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シナリオ詳細

超電磁改造VDMランド~私達の戦いはこれからだ!~

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 VDMランド壊滅す――
 某ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)が連れてきた格安施工業者による工事はVDMランドの各アトラクションをとんでもない事にしてしまっていたのだ。具体的には沈むとらぁ君ボート。超高速回転メリーゴーランド。空中分解するジェットコースター……
 危なかった。これがプレオープンではなくグランドオープンだったらどんな被害が一般人に出ていた事か。まぁその時のプレオープンに参加した面々は酷い事になったのですが、まぁ、それは、その。どうせマリ屋のメンバーだし良いとして。
「ひ、ひぇー! おおおおおお助けー!
 ヴァレーリヤさんどうして! あんなにお酒を渡したのに!」
「おほほほほ! 何の話ですの――このヴァレーリヤ、天地神明に誓ってお酒に魂を売ったりなんてしていませんわ! ね、マリィ!!」
「うんうん! そうだねヴァリューシャ! ヴァリューシャはいつだって素敵だよ!」
 とにかく。実際に受けた被害云々はともかく――施工業者には一度ちゃんと再施工させねばならぬと、ヴァレーリヤはマリア・レイシス (p3p006685)らと共に施工業者たちを強制連行してきていた。なおヴァレーリヤが施工業者から渡されていたお酒の数々は小金井・正純 (p3p008000)達によって没収済みです。ぴえん。
「はぁ……とにかく。あんなのではとてもオープンなんて出来ませんからね」
「しゃあ、分かってんでしょうねぇオイ! 次手抜きしてみなさいよ報酬は鉛玉よ!」
 頭を抱える正純。脳裏に過る以前の記憶――コルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)にとっても大惨事だったのだ。思わず時々フラッシュバックしそうになる事もあるようなないような。
 まぁとにかくお前らの眼でお前らの仕事を確かめろと。
 再び訪れるVDMランド――なのだが。
「……ん、あれ? なんか直ってません?」
「ホントね……アレ、どういう事……?」
 すずな (p3p005307)とタイム (p3p007854)が気付いた。
 VDMランドで壊れに壊れた筈のアトラクションが――直っている――?
 おかしい。空を飛んだはずのジェットコースターは綺麗に線路に。とらぁ君ボートやワンカップも何故かピカピカになっているし、少なくとも傍目には壊れたような形跡が見られない。これは……?

「ふっふっふ――それは、私達でございますわ――!!」

 瞬間。VDMランドの影から飛び出し――あっ、転んだ――のは!
「ト、トラコフスカヤちゃんじゃないのぉ! 大丈夫? 今顔から思いっきり……」
「だ、だだだ大丈夫ですわ! とにかく仕切り直し――このアトラクションは!」
「拙者たちが夜通し!」
「頑張って――修復したんだよ!」
「とらぁ……」
 そう。アーリア・スピリッツ (p3p004400)が声を掛けたのは――VDMランドの誇るマスコット達であった! 転んだトラコフスカヤちゃんが音頭を取り、とらなちゃんが怪我する度に消毒治療し、アルチュウとブラックタイガー君が大工に勤しみ、とらぁ君が重い物を運ぶ。
 そうして出来たのが新生VDMランド。施工業者なんていらなかったんや!
「ええ!? ホントかい皆、凄いじゃないか!」
「お褒めに預かり光栄に候……そう。大分改良したのでござるよ。例えばあのこぉすたーなど。
 『飛んでも問題ない』安全装置を付けたでござるので……」
「そうですわ! 誤って空を飛んでしまうなら最初から……おっと、これ以上は実際に乗ってみてからお楽しみですわ!」
 アルチュウとトラコフスカヤちゃんが互いに顔を見合わせ笑顔だ――
 瞬間。誰かの脳裏に嫌な予感警報がフルスロットルで作動した。
 何故だ。心臓が高鳴る。これは遠足の前の楽しみが故か? それともお酒の飲みすぎですの? あ、それは無いですわね流石に。
「……! 閃きました! テストプレイを業者の皆さんに担当してもらいましょう!」
「えっ、いや、ちょっとアレはちょっと」
「――なるほどそれは良いアイディアだな!」
 同時。閃いた正純が提案したのは、ひっ捕らえた業者たちに全てを擦り付けんとせんという事――!
 コルネリアも同意し、奴らに善意の道を体験させんとすれ、ば。
「さぁさぁ親分達もどうぞどうぞ! こっちのとらぁボートも自信作だよ!」
「えっ」
 ブラックタイガー君が――イレギュラーズ達も誘導してきた!
 マスコット達は目をキラキラさせている。うう、これが前回で心を痛めたマスコット達の善意の罠……!
 待って。ちょっと待って。あの、待って。ブラックタイガー君押さないで、ちょっとー!
「あの、あのとらぁ君……これって、大丈夫……?」
「とらぁ……( ╹⋏╹)」
 あ、その中でもとらなちゃんは心配し、思わずとらぁ君はとらぁ君顔。
 前回で地獄は終わったと思った――?
 とんでもない。地獄ってのはですね、一つじゃあないんですよ……!

GMコメント

 マスコット達ー! どうしてこんなことをー!
 リクエストありがとうございます以下詳細です!!

●依頼(?)達成条件
 悪徳業者に地獄……いや善意のアトラクションを体験させてやりましょう!
 その結果自らの愚かさを懺悔させ、立派なテーマパークを再建させることを誓わせるのです……
 もののついでに皆さんも乗ってみませんか? ね? マスコット達が頑張ったから、ねっ?

●フィールド
 ご存じVDMランド。
 前回(VDMランドだよ! ぜんいんしゅーごー!)にて凄い事になりましたが、心を痛めたマスコット達が凄い改造を施して、より凄いVDMランドへと進化しました! わーぱちぱち!!

 ――という訳でマスコット達は是非皆さんに乗ってほしそうな眼を向けてきています。
 がんばりましょうね!!

●以下パワーアップしたアトラクション達!!
・超飛行レインボージェットコースター
 なんとアルチュウの虹エネルギーを燃料に空を飛翔する能力を得たジェットコースターです! 飛翔する際には翼の様なモノも出てくる優れものですよ! ええ! ただちょっとした問題はエネルギーが切れると墜落するって所かな。操縦桿もどこだろう。

・紅雷動力ワンカップ
 ブラックタイガー君の改良によって凄い速度が出るワンカップだよ! どれぐらいの速度が出るかっていうと、最終的に爆発して計測できなくなるくらいなんだ! すごいね!

・超電導推進とらぁボート
 見た目はそのまま! でもボタン一つで120ノットに超速度で到達するボートだよ!
 慣性の法則がきもちいいね! ちなみに120ノット出して大丈夫な広さがあるかは不明だけど、まぁ些細な事だね!

・リニア加速タイガーゴーランド
 これぞ正しく虎の中の虎! メリーゴーランドを改良したリニアタイガーだよ! 正に虎というに相応しい技術と速度だね! シートベルトの類はないけど些細な事さ! これに乗ったらどうなるかはお分かりですね? そう君も虎(バター)になれるんだよ!

・マリ屋
 無事な施設。串カツ屋です!
 生きて帰れたらここで打ち上げをするのもいいですね……

●マスコット達!
・トラコフスカヤちゃん
 某お人によく似てるマスコット! 修繕を特に頑張ったのか、是非皆に見てもらいたいらしい。おめめキラキラ。

・ブラックタイガー君
 どこからどうみてもブラックタイガー、ヨシッ! 皆を誘導するよ。乗るよね?

・とらぁ君
 いつも『( ╹⋏╹)』顔のとらぁ君。とらぁ……

・とらなちゃん
 あわあわしてるよ、かわいいね。

・アルチュウ
 ちゃんと出勤出来てる泥酔マスコッ……うわ虹がー!

●悪徳業者たち
 VDMランドに当初とんでもない工事をした業者『トゥイ・ヌシュナ・ムニェ』です。彼らは某ある人にお酒を渡したりして好き勝手してたみたいなんですが、なぜかバレてしまいました。彼らに恐怖を教えて差し上げましょう……!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はN(にゃんにゃん)です。
 いややっぱりW(わんわん)かK(ケロケロ)……U(ウサウサ!)かも……
 そんな感じの情報精度です! よろしくお願いします!

  • 超電磁改造VDMランド~私達の戦いはこれからだ!~完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月29日 22時50分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
※参加確定済み※
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
※参加確定済み※
すずな(p3p005307)
信ず刄
※参加確定済み※
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
※参加確定済み※
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
※参加確定済み※
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
※参加確定済み※
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※
耀 英司(p3p009524)
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
フォウリー(p3p009811)
災厄( ‘ᾥ’ )少女

リプレイ


 ――悪徳業者さんもあの苦しみを味わうべきよ!
 そう言っていたつい数時間前の私へ 私も味わいますうっぷ。

           ――マリ屋の床に転がる死体の声。
           ――『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)


「はっ、なんだかデジャヴ! 夢だったのね、あぁ~よかった。さ! それじゃあマリ屋に行きましょうか! うちのミケランジェロランドと同様に最近のテーマパークは食事にも力を入れてるってのが定番で、あぁああ~~!!」
「やだ~~とらぁ君はなしてぇ~~~!! 後でオヤツあげるから~!!」
「とらぁ」
「……あの、私、串カツ屋の開店準備があるので帰っても? あ、ダメ? そうですよね。はい。分かってます帰りませんからそんなに腕をグイグイと引かないでくださいマスコットのみなさん!」
 VDMランドの入り口へと赴くと、どこからか聞き覚えのあるラップが聞こえてきた気がした、が。それはともかくとして。
 アーリアに加えあわよくば生き残らんとした『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)がとらぁ君に捕まり、肩に担がれながら引き戻される悲鳴も響いている。更には『さぁ参りましょう!』と元気よくトラコフスカヤちゃんに袖を引っ張られる『未来を願う』小金井・正純(p3p008000)も一緒だ。

 どうしてこんな事に――蘇る記憶、だが。

「VDMランドCEOマリア・レイシスだよ! 本日は当ランドへお越しいただきありがとう! さて! 今日はマスコット達が頑張って改修したアトラクションを存分に楽しんでおくれ! ――あ! 貴重品はヴァリューシャに預けてね!」
「さぁ! さぁさぁ! 早く金目の物……じゃなかった。貴重品をお預かりしますわね。万が一、途中で落としてしまっては一大事! 楽しいひと時が水の泡! ええ、お分かりですわよね? ですから私に、さぁ早く!! VDMランドのマーライオンの異名を取る私が責任を持ってお預かり致しますわぁあああああ!」
「うぉぉぉざけんなヴァレーリヤ!! 眼が$マークになってるじゃねぇか全く信用出来ねぇぞ! 離せ! アタシのなけなしの財布ッ――!!」
 だがしかし『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は可愛いマスコット達の頑張りにご満悦の様子だし『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)はヴァレーリヤ(動詞)だし。
 『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)はそんな天使みたいなヴァレーリヤ(マリア談)とお財布攻防戦を繰り広げていた。こら! ヴァレーリヤさん! 人のお財布返しなさい!
「嫌でございますわ――! これはもう私の物でしてよ!
 拾ったもの!! 落ちてたのを拾っただけで御座いますから――!」
「懐にあったものを『落ちてた』とかそんなことを言うのは多分世界で貴方だけですよ!」
「……んっ? あっ! 目を離してる隙に何やってるんですか生臭シスター! 貴女に財布を預ける方が危険なのですよ、お返しなさい! 酒代に消える前に! ていうかいつの間に取ったんですか!!」
 正純と『一人前』すずな(p3p005307)に怒られる天使。コルネリアとすずなの財布を腕の中に抱いて丸まって離さない。うふふ、かわいいなぁ(マリア談)。
「はー、あのエビに連れられて来てみりゃ、なんとも面白そーじゃねーの。オーケーオーケー、イージーイージィ! よくわかんねーが、遊ぶことにかけちゃ俺ぁ一流よ。任せときなって!」
「ははは――ええ、その意気で行きましょうか。
 ええ――またやってきたこのVDMランドで」
 一方でブラックタイガー君に連れられ奥へと進む『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)――彼は陽気な様子で歩を進めていくが、『Disaster girl』フォウリー(p3p009811)は知っている。これから先に待ち受けているのはきっと地獄の大惨事だと……
 だって前回の事を知ってればどうなるかなんてわかるもん! マスコット達の眼が輝けば輝くほど不安が迸る――ッ! でも彼らの輝かしい眼は卑怯だ。くぅ、冷酷な魔王の娘である私にこんな感情を抱かせるなんて……!
「恐ろしい子達ッ……!」
「……仮にもテーマパークだと云うのに此の重い空気よ。
 いえ、まあ。関連の面子の顔見ればある意味納得なんですけど」
 ねぇ? そう紡ぐのは『律の風』ゼファー(p3p007625)だ。
 ふふっ。このプレッシャー、中々感じられるものではない。が。
「んぁああゼファア――! すずな――! ある! あった! 猫耳カチューシャ!! はいこれドーンッ!! これで一回写真撮ろうぜ!」
「ねぇコルネリアさんこれ前もやりましたよね? もう耳はいらねーんですよ、4つになるっていったでしょ! だからやめ……力強ッ!! あああ勝手にぃぃ!」
「成程ね。こういうグッズで先ずは世界観に馴染んで行こうってワケ。それじゃ、はい。ピース!」
 猫耳カチューシャテロに勤しむコルネリア。何故か取りにくい仕様に進化しているカチューシャを取り外さんと奮闘しているすずな――達をまとめて、ゼファーは横ピでキメ顔写真一枚シュート!

 ちょっと男子ィ、真面目にやってよ~!

 まるで気分は修学旅行。いや正しくテーマパークに来たような感じか!
 いっしょに、もう一枚。業者のおじさん達もまとめて、はいチーズ!
「うーん……これ絵面、びみょ……」
 タイムはそんな写真を見据えながら――小さく不安を呟いたとか。あっ。写真の端に映るヴァレーリヤがタイムちゃんの財布を狙って手を伸ばし……!!


 マリア・レイシスはニッコニコであった。なぜならマスコットの皆が良い子すぎるから!
「ふふ。皆の努力の結晶、味わっていくからね! ドンドンアトラクションを勧めえうよ!」
 噛んだ。しょんぼりタイガー。
 ともあれ気を取り直してまずはタイガーゴーランドから行ってみよう! さぁ! 正純君! すずな君! フォウリー君、楽しくいこうね!
「……えっご指名ですか? ホントですか? どうして」
「くっ! 私もう沈みたくないですからね、絶対ボートには乗りません!! ああまたびしょ濡れになる恐怖なんて……あれ? なんかこのタイガーゴーランドも嫌な予感しませんか?」
「見た目はファンシーねぇ。あら、大丈夫よブラックタイガー君。ここにいるメンバーで行くから、泣かないで頂戴。そうよね? ちょっと君付き合いなさい」
「ええ!? 我々も!!?」
 率先してマリアが正純とすずなを引っ張ってとらぁ君仕様のタイガーゴーランドへと乗り込んでいく――更にはフォウリーが悪徳業者の面々を何人か。耳をひっつかんでゴーゴー
 前回より残る魂の記憶からすずなはボートだけは拒否する構えだったのだが、コレならいいかと――思ったのが間違いだった。
「速い! 速いねこれは! 思った以上に速……いや速すぎないかなコレ?」
「……あ、ごめんなさい、これ無理ですね乗っちゃいけないやつです。逃げましょう正純さ――あ、やめっ、ちょっ押すのやめてマリアさん!? こら! ちょっと!! やだ、しにたくな、助けて小夜さ――ってそういえばなんでマリアさんも一緒なんです……?」
「えっ? いや私はブラックタイガー君に乗せられてだね」
「ははっ。案内役が巻き込まれるとかウケrあああああ!?」
 直後。超速度の領域へと到達したッ――!!
 思わずバターになってしまいそうな勢い。にゃんバターとわんわんバターの誕生だね! 弾き飛ばされぬ様に必死にしがみ付く面々――!
「おおよそメリーゴーランドの出していい速度と回転数じゃないんですけどこれ!? え、なんですブラックタイガー君? メリーじゃなくてタイガー……? いやそれはどっちでもいいんですよ!! それより早く脱出を、え途中下車はダメ? そう言ってる場合じゃなくてですねえええええ!」
「わああああんどうしてこんな事にぃぃぃぃ! どうして――!!」
「回る回る回る回るぐるぐるぐるぐるこれ結構身体に来るわねぐるぐるぐるぐるブラックタイガーって言うけど虎っていうよりエビよね回る回る回る回る世界が回ってところでブラックタイガーって和名だと牛海老らしいから、虎じゃなくて牛ぐるぐるぐる」
 思わず叫ぶ正純。轟くマリアの悲鳴。フォウリーのおめめぐるぐる~~~!
 あまりの超速度に段々と遊具の隙間から飛び散る火花――『わぁ、あんなエフェクトもありましたっけ!』とトラコフスカヤちゃんがきゃっきゃとテンションあげているが早くとめて――!!
「ぐるぐるぐるあそろそろげんか」
 フォウリーは想起していた――乗る前に景気付けにと決めたカップのワインを。ワンカップだけに。ふふっ。芳醇なる香りが鼻をくすぐり……でも今なんか喉元まで出かかっている気がする。あ、だめだめだめホントはやく止め。

 ――直後。カップコーナーで大爆発が発生した。

 まるで花火の様な爆発音――だからだろうか。離れた場所でとらぁボートに乗り込まんとしていたタイムらはそれが爆発だとは気付かず。
「さぁ皆様! こちらは改修されたとらぁ君ボートですわ! 是非楽しんで下さいましね!」
「……ヴァレーリヤ。このボート、なんか120ノットとかいうよく知らない単位が表示されてるんだけど、なにこれ?」
 ヴァレーリヤの案内によって超電導推進とらぁボートが発進しようとしていたッ――! なお120ノットとはつまり時速222キロである。しんでしまう!
「念のための備えは大事よ。タイム。
 乗る前の準備運動はしておきましょうね――受け身の練習とか受け身の練習とか」
「ゼファーさん! これ受け身でどうにかなる感じですか? 人死にますよ? わたし達はともかく悪徳業者さんは一般人なんですよ! 前回の諸悪の根源とはいえ手心ってやつを……あっ! とらぁ君乗ります今乗ります! そんなに見てこないで!」
 とらぁ。降りようとしたタイムを滅茶苦茶見てくるとらぁ君の圧に屈するタイム。ぴえ~ん! 思わず泣き顔になっちゃいそうだが最早こうなったら腹をくくるしかない。
「異次元の加速が生み出す超重力で押し合いへし合い、最終的には圧縮されてマリトッツォみたいになれること請け合いですのよ! えっ、怖いから嫌? 大丈夫でございますわ。そういう方に備えてこの超人薬さえあれば……」
「成程ね。究極的に無駄を削いで速度だけを追求した造りってワケ。此の思い切りの良さ、ある種の合理というか美学を感じる……ってな訳あるか! 責任者呼んでこんかい! ああああ速度メーターがヤバげな数値をッ!」
 同時。怪しげな飲み物を超高額で勧めてくるヴァレーリヤ――が、もはやそれを飲んでいる場合でもない! まずいこんな速度すぐに乗り上げちゃう! ブレーキは!? 操縦桿は!?
「……えっ。ないんですかこのボート!? なんで!? 超欠陥品じゃ!?
 嘘、このまま進んだらメリーゴーランドに突っ込んじゃううう!!」
 タイムの焦り。一緒に乗り込んでいる業者たちの悲鳴も随分遠くに聞こえる――
 超絶のG。『ああ、きっと今すごいブサイクな顔になってるんだろうなぁ――』そんなことを呑気に、或いはまるで走馬灯のようにタイムは思考するものだ。何故か脱ぐことの多い混沌生活だったなぁ――この前なんて水辺で――
「今までありがとう……最後にみんなと遊べてよかっ……」
「嗚呼ッ! 誂えたかの様に進行方向にメリゴが! こら、眼を閉じてる場合じゃないわよタイム!! 嬉しくないもみじおろしになりたくなければ彼岸の向こうを眺めてないで受け身態勢を取りな……破ァッッッッッ!」
 軋む船体。音の壁へと挑まんとする新型とらぁボート――
 案の定陸地に乗り上げ、その際の勢いで飛翔してしまう。落着予想地点はブラックタイガー君達に救助されている『し、しぬ……んっ? なんですかあのボート、ぁ、あああ!!』と叫んでいる正純&すずなのいるランド地点だ――ッ!

 再 度 爆 発 音。

「わ、わわわ。ど、どどどどうしてこんなことに……!?」
「はぁはぁ……あっ、マリィ! 気落ちしている場合ではありません事よ――さぁ次へと参りましょう!」
 あたふたするCEOのマリア・レイシス。しかしボートの残骸から元気よく飛び出してきたヴァレーリヤは失敗(?)を気にすることなく次へと照準を定めるものである――そう!
「そ、そうだね! 次の奴は安全だよ!
 トラコフスカヤちゃんも言ってたもん! 『自信作』だって!」
「本当だろうな? 大丈夫なんだろうな? 今回は本当に大丈夫なんだろうな? その自信作っていうのが自信満々であればあるほどひどい事になったりしないよな? オイ!?」
 まだまだ施設はあるのだから! マリアらが生存者を案内する先はレインボージェットコースターである! ……何度も確かめるコルネリアだが、多分だいじょばないなこれ。
「英司、アーリア、生き残る事だけを考えるのよ。
 流石に墜落とかはないでしょ。なんとかなるはずよ!」
「ハハハ、任せときな! こう見えても俺はRoller coasterになんて乗り慣れてるんだよ。あんなの多少の違いはあっても犬の散歩と一緒だぜ。簡単すぎて欠伸がでらぁな」
「ええ――なんだかさっきからあちこちで爆発音とか悲鳴とかが聞こえてきてる気がするけど、きっと気のせいよねぇ。流石に二回も同じ墜落なんてする筈がないわぁ!」
 死を覚悟するコルネリア。陽気なる英司。グッズフル装備でVDMランドに染まってテンションを挙げるアーリア――でも嫌な予感しかしていない。なんだかこれも死装束に見えてきた、と。
 お供のアルチュウくん人形(押すと謎の虹色が出てくるよ!)と共に乗り込んでいく。
 最前列の方へと。抵抗する業者たちも縛り付けて、さすれば。
「このジェットコースターもお勧め! 景色と一緒にこれまでに歩んできた人生が垣間見えると評判の一品ですわ! そして逃亡防止……いえ安全の為にシートベルトは取れないようになっておりますので安心ですわね!」
「はっ? 今なんて言っ……うぉベルトがキツイ! 全く動けないんだがこれは一体!? 待て待て説明しろよ責任者!! 逃がさねぇ! ついてこい、Do it!」
「っ、あの、私は従業員なので。あっあっ、なんて事しますの! 聖職者に危害を加えるなど、主のお怒りに触れましてよ! こんな事は許されませんわ! あああああ!」
「ヴァリューシャぁああ~~!!」
 抗議の英司に服の袖を捕まれ、そのまま引っ張られる聖職者(虹)。マリアが付いていこうとするもアルチュウの零した虹に滑って転んでしまい――コースター、急発進。
「あら? 心配してたけど、全然壊れる気配もないしやっぱりこれはアタリなんじゃ……あら? なに? なんか変な動きを見せてるんだけど、あら。あら……えっ!!?」
 であればアーリアは見た――コースターに翼が形成されるのを――
 そのままゴー・フライ。大空めがけてレインボ・スタート!!
「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛ぉ゛お゛!! ん゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛!!! も゛う゛い゛や゛だ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛か゛え゛り゛た゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!」
「コルネリアちゃんも泣き叫んでないで奇跡を祈ってよお!! 英司くん!! 英司くんなにしてるの!! ほら!! 英司くんも天に祈って……」
 轟くコルネリアの絶叫、溢れ出る涙。
 少しでも生き残る確率を挙げんとアーリアが英司の方を振り向け、ば。

「……し、死んでるッ……!」

 大空舞う感覚のコースターについぞ意識途絶える英司――
「いや死んでねぇって!! クソ、これ脱出できるのか!? ああもう全くよ、俺はスタントマンじゃねぇって!! こういうのはダァイ・ハドのマクレーンでも呼んで来いよ!!」
 後に彼は語る。装備纏いし光を漂わせながら――
 『――VDMランド? はは、余裕だったぜ余裕! あぁ余裕余裕……へへ……』
 そう述べていた彼の精神は――まるで虹に塗れていた気がしたとか。
 そしてコースターより射出される物理的大量の虹エネルギー
 虹の容量が潰え、落下軌道を取るまであと三秒の事であった。


 ぶえっ。ゼファー直伝の受け身を取った所まではタイムは覚えている――その後は、えーと、なんかボートもゴーランドも止まった様な……
「良かったー! ギリギリ助かったー!
 アイタ――! 助かってない、どうして~~~!!?」
 助かった夢を見たタイム。起き上がると同時に何故か全身に激痛、いや筋肉痛がッ――!
 ここはマリ屋。皆辛うじて無事だったメンバーはここに運び込まれたのである――奥の方ではマスコット達が『こんな……こんな筈では……!』『とらぁ』とか言ってる~!
「うっぷ……よく五体無事で済みましたね……。
 いや吹っ飛んで行った義手確保できてないから正確には四体無事ですけれど……
 まさか爆発コンボが繰り広げられるなんて。これがVDMランドスイッチですか」
「あっ、あっ。正純さんコレ……」
「あ、とらなちゃん腕拾って来てくださったんですかありがとうございます……」
 同時に正純もなんとか無事であった。こんな事になるんじゃないかと予想してたが故か、ため息一つ零しながらとらなちゃんより物を受け取って。
「生きてるって……素晴らしいですね、正純さん……空気が美味しい……
 あととらなちゃん、今度お話ししましょうね」
「ぴぇ!?」
「はぁはぁ、とらぁくんの背中にぽよん、ってバウンドした奇跡が無かったら今頃……
 生きててよかったわね、私達……ま、とにかく生き残ったらな後は飲み会よぉ~!
 高いお酒から持ってきて頂戴なぁ!」
 静かな笑顔をとらなちゃんに見せるすずな。
 一方でアーリアはもはや過去の事より未来のお酒とばかりに――
「〆はやっぱりここよねぇ。マリ屋がなければ唯々ヒドイ思いをするだけだもの。お酒と串カツで心を回復するわぁ。それにしてもここだけは本当にいつ来ても異常はないわねぇ……」
 唯一の安全地帯。フォウリーは思考する……以前来た時もそうだったが、ここだけは聖域なのだろうかと。
「自分たちのしでかした事、身に染みて理解して頂けましたわね?
 次はこうならないよう、もっとお酒をこっそりと裏口から……
 じゃなくて。ちゃんと完成させるのですわよ!」
「ひ、ひぃい!! 分かりました! 分かりましたので、お許しを~!」
「皆生きてる? 生きてるね? 良かった、死ぬ所だった;;
 でも次があるさ! きっと次はもっといいVDMランドになるよね!!」

 さすれば聖職者の様に諭しながら、こっそり耳元でお酒の打診をするヴァレーリヤ。
 マリアも音頭を取って酒盛りを開始する――! 終わりよければ全てよし、だ。
 最後は皆で楽しもう。絶品の串と、偉大なるアルコールと共に。
「然しこの虎……虎? 無口そうな顔して結構言わすタイプなのねえ。
 えっ。とらぁってしか言ってない? えっ?
 ……えっ?」
「とらぁ」
 隣にいるモフモフのとらぁ君の身体に触れながら、ゼファーは何度見も。
「ハハハ、なんだかんだと楽しかったな! 新鮮な事ばかりで、ああ! サプライズ・パーティみたいだったぜ! ああ……」
 想起する英司。
 VDMランドを知る前の無垢なる彼は――もうこの世のどこにもいないのだ――
 ともあれ騒ぎながら夜へと日は落ちていく。
 外の惨状がどうなっているか誰も触れない。だって片付けしないといけないし。
 ああ全く、それにしても――

「とほほ、もうこんなのこりごりよぉー!」

 丸い円がフェードアウトしていくように。アーリアのほろ酔い泣き顔が映れば。
 楽しい楽しいVDMランドは今日も平常運転だったので――ヨシッ!


成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 何見てヨシッ! って言ったかは私も分からないです><

 という訳でお待たせしました! リクエストどうもありがとうございました!!!!!

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