PandoraPartyProject

シナリオ詳細

トラップ・トランプ・トルーパー

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 紫のサフラン、桃のダマスクローズ、緑のアブサン。
 生クリームのような夜を飾るのは下品なほど眩いネオン。
 歌姫のバラードをBGMに曲線のグラスに注がれる月色のシャンパン。
「賭けてください/プレイス・ユア・ベット」
 ディーラーの指が緑の台の上を滑ると夢の如き悲喜劇が幕をあける。
 積み上げられる大量のチップが象徴するのは退廃と歓楽。
 捲られるブラック&レッドのカードが象徴するのは富と没落。
 転がるダイスと777の機械は無情に沈黙する。
 勝者には栄光を、敗者には破滅を。
 かつては古臭い機械市と呼ばれていた『レストア』は、今では大抵のカジノにホテルと解体専門の病院が併設される魔窟の市と化していた。

「ユリック!! 市庁舎を占拠するなんて何を考えている!」
 真面目が背広を着たような、瘦せた男が豪華な社長室へと怒鳴り込んだ。
「おやおや、レストアの『元』市長さん。ご無事だったとは、つくづくアンタの悪運は異常だな」
 金をかけた悪趣味な摩天楼、カジノ『デメテル』の主ユリック・オーウェンは最上階から夜景と、燃える市庁舎を見下し嗤った。
「何を考えていると言われても。オレはアンタの言った事を忠実に守っただけさ。『此の街で一番の金持ちになれば、市長の座をわたす』とアンタは言った。だから、今日からレストアの市長はオレになった。何か文句あるかい?」
「そんな馬鹿な話があるか! あれは酒の席で言ったことだ。それに何年前のことだと思っている。あの頃はお前も真っ当な機械職人で……」
「だから無効だって? はは、馬鹿言っちゃいけない。オレの耳は特別でね。ちゃんとアンタの声を証拠として記録してある」
 機械仕掛けの耳を示しながらユリックは告げた。
「こんな横暴、市民が黙っちゃいない」
「黙らせるだけの金と力はあるさ。フフ、これで漸くレストアを戦争都市にできる」
「!」
「おい、元市長さんを丁重に連れていけ。みすぼらしいが仮にもエリートだ。臓器も高く売れるだろ」
「テッメェ、覚えてろよ!!」
 ――もう怒った……。
「ん?」
 扉が閉まる。
 ユリックの言葉の九割は嘘だが、一割は真実だ。
 すなわち『レストア元市長の悪運は異常』。
 まさかギャンブルをしない真面目な男にギャンブルの神が憑いているなど、誰が想像しただろうか。


「ギャンブルはお好き?」
「統計は好きかな?」
 手を繋いだ双子は両手を挙げ、wの文字を作って見せた。
「カジノを経営する悪者が権力を手に入れてしまってね」
「このままだと、世界が戦争で滅びてしまうの」
「君たちには彼の資金源を潰してきて欲しい」
「具体的に言えば、カジノ荒らしね!!」
 客として素直に店を荒らしても良し。
 ディーラーとしてユリックと協力関係にある商人からむしり取っても良し。 
「カジノに行ったことが無くても平気さ。なにせ此方にはギャンブルの神様がついているんだからね」
「さぁ、怪しまれないように変装しましょう!」 

NMコメント

全一章予定。

駒米と申します。
格好良いギャンブラー/ディーラーが見たかった。

・目標
ユリックが最上階で高笑いしている内に彼が経営するカジノを破産させましょう。
慣れていても、未経験でも、不思議な力で何となくカジノにとって不利な状況が訪れます。
【客】店のディーラーと勝負をします。
【ディーラー】ユリックの協力者を負かしたり、わざと店側に不利な状況を生み出します。
【トランプ】客やディーラーをサポートします。その他の行動をとる場合も此方を選択してください。

・舞台
『カジノ:デメテル』
機械市レストアに存在する、ホテルと解体用の病院を併設した巨大なカジノです。
お酒を飲むバーや歌や手品を愉しむ劇場などがあります。
大抵のゲームはありますが以下の四つが大ダメージを与えられます。

機械系【スロット】【ルーレット】
カード系【ポーカー】【ブラックジャック】

・プレイング例
【客】
舞台を見に来た観光客という体でナイトドレス姿。
適当に推したスロットマシーンが大当たり。大きく騒いでガードマンの気を逸らせておくから、今の内に他のテーブルでも仕掛けちゃって。

【ディーラー】
テーブルについた皆さん全員が顔見知りとは不思議なご縁。
では仲良くブラックジャックを始めましょう。相手の財布の中身を見極めて勝っているのだと言葉で勘違いさせて。さっ、臓器売り場はあちらでーす。

【トランプ】
監視カメラを不能にするため、守衛室やモニター室をこっそり占拠しちゃおう!
むこうも市庁舎を占拠したって言うんだから、別に良いよね?

  • トラップ・トランプ・トルーパー完了
  • NM名駒米
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月13日 19時45分
  • 章数1章
  • 総採用数7人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

久留見 みるく(p3p007631)
月輪

●TABLE p3p007631 

 なびく紫苑の長髪にウィステリアの花に似た編みこみが一房揺れる。
「カジノディーラーとして潜入なんてすっっごくクールじゃない……!」
 純白のブラウスについた通信機替わりの金釦を調整しながら『月輪』久留見 みるくは好戦的な眼差しを戦場へ向けた。
 首元を引き締めるネクタイに細身のベスト。長い脚を包むトロウザーは漆黒。ディーラーに変装したみるくは芸術品のような美しさだ。
「交代よ」

――なんか一般人の多重債務者っぽいのがいるわね。うん、あいつに勝たせましょ。

 卓に座った客を一瞥したみるくは頷いた。
「あたしの卓のブラインドは5000チップ。フォールド禁止の一発勝負」
 その言葉に客はざわめいたが女王のように高貴な紫瞳と目が合うと、気圧された様に口を噤んだ。
「みみっちい男なんてこの場所には相応しくないもの。勝てば一夜にして億万長者。負ければ地獄の地下労働」
「随分と気の強いお嬢さんだな」
 傲慢なユリックの知人らしくスーツの三人は乗り気である。よれたシャツを着た男だけが蒼褪めていた。
 みるくの口元を隠すカードの枚数は五枚。ポーカーとは言わば遊戯の皮をかぶった心理戦だ。前哨戦には既に勝利した。後は怯える羊を勝たせるだけだと艶やかに笑む。
 
「──さ、お客様。ヒリつくような夜を楽しみましょう?」

リザルト:外科医が借金を完済。デメテル病院の運営にダメージを与えました。

成否

成功


第1章 第2節

ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
謡うナーサリーライム

●MachineNo. p3p001802

「薔薇のような赤!」
「ミッドナイトブルー」
「キラキラ……」
 昔、こんな物語を読んでもらった事があったわねぇと『謡うナーサリーライム』ポシェティケト・フルートゥフルは境界案内人たちを温かく見つめた。お姫様のドレスの色で揉める妖精たちのお話。
「なら、全部着てしまいましょう」
「えっ」

 カジノを回遊する真っ赤に熟したピンヒール。霧のようにカールした白銀の髪が客の視線を奪う。
 モデルだろうか。長身を包むダークブルーのマーメイドドレス。銀河のようなビジューや真珠が、歩くたびに揺れていた。
 小さくてフワフワのカクテルバッグは勝利をつかむ黄金の砂色。ただよう煙草の煙に時折クシュンと鼻を鳴らしているようにも見えた。
「ふふ。どの遊びも良くわからないわねえ」
 流石の魔女のお師匠も、森の子にカード賭博は教えていない。帰ったら教えてもらいましょうと決意する鹿の耳にギャンブルの神様がそっと囁く。
「これは同じ絵を横に並べる遊びなのね? それなら鹿にも出来る気がするわ」

 一列に並んだ星が明るい音を弾き出す。これで何回目だとスロットコーナーの客から動揺の声があがった。
「あら〜素敵! みんなお行儀良くて可愛いこと」
 リクエストと勘違いしたのか、ポシェティケトは後ろを振り返る。
「任せて、全部の絵柄を並べてあげましょうね 」

リザルト:スロットコーナーに莫大なダメージを与えています

成否

成功


第1章 第3節

ナール・トバクスキー(p3p009590)
ろくでなし

● TABLE p3p009590

「いやはや、仕事としてギャンブルさせてもらえるとは正に天職じゃな」
 カジノ『デメテル』の前で仁王立ちする細身の老人は如何にも歴戦の勝負師といった風貌だ。白髪とギャンブラー特有の鋭い眼差し。既に酒が入っているのか目元と鼻先が赤らんでいる。
「運も味方に着くみたいじゃしこれは勝ったも同然じゃし稼がせて貰うとするかのう」
 高笑いと共に『ろくでなし』ナール・トバクスキーが入店してから三十分後。

「な~ぜ~じゃ~」

 そこにはポーカー卓に突っ伏すナールの姿があった。
「全然勝てんのじゃ、もう殆ど素寒貧ではないか。やめじゃ、やめじゃ」
「ゲームを降りますか?」
「いや、もう一度! 今度は本気じゃ」
 客もディーラーもグルなのか。嘲りの笑いが広がる。
 この時点で、店側はナールを侮るという愚行を犯していた。賭博好きの老人と思い込み、カードを手にする空気が一変した事に気づかない。
 一流の賭博師が本気で牙を剥くと如何なるのか。後に彼らは思い知る。
「ショーダウン」
「ほれ、ロイヤルストレートフラッシュじゃ」
 無造作に投げたナールの手札はスペードの10からA。
「はあ!?」
「確か賭け金三十倍だったかの」
「ぐ、偶然だ」
 ディーラーは地獄を覗いたような、引き攣った笑みでナールを見た。卓に頬杖をついた老人は悠然と笑っている。
「まだまだここからじゃ」

リザルト:ポーカーエリアの情報を混乱させています

成否

成功


第1章 第4節

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結

●TABLE p3p002233

 糊のきいたシャツに黒のベスト。
 腕のカフスボタンを止め、黒服に着替えた『若木』秋宮・史之は鏡を見る。
「なんだか昔を思い出すな……」
 そう呟くと、何事も無かったように欲望の舞台へ上がっていく。
 照明が絞られたダンスフロアでは男女が無秩序に踊っていた。
 その中から史之は長身の美女を今宵の勝者に選んだ。他意は無い。強いて言えばただの趣味だ。
「ディーラーが何の用?」
 見下すような眼差しを流した史之は、相手の耳元に唇を近づけた。

 バースト、と青年が告げる。
 ディーラーの敗北だ。
 ダブルアップを仕掛ければ必ず成功の倍々ゲーム。テーブルに積みあげられたチップの色は今や最高額。
 勇猛な美女プレイヤーの大躍進に、観客も大盛り上がりだ。
「いかがですか勝利の美酒の味は」
「最ッ高!」
 蜂蜜色のスパークリングワインを片手に女は叫ぶ。
 この調子では上等な酒の味を理解しているかどうかも危ういだろう。
「ドンペリもシャンパンタワーも、居並ぶ客の羨望の眼差しもぜんぶあなたのもの。なんでも手に入ります、夢も栄華も今宵だけは」
 不思議の国で暮らす住人のように史之は腕を広げた。
「貴方も私のモノよね? 可愛いディーラーさん」
 俺?とディーラーは微笑み、見せつけるように約束の指輪を顔の前で振ってみせた。
「俺は売約済みです、ご勘弁を」

リザルト:ブラックジャックエリアで多額の支払いが発生しています

成否

成功


第1章 第5節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

●Round p3p006934

「カジノは初めてか?」
「ヒッ」
 バーの隅で酒を飲んでいた青年は身をすくめた。丈のあっていないベージュのカーディガンに皺だらけのシャツは、この辺りの真面目で世間知らずの知識層が好む服装だ。時代遅れの無骨な黒フレーム眼鏡の下にはしっかりと隈がはりついている。
「は、はい……あの、僕、どうしてもお金が必要で……」
「なら簡単なヤツを教えてやるよ」
 おどおどとした、小動物を思わせる挙動。よいカモを見つけたと男はほくそ笑む。男は店側が雇った仕込みであった。猫背の青年の肩を抱き引きずり歩く。
「ここだ」
「ルーレット……これなら、ぼ、僕でも、運が向けば……!」

「気弱な演技で店側の誰かを誘き寄せられないかな」
 イーハトーヴ・アーケイディアンからの提案に境界案内人たちの顔つきが変わった。
「なら真面目系のカモに変装しよう」
「だぼだぼカーディガンはマスト!」
「眼鏡を借りてきます」
 仕事中なのにお酒を飲むなんてと苦言を呈するオフィーリアを何とか宥め、待機場所はバーに決まった。曰く、今の俺は『運悪く多額の借金を負った真面目な一般人』なんだから、アルコールの力でも借りなきゃ、最後の賭けなんてやってられないよ……。

 かくして釣り針に獲物はかかった。
「く、黒の26」
「ば、バカな……」
「また当たったよ! ルーレットって楽しいね、オフィーリア」

リザルト:ルーレットで多額の支払いが発生しました

成否

成功


第1章 第6節

ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針

●TABLE p3p009557

 堕落の都で働くその古株ディーラーはアルと呼ばれている。ユリックからの信頼も厚い彼は今日の卓を見た。妙な客が混じっている。
 ブラックスーツに歩行杖。洗練された振る舞い。何より顔につけた面が人目をひく。
(手つきからして初心者。大方どこかの貴族か世間知らずの御曹司だろう)
「主に感謝しよう」
「ブ、ブラックジャック……」
 そのルールも覚束ない初心者に僅か数十分でむしり取られたアルは放心していた。
「金? 受け取っておくが、それよりも大事な勝者の特権があるだろう?」
『夜に這う』ルブラット・メルクラインは上機嫌で希望を告げた。アルに勝てばユリックに会える。裏社会では有名な話だ。

「それが何でこうなる!?」
 アルはルブラットが両手に構えた器具を下ろしてくれる事を解剖台の上で願っていた。
「待て。これは"勝者が敗者を解体していい"という慣習の下に行われる賭け事ではないのか?」
「そんな物騒であってたまるかァ!?」
 勘違い。ルブラットは即座に反省する。
「だが、何処の誰とも知れぬ医師よりかは、共に同じ遊戯に興じた私に解体される方が、貴方にとっても好ましいはずだ……おや、なぜ逃げるんだ。他の客の迷惑だろう。やめたまえ」
 ディーラーが絶叫と共に夜の闇に消えるのをルブラットは溜め息と共に見送った。
「では、次だ」
 解体は決定事項である。

リザルト:ディーラーが謎の失踪を遂げています

成否

成功


第1章 第7節

アト・サイン(p3p001394)
観光客

● Round p3p001394

「ここが再現性大阪なら鉄火場なんて潰すのは訳ないが……ま、流儀を守るとしようか」
 スーツを着たアト・サインは、再現性大阪府警マル妖の刑事ではなく『観光客』の目でルーレットの卓を観察した。
「うん、あのディーラー……腕がいいな、よしあそこに決めた」
 そう、今夜はただの『観光客』。但し、その事実がカジノにとって幸いかといえば答えはノーだ。
 するりと客の間に溶け込み緑の盤にチップを置く。コーナーに数カ所、スプリットに少し。安全圏を狙った手堅い配置だ。
(あのディーラー、僕が賭けた場所一切にかすりもしないホールに落とせるのだろうさ)
 緩んだディーラーの口元を視界の端に捉えながらアトは小さな悪戯を完成させた。
(ま、そのための幻影があるんだけどね)

 用意された道を歩んでいるなど夢にも思わず、白い球は数字を示す。
「赤の12」
「おいおい、ディーラー、場所も確認せずにチップをすべて回収しようとするのはいかがなものかと思うね?」
 澄んだ声に回収しかけた手が止まる。訝しげな顔をしたディーラーは盤上を見て絶句した。
「12のストレート、さ」
「シングルナンバー!?」
 ホイール後に誰も卓に触れて居ない事は誰よりもディーラーが知っている。しかし、どうやって!?
 高額チップの色を見て完全に顔色をなくした獲物の前でアトは綺麗に笑ってやった。

リザルト:ルーレットで高額の支払いが発生しました

成否

成功


第1章 第8節

「ふぁーっはっはっはっは!!」
「ユリック様!!」
「何だ」
 カジノ『デメテル』の最上階でワイングラスを片手に高笑いしていたユリックは許可も得ずに入室してきた部下をきつくにらんだ。
「当院で囲っていた凄腕の外科医が借金を一括返済して逃げ出しました!」
「馬鹿な!? 10億近い額だぞ」
「それがどうもポーカーで大勝したようで……」
「ユリック様! スロットコーナーで高額の支払いが次々と発生しています」
「ポーカーエリアでロイヤルストレートフラッシュから始まる地獄の支払いが!!」
「ブラックジャックでベッラ家のご令嬢がちょっと信じられないくらいの大勝ちを!!」
「アンソニー一家とルーレットのディーラーが身包みはがされています!!」
「ブラックジャックのディーラーから解体されかけたとの報告が何件も!!」
「ルーレットでシングルナンバーが連続して発生しましたァァー!!」
 信じられない報告が途切れることなく続き、遂にユリックは手からワイングラスを落とした。
 震える手が、金庫の内線番号を押す。
「……俺だ。金庫の残高はどうなっている?」
『ゼロです。すっからかん』
 あっさりとした調子で金庫番は告げた。
『ついでに申し上げますと、本日の支払い総額がちょっとびっくりするぐらいの天文学的な数字を記録しておりまして』
「いくらだ」
『今のところ、ざっと32兆ですね』
「……桁が間違ってないか?」 
『合ってます。なのでユリック様の資産は全てが差し押さえとなりました。全然足りないですけど。また、莫大な金の動きを察知した国家警察の軍団がいらっしゃいまして――』
「ユリック・オーウェンだな!! 内乱罪の疑いで逮捕する!!」

 こうして。カジノ王の悪巧みは摩天楼に潰えた。
 同じ頃、カジノを騒がせていた数人も幻のように消えていた。
 誰も彼/彼女たちの名前を知る者はいない。
 あとに残るは金色に輝くコイン。
 そして、酔いしれた勝利の余韻だけである。

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