PandoraPartyProject

シナリオ詳細

はぐるまコッペリア

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ぜんまい仕掛けの恋心
 貴族の間で人気の歯車細工。ねじを一つ回すと幕が開き、無数の人形が踊り出して一通りのショーを見せるというとても美しいスカラボックスという工芸品がある。
「わーっ、すごい! すごいのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は開く三十センチの幕が開く様をきらきらとした目で見つめていた。
 部屋にはいくつものスカラボックスが展示されているが、決してスカラボックス屋さんというわけではない。特別な技師が受注生産するそれを複数展示できるのは、よほどの金持ちか物好きで……今回はその両方を満たしていた。
 ゼンマイ仕掛けのオルゴールミュージカルに見とれていたユリーカは、はっとして振り返った。
「しょ、紹介するのです! こちらがスカラボックスコレクターのガルニエさん! 今回の依頼人なのです!」
 ガルニエ氏は幻想バルツァーレク派貴族。芸術と商業を愛するバルツァーレクに連なるだけあって、彼の特技も芸術分野だ。
 はぐるまモチーフをあちこちにあしらった服を着た若い男性は、落ち着いた様子で語り始めた。
「紹介にあずかったガルニエだ。君たちのことは聞いているよ。優秀だそうだね。
 お茶を入れさせよう。座って、自慢のスカラボックスを鑑賞してくれたまえ」

 どこか幻想的な箱庭演劇が繰り広げられるそばで、ガルニエは依頼の説明を始めた。
「君たちに依頼する目的はあるスカラボックスの回収。手段はモンスターの破壊だ」
 目的と手段がハッキリしている。それもそのはず……。
「スカラボックス――題名『コッペリアの白棺』はコレクターの間でも名高い幻の作品だ。私はつい最近それを起動する専用のゼンマイ鍵を手に入れた。鍵を手に入れれば箱を開けたくなるのは情というものだよね。
 だから人を使って探させた。そして、見つけた」
 箱の演目が切り替わる。
「名もついていない山奥の……あるダンジョンとでも呼ぼうか。
 その中に、ボックスは守られている」
 守られている。
 そう表現した後に、スケッチ画像を提示した。
 背中から大きなゼンマイねじの伸びた、『おもちゃの兵隊』だ。
 人のシルエットで装剣したライフルを持ち、赤い鼻だけがあるのっぺら顔に赤い帽子を被っている。
「恐らく魔術で動くゴーレムだろう。四つの『鍵穴』をそれぞれ守っていて、それぞれをほぼ同時期に攻略する必要があるようだ」
 試しに一つずつ制圧したがゴーレムが端から新規生成されてしまい撤退することになったそうだ。
「そういうわけだから、この作業には人出がいる。君たちは四つのチームに分かれて、これらを同時に攻略してもらう。報酬はボックスを持ち帰った時に渡そう。どうかな?」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:スカラボックス『コッペリアの白棺』の回収
 必要条件:『おもちゃの兵隊』の四箇所同時攻略

 四つのチームに分かれて兵隊と戦闘、攻略します。
 別に同ターン(10秒)単位で一致する必要はないので、各チームやりやすいように戦って大丈夫でしょう。
 各戦場は離れているためチーム間の移動や支援は行なえないものとします。

 そのためこの依頼には
 バランスの良いチーム配分
 チームごとの連携相談
 が勝利の鍵になるでしょう。

【オモチャの兵隊】
 それぞれの戦場にはオモチャの兵隊が配備されており、それぞれ『将軍』1体と『兵隊』複数で構成されています。
 兵隊はR0・R3の通常攻撃を行なうだけの弱い戦力ですが、将軍は戦場ごとに異なる個性を持った強力な守護者として存在しています。
 チーム配分の鍵になるので、よく見て振り分けましょう。
 では便宜上東西南北に分けて説明します。

・東の将軍
 攻撃、命中に秀でた将軍。
 【炎獄】や【弱点】の能力をもつ。

・西の将軍
 防御、HPに秀でた将軍。
 【呪縛】や【棘】の能力をもつ。

・南の将軍
 機動力・反応・回避に秀でた将軍。
 【連】や【飛】や【泥沼】の能力をもつ。

・北の将軍
 能力は平均的だが『範囲回復』『範囲強化』の能力をもち、兵隊の数が他よりもずっと多い。

【おまけ】
 各将軍が鍵穴にさすための鍵を持っており、倒すことで入手できます。
 四つの鍵穴へ同時期に鍵を差し込めばシナリオクリアとなります。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • はぐるまコッペリア完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月12日 21時40分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ
ティバン・イグニス(p3p000458)
色彩を取り戻す者
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
シーヴァ・ケララ(p3p001557)
混紡
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
Morgux(p3p004514)
暴牛
メルディナ・マルドゥーネ(p3p006099)
虚空繋ぐ聖女

リプレイ

●棺のありかと棺の棺
「コッペリアの白棺ですか。題名からすると哀しい物語に感じますが、何にせよ興味はつきませんね」
 『わが主も、そう仰られてます』と付け加えて、『虚空繋ぐ聖女』メルディナ・マルドゥーネ(p3p006099)はこっくりと首を横に傾けた。
「…………」
 『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)も同じく『コッペリアの白棺』に興味があるのか、髪がそのように動いていた。
 彼女たちが回収を依頼されているのは『コッペリアの白棺』というスカラボックスだ。
 セットになっている専用の鍵でぜんまいを巻くと、箱の中できわめて巧妙な人形劇が始まるというものである。
 糸や針金で動いているかと思いきや、人形が飛び回ったり歌ったりし始めるので恐らくは式神術式や音声魔術のたぐいがふんだんに使われたものなのだろう。芸術まで高めた魔術、とも言える。
 その一部というか、幻想でもそうそう集めることのかなわぬ名職人たちの作品をコレクションしているのが今回の依頼人であり、説明のついでとしてコレクションのスラカボックスを見せて貰ったものである。
「あんなものを集めるなんて、いい趣味をもった貴族さんだわ」
 『混紡』シーヴァ・ケララ(p3p001557)は五十センチもない金色の箱から繰り出される重厚な演劇を思い出してうっとりした。それこそしっかりとした劇を一本見終わったような感動と心地よい疲労に包まれるものである。
「この件が終わったら、見せて貰いたいものよね」
「それについちゃおおむね同意見だが……」
 『特異運命座標』ティバン・イグニス(p3p000458)が自分の頭に手をやった。
「こんな山奥で守られたもの、本当に大丈夫なのか? やばいのが出てこないといいが」
 まあ依頼は依頼だ。そう言って、ディバンは手袋をしっかりとはめ直した。

 『コッペリアの白棺』が納められているという建物は山の奥にある。
 それを突き止めた依頼人によれば、施設の中ではオモチャの兵隊がゴーレムとなってスカラボックスを守っているという。
「さあて、久々にゴーレム退治と洒落込むとするかねぇ」
 『暴牛』Morgux(p3p004514)は破壊力のすごそうな魔剣を背負い、気合いを入れ直していた。
 うーんと唸る『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)。
「ゴーレムといってもオモチャの兵隊らしいが……油断はできんか。しかし将軍、将軍ねえ……」
 軍人的になにやら思うことがあるのか、エイヴァンは口元をゆがめた。
 このゴーレムを配置した者、そして建物を作った者は、スカラボックスを守る対象に『軍人』を求めたということだろうか。
 ということは、逆に考えれば……。
 『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)が口元に手を当てた。
「機械仕掛けのおもちゃの番人か。中々ユニークで面白いけれど、食えたものではないね。私の趣味ではないけれど、まあ良い腕試しになるだろう」
「ん? ああ、そうだな」
「折角の機会だ。楽しませてもらおうじゃないか」
 ナイフとフォークを模した槍をくるくるとやって、マルベートはすこし機嫌を良くした。
「おもちゃが玩具を守っているなんて中々ユニークね。面白いお仕事になりそうだわ。楽しんでいきましょう」
 『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)が、横を歩く『夜鷹』エーリカ・マルトリッツ(p3p000117)にほほえみかけた。
 どこか照れたように目を伏せるエーリカ。
 胸を押さえている様子にいじらしさを感じたのか、リノはくすくすと笑った。
「勿体ないわね、可愛い顔をしてるのに。微笑んだらきっと、夜明けに咲く花のように可憐でしょうに」
 言われて、エーリカはフードの端を引っ張った。
「しゃらー!」
 『High Score』シュリエ(p3p004298)が変なかけ声を放った。
「ゲームで同時に撃破が必要だったりパーティをチーム分けする展開ってちょっとわくわくするにゃ。偏って成長させてたらクソゲーになりかねないけど。我らがイレギュラーズにそんな心配は不要にゃ」
 シュリエはガッツポーズをとると、その拳を天井につきあげた。
「いくにゃー! にゃらー!」

●スカラボックスボックスと四つの部屋
 『コッペリアの白棺』はオモチャの兵隊に守られている。
 赤い軍服。赤い球鼻。赤い帽子。そして装剣されたライフル。
 まるでずっと昔からそこに配置されていたかのように巨大な鍵穴の前に立った兵隊たちは、イレギュラーズたちの到来に反応して一斉に足踏みをし、銃を回してこちらに狙いを定めた。
 そしてそれが当然であるかのように、発砲を始めた。

 発砲に対してリノは急カーブをかけて回避。続く幾度もの発砲を跳躍と回転で次々と回避した後、壁を走る勢いで回り込み、最後は顔めがけて接近した弾丸を金色のナイフではじき飛ばした。
「――」
 歯を見せて笑う。次の瞬間、リノのつま先が兵隊の側頭部に直撃した。
 派手に転倒し、転がっていく兵隊。
「エーリカっ」
 名前を呼ばれて、エーリカははっとして手を翳した。
 倒れた兵隊がかたかたと起き上がらんとした所に、遠術を連続で打ち込んでいく。
 地につけようとした腕が、足が、上げようとした頭が破壊され、バラバラになって飛んでいく。
 オモチャの兵隊のなかでも一回り大きく、そして派手な帽子を被った兵隊がいた。間違いない。それが『将軍』だろう。
 将軍は剣に炎を纏わせると、派手に振り回してまき散らしてきた。
 バク転をかけてエーリカのもとへ戻ってきたリノが、ピッと小指を立てるシグナルを出した。
 作戦通りに。ないしは約束通りに、という意味だ。エーリカは頷いて、キュアイービルの力を発動。降りかかる炎をリノから払ってゆく。

 発砲に対してシーヴァは踊るように打根と剣を振り回した。
 飛来する無数の弾丸が次々と弾かれてゆく。まるで見えない壁でもあるかのような防御だが、シーヴァはキュッと動きをとめて打根を放った。
 兵隊の顔面に突き刺さる。慌てたように掴み、抜こうとする兵隊。
 だがそんな隙など与えない。
 Morguxが踏み込み一歩で剣をスイング。距離は大幅に開いていたが、衝撃だけが兵隊を横一文字に切断した。
 慌てた様子のまま切断され、転がる兵隊。
「フン、兵隊は大した事ねえな。そんなに時間も掛からず、直ぐに終わっちまった。さて残るは将軍か。少しは歯応えがありそうだな」
 発砲が集中。
 Morguxは剣を盾にしながら後退し、飛翔斬で反撃していく。
 一方のシーヴァも距離をとり、打根を投げては返しを続けていく。
 ずんぐりとした屈強そうな『将軍』が地面に拳をつけ、こちらに突撃をしかけてきた。
 ショルダータックル。しかも肩からはトゲが突きだした。
 Morguxとシーヴァはそれぞれ剣を盾がわりにして受け止め、足を踏ん張った。
 あまりのパワーにぐいぐいと押し込まれる。
 しかし壁際まで押し込まれること無く停止。
 二人はちらりとお互いの顔をみやった。
「前のめりに行きましょう」
「わかった」

 発砲に対してシュリエはまさかの正面突破。
 腹や肩に着弾するも、かまうもんかとばかりに相手に詰め寄り、赤い球状の鼻をがしりと掴んだ。
「同じ人形でもわらわとは出来が違うにゃ、出来が!」
 エネルギー伝達。そして暴走。まるで電流が走ったかのごとく跳ね暴れ、ひどく無防備な状態へと成り下がった。
「いいぞ、そのままそのまま」
 エイヴァンは適正な距離をたもってボウガンを構えると、兵隊にヘッドショットをきめた。
 シュリエの手から数センチ先だというのに味方に当てることなく見事に射貫く。兵隊の頭だけが破壊され、よたよたとしたあとそれこそ壊れたオモチャのように倒れた。
「オモチャの兵隊に脳みそがあるとは思わないが。派手だろ?」
「にゃっ」
 親指を立ててニヤリとするシュリエ。
 対して兵隊たちは平たく隊列を組んで突撃。バヨネットで突くつもりだ。
 が、それが届くよりも早く兵隊の頭に巨大な三叉槍――もといディナーフォークが突き刺さった。
 のけぞる一瞬。
 詰める距離。
 マルベートはコウモリのような翼を広げると、巨大なディナーフォークを別の兵隊の胸に突き立てた。
「食べられないのが残念」
 まるで生き物のようにびくびくと暴れる姿に、マルベートは上唇を舐めた。
 そこへ突っ込んでくる『将軍』
 膝立ちでもするように姿勢になると、膝にあったローラーを回転させ高速で距離をつめてくる。
 マルベートはナイフを引き抜いて一閃。跳躍によってかわす将軍。
 素早く狙いをつけて矢を放つエイヴァン。
 空中で胴体から上を回転させて弾く将軍。
 着地点はまさかのシュリエ。その顔面だった。
「んに゛ゃ!?」
 おかしな声をあげてひっくりかえるシュリエ。
 将軍は彼女を轢いた末に部屋の端まで走り、そして急速にターンをかけてきた。
「大事な顔を……ゆるさねーにゃ!」
 手から爪型のオーラを露出させ、シュリエは牙をむいた。

 発砲に対して真正面から突撃するティバン。
 そしてリロードする兵隊の胸に、ブラッディスピアを深々と突き刺した。
 このフロアの兵隊は数が多い。
 すぐさまこちらを囲み、射撃による集中攻撃をしかけてきた。
 対してティバンは後ろに目があるかのような機敏さで振り返り、飛来する弾丸を払った。
 弾幕が勢いを増してゆく。
 こちらが攻撃体勢を整える間、兵隊たちは一度『将軍』を扇状に囲むような陣形をとったが、その時に強化がなされたのだろうか。
「敵が重ならねえな」
 リッターブリッツのR1射程の間に別の兵隊が重なってくれればまとめて貫けるので積極的に狙つつもりだったが、兵隊の基本攻撃射程はR0とR3。あまり重なってはくれないようだ。
「問題ない」
 エクスマリアは髪を一度ぶわりと広げると、顔の前に束ねるように集めた。
 三つ編みが三つ編みをし更に三つ編みを重ね強靱なケプラーケーブルと化した髪が、その中央に筒を作り砲台と化した。
 R0とR3。同時に打ち抜くラインをとる。最終着弾地点は『将軍』だ。
「巻き込める」
 エクスマリアはど派手な砲撃を発射した。
 このときティバンとエクスマリアの攻撃の交差点上にいた兵隊は派手に吹き飛び、よろよろとライフルを杖のようにつく。
 メルディナはここぞとばかりにマギシュートを放つと、兵隊の胸を打ち抜いて破壊した。
 残る多くの兵隊たちが、狙いを定める。
 メルディナは対抗するようにマギシュートの狙いをつけ、首を小さく傾げた。

 あちこちに倒れる兵隊たち。
 その上を飛び越えて、剣に炎を纏わせた将軍が飛びかかる。
 狙いはエーリカだ。彼女の能力に脅威度を高く見たのか、それともたまたまか。
 どちらにせよ防御行動が追いつかない。まずは受けるべきか――と考えた所で、横からリノが飛び込んできた。
 エーリカを突き飛ばし、斬撃のラインへ躍り出る。
 直撃。かと思いきや、銀色のナイフを月のラインのように振って斬撃をいなした。
 熱と衝撃だけは逃がしきれないようで、リノの頬にやけどがはしる。
「頼りにしてるわよ、エーリカ。私が自由に踊れるようにそこに居てちょうだい。その代わり、アナタが存分に力を振るえるよう守ってあげるわ」
「……」
 何か言おうと口を小さくぱくぱくとさせるエーリカ。
 リノは最初のときと同じように、やけどのある頬で笑いかけた。
「全部終わったらお茶にでも行きましょうね」
 エーリカはフードの端をつまんで、そして癒やしの歌を短く詠唱した。
「うしろはまかせて。あなたが前だけを見つめていられるように。わたしも、謡い続けるから」
 エーリカの回復を受けて、リノは将軍と真正面から打ち合った。
 踊るように、誘うように、そして殺すように。
 最後にはリノのナイフが将軍の胸をえぐり、中にはいっていた歯車を引っこ抜いた。
 崩れ落ちる将軍。その背にささっていた歯車を抜くと、丁度鍵のようになっていた。
「鍵穴に……」
 指をさすエーリカ。
 この鍵をさせばよいのか。皆もまたうまくやっていれば、スカラボックスが手に入るのか。
「そうねぇ、あまりおもちゃに興味はないのよね。でもアナタが笑顔になってくれるものが入っていてくれたら嬉しいわ。ねぇエーリカ、月草色の可愛いヒト」
 傷だらけの姿で、しかしリノは美しく笑った。
「一度くらい笑ってくれてもイイんじゃない?」
 エーリカは深く顔と耳を下げて、しかし唇は笑顔の形をしていた。

 剣が同時に叩き込まれる。
 将軍の巨躯に、同時に。
 シーヴァの大剣praśamanaとMorguxの魔剣ロア。
 常人が死にかねない斬撃をくらってなお、将軍の頑丈なボディはろくに傷つかなかった。
「堅さだけなら今まで相手してきた奴の中でも最高か?」
 そんなことは分かっている。むしろ大事なのはここからだ。
「ククク、長い戦いになりそうだ……! 暫く楽しませて貰うぜ!」
「そうね」
 長く時間をかけるつもりはない。そんなリソースもない。
 ならば二人がとる手段なんて決まっていた。
 シーヴァは打根の先端にオーラの爆弾を発生させ、将軍のわずかに空いた隙間へとねじ込んだ。
「――!」
 Morguxが剣をふりあげ、只管に打撃をいれまくる。
 大きくへこんだボディ。内側でおこる爆発。そしてその衝撃は二人へ跳ね返り、シーヴァとMorguxは派手に吹き飛んだ。
 壁に叩き付けられる。
 肩から地面へ落ちる。
 ぐらぐらとする頭と視界。起こしてみると、小さく炎と煙をあげる将軍の姿と、その背からのびるゼンマイ状の鍵が見えた。
 動いているのは、こちらの二人だけのようだ。
 二人は頷きあい、鍵を抜いて鍵穴へと差し込む。
「良い戦いだった」
「作者はこの作品に、どんな想いを籠めたのかしら」

「逃げる上にひらひら避けるボスほどストレス溜まるやつもねーにゃ!」
 うりゃりゃーと言って掌底ラッシュを仕掛けるシュリエ。
 対して将軍はぐにゃぐにゃとした上半身の動きとステップでたくみに攻撃をかわし、ホイールの回る膝蹴りでシュリエを高く蹴り飛ばしてきた。
「この怒りをパワーにかえて!」
 空中にいながら手を翳すシュリエ。
 途端にオーラの手形が将軍の首についた。
 ラッシュの間に一度だけ触れていた箇所だ。
「にゃんにゃんメルシーボム!」
 空中間接気功背負い投げ。
 派手に天井をこすりながら地面に叩き付けられた将軍が、体勢をととのえようとバウンドする。
「我が名はマルベート! 将軍よ、君も兵を率いる立場であるならば、配下に恥じぬ戦いをし給え! 滅びを賭した高潔なる蛮勇を見せてみよ!」
 その隙を逃すまいと突撃するマルベート。
 彼女の繰り出した大きなディナーフォークが相手の腕を貫き、壁へと縫い付けた。
「「今だ!」」
 エイヴァンはここぞとばかりにボウガンを乱射。乱射に乱射を加え、将軍にデスダンスを踊らせた。
 崩れ落ちるボディの中に残ったのは、ゼンマイ型の鍵だけだった。

 髪を束ね、砲撃を放つエクスマリア。
 槍を構え、突撃を繰り出すティバン。
 それぞれの攻撃が兵隊を撃破し、ばらばらに破壊させてゆく。
 大きく距離をとったメルディナは、マギシュートを次々と発射した。
 弧を描いて兵隊へと着弾する魔術の砲弾。
 対して兵隊たちはエクスマリアやティバンを只管に集中攻撃することで対抗していった。
 特にエクスマリアは回避が苦手でファンブル値も高く、砲撃に全力を注いでいたためにかなりの痛手になった。
 だが三人はギリギリまで力を合わせ、最後は互いをあえて犠牲にしながら兵隊を潰しきり……。
「これが、そうか」
 ティバンは満身創痍で将軍の背中にささっていた鍵をひっこぬいた。
「ああ、意志無きゴーレム達よ。貴方達の役目を、終わらせてしまいました。せめて、安らかに眠って下さい」
 手を合わせ祈りを捧げるメルディナ。
 エクスマリアは顔をあげ、鍵穴を見やった。

●コッペリアの白棺
 10人のイレギュラーズが協力して持ち帰ったスカラボックス『コッペリアの白棺』。
 依頼人のガニエル氏に鑑賞させてほしいことを伝えると、趣味の理解はうれしいと快諾してくれた。
 一度鑑賞するのにとんでもない金額がかかりそうな品だが、それを求めない気さくさである。
 当作はスカラボックス。箱庭的人形劇だ。
 陰気な人形職人とその近所に住む男女の話。そして人形職人の窓辺にある、美しい人形の話。
 四つに分かれた演目の内容を全て記述することは難しいが、結末を述べるとこうだ。
 男女は結ばれ、人形は壊され、人形職人はただ呆然とバラバラになった人形を見る。そして、幕は閉じるのだ。
 あの男の魂を奪えば、人形は人間になれたのに。と。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――congratulation!

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