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シナリオ詳細

勇者進水GC:襲来、メガロビアの真実!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●再会
 海の上、三隻の船が横並びになっていた。
 船の間にかけられた橋を伝い、ひとりの男が青いクルーザーへと降り立つ。
 海洋貴族も使うという一流スーツブランドによって仕立てられた防水紳士服の上にコートを羽織り、ペンギンめいた手袋をはめた男。鋭い目を眼鏡の奥にひそめながら、スッと人差し指でブリッジ部分を押す。
「久しぶりだな。グッドクルーザー」
 ジョージ・キングマン(p3p007332)は眼鏡の反射を透かし、穏やかな目で微笑む。
 彼の差し出した右手を、青い人型ロボットの手が掴んだ。
「はい、希望の戦士ジョージ! お元気でしたか?」
「見ての通りだ」
 グッドクルーザー (p3n000117)と握手を交わしながらも、ジョージは肩をすくめる。
 そして顎を動かして後ろを示した。
 ジョージがのってきた巨大ペンギン型船舶には多くのクルーが乗り、そしてキッチリと整列している。
 彼らは揃いのスーツを着て、胸にはピンバッジをつけていた。海運貿易で有名なキングマンズポート商会のものであり、船舶と帆についたエンブレムもたそうだ。
 海洋王国社会に詳しい者なら、彼らが海洋マフィアキングマンファミリーのもつ表の顔であることが分かるだろう。
 絶望の青が開拓され、海賊連合が解体された今、彼らの商売は裏にも表にも広がっているはずだ。その功績を最も称えられたローレット・イレギュラーズを頂く組織であればなおのこと。
「久しぶりといえば、そっちも……」
 頭を傾けグッドクルーザー越しにその後ろを見たジョージ。
 グッドクルーザーもまた振り返ると、そこには仮面の暗黒騎士が立っていた。
 この国でしつらえた重鎧のようだが、ベルトには特徴的でかなりごついバックルがついている。鎧も装備品というよりそういう衣装であるかのように、彼は振る舞っていた。表情の一切が見えないにも関わらず、僅かな首の動きや身体の動きで感情を表現してくるのだ。
 そして今彼が浮かべているのは、喜びの感情だ。
「ああ、一足早いサマーバケーションから帰ったところさ。つい最近な」
 動きづらそうな鎧にもかかわらず、器用に肩をすくめて手をかざすアメリカンな仕草をしてみせる耀 英司(p3p009524)。
 彼の後ろに停泊しているのは装甲船舶ステルスクルー。まるで巨人がかぶる兜のような船首が特徴の、漆黒の船だ。この船がグッドクルーザーとの最終希望合体を意図して設計されていることを、ジョージはその筋から聞いている。
 『つまり、お仲間ってわけか』とジョージは考える。
「で? 俺をこんな大海原のど真ん中に呼んだ理由は? そこのハンサムな皇帝ペンギンとスクーバダイビングでも楽しもうって?」
 英司が冗談めかして言うと、グッドクルーザーはかすかに笑った。
「それも楽しそうですが」
 スッと真剣な表情にかえ、グッドクルーザーは二人の顔を見た。
「戦士ジョージ、戦士英司。お二人の力を貸りたいのです」

●勇者の遺跡(コン=モスカ)
 少しだけ日を遡る。
 それは静寂の青の入り口にあたるコン=モスカ周辺海域。その海底に見つかったという古代遺跡を探索した際のこと。
 グッドクルーザーの胸にあるエンブレムと全く同じ、であるにも関わらず両腕を伸ばすほどの大きさをもちゆっくりと宙に浮かぶ物体を発見した。
 祝福の力によって起動したそれは、正面のクリスタルから光を放ち、立体映像を作り出したのだった。

『これを見ている頃、私はもう滅んでいる頃だろう』
 そう語ったのは、立体映像のグッドクルーザーだった。
 いや、彼のカラーリングを黒白にした色違いと言うべきだろうか。これまで黒い同系秘宝種たちを何体か発見してきたが彼らは皆造形が少しずつ違っていた。だから今回はハッキリと、『黒いグッドクルーザー』と言うべき存在だった。
 それになにより、彼の声がグッドクルーザーのそれだったのだ。
『私の名はグッドクルーザー。青き海の守護者。
 いや……守護者だった、というべきだろう』
 悲しげに目を伏せた。もうそう名乗る資格はないというように。
『私達は敗北した。この海を統べる、巨大かつ恐ろしい存在に。
 すべての生き物は滅び、歪み、生態系は破壊された。
 海はこの先永遠に断絶され、この先にあるという島々を閉ざすだろう。
 そしてこの海の中に取り残された我々も、滅び行く運命にある』
 沈黙が、少しの間流れた。
 黒いグッドクルーザーは顔を上げる。
『だが、黙って滅びるわけにはいかない。
 私達は未来に……はるか未来に、希望を残さなくてはならない。
 これより我らメガロビア・クルーザーシリーズは全機コアを停止し、再生信号を受けるまでただの鉄屑として眠りにつく。
 目覚めたその時、魔に反旗を翻した者たちの力となれるように。
 プロトコルは「正義」と名付けた。そして作戦名は――「希望」!』
 ハッ、とそれを見ていた現代のグッドクルーザーは口を開いた。
 彼がペンドラゴン一族の遺跡から目覚めた時の言葉を思い出したからだ。
 ――勇気システム起動、正義プロトコル実行開始、作戦名……希望!
『我々は、人類を守るための剣であり、魔を祓うための剣だ。未来の私よ。未来の人類を、頼む』
 僅かな回想から引き戻したのは、黒いグッドクルーザーの言葉だった。
 強い使命感があふれ出す。
 だが、同時に……。
「メガロビア・クルーザーシリーズ……彼らは、当機の、仲間……?」

●そしてもう一つの再会
「つまり、その『黒い神艦』って連中は元々お前の仲間で、一緒に自分たちを封印したってわけか」
 英司は自分が離れていた間の戦いの様子を聞いている。
 グッドクルーザーのことを知っている様子の同系秘宝種『黒い神艦』たちはメガロビアという集団に属し、彼らは『人類の抹殺』を目標として海洋王国の島々を襲撃して回っているということを。
「だったら話がおかしいぜ。連中、人類を守るのが役目の筈だろ? なんで抹殺なんてことになる。まるで逆――」
 そこまで言って、英司はパッと口元に手を当てた。仮面と籠手のせいでガンッという音がなる。
「『反転』……魔種か!」
「戦力からして全員がそうというわけじゃないだろう。メガロビアの本来あるべき『コード』を歪めた存在がいる。魔種による『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』を受けて狂気に支配されたと見るほうが妥当だ」
 こっくりと頷くグッドクルーザー。
「魔種との戦いにおいて、ローレット・イレギュラーズである皆さんはエキスパート。力を、貸してくれますか」
 フッと、ジョージと英司が笑みを浮かべた。
 だがその返事がくる前に――。

「グッドクルーザー! 探したぜぇ!?」
 三台の黒い潜水艇が一斉に海上へと飛び出した。

●救助要請
 海上にて会談を行っていたグッドクルーザー、耀 英司、ジョージ・キングマン。
 追っ手による監視や盗聴をさけるべく大海原のまんなかを選んだ彼らだったが、そのことを嗅ぎつけたメガロビアの『黒い神艦』たちに発見、襲撃されてるという事態に陥った。
 ローレットはこのことをいち早く察知し、優秀なるイレギュラーズたちを派遣したのだ。
 観測されているのは三隻の船。
 そこから姿を現したのはグッドクルーザーと同系秘宝種。
 ――ノワールクルーザー
 ――ブラッククルーザー
 ――シュバルツクルーザー
 である。
 更に彼らの配下にあるアンデッド化したロボット秘宝種たちが次々に出撃し、取り囲もうとしているという。
 知らせを受けたイレギュラーズたちは船を走らせ、グッドクルーザーたちとの合流を目指すのだった!

GMコメント

●オーダー
 海上で襲撃を受けたローレット・イレギュラーズの仲間グッドクルーザー。
 彼らを救うべく出撃したイレギュラーズたちは、海上に集結していた三機の船舶モチーフモデルの秘宝種『黒い神艦』たちとの戦闘へと突入する。
 彼らを倒し、仲間を救い出すのだ!

※このため相談はちょっとメタ視点になりますが、それも含めて状況をお楽しみください。

●フィールド
 海上です。皆なにかしらの船にのって現場へ訪れています。
 自前の船がある場合、後述の理由でとっても楽しめるのでぜひお持ちよりください。
 ちなみに初期配置は定まっていません。包囲されてるといえばされてる、程度の状況ですのですぐに合流できるでしょう。

●バトル
 まずはアンデッド化した秘宝種軍団との戦いになります。
 自爆能力をもつ『デトネイター』、水上バイクによる機動力をもつ『スパイカー』、アンコウ型のボディと高い魔法攻撃力をもつ『トーチャー』の三種が出撃しています。
 彼らはすべて一度死亡し、アンデッド化しています。コアが意志をもたずボディだけが稼働する存在。UD秘宝種と略される存在たちです。
 敵は多く窮地に見えますが……うつむく必要はありません。ローレット・イレギュラーズという絆に結ばれた皆さんには、『深層希望合体』があります。
 後述する深層希望合体を使い、一気に敵を撃退しましょう!

●『黒い神艦(クルーザーシリーズ)』
 今回は三体の黒い神艦が出現し、UD秘宝種を蹴散らしたこちらに一斉攻撃を仕掛けてきます。
 彼らは古代兵器と合体し、『大神艦』となって襲いかかるでしょう。
 ですが、こちらには希望と勇気と友情の『最終希望合体』があります。
 彼らの猛攻をはねのけるのです!

・ノワールクルーザー
 巨大十字手裏剣などを装備した忍者風の神艦。スピードの速さで翻弄する。

・ブラッククルーザー
 モーニングハンマーやバズーカ砲を装備した戦士風の神艦。近接戦闘火力に優れる。

・シュバルツクルーザー
 黒い球体を周囲に浮遊させマントを羽織った魔術師風の神艦。広域魔術やBS付与に優れる。

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●深層希望合体(ディープパンドラフュージョン)
 希望の戦士イレギュラーズと使命の勇者グッドクルーザーが心を通わせることで発動する力です。
 このシナリオ中、ないしはシナリオ以前にグッドクルーザーと仲良くなっておくと、大型ロボットビッグクルーザーDの核として合体することができます。
 その際名称が『ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・〇〇(PC名)』となり、戦闘スタイルも核としたPCを反映したものになります。
 システム的には1ターン限定の超強化状態と考えてください。ここぞという必殺技や超防御、超回復、敵の群れを大量に殲滅する時など見せ場を引き寄せましょう。

・潜水艇ホエールクルーザー
 グッドクルーザー専用の潜水艇です。
 これとグッドクルーザーが合体することで大型ロボット『ビッグクルーザーD(ディープ)』となります。いわゆる水中行動仕様の本気モードです。

●最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)
 希望の戦士イレギュラーズから勇気と正義を教わり真の勇者へと覚醒したグッドクルーザーにアンロックされた秘められし力です。
 イレギュラーズたちが己の勇気や正義を示すことで発動します。
 古代船ブルークルーザーの他、イレギュラーズたちが持ち寄った小型船たちを変形合体させることでごくわずかな時間だけ巨大ロボット『ファイナルビッグクルーザー』へと変身できます。
 このときの彼は内部に乗り込んだイレギュラーズたちの戦闘スタイルを反映させた合体攻撃が可能となります。
 冠位魔種すら退けた希望の戦士たちが力をひとつにしたならば、きっとどんな敵も必ずや討ち滅ぼすことができるでしょう。

・古代船ブルークルーザー
 グッドクルーザー専用の小型船です。これとグッドクルーザーが合体することで大型ロボット『ビッグクルーザー』となります。いわゆる本気モードです。

  • 勇者進水GC:襲来、メガロビアの真実!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
リサ・ディーラング(p3p008016)
蒸気迫撃
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
耀 英司(p3p009524)
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官

リプレイ

●GC勇者アッセンブル
「オイオイオイ、クルーザーロボのホームパーティーがあったとは聞いてねえぞ!?」
 『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)は急いで自分の船『ステルスクルー』の舵を取ると、飛来するミサイルを回避すべくエンジンをかけた。
 黒光りした船体がスクリュー推進によって走り出し、ギリギリでミサイルを回避する。
 背後で起こる爆発に、デッキにいたグッドクルーザー (p3n000117)は思わず身をかがめた。
「当機も初耳です。応戦しなければ……クルーズキャノン!」
 背部に折りたたまれた大砲を展開すると、グッドクルーザーは揺れるデッキの上から魔力光線を砲撃。しかしそれは巨大十字手裏剣を回転させたノワールクルーザーによって防がれてしまった。
 顔を左右非対称に歪めるノワールクルーザー。
「クソ真面目な砲撃だなあGCィ。寝ながらでも避けられるぜェ」
「やっぱり人間にかぶれて弱くなったなグッド。それがオマエの限界だ!」
 ブラッククルーザーはギラリと目を光らせ武装を展開。
 バズーカ砲による射撃でステルスクルーは更に大きく揺れた。
 シュバルツクルーザーがどこか神秘的な動きで両手を掲げると、黒い球体のそれぞれから魔術光線を発射し始める。
「グッドクルーザーの友を名乗る者よ。貴様も友に、深海へと沈みゆくがいい」
「友ねえ……俺は別に、アンタらの考え方は否定しねぇよ。
 ただ兵器のようにあるヤツがいてもいい。
 ただぶっ壊すことが好きなヤツがいてもいい。
 貴族や海賊や、人間が大嫌いでもいいさ。
 生まれた命のありようを、ぶつけ合いこそすれ、誰にも否定する権利はねぇ」
 舵を取り、ステルスクルーをターンさせる英司。逃げようとしない彼の動きに、シュバルツクルーザーは目の光を細めた。
「だがよ、楽しそうじゃねーよなぁ」
「何だと……?」
 身構えるシュバルツクルーザー。しかしそれを阻むようにノワールクルーザーが大きく声をあげた。
「接近警報! この反応は……敵だぜオイ! 早すぎねえか!?」
 彼らが振り返った先。
 『特異運命座標』ムサシ・セルブライト(p3p010126)の乗る『シェリフ級ブースト』がジェットブースターから火を噴きながら猛スピードで突っ込んでくるところだった。
「グッドクルーザーさん! 助けに来たであります!」
「運転よろしくぅ」
 片手をにぎにぎする動きで呟いた『狼殺し』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)は船の手すりに足をかけ、身を乗り出すような姿勢で二丁拳銃を抜いた。
「自我蜂、ゴー」
 後ろで開いたアタッシュケースより無数の攻撃ドローンが飛び出し、リコリスのヘッドギアを介した操作によってノワールクルーザーへと一斉射撃を開始。
「話は聞かせて貰ったよ。同族のみんなと戦うのは辛いよね、ボクにはわかるよ……グッドクルーザーさん、ボク達も一緒になんとかしてあげる!
 任せて! あっ、クッキーたべる?」
「クッキーはあとでいいであります!」
 ムサシはレバーを操作しジェットブースターをきると、勢いをそのままにスクリュー動力へとシフト。水上バイクの上から射撃をしかけてくるUD秘宝種『スパイカー』たちの攻撃をよけるべく激しい蛇行運転を始めた。
「グッドクルーザーさん、希望を捨てては駄目でありますよ!
 彼等はきっと戻ってくれる……自分はそう信じているであります! そのためにも! 全力で立ち向かうのが先決であります!」
「誰が戻るだってェ? 意味分かんねーこと言ってんじゃねえ! たかだか一隻船が増えただけでよォ!」
 ノワールクルーザーの放つ巨大手裏剣。
 ムサシは腰から拳銃を取り出すと、手裏剣めがけて連射。
 数発の着弾によって軌道のズレた手裏剣がムサシをかすめて飛んでいく。
「意味はそのうちわかるであります。それに……一隻だけではないでありますよ」
 不敵に笑うムサシ。
 ノワールクルーザーははっとして別方向へと視線を向けた。
「救援宅配お待ち! みんな、無事か?」
 猛烈なスピードで走ってくるのは『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)の操作する『コメットクルーザー』。大小多くのスラスターによって加速した船である。
「ちっ! 『デトネイター』、鉄屑に変えてやれ!」
 ブラッククルーザーが叫ぶと、背で危険な光の点滅を始めたデトネイターたちが風牙の船へと集合。
 次々に張り付いて大爆発を起こす――が。
 爆発の中から現れたのは破壊された船でも炎に包まれ苦しむ風牙でもない。
「「ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・風牙!!」」
 咄嗟に飛び込み深層希望合体を果たしたグッドクルーザーと風牙であった。
 手をかざし、白と黒そして金色でできた槍型の武器を出現させるとそれを振り回す。暴風が巻き起こり残りのデトネイターたちが吹き飛ばされていった。
「心を捻じ曲げられ、本来護りたかったものを傷つけさせられる。酷い話だ。
 行こうみんな。オレたちの『仲間』を取り戻そう!」
「そういうことだ。殺さずに叩いていこう。斜め45度ぐらいでチョップすればいいかもしれないしな!」
 そこへ現れたのはかの有名な『紅鷹丸』。『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)の船だ。風をよみ高く飛び立ったカイトは、分離したグッドクルーザーへと急速なターンをかけて飛び込んでいく。
「俺らの希望は音よりも、光よりも早い!」
 合体の光に包まれ、グッドクルーザーは呼び出したディープクルーザーと共にパーツを分解。カイトのボディを包み込むようなパワードスーツとなると、カラーリングを赤く変更させた。
「「ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・カイト!!」」
 バッと広げた機械の翼。風牙がおこしたばかりの暴風を操り纏った彼は、パスされた槍を三叉蒼槍へと変化変形させ投擲した。
「ぐうっ!?」
 バズーカ砲を水平にかざして防御するブラッククルーザー。
 だがあまりの威力に吹き飛ばされ、自らの船から転落した。
「これが深層希望合体……やはり捨て置けぬ。ここで沈め、グッドクルーザー!」
 黒い球体を集合させ激しい魔力光線を放つシュバルツクルーザー。
「――龍樹大鱗甲 アクティベート!」
 しかしそこへ、『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)がその巨大な『龍樹大鱗甲』を割り込ませることで無理矢理防御。操縦席に両腕を突っ込むような姿勢をとったフリークライが両目を光らせる。
「ン。グッディ。カツテノ君ト仲間達ヘ 示ソウ。
 君達 信ジ残シタ 希望ヲ」
 そこへアンコウ型のボディをもつUD秘宝種『トーチャー』たちが扇状に展開し、全員が一斉に魔法攻撃を開始した。
 黒い魔力光線が風牙やカイトたちに集中する中、フリークライは顔を上げる。
「グッディ」
「はい、希望の戦士フリック!」
 空中で分離し飛び降りてきたグッドクルーザーと深層希望合体し、巨大なフリークライを思わせるボディへと変化した。
「「ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・フリークライ!!」」
 広げた両腕。背や両肩より生い茂る樹木が癒やしの結界を広く展開し、傷ついた仲間の船や既にボロボロになりかけていた英司たちを治癒していく。
 そこへ到着したのは『スチームメカニック』リサ・ディーラング(p3p008016)の魔導蒸気機関船『タービン』。
 デッキに取り付けた魔導蒸気機関搭載巨大火砲『Final Heaven』が回頭し、シュバルツクルーザーへと猛烈な牽制射撃を開始した。
「今まで戦ってきた彼らもグッドクルーザーさんと同じ意志を持っていたんす。
 であればまた元通りに戻してあげなくちゃっすよ! 何が狂気だ、勇気と希望は負けねぇっすよ! ですよねコンモス先輩!」
「だれがコンモス先輩じゃ!」
 同じく到着した『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)の船。水色と白でカラーリングされたイルカを思わせる船体にはコン=モスカの紋章が堂々と輝いていた。
「しかし、お主が言うから持ってきたが、わざわざ一人一船持ってくる意味はあったのか? 全員で乗ってくれば……」
「あとで分かるっす!」
「勿体ぶるのう」
 クレマァダは片方の肩だけすくめると腕のソング・オブ・カタラァナを操作して『夢見る呼び声』の音楽を発動させた。
 展開していたトーチャーたちがたちまち狂い、同士討ちを始める。
 それを振り切り反撃に出ようとしたトーチャーたちに――。
「「ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・クレマァダ!!」」
 合体したクレマァダが両拳を突き出すフォームをとると同時に波が高まり、増幅された波濤魔術が弾幕となってトーチャーたちを破壊していく。
「リサ、あとは任せるぞ」
「了解っす!」
 素早く分離したクレマァダと交代し、飛び上がるリサ。
「「ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・リサ!!」」
 全身スチームライクなカラーにかわるボディ。『Final Heaven』を更に大幅拡張したような武装を一斉展開し、シュバルツクルーザーめがけて一斉発射した。
「ぐおお……!」
 魔術障壁を展開して耐えるシュバルツクルーザー。
 だがそこへ――。
「なぜ怒る。なぜ苦しむ。なぜ恨む。羨ましいからだ。本当はそうなりたかったからだ」
 ステルスクルーの上に立つ、英司が叫んだ。
「腑抜けてんじゃねぇ!
 何の為に生まれてきた! テメェで決めろ!
 できねぇなら、助けてって言いやがれ! アンタ等は一機じゃなかった!
 俺達はここに来た! 壊す? 違ぇ。連れ戻す? 違ぇ、違ぇ!
 共に進むためだ! 勇気を出せ。希望を見失うな。信じる正義を思い出せ!」
 高く跳躍した彼を、分離したグッドクルーザーが包み込む。
「「ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・英司!!」」
 出現した巨大な剣を円月のように回し、光の軌跡を描く。
「ここが夜明けだぜ、悪夢はもういらねぇ。目ぇ覚ましやがれ!」
 スラスター噴射による突撃で、シュバルツクルーザーへと強烈な横一文字斬りを繰り出した。
 破壊される魔術障壁。
 爆発を起こし、海へと転落するシュバルツクルーザー。
 分離したグッドクルーザーと英司は船のデッキへと着地して拳をグッと打ち合わせた。
「『やったか?』……て行っておくぜ」
 振り返ると、それは現れた。
「「まだだ!!」」
 複数の古代兵器と自らを合体させ完成した黒き巨人が海面を突き破って現れた。
「「逢魔絶望廃滅合体――ノワールブラックシュバルツ!!」」
 こいつら本当に合体しやがったと呟く風牙。
 そんな彼らに黒い弾幕が降り注ぐ。一発ずつが船を転覆させかねないような威力をもった魔術弾だ。
 しかし……。
「聞こえているか、黒いクルーザーたち! オレたちは世界を、そこに生きる人々を護るために戦ってる!
 お前たちも、かつては同じ想いを胸に戦っていたはずだ! 思い出せ、かつての自分を!」
「お前らのかつて抱えていた使命は、思いは、希望はその程度か!コードに負けるな、自分で考えろ!」
 風牙とカイトが声をあげると、グッドクルーザーの胸のエンブレムが輝きはじめた。
「反転だか狂気だか正直てめぇらがどうなっているかは知らねぇっす。だけど、てめぇらがそんな身を窶す事になるレベルで頑張ったって事は分かったっす。
 だからてめぇらに最っ高のモノを教えてやる!諦めの悪いだろうが馬鹿だろうが何だろうが、とくと見ておけ!」
「あ奴らのコアはまだ存命……それに、原罪の呼び声は未だ発しておらぬ。
 救う手立てがあるのならば、一縷の望みでもそれにかけようぞ。
 低い成功率の残りは、勇気で補うのじゃ!」
 リサとクレマァダも加わり、輝きは更に増す。
「人間 強ケレバ 死ナナカッタ。
 自分 強ケレバ 負ケナカッタ。
 ダカラ 弱イ 憎ンダ。強イ 願ッタ。
 心無イ兵器ナラ 悲シマナイデ済ム 思ッタ。
 誰ヨリモ。世界。正義 信ジタカッタ」
「「――!?」」
 フリークライの言葉に、ノワールブラックシュバルツがびくりと表情をうごかした。
 ムサシの船の上で、リコリスが振り返る。
「そんじゃ、早速いってみようか!」
「はい!」
 うなずき合い、英司もまた手をかざした。
「「「「最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)!!」」」」

●ぼくらはヒーローをいつ諦めた?
 皆の船が飛び上がり、元々そんな機能を持ってもいないはずのクレマァダの船までもが複雑に分離し変形しはじめる。困惑するクレマァダをよそに、
 胴体部分はフリークライの龍樹大鱗甲。
 腰部分は風牙のコメットクルーザー。
 左右二つに割れるムサシのシェリフ級ブースト。内部に格納されていた大型マニピュレーターがせり出し胴体へと接続された。
 内部を一本の太い柱が通り、挟み込むような形で固定。
 リサの魔導蒸気機関船『タービン』も同じく左右に分かれ、武装を外した状態で腰部へと合体。
 カイトの『紅鷹丸』が巨大なバックパックとなって装着されると、翼を広げ巨体で空へと飛び上がる。
 クレマァダの船が頭の形に変形し合体。そこへ専用の機能を解放させた英司のステルスクルーが兜となって装着されると、クロスした腕でギュッと拳を握りしめた。
 腕と手を開いたと同時に船体装甲が展開。マスクをした顔めいたパーツが露わとなる。
 大型のライフルと剣をそれぞれ握り、同じくらいに巨大なノワールブラックシュバルツへと身構えた。
「「完成、ファイナルビッグクルーザー!」」
「みんな起きて〜! 新しい朝が来るよ! 希望の朝だよっ! 起きないと反転しちゃうよっ!てえてえっ!!」
 早速動いたのはリコリスとムサシ。
「グッドクルーザーさん! 希望の力、お借りします!」
 集合コックピット内でリング状のアイテムを取り出しカードを通すと、ムサシの目の前にある操作レバーから光が放たれた。
 出現した巨大な二丁拳銃。自動拳銃とリボルバー拳銃の二つを握ると、ビームと弾丸を同時に撃ちまくった。
 更に巨大な魔導蒸気機関搭載巨大火砲を合体させたライフルからも連射。
 ノワールブラックシュバルツは対抗して黒い弾幕を放ち、その二つは間で相殺された。
「まだまだっす! フリークライさん防御を!」
「ン」
 結界を展開したファイナルビッグクルーザーは翼からのジェット噴射で突撃。巨大な剣を槍の形に変えると、咄嗟に巨大な銛を作り出したノワールブラックシュバルツとつばぜり合いを起こす。
「お前らのかつて抱えていた使命は、思いは、希望はその程度か!コードに負けるな、自分で考えろ!」
「そして思い出せ! お前たちがかつて護ろうとしたものを! 共に戦った者たちを! その温かさを!!」
 カイトと風牙の叫びが力になったかのように相手の銛を打ち払うと、クレマァダの波濤魔術が発動。大量の誘導魔道ミサイルが回り込んで接近するがそのすべての位置を感知し、回避と迎撃を成功させた。
 そして、武器を巨大な剣へと変える。
「想いを届けよ、グッドクルーザー!」
「行こうぜ。アイツラが、本当に欲しかった再生信号を渡しに」
「再生信号? それは――」
 コックピットの中で、英司が自分の胸に親指をあてた。
「俺たちの胸の中にある、とびきりのヤツをよ」
「……はい!」
 ファイナルビッグクルーザーの強烈な横一文字斬りがノワールブラックシュバルツを切り裂いていく。
 背を向けたその後ろで、大爆発を起こした。

●君を救いに来たんだ
 海へと沈む三機の秘宝種。
(俺は、強さが欲しかった――それは何故)
(オレは、ダチを守りたかった――それは何故)
(当機は、使命を果たしたかった――それは何故)
 点滅しきえゆく目の光。
 思わずかざした手は何も掴むことなく沈む……ことは、ない。
 がしりと、鋼の手がそれを掴んだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――ToBeContinued

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