拵えを進めていく。
「お野菜は洗って泥とかよく落としてー♪ お肉を使いやすい様に解体してー♪ お魚は水洗いして―♪(ふんふふーん♪) そうねー、お魚はこのまま姿造りにしちゃおうかしらー♪ 味もそうだけど、先ずは目から入るし、見た目も華やかにー♪ 沖縄なら、酢味噌と島唐辛子を潰して漬けたお醤油がいいわねー。シークワーサーもさっぱりしていいわねー♪ グルクンは骨が柔らかいのよねー。
切れ込み入れて味付けして、姿で唐揚げにしちゃいましょー♪ どうせなら、揚げ鍋二つ用意して、サーターアンダギーも作っちゃいましょー♪ お出汁取った昆布と削り節が勿体ないし、クーブイリチーを箸休めに作ってー♪」
おお、なんたることか。歌いながら料理が出来上がっていくその姿とその手際。まさに料理のプロと言わざるを得ない。
しかも……なんだろう、メニューの選択にママみがあるのは気のせいだろうか?
そして、青チームだって負けてはいない。
「わたしの得意料理はおはぎ。甘いもの作りは得意です。そして、作るのは流行に乗って、マリトッツォ!」
そう宣言するのはココロだ。
「先ずはパンから。南国には「パンの木」というパンが生ってる木があると聞いてます。できれば細長いパンを選びます。あと砂糖はその辺にありそうなサトウキビから得ましょう」
ちなみにだがパンの木だからと本気でパンが木になっているのもサトウキビから直で砂糖を得られるのも沖縄だけである。あしからず。
「他の食材は……海に求めます。決して泳ぐ理由が欲しかったからではありません決して。というわけで泳いでいた新鮮なクリームをゲットです。あとは……牛乳がでる魚っているのかな……? いえ、迷ったら負けです、攻めろおおぉぉ!」
ちなみに居た。その辺りで正気に返ったら負けである。
相手には男性が多い。シュークリームが好きな男性も多いからマリトッツォもうけそう……というのがココロの選択理由だ。
細長いパンを選んだのはかぶりつけてもクリームが零れないように。
縦に割いて生クリームをどさっと盛ると、実に美味しそうなマリトッツォが出来上がっていく。
「男を落とすには胃袋を落とせと言われてます。知性派の新田さんはもちろん、大柄で消費カロリーの高いゴリョウさんにも褒めてもらえるようにクリームは多くても甘さは控えめ!」
出来上がっていく自慢のマリトッツォを前に、ココロは心を燃やす。
「妹弟子のフラーゴラちゃんには負けないわ! 威厳を示す為にも!」
自分より料理の上手な人がたくさんいることはココロも分かっている。
「でも負ける気持ちは良くないです、勝つつもりでやってこそ特訓になるのですから…・・・!」
そして至東もまた他に負けない程の動きを見せている。
「さて、ブラジル相当の地域を出自とするしとーちゃんでも、沖縄ってのが島嶼の集まりってのは流石に知っておりますヨ。つまり船移動でいろいろ巡る探検隊ですね? わくわく。そして――見よ! あれこそは人跡未踏の森に生息するなんか野生で幻の豚肉的存在! これこそは文明を拒否する村の宝で秘蔵でともかく伝説的な古酒由来調味料! これらの食材を鑑みるに……戦に相応しい料理は決まったッ!」
決めポーズと共に至東は調理を進めていき……ミルキィも負けじと調理を行っていた。
「ボクの得意料理はスイーツ! だけど、ここから先の再現性沖縄で甘い物が苦手な敵が出てくるかもしれないからね! そういった敵と戦うときに備えて今回はスイーツ以外の料理……特にあえてゴリョウさんの得意ジャンルの米料理で勝負だよ!」
そう、ミルキィの青チームのライバルたる赤チームには強敵が多い。
「相手はゴリョウさんだけじゃなく蘇芳さんもいるからね、普通の素材と調理じゃあ押し負けるのは目に見えるね。ここはアッといわせるためにレアなタコを探し当ててタコミンチでのタコライスで勝負! このアレンジ吉とでるか凶と出るか!?」
そうして、全員の料理が出来上がる。
「さあ、相手チームはどんな料理を作ってきたのかな? 新田くんの料理も辛そうだけど美味しそうだし楽しみだね! いざ勝負!」
そうして全員に出されるのは黒チームたる寛治のコーレグース。
「この沖縄名産の調味料、泡盛に島唐辛子を漬け込んだコーレーグースーたっぷりの料理を食べた後では、そちらの料理の味を感じることなどできませんよ! ハーッハーッハ」
なんたる事か、先んじて料理を出し味覚を鈍らせることで相対的に有利を得る作戦だ!
だが……それをガツガツと完食すると、ゴリョウは自分の料理を寛治の前に置く。
それは……豚丼だ。
「シンプルだろ? だがこの香りはダイレクトに食欲を刺激する! 例え味覚が麻痺してても嗅覚までは誤魔化せねぇ! 加えて牛乳や豚の脂の効果で口の中に残ってた痺れが抑えられ味覚は戻る! 戻るんだよ、この翔波ならな!」
そう、翔波ならそれが出来る。何処よりも上質な材料が手に入る、この翔波ならば。
「特に『働く大人』ならこれは『仕事終わりにどの店も開いてない時に食うことが出来た食の記憶』として、絶対に一度は味わったことがあるはずだ! そんな過去の記憶に嘘は付けねぇはずだ! そうだろ、新田ぁ!」
そして……豚丼を静かに完食した寛治は、思う。
蘇るのは、若き日、料理店のプロデュースの記憶。
料理が旨ければ、真心が伝わればいい、そういうったクライアントはライバル店の宣伝と営業に押しつぶされた。
心だけでは、料理だけでは、この現代社会は勝ち抜けないのだ……!
そう、気付きを得たというのに。
「ああ……これが、『心』か……」
波打ち際……誰もがそこに断崖絶壁を幻視したが、そこは波打ち際だ……。
「ゆめ忘れるな…心だけでは駄目なのです。料理が正しく評価される環境を、自ら拓くのだ!」
そうして寛治は断崖絶壁に落ちていく。
あくまでイメージ的な問題であって実際には波打ち際で倒れてカニが頭に乗っているが、それはさておき。
「――味の濃い料理が続き、皆様、舌がお疲れでしょう。滋養に溢れ消化にも良い、薬膳の粥など、どうぞ召し上がれ。そして……ええ、願わくば、今後とも健啖、すこやかな人生を送られることを。あ、黒チームと赤チームはお帰りの前に敗北だけ認めていってくださいましね?」
「くっ、美味しい……! うあああああ!」
そう、至東が用意したのは薬膳粥。ゴリョウ同様に癒しをテーマにした料理はフラーゴラを海老ぞりで空高く吹っ飛ばす。
しかし、赤チームも負けてはいない。
「こ、これは……このうどんは! 沖縄適性が高すぎる……ああああああああああああ!」
なんと沖縄にこの中では誰よりも慣れているはずのミルキィが、天狐のきつねうどんを食べて、何故か服がビリビリに敗れながら空高く海老ぞりで吹っ飛んでいく。
うどんの事しか考えていないシンプルかつ複雑なうどん愛が、沖縄で昇華されたのだろうか?
その実力は、沖縄で……翔波で、充分以上に通じるものだったのだ。
そうして結果的に赤チームと青チームは引き分けになったが……寛治が全員の料理を食べさせられて連続で空高く吹っ飛ぶ姿はある意味で、沖縄の洗礼ではあっただろうか? そうしてクッキングバトルが終われば、後は試食会だ。
「うふふー♪ 作るのも楽しいけど、こうやって皆で食べるのも楽しいわねー♪ ご飯があって、お肉にお魚、お野菜のお料理が揃って……ああ、満たされるわー……♪ お酒もどんどん進むわー♪」
言いながら、蘇芳は寛治へと料理を薦めていく。
「寛治くん、食べられてるかしらー? はい、あーん♪ ふふっ、遠慮しなくていいのよー♪」
料理は気合と愛情、そして腕。
他の全ては此処では必要ない。
きっと、それが……再現性沖縄<アデプト・オキナワ>、翔波を楽しむコツなのだろう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
私に何ぶん投げても大丈夫だと思ってるでしょう!
イレギュラーズの人っていつもそうですよね!
天野のことなんだと思ってるんですか!?
……というわけで、ゲラゲラ笑いながら書いてました。
皆さんのリミッターが外れてて楽しかったです。
もっとリミッター外してもいいんですよ?
GMコメント
料理人の皆様、再現性沖縄<アデプト・オキナワ>へようこそ。
え? イレギュラーズ? そんな肩書此処じゃ牛脂1つ分の価値もありゃしないぜ!
そんな感じです。
さて、今回はミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)さんのアフターアクションに伴うシナリオです。
なんと特訓パートです!
4VS4、赤チームと青チームに分かれて料理で殴り合いましょう!
お互いに料理を食べあって、より美味しい料理を作った方が勝利です。
無論、腕も食材選びも互角でも何らかの僅かな差が勝負に影響したりするでしょう。
どっちが勝ってもおかしくないグルメバトル、この勝負に無敵モードも最強も存在しません!
なので安心して吹っ飛べばいいと思います。
●翔波
再現性沖縄20XXに存在する料理バトルの街。
何かあれば料理で解決する料理馬鹿の聖域。
ローレットのイレギュラーズの皆さんは料理人として参入することができます。
此処では全てのステータスは無意味です。武器は振ってもハリセン程にも通じず、ギフトもスキルも無効化されてしまいます。
ただし、相手より美味い料理を作れば大ダメージを与えて海老ぞりで大空に吹っ飛ばすことができます。
相手の料理の方が美味ければ自分がそうなるってことですよ。
なお、必要な食材や調味料は「基本的」にはその辺に生えています。
豚肉の木とか砂糖の実とかあります。超怖ぇ。
幻の食材と言われる類のものは特殊な場所、あるいは状況でしか存在しなかったりします。
(逆転が必要なシーンで偶然見つかったりするかもしれません)
●情報精度
このシナリオの情報精度はRです。
料理には常に想定外が付きまといます。
プライドなんてミキサーにかけて飲んでしまいましょう。
ハヴァナイスデイ。
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