PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<グランドウォークライ>『HERO』として

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 激しく駆動する『機動要塞ギアバジリカ』――慣れに慣れたバジリカの動きに揺られながら、人々は別の作業を続けていた。
 現実の混沌では鉄帝国皇帝であるヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズは、この鋼鉄内乱を制する次の一手ともいうべき『帝都争奪』がため、ギアバジリカを帝都に向け急速に侵攻させている。
 そうして進む中、突如として帝都はピンク色の水晶に覆いつくされ、帝都そのものがシャドーレギオンのものへと変貌を遂げた。
 自らの王国を築くため、シャドーレギオンを生みだし、内乱を誘発させた黒幕、『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュが全身全霊を振り絞って作り上げたそれの中心、首都の中枢たる城は『ディアナキャッスル』とでもいうべき形へ変質している。
 黒鉄の鉄騎は、慌ただしく動き回り、帝都スティールグラード――ひいてはディアナキャッスルへの侵攻せんとする多くのゼシュテリウスが勇士たちとは異なり、静かに立っていた。
「……あれ? ライザー?」
 単眼カメラを巡らせ、『カニ』Ignat(p3x002377)は黒鉄の鉄騎を見て声をかけた。
「帝都攻撃にはいかないのか? キミが戦っていたラド・バウだって影響を受けてピンク水晶になってるかもよ?」
「Ignat……あぁ、私は今回、ここに残る予定だ」
「そうなのか? でも、どうして? まさかとは思うけど、オレ達と戦った傷がまだ癒えてないわけもないだろ?」
「ああ、もちろん、万全の状態だ。ただ……この帝都決戦は拠点であるこの要塞ごと帝都に向かう。
 そうなると、『もしも敵の方からこちらに近づく者が居たら、防衛に徹する者も必要』だと思う」
「そういうことか!」
「それに、このギアバジリカの中にも、人々がいる。私はまず、その人々を守ることから始めようと思う」
 その時だった。
 キィィィィンと耳を衝くようなハウリングが響き渡り、思わず不快感にそちらを向けば、スピーカーから音が響く。
『ギアバジリカへ接近中の敵部隊を確認しました。
 対象の直線上には、ギアバジリカ南西居住区画が含まれます。
 該当区画にいる非戦闘員は至急内地へ移動しなさい。
 繰り返す――――』
「――噂をすれば、なんとやらのようだ」
 そう言って走り出そうとしたマスクド・ライザーへ、Ignatは声をかけた。
「ちょうどいい、オレもちょっとだけ準備運動がしたいから、一緒に行くよ! いいだろ?」
「心強い!」
 そういうや2人は速度を上げて走り出した。


 撤退する人々の波の邪魔にならないよう、建物の上を跳び越えて駆け抜けた2人の周囲へ、同じようにそちらへ向かう6つの影が躍る。
 波を跳び越えに跳び越え、その視界に小さなぽつぽつと影が見え始めた。
 地上にいるその影が恐らくは敵なのだろう。
 そんなことを見定めながら、影の方から何かが飛翔する。
 それらは急な放物線を描いて高さを乗り越え――末端へと着弾する。
 それはギアバジリカが繰り出す『黒鉄十字柩(エクスギア)』とも似た代物なのだろう。
 兵士を前線へ繰り出すための砲弾だったのだ。
「こちらの技術を模倣したか、ギアバジリカの技術と同じ目論見の下で作られたか……」
「どっちにしろ、ここで守れば奥へ逃げてる人達を守ることができる。行くよ、ライザー!」
「あぁ――!!」
 Ignatの単眼レンズが紅く輝くのに呼応するようにライザーの翠に輝くラインが激しく輝いた。
「迎撃部隊を発見――人数は8、殲滅可能と判断。総員、戦闘態勢――charge!!」
 敵部隊の指揮官らしき男が、拡声器に声を当て、指示を発した。
 それに応じるようにパワードスーツに身を着飾った兵士達が一斉にこちら目掛けて銃口を向け、長柄武器を持つ者達が構えて突撃してくる。
 その数ざっと40。ふと周囲を見れば、敵を狙いを付ける位置に計4つの砲座が見えた。
 圧倒的不利を解消するには、あれを有効活用する必要性がありそうだ。

GMコメント

 こんばんは、春野紅葉です。
 グランドウォークライをもう1本。
 こちらは、ギアバジリカ内部での防衛戦になります。
 抜かれてしまうと非戦闘員への被害が出てしまう可能性が高いです。
 なお、特殊ルールが存在します。

●オーダー
 侵入した敵部隊の殲滅

●フィールド
 ギアバジリカ内部の居住地域の1つ。
 フィールドには数多くの住宅や店舗が立ち並んでおり、
 敵軍を見渡せる位置にある建物の屋上に計4つの砲座が取り付けられています。
 地上のフィールドはやや狭く、横列で4人並ぶと手一杯になります。
 双方ともに展開が難しいかもしれません。
 数の有利が働くまでは乱戦にはやや不向きです。

●エネミーデータ
・マルトリッツ大隊
 全員が軽装備で固められた機動戦に秀でた強襲部隊です。
 防技は少なめですが反応はやや高く、攻撃能力も優秀です。
 シャドーレギオン製の偽物なので、容赦なく倒して構いません。

・『駆り立てる猛将』マルトリッツ
 敵軍マルトリッツ大隊の総大将。シャドーレギオン製の偽物であり、倒せば消滅します。
 長剣タイプの軍刀と、副装備としてガントレットを持ちます。
 非常に強力な近接戦闘能力を持ち、猛将の名に恥じぬ前線での猛攻を加えてきます。

・軽歩兵×20
 ライフルと軍刀を装備し、パワードスーツに身を包んだ敵の主力部隊です。
 半数はこれです。戦闘の開始から少しの間はライフルで攻撃を重ね、乱戦となった後は軍刀による近接攻撃を試みます。

・銃剣兵×10
 ライフル系の銃の下に短剣を取り付けた歩兵の一種です。
 軽歩兵と同様に弾幕をぶちまけてきます。
 近接では銃剣術を繰り出してきます。

・軽槍兵×10
 軽装備の槍兵です。便宜上は槍と呼びますが、獲物はハルバードやら斧やら長柄物全般です。
 近距離を保ち、前線の構築を試みてきます。

●友軍データ
『黒鉄を乗り越えた勇士』マスクド・ライザー
 ラドバウの闘士。イレギュラーズの手により、『DARK†WISH』から開放されたライザーです。
 衣装こそ『DARK†WISH』時代から変わりませんが、精神性はそれ以前のまじめで優しく『ヒーロー』であろうとする人物に戻っています。
 寧ろ、『DARK†WISH』時代の戦闘技能だけ受け継ぎ強化されてさえいます。
 戦闘スタイルは【変幻】【多重影】【恍惚】などを駆使して手数と反応で攻め立てるパワーファイターです。
 必殺技のライザーキックは健在です。

 ライザーキック:物超域 威力特大 【万能】【崩れ】【体勢不利】【業炎】【炎獄】

●特殊ルール『砲座迎撃』
 戦場に計4つ取り付けられた迎撃用の砲座です。
 命中率のみ要求されますが、1ターンにつき1度の主行動で2回、下記の砲撃に攻撃方法を変更します。
 弾薬に限りがありますが、有効活用すれば数的不利の解消に大いに役立ちます。
 なお、戦闘開始時点でこの砲座より迎撃する方は開始ターン時点で迎撃用の砲座にいても構いません。

<迎撃砲火>
 超遠範 威力大 【万能】【飛】【足止】【泥沼】【停滞】

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <グランドウォークライ>『HERO』として完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月25日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルチアナ(p3x000291)
聖女
雀青(p3x002007)
屋上の約束
Ignat(p3x002377)
アンジャネーヤ
カイト(p3x007128)
結界師のひとりしばい
とっかり仮面(p3x007195)
よう(´・ω・`)こそ
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
ミミサキ(p3x009818)
うわキツ
ウルファ(p3x009914)
風狼

リプレイ


「おー、やっぱり砲弾になって来るんだな」
 弾丸の束になって着弾した敵を眺め『ガジェッティア』雀青(p3x002007)は思わず感嘆の声を漏らす。
(仮想領域内とはいえまたコイツが動く様を拝む事になるとは……)
 続けて周囲を見渡して、ギアバジリカの姿を眺めれば。
(それでも似たようなシロモノや覆される可能性があるって言うんだから正しくご都合……ってとこか?
 まぁ思う所はあれど、今は目の前に集中しようか)
 視線を前へ。なにせ敵の数は多い。
「ライザー! 敵の後衛は砲座の皆が吹き飛ばしてくれる! オレたちはここで敵を押し留めるよ!」
 女性体のアバターへと姿を変えた『カニ』Ignat(p3x002377)は黒い姿のライザーに声をかける。
「あぁ! ここから先へは行かせられない!」
 ギュッと拳を握ったライザーの全身から闘気が燃え上がる。
「だがまずは――撃てるだけ撃つ、だったな」
 その脚へ禍々しさを帯びた力が満ちていく。
「あー…やだやだ。私、拠点に攻め入るのは得意でも守るのは微妙いんでスよねー……
 だってほら。今回みたいに守るべきものってやつが出てくるわけですし?」
 はぁ、とため息つきつつ『開けてください』ミミサキ(p3x009818)は少しばかり前気味に設置?されている。
 一見すると宝箱の類にしか見えぬその身体を圧しだすように前へ。
「なるほど、防衛戦ねぇ…」
 屋上に据え付けられた砲座にて地上を見やる『聖女』ルチアナ(p3x000291)は独り言ちる。
(そもそも、このR.O.Oに於いてのすべての事象は疑似世界であり、このフィールドも敵味方もただのデータでしかない。
 そこに血肉はない。生命もない。介入する私達でさえ、意識だけこの世界に介入してもやはりデータ)
 ――とはいえ。
「『疑似』という認識はこちら側のものであって、彼ら自身はこの世界で『生きている』ならば。
 『人類の為に存在している』勇者として、彼らを守ることは吝かではないわ」
 砲座に座り、静かに照準を迫りくる数多の敵へ向けた。
(んー、こういうヒーロー然とした奴がパワーアップして共に戦ってくれるってのは、
 俺の中の男子的な何かが刺激される感じはあんな!)
 砲台に立ち、『結界師のひとりしばい』カイト(p3x007128)は眼下のマスクド・ライザーを見た。
「正義のヒーローとっかり仮面ただいま参上だぜ!
 マスクド・ライザー! オイラとお前でヒーロータッグだぜ! 援護は任せてくれな!」
 砲座にて声をかけた『ワモン・C・デルモンテのアバター』とっかり仮面(p3x007195)にライザーが振り返る。
 そのままサムズアップで答えた彼に頷いて、とっかり仮面は砲座にて意識を集中する。
「うむ、戦争じゃ。多少の犠牲は覚悟の上とは言え無闇な非戦闘員の殺傷はいただけぬな! 国は民から、じゃ」
 砲座に陣取る『風狼』ウルファ(p3x009914)は尊大にそう告げて、静かに砲門を眼下に向ける。
「この先には行かせないんだよー?」
 間延びした声で『深海に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)が言えば、ふわふわとクラゲ型の火の玉がその周囲を揺らめいている。
 ふわふわ漂うクラゲを思わせるエイラの金色の瞳は怪しく敵陣を射抜。
 横四列に近づいてくるる敵めがけ、クラゲ糜をけしかけた。
 風に乗って彷徨う句が下型の火の玉が狭い道を迸り、範囲内にゆらゆらと揺らめき踊れば、第一陣とでもいえる敵兵たちがエイラの方へと誘導されていく。
「じゃあ俺は『お膳立て』に徹させて貰いますかね――何せ、デバッファーってのはそういう仕事だしな!」
 それに続けて砲座を敵の方へ構えたカイトが引き金を弾いた。
(可能なら向こうの総大将を巻き込んで『封殺』は狙っときたいが――)
 敵の総大将を含んだ多くを封じ込めることができれば、こちらの優位になる。
 問題は勝手の違うこの武器でそれができるかどうか。
 確かな衝撃を受けながらも放たれた弾丸は、真っすぐに敵陣を貫いていく。
 弾丸は着弾によるダメージに加え、周囲を貫くことで敵の動きを著しく足止めしていく。
「食らいなさいな」
 それに若干の遅れを以って続いたルチアナの砲撃が飛翔する。
 疎らに動き出した敵陣の第一波がやや後退し、それに入れ替わるように進んできた第二波へ、砲弾の壁が突き進む。
「怯むな! 砲撃を無視して突き進め!」
 吠えるように叫ぶ男が、第三波を引き連れて前線めがけて突っ込んでくる。
 それの一団がイレギュラーズの前衛へと到達する頃、とっかり仮面の砲座が火を噴いた。
「おらおらおらぁ! どんどんいくぜ!」
 その砲撃は戦場のやや後方、弾幕を形成して乱戦への支援を行なおうとしていた軽歩兵と銃剣兵めがけてばらまかれていく。
 烈しい銃撃戦を受けた敵の弾幕が、とっかり仮面の方にも迎撃の射線を描き始める。
「っだらぁぁ!」
 敵の大将首らしき男が、雄叫びを上げながら長剣を振り下ろす。
 真っすぐな軌跡を描くそれがそこはかとなくキラキラと輝くミミサキの身体へ吸い込まれていく。
 その一連の動きに軽槍兵達が続けて襲い掛かってくる。
 ミミサキはそれらを受け切りながら、HPゲージのヘリを確かめると、カタカタと動いて微かに箱の入り口を開けた。
「いけ、ライザー!」
 Ignatが声を上げる。
 それに答えるように、充実した闘気を足に集束させたライザーが走り出して跳躍。
 空中でくるりと一回転して、そのまま空から飛び蹴りを叩き込んだ。
 銃剣兵と軽歩兵へと真っすぐに突っ込んだ蹴撃は熱を帯びて周囲を焼き、敵の動きを崩してから戻ってくる。
 気持ちのいい笑みを浮かべたIgnatは視線を敵陣へ向け。
「FIRE IN THE HOLE!ここから先は通行止めなので悪しからず!吹き飛ばされたいヤツからかかって来なよ!」
 そのままIgnatが振り抜いたのは、鋏のような形状を2本の大剣。
 美し軌跡を描く斬撃が至近距離にいた軽槍兵へと振り下ろされる。
 鮮やかな斬撃は文字通りの鋏のように左右、上下から連撃を以って切り刻んでいく。
「なんだか知らんが模造品って話だし、遠慮なく――」
 雀青は一気に跳びこむようにして走り出す。
 赤く澄んだ霧が立ち込め、髪の色を灼髪に彩れば、その手には赤く輝く剣が握られている。
「斬り伏せさせて貰おう」
 踏み込みと同時、横に払うようにして叩きつけられた斬撃は始まりの赤。
 びりりと散る兵のグラフィックを見ながら、体勢を立て直す。


 残響が鳴り響く。
 銃声響く戦場で、雀青は一度後退していた。
 苛烈な砲撃の音に紛れるように、振り払うは青き音色。
 踏み込みと同時に放った斬撃は、青色の音色となって直線上を迸る。
 それは酷く濁って見え、まるで大鎌のように、複数の敵兵を巻き込み、精神を抉り取る。
 バチバチと電撃のエフェクトが戦場を眩く彩り爆ぜる。
「クラゲには毒があるんだよ~」
 反撃の電流に傷を増やす敵を見ながら、エイラは穏やかにそう告げた。
 穏やかなその瞳が瞬いて、金色に妖しく光を放つ。
 それは双眼を見せつけるようにして目の前に立つ銃剣兵の動きを縛り付けた。
 メデューサの双眸に魅入られたそいつが剣身を向けて構えた。
 プシュッと空砲が鳴るのを確認して、カイトは一気に建物の上から跳んだ。
 その過程で素早く構築した術式を最前衛で暴れようとするマルトリッツへ向けた。
「俺はあくまで脇役で下支え。主役級は他にいらっしゃるってモンだ」
 投擲される楔型の術式がマルトリッツの周囲に突き立ち、冷気を伴い結界として発現する。
 締め上げ、凍てつく呪いの剣を、振り払わんとせんばかりにマルトリッツが吼えた。
(この様子なら……ここからでも通りそうね)
 その手に宿るは濃密な魔力。
 静かに眼下の様子を確かめて、ルチアナはその手に魔力を集めていく。
 掌に集めた魔力を静かに投擲すれば、それはさながら矢のように真っすぐに戦場を疾走し、動きを阻害されているマルトリッツへ炸裂。
 破裂と同時、周囲を蝕む濃密なる魔力が狂気と共に毒性をもたらした。
「しぶといわね……」
 今の攻撃でやっと半分ほどまでゲージが減った。
 猛るボスはまだ倒れなさそうだ。
「砲台の弾がキレてもオイラにゃこいつがあるぜ!」
 同様に弾切れを確認したとっかり仮面は、砲座の前に立つや今度は自ら背負うガトリング砲から弾丸をぶちまけた。
 それは一直線上をあっという間に貫く砲撃。
 既にライフルを持つ軽歩兵も銃剣兵も乱戦に近いが、知ったこと無しとばかりに弾幕を形成する。
「おらおらー! こっちの弾は無限にあるぜー!」
 ばらまく弾丸に2人のエネミーがデータへ変わって消えていく。
「いただきまス」
 ぱっくりと口を開かせたミミサキは絶えず殴ってくるマルトリッツへ幾度目かになる反撃を試みた。
 がぶりと噛みつき生命力を吸収すれば、雄叫びを上げたマルトリッツに振りほどかれた。
 その瞳には明確な怒りが感じとれた。
「やっぱりキミは人の声援を受けながら戦う姿がよく似合うよライザー! オレも負けてられないね!」
 近くにいた敵兵を打ち倒したライザーを見て頷くIgnatは大剣を構えなおすと、一気に振り抜いた。
 斬撃は火花を散らし閃光となって飛翔。
 鮮やかな輝きを放ち、銃剣兵の1人の身体を穿つ。
 熱量を帯びた斬撃に身を焼かれ、切り裂かれたそれはその場で消滅する。

「おおおお!!」
 激昂が一つ。マルトリッツが雄叫びを上げたかと思うと、一番近くにいたミミサキに拳を叩きつけた。
 ガントレットを付けて振り下ろされた2度の殴打にミミックの身体がみしりと軋みをあげる。
「退路は無い!! 屍を越えよ!!」
 奮い立つようなマルトリッツの声に呼応するように、敵兵たちが雄叫びを上げた。

 戦いは順調に進んでいた。形勢の不利は既に無く、敵の数も半数を割っている。
 空中へと描き出された死神の瞳が空を覆う。
「死神の瞳が汝を映していると知れ」
 空へと描き出された紋章に魔力を収束させたウルファは静かに言葉を残した。
 紋章の中央、閉じた瞼が重々しく開けば、黒き死の魔力が降り注いだ。
 エイラは反撃も駆使しつつ敵の多くの注意を引いていた。
 クラゲの不死性を体現するかのような悠然とした姿で敵の攻撃を受け続けている。
 圧倒的な防御性能を前に、かなりの優位は保ち続けたがそれでも圧倒的な数の差がある。
 その身体に刻まれる傷は不滅を示す真紅の輝きを越えて致命的な水準に到達しつつあった。
「ヒーローは独りじゃないんだよぉ」
 その身体を真紅に彩りながら、エイラは穏やかな調子のままでそう告げて再びクラゲ火を叩きつけた。
 残り僅かな敵が誘われて近づいてくる。
「主役の行動がお前らの侵攻如きで止まる筈がないんだよ!」
 カイトの術式は未だ衰えを知らず。
 結界に引きずられながらなお暴れるマルトリッツ目掛け駄目押しの呪剣を叩きつけた。
「めざわりな――奴だ!」
 雄叫びを上げたマルトリッツはそれを振り払おうとして、楔にその身体を絡めとられていく。
 そこへ向けて、ライザーが走り抜けていく様を、カイトは目に焼き付けた。
 鮮やかな黒き閃光が、カイトが描いた楔の結界の向こう側へ駆けていく。
「任せたぜ! 今日の主役はお前だー!」
 走り出したライザーの進路、遮るようにして立ちふさがった軽槍兵をまとめて束ねるような射線を描き、とっかり仮面はガトリング砲の引き金を弾いた。
 爆ぜるような音と共に打ち出された弾幕に撃ち抜かれ、数多の風穴を作った2人の軽槍兵がデータの藻屑に変えるのと同時、そこをライザーが走り抜けていく。
「それじゃあ、私も手伝いましょうか」
 濃密な魔力のオーラを収束させながら、ルチアナは静かに笑む。
「――どちらにせよ、将を落とせばあとは烏合の衆でしょう?」
 聖女は残酷にも見える笑みを浮かべて手を振り下ろした。
 鮮やかな閃光を放ち、叩きつけられた魔力は端にマルトリッツを抑えながら範囲内に狂気をもたらした。
「マ…マ……マリトッツォ? だったか。終わりだ」
 微妙に美味しそうな名前になった敵将めがけ、雀青は剣を走らせた。
 踏み込みと共に赤い霧を帯びた剣身は鮮やかな音を鳴らして迸る。
 美しい軌跡を描く斬撃は真っすぐにマルトリッツの身体を斜めに切り裂いた。
 前線より後退していたミミサキはぱかりと自らの蓋を開いていた。
 マルトリッツを含む猛攻の多くはエイラとミミサキに集中していたが、ボス個体を相手取っていたミミサキの方が苛烈さにおいては若干の重さがあった。
「ふぃ~やだやだ。これだから守るのは……」
 箱の中から飛び出た管をマルトリッツ目掛けてけしかけ、先端を突き刺せば、ちゅうちゅうとHPを吸い取っていく。
「負けられない――そうだよな、ライザー!」
 データに過ぎぬ存在だとしても、同志ともいえる男と共にもう一度。
 Ignatの握る大剣には不思議と力が籠る。
 連撃が停止するその刹那、高揚感に導かれるように大剣を振り払った。
 美しい輝きを放ちながらマルトリッツへ斬撃が疾走、炸裂する。
 たたらを踏んだマルトリッツの両腕が、斬撃によって消し飛ばされた。

 マルトリッツの両腕が消し飛び、事実上の戦闘不能と化したところから、戦いの形勢は決していた。
 指揮官の損失に加え、そもそも退路なくして進撃してきたこともあって、残り数人となった敵は瞬く間に掃討されていった。
 戦いが終わりを告げるその時、とっかり仮面はライザーへと声をかけた。
「さぁ! びしっと決めポーズ頼むぞー!」
「あぁ――!」
 頷きあって、2人がタッグポーズを決めれば、どこかでスクショの音が鳴った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お待たせいたしました。
お疲れさまでしたイレギュラーズ。

PAGETOPPAGEBOTTOM