PandoraPartyProject

シナリオ詳細

「ぼく」をしりたい

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●クレヨン
「さて、今日は先に説明から入ろうかな」
 カストルは読みかけの本を閉じて笑みを浮かべた。
 ややぬるくなった紅茶を一口、取り出したのはクレヨンだ。
「今日向かってもらう物語のなかには、名前も性格も何もない少年が一人いる」
 カストル曰く。未完のまま、イメージだけが取り残されてしまった物語なのだという。
 ぽっかりと開いた主人公の穴。その穴を埋めるのが少年だというが、少年には個性やらなにやら、情報が何も与えられることは無かった。故にまっしろ、からっぽ。Enmpty.
 主人公不在の物語を終えるにはまずは主人公が必要だ。紆余曲折あるだろうが、きっと彼にとっては自己が与えられなかったこと以外の大問題は乗り越えられるだろう。きっとそうにちがいない。
「彼はこう言っているんだ――『ぼくをしりたい』ってね」
 どうすれば教えることが出来るのか。
「作るんだよ。これでね」
 差し出されたのは、沢山の画材。クレヨン、色鉛筆、絵の具。
 関係ないだろう物もあった。ボタン、花、布の切れ端、色紙、なんでも!
「つまりは、彼を『工作』するってことさ。簡単だけど、難しいだろう?」
 君達ならやってのけるんだろうけど。
 笑ったカストルは、クレバスを押し付けると境界図書館の奥へと立ち去って行った。


●だれよりも
 ぼくがめざめたとき、そこはぼくがありませんでした。
 なにをいっているのかもわからないとおもいますが、ぼくはぼくをしらないのです。
 ぼくがなにをすきだったのかも。
 どんななまえだったのかも。
 だから、ぼくはじぶんにつけてみました。そらです。ぼくのなまえは、そら。
 からっぽだから、そら。
 ここからたくさんのものをしりたいとおもいます。
 ただ、しこうすることはできても、ぼくにはひとみもなければはなもありません。
 だから、みなさんのちからをかしてください。
 ぼくにひとみを。
 ぼくにはなを。
 ぼくにうでを。
 みなさんのちからがひつようです。
 さいわいなことに、だれかがぼくにあしをくれました。
 だれかはえをかくのがへたらしいのですが、それはちゃんとぼくのあしになりました。
 ぼくははやくぼくのあしをみてみたいです。
 ぼくをしりたいです。
 だから、みなさんがぼくをおしえてください。
 ぼくはどんなにんげんなのか。
 どんなせいかくだったのか。
 どんなみらいをあゆむのか。
 どんなうんめいをせおっているのか。
 そして、みなさんと、おともだちになれるのか。

NMコメント

 誰よりも自分を知りたい。
 どうも、染です。これで100本目のライブノベルとなります。
 有難い限りです。いつもありがとうございます。

●依頼内容
 ソラに彼を教えてあげる

●ソラ
 少年。恐らく年齢は16-18程。
 見た目は有りません。華奢な白い足だけがあります。
 自分の姿をみたことがなく、自分がどんな人間かもわからない。所謂記憶喪失に近い状態になっています。

●ソラのつくりかた
 皆さんはクレパスや、色鉛筆や、その他工作に必要だと思わしき道具があります。
 紙も沢山あります。
 そこに情報を与えてください。
 例えば、目は青色とするならば、青色のなにかで、目だと思うものを作ってください。
 例えば、寝ることが好きなら、枕を作ってあげてください。
 たくさんのことを教えてあげてください。
 彼は自分のことを知る度に、少しずつ鮮明に世界を見ることが可能になります。

●世界観
 ソラの部屋。
 彼の部屋は真っ白です。
 部屋を出ると、中世ヨーロッパ風の王都に繋がります。
 部屋の窓は閉ざされていますが、皆さんの目からは山や王の城が見えます。
 近くには店も沢山ありますから、必要であればソラを連れだすこともできそうです。

●サンプルプレイング
 そうだな、俺からは嫌いな食べ物をあげよう。
 さっきトマトを買ってきたんだ。これを模写するぞ。
 上手くはないけど、これでいいだろ。俺はトマトが嫌い。お前もトマトが嫌い。
 今日から俺達は同盟だ!

  • 「ぼく」をしりたい完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月04日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
白萩(p3p009280)
虚構現実

リプレイ


『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)の担当は顔。なんでも率先して手を挙げたのだとかなんだとか。
 白い紙を広げてソラに対峙するメリーは酷く楽しそうだ。
「顔を作ってあげる。とってもとっても楽しみだわ。
 だって人の顔をオモチャにできる……いえ、作ってオモチャに……人の顔を作れる機会なんてあんまり無いから」
 人の顔をつくる依頼もあまりないだろうから、メリーがわくわくしているのも頷ける。
 素材を考えるのは面倒だと告げる彼女。ソラとしては要求は特にないようで、『ふつうのかおになるなら』とぽやぽやメリーがクレパスを選んだところを眺めていた。
「作ってもらった物を良く見たいでしょうから、視野が広くなるように、片目を上に向けて、もう片方の目を下に向けて、互い違いにしましょう」
「うん」
 つり目か。たれ目か。悩ましいのでとりあえず書いてみて、あとで調整することにしてみよう。
「でそこは聴覚と嗅覚で補うってことで、顔と同じぐらい耳を大きくして、鼻もめっちゃデカくして……ウププ……わ、悪い空気吸わないように鼻毛をボーボーに……ププ……しといてあげるわ」
 耳を少し大きめに。鼻もしっかり書き込んで。
「唇はセクシーに思いっきり分厚くして、タラコと間違えないように真っ青に塗っといてあげるね!」
「うん」
「濃く太く繋がった眉毛で男らしさをアピール!
 アクセントとして、いくつかホクロを打って、サービスで毛も生やしといてあげるね!」
「うん」
「彩りを与えるために、ほっぺに真っ赤なうずまき描いて、頭頂部に花を咲かせて完成!」
 ご満悦だが、人体としてなりたっていないので世界に肯定されなかったようだ。
「これでどう? 気に入ってくれる? わたしなら絶対にイヤよ」
「うーん……ぼくもいやかもしれない」
 このあとイケメンになるまで調整させられたメリーだった。


「貴方の部屋は、何もないのですね」
 きょろきょろと辺りを見回した『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)は、そのがらんどうの部屋に瞬いて。
「白は、何も混ざらない色。けれど何にでもなれる色。わたくしたちと一緒に、色をつけていきましょう」
「いっしょに? ぼくが?」
 感情の乗らない声が響く。彼の『顔』は不安げだ。
「大丈夫。考えることができるのなら、それをやめないのなら、空虚になど、なりはしませんから」
 
「わたくしは、ソラ様のお洋服と……そこに、貴方の性質を込めたいです」
「うん」
 手に取るのは空色のクレヨン。その瞳はクレヨンを映す。
「ふふ、貴方の名前と同じ色、ですよ。空はわたくしたちより、ずっと、ずっと上の方にあるのです
 一面がこの色で、時間によっては橙色になったり、紺色になったり……」
 ネーヴェが空を指さした。ソラは、それにつられるように真っ白な天井を見つめて。
「貴方はきっと、その中でも、夏の晴れわたる空だと、思うのです。根拠は…ないのですけれど。そう願っている、のでしょうか」
 空色クレヨンで描くセーラー服と、半ズボン。靴もお揃いの空色に。
 みるみるソラに「彼」が投影されていく。
「はい、できました。ソラ様は、こんなお洋服を着ているの、ですよ」
「わぁ……!」
 どこまでだって、元気に走っていけるように。明るい色を、心に宿して。
 無機質だったその声は、少しずつ感情を孕んでいく。
「ありがとう……えっと、」
「わたくしは、ネーヴェと、申します」
 差し出されたその手に、ソラは瞬いた。
「ソラ様、よろしくお願いします、ね!」
 薄ら部屋が色付いていく。世界が構成されていく。
 窓が生まれ、空が広がる。
「あとで、お空を見に、行きましょう」
「空を?」
「ええ。でも空だけではなくて、お店も、他の人も、色々なものを映して
 貴方と言う、空っぽの器を、たくさんのもので満たしましょう!」
 知らないなら、これから知っていけばいい。
 好きも嫌いも、ぜんぶ、これから知って、満たしていけばいい。
 なんてったってここはライブノベル。可能性が渦巻く境界の果てなのだから。


 握るための手はまだない。それならば。
「俺は彼の『手』を担当しよう」
『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は紙を手にふむ、と思案する。
(手は、触れ、触れる事で感じ、また、なにかを作り、或いは壊すこともできる)
 華奢な白い足に合わせ、骨の通った細身の手を。
 あまりうまくかけなくたって、ちゃんと想いがこもっているのだからいい。
 うっすらと手が光輝いた。
 良く動く器用で繊細な長い指と、その指を守り、創造を助ける丈夫な爪。
 指紋はものに触れた際に滑らないよう大事なもの。
 ソラの瞳が好奇心で満ちた。ああ、「ぼく」が生まれていく。

(望めばさまざまなことができる手…流石に『何でも』とはいかないが
 努力次第でプロにもなれるし、数多に浅く広く通じた器用貧乏を目指すのもいい)
 手をまじまじと見つめるソラに薄く微笑み浮かべ。
(あとは、丈夫な胃腸を備えさせておいてやりたい。あって困るものじゃないからな)
 胃腸が丈夫であれば、美味しいものを。好きなものをみつけるまで、たくさん食べることができるだろう。そうしてすくすくと、彼は育っていくのだ。
「この手で、何が出来るの?」
「何が……?」
 ああそうだ、彼はまだ何も知らないのだった。アーマデルは指折り数えて示す。
「散歩や昼寝はだいぶ敷居が低いぞ。多少難しいことなら…こういう、弦楽とかは少し難易度の低いものだ
 擦弦楽器より撥弦楽器の方が、個人的には手を出しやすいと思う」
「がっき」
「ああ。他には…うーん…武器を使った剣舞くらいしかできないぞ」
「けんぶ……? 他には、何が出来るの?」
「……俺が何が出来るかじゃなくて、あんたが何に興味を持つかの方が気になるんだがな、俺には」
「そっか……」
 肩を落としたソラの肩をたたいたアーマデルは、気にすることは無いと笑って。
「全く何も思いつかないなら、片っ端からあれこれとあげてみよう。やってみて気に入るか性に合わないか判断するのもいい」
 まだ生まれたばかりの君へ。踏み出すことは、恐れることではない。
「取り返しのつくこと、やり直しの効くことは、やれるときにやっておくべきだと思う
 やり尽くしたと思っても、あの時ああしておけばよかったとか、これをやってくべきだった…そう思うものだから」
 だから、案ずることは無い。
 これからやっていけばいい。
 その隣には、支えてくれる誰かがいるから。


 ぼくは、不確かだった。


(自分を知りたい、か。…そりゃァ真っ直ぐでいい事だ)
 まだ薄らモザイクがかったソラの頭を撫でたのは『虚構現実』白萩(p3p009280)だ。
「よし、おじさんが一肌脱いでやろう。なァに、今日からがスタートだ。真っ白なのが余計に都合が良い。焦るこたねェさ、そうだろ?」
「……うん。おねがいします」
 頭を撫でた。恐らく髪はあるのだろうが、『そこに存在していることを教えはしない』。
(なら、少年に髪を。絵であれやこれやするよりも手っ取り早いモンがあるだろうな)
 顎を掻き。そこに座るように促せば、ソラはおとなしくそこに座る。
「よく絹糸のような髪なんて言うだろ。それをそのまんまやんのさ。色は…そうさな。折角なら似合う色にしてやりたい。服が空色だってなら、太陽に透けるくらいの…金なんていいんじゃねェか?」
 色々な糸を手に取る。
 紡がれる縁は、糸のように。確かで、太ければいい。けれど、太すぎなくていい。
 確かに、それが彼のものだと解ればいい。
「…良し、この糸にしよう。これ貼り付けるのもアリか?」
 まぁ、なんとかなるだろうさ。けらけら笑った白萩は、わしゃわしゃと頭を撫でて、その髪があるであろうところに、少しずつ金を添えていった。
「任せな。絵心にゃ自信ねェが、手先は器用な方なんだわ」
 手櫛で整えながら、少しずつ金糸をつけていく。その糸が広がっていくように、柔らかい金髪が生まれていく。
「ソラは空っぽって意味だけじゃねェだろ。でっかく広い、空(そら)と同じさね。
 広い世界が見える様に、どこまでも遠くへ動きやすい様に…って考えンなら短めの方がいいやな」
「そっか」
 開いた窓から穏やかな風が吹く。白萩が触れたところから、柔らかな髪が揺れて。
「未来だの運命だの、デカい事は最終的に自分が決めたらいい。性格を考えてくれるコが居るんだ、自ずと決まって行くだろうさ。
 …ただまァ、俺に言えた義理でもねェがよ。キレーな名前なんだ、真っ直ぐに世の中ってのを見て欲しいわな。それこそ嘘とは無縁の世界に…ハハ、俺が言えたモンじゃねェか。ま、人生ってのは山あり谷ありだ、おじさんなりに若いモンの明るい未来を願いてェ訳よ」
「おじさん?」
「おにいさんでも構いやしねえよ。面映ゆいものはあるがぁね。
 困難に当たったら俺達を頼ればいい。"自分"を持てば"仲間"も出来る。その一番最初が俺達だったら、…ってのは少し高望みかねェ?」
「……ううん」
 『ほら、できた』。白萩が神から手を離すと、そこには確かに立ったソラの姿が。
「……ぼく、どうですか」
「なかなか、サマになってんじゃねェの?」
「そっか。よかった」
 踏み出した一歩は、難しくとも単純だ。
 希望はこれから、生まれていけばいい。
 望んだ未来を掴むために、空っぽの器を満たしていけばいいから。

成否

成功

状態異常

なし

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