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シナリオ詳細

霧の向こうの死者の国

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある村に伝わる『死者の村』の伝承

  霧の向こうに死者の村があるという。
  深い霧に近づいてはならぬ。

  死者は弱い。
  動きは鈍重で、畜生と変わらぬ愚鈍な思考。
  腐敗した身体は脆く、すぐに崩れる。

  しかし死者は徒党を組む。執拗に執拗に追いかけてくる。
  そして怖れを知らず、蟲のように戦う。戦い続ける。

  ゆめゆめ霧に近づくことなかれ……。
  死者の村に迷い入ることなかれ……。

 まさか、本当だったなんて!
 いつだったか、村の老人から聞いた伝承を少年はお伽噺だと一笑に付した。しかし、今、それは紛れもない現実として少年にのしかかっている。
 少年は走る。助けを求めて。
 少年は走る。霧を目ざして。

 その日、いつものように村外れで遊んでいた4人の子供たち。リーダー格の少年ヘンリー、お姉さん役のアニー。年少組のトムとメアリ。
 いつもと違ったのは、帰りしなの深い霧。
 霧の中を歩き、村に帰ってきたはずだった。
 しかし。霧が晴れ、視界の先にあったのは、見慣れた彼らの村ではなかった。
 そこは静寂に満ち、活気がない見ず知らずの村。そもそも人の気配がしない。
「ここ、どこ……?」
 年端もいかぬ年少の子供が、不安そうに愚図る。
 やがて泣き出した子供の声に誘われるように、ゆらゆらと揺れながらヤツらがやってきた。
 腐敗し崩れ落ちた相貌は、一目で生きた人間じゃないと知れる。
 子供らは逃げた。逃げた先、村の中程に旧い教会を見つけた。
 リーダー格だった少年は、記憶の底から必死でうろ覚えの伝承を手繰りだした。
 ヤツらは教会に近づけなかったはず!
 子供たちは教会に飛び込み扉を堅く閉め、とりあえずの避難先を確保する。
 が、このまま教会に籠っていても、先はない。何よりここには食料がない。やがて干からびるだけだろう。しかし脱出するにしても、年少の子供二人がヤツらに捕まらずに最後まで走りきれるとは思えなかった。
 リーダー格の少年は覚悟を決める。
「ここで待ってて! 僕が、助けを呼んでくるから!」

●ギルド『ローレット』
 死者の村? また物騒な名前の村だな……。
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が告げた依頼内容に、君たちイレギュラーズは物思う。
「そうです、死者の村なのです。大至急、向かって欲しいのです」
 ユリーカはお構いなしに、依頼書をめくる。
「死者の村は、幻の村なのです。霧の向こうに出現すると云われる異界の村、死者――ゾンビたちの村らしいのです。そこに子供たちが迷い込んだらしいのです」
 ゾンビ! 怖い! と震えるユーリカ。
「勇敢な少年が助けを求め、一人脱出してきたのです。しかしまだ、小さな子供たちが取り残されているのです」
 少年が大人たちに助けを求め、すぐさま依頼がなされたのだろう。それだけ緊急を要するということだ。
「霧がいつまで発生しているのか不明なのです。はやく助けにいかないと! なのです」

GMコメント

 こんにちは。茜空秋人です。
 以下、シナリオ補足情報です。ご活用ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●依頼成功条件
 子供たちが三人、教会に残っています。
 面倒見のいいお姉さんのアニー。年少組でまだ泣き虫のトムとメアリ。
 彼らを無事に救出してください。

●死者の村
 地図にない呪われた村。霧の中でのみ繋がる異界の村。
 霧の発生条件は不明です。
 メタですが、イレギュラーズの冒険中は霧は継続し消えることはありません。ですが、いつ霧が霧散するか判らない等の不安を抱えたロールプレイを楽しむと盛り上がるかもしれません。
 伝承によれば、この村で死んだ者はゾンビとなって復活するそうです。
 教会は村の中心部付近にあります。ゾンビは教会に入ることができず、周辺を20匹程ウロウロと徘徊しています。。
 まずはイレギュラーズは教会から子供たちを連れ出し、村外れの霧の発生地点まで5km程の距離を踏破し辿り着く必要があります。
 なお、馬車などは馬が霧に入ることを拒むため、持ち込むのは難しいようです。
 飛行種が子供たちを空を飛んで運ぶなんてのは、よほど説得力がない限り実現不可とします。

●ゾンビ
 回避、反応が極端に低く、知能も低い。一対一ならイレギュラーズなら余裕でしょう。
 反面、EXFが高く死ににくいという特性をもち、何より数が多くワラワラ湧いてくるという厄介さを兼ね備えています。
 機動力は基本1ですが、10~30%の割合で特異種、走るゾンビ(機動力4)がいます。また、10T毎に5~10匹のゾンビ(特異種込み)とエンカウントします。
 ゾンビと距離をとってやり過ごし、逃げ切れない走るゾンビのみを対処するのがお奨めです。馬鹿正直に全部のゾンビと戦うと、囲まれて詰む可能性が高いです。
 ゾンビはノーマル種、特異種ともに物至単攻撃のみとし、BS【毒】【呪い】を用います。

●子供たち
 三人とも戦力になりません。
 アニー(10歳)が機動力3、トム(7歳)とメアリ(6歳)が機動力2とします。
 子供を抱えての移動は可能ですが、抱えたままだと戦闘はかなり不利になります。基本、両手が塞がってると考えていいです。当然、武器やら盾を使えません。戦闘の際は子供を抱えたまま庇うか、一旦降ろして戦うか選択する必要がありますが、子供の安全が最重要事項です。

●リプレイ
 基本的に夕方、教会前に到着した処から描写の予定ですが、プレイング次第でその限りではありません。

●ヒント
・序盤、教会周辺のソンビの群れと正面きっての戦闘は非常に悪手です。
・ゾンビは知能が低く、一匹が獲物を見つけると、集団でワラワラ追っかける習性があります。

●アドリブ
 アドリブ描写が用いられる場合があります。
 プレイングやステータスシートにアドリブ度合、『アドリブNG』等記入くだされば対応いたします。

  • 霧の向こうの死者の国完了
  • GM名茜空秋人
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月14日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

銀城 黒羽(p3p000505)
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
巡理 リイン(p3p000831)
円環の導手
リチャード・F・ロウ(p3p000871)
law of jastice
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
シルヴィア・エルフォート(p3p002184)
空を舞う正義の御剣
セシリア・アーデット(p3p002242)
治癒士
マリア・シュヴァルツ(p3p006111)
蹂華姫

リプレイ

●道すがら
「霧の中にある死者の村、またよく分からねぇもんが……」
 薄霧の中、『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)が呟く。
(これ、伝承で伝わってるらしいが不明瞭すぎるだろ。少し調べてみた方がいいんじゃねぇの? たとえば、このゾンビが霧を越えてこっちの世界に来れたりしたら大事じゃねぇか。まぁ、そんな報告も聞いてねぇし心配ねぇのかも知れねぇが)「……疑問は尽きねぇが、今は依頼が最優先か。子ども達も恐い思いをしてんだから、さっさと助けてやらねぇとな」
 黒羽の【エコーロケーション】をフルに活用しゾンビとの遭遇をうまく回避しながら、イレギュラーズ達は教会に急ぐ。急ぎながらも黒羽は道中、約1㎞毎に目立つような石を目印として設置していた。帰還時を考えてのことだ。
「霧の村の死者の国……噂をよく覚えていたね、教会の中によく逃げ込んだよ、兎に角今は霧がなくなる前に急いで救出に行かないとね! ……今行くから待っててね!」
 聖職者風の出で立ちをした『治癒士』セシリア・アーデット(p3p002242)の言に
「子供達だけで死者の村の中に閉じ込められるなんて、どれだけ怖ろしい気持ちを味わったのでしょうか……。勇気を持って助けに来た男の子も、よく頑張りましたね。急いで助けに行かないと……!」
 正義の少女騎士らしく『空を舞う正義の御剣』シルヴィア・エルフォート(p3p002184)が応える。
「不浄の満ちる村、なんとかしたい気持ちもあるのですが……。此処は救助が最優先、ですね」
 信仰心篤く人を救う事を至上の目的とするエルフォートなのであった。

●教会周辺
 ここまで順調にゾンビを躱してきたイレギュラーズだが、目的地の教会が目に入る距離まで到達するとそうも言ってられなくなる。子供たちを狙うゾンビが教会周辺を彷徨っている。教会に突入――子供たちを救うには、避けては通れない。
「数を見るだけじゃ、何時ぞやの促成栽培の葉野菜みたいなアカの小隊と変わらないくらいかしらぁ?」
 20体ほどのゾンビを数えた『蹂華姫』マリア・シュヴァルツ(p3p006111)の流暢な独逸語が『崩れないバベル』で変換される。
 戦争は準備が肝心です。まずは使い魔を呼び出しますよ。シュヴァルツはシェパードの子犬を召喚すると、自らの匂いを染みつかせたスカーフを使い魔の首に巻きつけた。
「Los!」
 シュヴァルツの声に反応した使い魔が吠えながらゾンビの群れに突っ込み駆け回る。
「鈍重なアカ……じゃないゾンビを誘導する牧羊犬紛いよ。追われる立場ですから、逆牧羊犬? ……なんて、うふふ」
「ゾンビだらけだ。まるで私の元の世界の光景を見ている様で此処は宝の山だよ。こんな状況じゃなければ少し見て回りたい気分だね」
 呑気な発言はガリガリっていうか骸骨姿の『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)だ。好奇心が疼いて仕方がないといったところか。
 ナヴラスもまた、練達上位式で式神を作り出すと、教会前に突っ込ませる。式神は教会前で大声をあげ、ゾンビの注目を奪う。
 使い魔と式神は囮となり教会入口からゾンビを引き剥がすように、イレギュラーズ達とは逆方向に誘導する。
 ――今だ!
 使い魔も式神も戦闘には耐えられない。囮として機能する時間は短いだろう。迅速に教会に突入するイレギュラーズ。

「ヘンリーは無事に帰れたよ、そして私達は君たちを助けに来た」
 教会の扉を開けるや、震えてる子供たちにむかって『law of jastice』リチャード・F・ロウ(p3p000871)が開口一番、助けに来た旨を伝える。
 おそるおそるアニー、トム、メアリ――三人の子供が礼拝堂の長椅子から振り返る。
「お待たせしましたっ! ゾンビ退治のお姉さん達が来ましたよーっ!」
 不安にずっと耐えていたのだろう。突然の来訪者に、張り詰めた緊張の糸がぷっつりと切れたのか、わんわんと泣きはじめた二人の子供に『円環の導手』巡理 リイン(p3p000831)が絶対大丈夫! 無事に帰れるからねと元気付ける。
「アニーちゃんだね。よく頑張ったね! みんなもう大丈夫だからね!」
 さらに私達の自信を小さい二人に伝えてくれるかも! と、まずは外見年齢の近いアニーに自信を伝えるリインだった。実年齢は闇の中。聞いたら大鎌で切られちゃいますっ!
「こんな所に取り残されて怖いはずだよね。少しでも安心させてあげれるといいんだけど……こういう時こそ無駄に元気な私の出番だよね。不安なんて吹っ飛ばしてあげよう!」
 ハーモニアの少女、『サイネリア』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)がギフト『天真爛漫』を使いつつ、子供たちに優しく笑いかける。
「よく今まで我慢したね。とっても偉いね。後はお姉さん達に任せて! ちゃんと守ってあげるからね」
「もう大丈夫だから安心して。これは今まで頑張ったご褒美だよ」
 アーデットが少しでも栄養を取っておいて貰おうと、子供たちにチョコレートを配る。怪我をしてないかとギフト『診察眼』で子供たちを軽く診断したアーデットだったが、幸いなことに彼女の用意した救急箱は必要なさそうだ。
 お腹も減ってたのだろう、夢中でチョコに噛り付く子供たち。いつの間にか小さな二人も泣き止んでいる。
「助けに来ましたよ。ここからは私達が護ります。よく、頑張りましたね」
 頭を撫でてあげるエルフォート。子供たちもすっかり落ちつきを取り戻してきたところで。
「君がアニーだね。移動中は私が君を抱えて走ることになるからしっかり捕まっててね」
 ロウが防御用マントを抱っこ布がわりに使って、アニーを抱きかかえる。
「少しの間、不自由だと思うけど大人しくしててね」
 白兎のぬいぐるみを取り出したヴァークライトも、メアリの気を引きつつ優しく抱き上げる。
「トム君だね。私が運ぶよ、よろしく頼むね」
 ナブラスの骸骨姿も、ロウ、ヴァークライトのスキルが功を奏したのか、無事に受け入れられる。
「あまりのんびりしていられないね、急がないと」

●脱出開始
 入り口前を確保していた黒羽とシュヴァルツも加わり、エルフォートを先頭にイレギュラーズたちは薄霧の中、来た道を一丸になってひた走る。
「急いで逃げないと追いつかれるね」
 トムを抱えたナブラスが言う。教会周辺のゾンビたちとの距離はまだ充分にあるが、それでも子供たちの安全が最優先だ。
「いるみたいだ」
 自らの足音の反響音で周辺を警戒しながら走っていた黒羽が警告を発すると、やがて薄霧の中、前方に揺れ動く5体の影が浮かび上がる。ゾンビだ。
 やり過ごすことができた往路と違い、今は後方からもゆっくりではあるがゾンビが迫ってきている。
 正面突破するしかない。
 基本、のそりと足の遅いゾンビの群れから一体のゾンビが抜きんでる。特異種――走るゾンビだ。
「この世界で初めてのお仕事が、ゾンビ退治なんて……ワクワクしますね! どれくらいの魔力を込めた弾丸なら倒れてくれるんでしょうね?」
 シュヴァルツのマギシュートが特異種に放たれる。
『ヴアアアァァ……』
 黒ずくめの大きな帽子にドレス――正しく魔女姿と云ったシュヴァルツの大魔術が特異種に大きな一撃を与え、聴くに堪えない呻き声をあげる。
 続くように、まだ距離はあると判断したナヴラスのマギシュートの追撃が決まる。
 二人による連続のマギシュートの威力にゾンビは一瞬崩れかけるが、しぶとくも持ち直す。
『アアアァァ……』
「やはりゾンビは厄介だ。爆発したりしないだけマシだけどね」
「がんばりますっ!」
 そこにこれが本当のトドメだとばかりにリインが走り寄るや否や、輪廻終結――白き大鎌を振り下ろす。その死神の白い大鎌が、哀れなゾンビに終焉を与える。
「(今回は急ぎ足だけど、とにかく今はゾンビ退治より、教会に取り残された3人の子供達を助けなきゃだけど! 倒したゾンビ達の魂はちゃんと、正しい輪廻へと送り還します! 迅速にっ!)」
 アンデッドを輪廻へ還すのが死神の使命だったが、いつ霧が消えてしまうか判らぬ状況、ましてや依頼遂行中である。この村全てのゾンビの浄化など望むべくもなく、せめて斃したゾンビの魂だけでもとギフト『転生の理』を用いて輪廻へと還し、安息を願うリイン。
 残るは前方から鈍まににじり寄るゾンビだけ。イレギュラーズは距離をとり確実なタイミングを計ると、全力で捕まらぬように走り抜けた。

●撤退戦の終わり
「(視界が悪い……。方向を見失うのもそうだが、いつ『奴ら』と出くわすかわからないのは精神的にすり減っていく……)」
 幾たびにも及んだゾンビとの遭遇戦の後、ロウの脳裏にらしからぬ思いが去来する。勿論、仲間達や特に子供たちを不安にさせないためにネガティブな弱音は決して口には出さない。
 裏を返せばそれだけゴールに近づいてるともいえるのだが、歩を進めるたびに濃くなっていく霧は確かに厄介だった。
 それでもここまで移動距離のロスが出ないように、ロウはイレギュラーズたちを統制し、黒羽の設置した目印を見落とすこともなく、最大限無駄なく進んできていると云える。
「大丈夫。もうすぐだから、安心してね」
 霧の中、迷わぬように方位磁石を確認すると、ロウは胸元のアニーに柔和に語りかけた。

「三体だ」
 さらに新たなゾンビの一団と遭遇し、走り寄る特異種の数を確認した黒羽はそう叫ぶと、特異種目がけて負けじと走り出す。
「距離的にもそろそろゴールだ、さっさといくぜ」
 子供を決して不安にさせまいと、余裕を崩さずに特異種たちの手前で動き回ったり発光したりと挑発を繰り返す。
 黒羽の仕事はデコイと肉壁だ。そして驚くべきことに、ここまで一切の攻撃をしていない。ただひたすら挑発しマークしガードする。決してゾンビを子供たちに近づけまいと壁役に徹している。
 死んだ奴をもう一回殺すってのはやっぱ気が進まねぇんだよ。幻想に召喚されてからの殺害数のべ0人。全身に刻まれた傷痕が語る――受け、護り、不退転の境地を極めんとする戦法で、黒羽はゾンビに挑む。釵――琉球古武術で使用されるかんざしよのうな武器――がゾンビの繰り出す腐った腕を、華麗に捌いた。
「私の剣で、私の翼で、皆さんを護ります!」
 ヴァークライトのブレッシングウィスパーを受け、聖騎士であるエルフォートも特異種を狙って名乗り口上を用いる。
 聖なる宝剣を構えた騎士装束に、背から延びる純白の翼。その姿はゾンビと対峙することで一際神々しく映った。
「もう少しだからね!」
 なるべく笑顔を絶やさぬように努め、優しく子供たちを励まし続けるヴァークライトだった。

「エンゼルフォローだよ」
 霧が深くなるにつれカンテラを取り出したアーデットは、ゾンビと距離をとりながら回復支援に務めている。
 体力回復、毒を受けた仲間には状態異常回復を的確に行うことにより、イレギュラーズはここまで誰一人倒れることなく進んでこれた。
「ハイ・ヒールだよ!」
 そしてまたアーデットは敵味方の位置取りを考慮し距離を合わせ、治癒魔術を用いて仲間を援護するのだった。
 同じく遠距離組のナヴラスも安全を確保しつつ遠距離魔法を繰り出す。特異種にさえ気をつければ、ゾンビはそう怖れるものではない。充分に距離さえ確保できれば、余裕をもって対処できる。そしてナヴラスはチャンスを逃さず特異種にマギシュートを狙い撃つ。
 長丁場になりそうだと今まで魔弾で凌いできたシュヴァルツが、ここぞとばかりに温存していたマギシュートをブチこむ。
『ヴオオオォォァァァ……』
 威力ある魔法攻撃の連弾に、特異種が崩れ落ちる。
「あゝ、あゝ、こんなドス暗い汚い花じゃなくて、もっと紅色の鮮やかな花が見たいですね」
 飛び散ったかって血だった汚い体液は、シュヴァルツの好む綺麗な赤色には程遠いものだった。

「不浄のものよ、滅しなさい!」
 目前の特異種にエルフォートがブロッキングバッシュが綺麗に決まる。
 何度も繰り出された至近距離からの強烈な一撃に、耐えに耐えてた特異種がついに断末魔の悲鳴をあげた。
「全ては正義と救済の為です」
 祈るように呟くエルフォート。彼女のエメラルド色の双眸には、正義の炎と希望の光が爛々と煌めいていた。

 残る一体の特異種の攻撃を黒羽は一人で捌きつづけていた。時にガードし、時にその他のゾンビも引きつけて。
「守る、衛る、護る。俺の後ろにはいかせはしねぇ」
 そこに黒羽の粘りを援護するかの如くな一閃。
「あったれーっ!」
 大きくためてからの横殴りに振られたリインの大鎌が特異種を真二つに破壊する。存在自体を刈り取られた特異種の魂が、輪廻の輪へと還って行く。
「さあ、霧が完全に消えてしまう前に、みんなでここを抜け出そうっ!」

●Fin
 一歩一歩毎に深さを帯びる霧の中。
「みんな、いるよねっ?」
 霧が一瞬で晴れたのは、思わず周りに居るはずの仲間たちに確認の声をあげたのと同時だった。
 ――ッ!?
 世界が反転したかのように、突然開ける視界。出発する前にみた光景が広がる。
 ――帰ってきたんだ。
 あわてて周囲を見渡し仲間の姿を探す。イレギューズ8人、子供3人、全員帰還できたようだ。
 イレギュラーズたちの万全な立ち回りで、子供たちは最後まで怪我一つ負うことはなかった。皆がほっと胸を撫で下ろす。誇らしい一時。
「家に送り届けるまでが依頼だよ」
 誰ともなしに呟くと、イレギュラーズは子供たちの親、そしてヘンリーが待つ生者の村へと足を進めるのだった。

 Congratulations!
 こうしてイレギュラーズの活躍により依頼は達成されました!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

依頼お疲れ様でした。
子供たちへの配慮、素晴らしい。誇ってよいでしょう。どんなに過保護でも、過保護すぎることはないという依頼でした。

それではまた、ご縁がありますように。

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