シナリオ詳細
戦場の旗
オープニング
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この世界は戦争の世界だ。行き交うのは馬車や車や旅客機などではない。戦車や戦艦、そして戦闘機。
ここでは今日の命すらもどうなるかわからない……まさに戦場である。
「かはっ!!」
「オリビア!!」
ああ、今日もか弱い民が銃撃に巻き込まれた。
「ジェイ……私の事はいいから早く……早く逃げ……」
「オリビアを置いてそんな事が出来るかよ!! 待ってろ今抱き上げて一緒に……っく!!」
「ジェイ!!」
撃たれた少女を助け出そうとしていた青年もその銃撃を受ける。
「は、はは……なんだ、俺も君と逝けるのか……」
「ジェイ! ジェイ!! あなたは……っ」
「君と一緒に逝けるのなら……俺は本望だよ。ああ、そんな悲しそうな顔をしないでくれ、ずっと傍に居るから……」
「ジェイ!! うっ……っ、私は……私は、ジェイに生きて欲しかったのにっ!!」
青年の頬に触れた少女の目には大粒の涙が浮かび零れ落ちる。ああ、愛しの貴方が私の分も生きてくれたなら良かったのに。そんな彼女とは裏腹に青年はもう少女と死を待つ覚悟を決めていたようだった。
「不安にならなくていい……きっと来世でも会えるさ。今度はそうだな……戦争のない世界が、いい、な……」
「っ……諦めないで! 諦めないでよ!! ジェイ! ジェイ!!」
この世界に奇跡は存在しない。殺られればそのまま足掻く事すら出来ず朽ち果てる。事切れた青年はきっと知っていたのかもしれない。
「私はもっと……生きて欲しかったの……生きて、欲しかったのよ……」
自分の願いは叶う事はないと悟った少女は空を見上げる。抱きしめてくれていた青年の体温は下がり、重さも現れもう完全に身動きが取れない状態。まさに死を待つのみだ。
「死ぬのなら……一思いに死にたかった……」
少女がか細い呟きを吐き捨てた瞬間。
──カチャッ
「?!」
──ズドンッ!!
偶然通り掛かった戦争兵士が敵だと思ったのか、彼は何の確認もせずにそのまま少女の頭を撃ちトドメをさした。
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「酷い話もあったもんだ」
ところ変わって、ここは境界図書館。神妙な面持ちで境界案内人のセイジが特異運命座標を集めていた。
「今回特異運命座標の皆にはこの世界に行って欲しい。……この世界はどこに行っても戦争が繰り広げられている世界だ、安全な場所は……探せばあるかもしれないけれど無いに等しいね」
境界だから死んでもここへ戻ってこられるけれど、死にたくなければ上手く立ち回らないと難しそうである。
「その世界の人々は味方以外は全員敵。民間人でも特異運命座標は勿論のこと、躊躇なく撃ってくるから気をつけて」
話し合いが出来る可能性は極めて低いと思うが、低いだけでもしかしたら出来るものも中に入るかもしれない。
「そんな世界に行かせるのは本意ではないけれど……必要な調査だからね……どうか頼むよ」
セイジはそう不安げな表情で特異運命座標を送り出した。
- 戦場の旗完了
- NM名月熾
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年09月19日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
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「人とは哀れな生き物ですね……相争う事を止められないだなんて」
でも……と『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)は灰屑が飛び交う空を見上げ
「……かと言って戦うべき時にも戦うのを怠れば、嘗ての私のようになってしまうのでしょう」
目を閉じ、耳を塞ぐ軽蔑されるべき者にならない為には、遠くから哀れむだけではだめで。一人でも多く誰かを救う為、苦しむ人を探したい。
例え、実際には何の力にもなれなかったとしても、傷付いて死を待つばかりの人がいれば寄り添って、大切な人を見捨てて逃げた人がいればその罪を赦しましょう。
自分自身が嘗て母を殺した時のようなウンザリするような気持ちを知ったあの日から、人に寄り添いたいという気持ちはきっと強くなっていたんだ。エルシアは意を決して行動する。
「この国で戦争がなかった日はなかった。それこそ平和だった時代すらも聞いた事が無い程にだよ。きっと平和な時代もあったんだろうが……ね」
「俺はこの足さえ正常だったらまた戦場へ向かってた! 片足がなくたってこの戦意は朽ちる事はねぇのによ……」
避難シェルターを見つけたエルシアは現地平民の彼らが吐露する胸の内を聞いてあげる。
自分の不幸な境遇を嘆き、それを与えた誰かを呪う言葉……或いは、自分が何も成せないまま死ぬ事を認めたくなくて、自分が兵士やゲリラとしてどんな命令を遂行しただとかを誇らしげに語る者。
(その連鎖を追っていったなら…この世界で、誰が、どんな思惑で戦争を続けているのか、朧げにでも見えてきたりはしないでしょうか?)
でも……仮にそんなものが見えてきたとしても、それはきっと、どうしようもないほど途方もない何かなのだとエルシアも理解っている。
それでも彼女は人々を、敵味方問わず、この手で抱き締め続けたいと思うのだ。
──ガンッ!!
シェルターに鈍い音が響く。
「ここも気づかれちまったか」
「皆逃げるぞ!!」
人々が音が響いた方角から逃げるように避難経路へ雪崩で行く。エルシアもその流れについて行こうとした
──が。
「っ!?」
例え助けた方に裏切られ、憲兵に密告されて最悪が待っていたとしてもエルシアはその方を助けられた事に満足したまま死ねると思っていた。
だから、避難経路への扉が目の前で塞がれ、瞬間バラバラと背後から銃で撃たれても後悔はなかった。
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「常に戦争の終わらない世界か……それでも、ここを調査していけば何か戦いの終わらない原因がわかるはずだ。それを探っていこう」
『竜食い』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は廃ビルの影から灰が舞う街を見下ろす。どうしてこうなってしまったのか……彼はまずは情報収集だと行動を開始した。
聞く耳を持たない兵士を相手に情報収集は無謀そのもの、ならばと近辺に住む平民を相手に選び避難シェルターへ向かった。
「……失礼する。僕はここの情報を集めている者だ、ご協力願えないだろうか? 勿論タダではない、これでどうか」
情報収集の為に用意したのはプリン。シューヴェルトはそれを住人達に分け与えていこうと言う魂胆だった。
「……それは、毒じゃないよね?」
「もう我等は誰を信じたら……」
「……なるほど」
いきなり食料を渡された平民達はシューヴェルトの予想通り警戒する。ならばやる事は一つで。
「!」
彼は平民の前で堂々とプリンを食べる。これで安全性を示す事が出来ただろうか? と思えば、平民達はシューヴェルトを囲み始める。
「毒じゃないなら正直ありがてぇ」
「不味くても文句は言わないわ!」
また一人、また一人とプリンを求められシューヴェルトは微笑み安堵した。
「すまないが今日は食料しか渡せない……だが、いつかは僕たちが君たちを助けれるかもしれない。その時まで待っててくれ」
「その気持ちだけで嬉しいわよ」
「ええ、例え絶望が待っていてもあなたを忘れないわ」
それは平民達の『諦念』の言葉。いつかはこのシェルターも突破される日が来る事をわかっている。けれど今を、大切な人達と生きる僅かな時間を懸命に生きているようにも見えた。
だが。
「皆!! 兵士だ!!」
「?!」
和やかな空気が一気に張りつめる。平民達は男に限らず女子供、皆が武器を持ち始める。今日を生きるその為に、無謀な相手と戦う準備を進める。
「僕も応戦しよう、これでも戦える口でね」
「そりゃあ助かるぜ! さ、明日の為に生き残るぞ!!」
「おう!!」
シューヴェルトは武器を構える。すると瞬時に降る銃撃の嵐。彼は死の大鎌のような蹴撃の軌跡で確実に命を刈り取るその切れ味でその弾丸を粉々にしていった。
「悪いな、僕も戦いには心得があるものでね……なめてもらっては困るよ」
ここを必死に生きる人々の為に、今僕が出来る事を。
「くっ、は……油断、した……」
結論から言えばシューヴェルトは兵士側のスナイパーに背後から撃たれた。だが、と歯を食いしばる。まだ逃げれていない平民が残っているのだ。
(死ぬ間際まで人々を助けていこうと思う。これでも貴族騎士だ。その誇りに賭けて、救える糸値は救って見せるさ)
息を乱しながら彼はその騎士道を貫き、後に人知れず事切れたという。
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『夜に這う』ルブラット・メルクライン(p3p009557)も建物を陰にして戦争の様子を伺う。
「人ではなく、鉄と炎が飛び交う戦争か
暫く観察を続けたい気分だが、私の身に危険が及んでは困る」
不可逆の死は構わない、だが何度も経験可能な死なぞ願い下げ。
なれば、早く終らせたい時の手段と言ったら──ルブラットの中では決まり切っていた。
遮蔽物の多い市街地へ移動したルブラットは気配を潜める。一人または少人数で出歩く人間を待つ魂胆だ。慎重に息を潜め、奇襲の機を彼は伺う。
(アレがいいか)
手頃な標的を見つけた彼は敵の先を取り、背後を取り、裏切りの一撃を突き刺す……その手前で気絶させた。
「よし。さて廃墟にでも運ぶか。
手足を縛り、武装も剥がした後に起こすとしよう」
ルブラットがそうその場から運び出し、廃墟に入った瞬間、兵士はぴくりと動き出した。戦争の為に訓練された兵士は気絶程度では眠ってくれないらしい。
「くっ……き、さまぁ……ッ!!」
「聞いてくれ。私はこの地の誰もが知っているような、戦争が起きた原因や、現在の戦況が知りたいだけなんだ。何も機密情報まで教えろとは要求しないさ」
それに、私も加虐趣味者ではないから、手荒な真似はしたくない。
「素直に話してくれると助かるよ。きっと、お互いにとってもね」
「そんな事を……お前のような怪しい身なりの者に晒すとでも思うか? 情報は我々にとって宝であり、我々にとって弱点になり得る……些細な情報でもお前なんかに渡すぐらいならば……死を、選ぶ!!」
「なっ!」
兵士が叫ぶと口内に隠し持っていた毒を服用し泡を吹かせた。
「やれ、ここまで口が堅いとは」
ルブラットは先程相手から奪った銃に視線を移す。一度、私も銃器を使ってみたかったんだと手に持つ。
もしこの兵士がここで逃して上に報告された場合、味方の動きに支障が出てしまう可能性がある……と、理由を用意しておけば咎められる事も無いだろうとは思っていたのだが。
「仕方ないな」
情報を引き出せなかった。
ならば、この方法を繰り返す他ないだろう。ルブラットはゆらりと闇に消えた。
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「ハローみなさま!! 日澄ブロードウェイのお時間がやってまいりました!! ご覧くださいこの激戦を!! わっははは!! 銃撃が大雨降った後の滝壺みてえだ!! 実況ごっこなんざおちおちやってもいられねえ!!」
演技者よろしく『紡ぐ者』饗世 日澄(p3p009571)は陽気に振る舞うが、しかし状況は変わらない。
「さぁて、現地側につくか、そうでない方につくか。
コイントスで決めようか、正直どっちでも良いんだよね」
ポケットからコインを取り出す。表が出れば現地、裏が出ればそう出ない方。
日澄はチリンと上へ投げた。
「ああ、決めた決めた。現地兵士側に加勢しようか」
そうして出たコイントスの結果は表だった。
「ふふ、敵軍であれ人殺しの悪行と、自軍の救命という善行の両立なんて嘆かわしくて、あたしとすこぶる相性が良いわ」
だって最近ギフトのせいで、良いことしすぎて頭ガンガンしてるんだもん、そのうち動けなっちゃうもん。それは嫌! 日澄はニィと笑い
「だから、きっと……うってつけだよ。今の俺にはね」
それはきっと悪い顔だ。
「さて? どう口説きましょうか……言いくるめ等にはまあ自信がないこともない……けどこれ我の話通じる? 皆様耳とか理性とかあるタイプ?」
ここで何より強い声が銃声であるのなら、僕もまた雄弁であれば良い筈だ。
……まあ、隠れて敵さんを狙撃してれば敵意がないことくらいは伝わるものかな。
日澄は思考を巡らせて、味方になる兵士達の敵へ攻撃する事を決めた。
「これで味方だってわかってくれました? 是非共闘させて欲しいんですが!」
(嗚呼やれやれ、爆撃、銃撃、嘆きの悲劇とはまさにこのこと)
てんやわんやの生き地獄なれど、人殺しもまた罪になるというのなら、もはや死んでも地獄に征くか。
「カッ──ハッ!!」
兵士はこの演技者の言葉すらも聞く耳は持たなかった。
「はぁ……アハハ、ほんんっと……聞く耳持ってくれなかった、なぁ……っ」
(まあそれも、良いさ、どちらでも。
キャストの皆々様方全員がどの道地獄に行くのなら、そこでゆっくりお喋りできるよ)
──ただしあの世があるならの御話だけど。
戦乱の世界では言葉など無意味だ。
行動すらも無意味だ。
それは、それは世界ごと洗脳された世界。誰にもその強大な洗脳は解く事が出来なかった。
そんな悲しみ、苦しみ、怒り、憎しみで染まった悲劇的な世界で
特異運命座標は何を思っただろうか?
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
月熾です。
久しぶりのライブノベルです。
今回は殺伐とした世界のお話になります。
●世界説明
戦争の世界。
現地の兵士は自分の味方以外全てへ殺意を示し、殺しにかかります。
●目標
調査、この戦況を見て何を思うか
●出来る事
【調査】
(兵士は至る所に配置されています。戦況について調べたい事がありましたらジャーナリストよろしく動いてみるのも手でしょう)
【現地兵士の味方】
(基本的に聞く耳を持たれないので高難易度)
【隠密】
(敵に見つからないように過ごす。どうやって隠れるか、突然敵に見つかる場合もあります)
【死亡】
(走馬灯を見たり、死に際に何を思うか)
※ライブノベルで死亡しても混沌では無事帰還出来ます。
●サンプルプレイング
【隠密】
せ、戦争の世界?!
た、戦うなんて嫌だよ!! どこか安全な場所は……ほら、バリケードとか作ってさ!!
民間人が隠れてるシェルターとか探そうよ
そしたら無事過ごせるかも……。
シェルターだ! おおい、開けてくれ! やっとの思いで逃げてきたんだよォ!!
戦いは終わる気配はないの? なんでこんな世界になったんだよ……。
ああ、平和なあの街が恋しくなってきちまった……。
それではご参加お待ちしております。
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