PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<月没>武士の残光

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


 R.O.Oが国が一つ、神咒曙光は文明開化の光に包まれている。
 時の名は諦星(たいしょう)と呼ばれし一時。
 荘厳なりし和の国は海向こうの国との交流を経て文化そのものを一新させていた――
 ……その中では怪異たる『夜妖』が蠢き。
 天香・遮那が行方を眩ませるなど妙な動きも見えていた、が。

「この国は――禍ツ神『豊底比売』の浸食を受けているのだ――」

 その、失踪していた筈の彼より齎された情報は帝都の『光の主』とも言うべき話であった。
 この煌めきし都市には神とも言うべき存在がいるのだと。
 『豊底比売』……国生みの神ともされる柱で、天香・遮那が敵視している存在である。その神の影響は広く在り……アレを放逐していれば平穏は乱され、悪意が全てを覆い隠す時代がやってくる――だろうと。
 成さねばならなかった。
 たとえ朝敵となろうとも、親しき者に厭われようと。
 人の目を惑わせる光を祓えるのは己だけであるならば。
 影に落ちて影より制そう。
 闇をも飲み込む光に咒(のろ)われし大切な人を護るが為に。

 神使よ。出来得るならば共に戦ってほしい。

 成せるのは最早神使以外には居らぬのだ――
 帝都星読キネマ譚 第二幕。
 日辰陰陽自在に操り、夜妖を狩る退魔師。
 そして、この諦星の世を平穏に導く高天京特務高等警察:月将七課――
 それが神使の立場で或る。


「浸食。現の希望ヶ浜、虚のヒイズル……
 双方に滲み込んでいるモノがある、という事です」
 月ヶ瀬 庚(p3n000221)が語りしは新たに判明したR.O.O世界のヒイズルの状況である。
 かの帝都では『帝都星読キネマ譚』なるクエストが発生していたが……この度、新たな動きが観測された。それが天香・遮那の発見と彼との接触による情報提供――つまり、帝都の光とも言うべき神『豊底比売』なる存在の認識による『二幕』の開始。
 ヒイズルの奥底には何やら神がいるとだけ思ってもらえれば簡単だろうか。

 しかし事態はR.O.Oの中だけには留まらなかった。

 同時に現実の希望ヶ浜でも怪奇現象が発生していたのだ。希望ヶ浜ではこの所、神『建国さん』が産み出した『異世界』と呼ばれる異常な亜空間が出現し、一般人が行方不明になるなど多数の被害が生じていた。
 『建国さん』と『豊底比売』は密接な関係があると目されている。
 『建国さん』が現実世界に異世界を作る度に『豊底比売』が勢力を広げる度に――世界に己が領域を浸食させていた。

 それが『侵食の月』と呼ばれる代物。

 一見すれば只の皆既月食だが違う。それは怪異の影響を受けた月の満ち欠けであり……練達はその具合を『浸食度』として観測した。
 このまま浸食度が広がればどうなるか。
 恐らくは怪異の活性化や、人々の間に狂気が広がっていくと目されており……
「故に手を打つ必要があります。
 現実の希望ヶ浜では『建国さん』の異世界を閉じ、そしてR.O.Oのヒイズルでは『豊底比売』の光を祓います。単純に言うと――クエストをクリアせよ、という事です」
 ヒイズルでは『豊底比売』の影響を受けた存在が多数いる。
 例えば人々を害する夜妖も。例えばヒイズルを統括する八扇が者達も。
 例えばヒイズルに存在する――四神の眷属達も。
 いずれもがかの神の影響を受けていると目されている。例えば影響にある夜妖を倒したり、なんらかの思惑をもって行動しているのならば阻むのだ。R.O.Oはソレらを観測し――クエストとして提示してくる故に。
 さすればソレが『豊底比売』の浸食を阻む事になるのだと。
 ――無論。夜妖はともかく八扇や四神の眷属らを倒せば表向きには彼らの敵として認識されよう。つまりは『ヒイズルそのものが敵』と言える訳だ。
 光こそが敵。
 故に神使らは闇へと至れ。
「……国が敵とはなんとも」
 庚は苦笑するように言葉を紡げ、ば。
「ともあれ皆さんには向かって頂く所があります。
 星読幻灯機より観測された……夜妖が人に害する事件を防ぎに」
 つまりは新たなクエストがあるのだと庚は言う。
 今回に関しては夜妖との戦いだ。光に在る国と直接戦う、という訳ではない。
 『豊底比売』の眷属を打ち倒し、光を祓う――ソレだけ。
「あぁそうそう……R.O.Oの天香・遮那より齎された情報がもう一つあります」
 同時。出発する前に神使の者らに紡ぐのは。
 光に対抗すべく『夜妖』の力を纏う秘術。

「魔哭天焦『月閃』――皆さんは夜妖の力を纏う事が出来るのです」


 ――帝都の街の片隅にてソレはいた。
 煉瓦造りの堅牢なりし家と家の狭間にて、振るうは古めかしき刃が一つ。
 その衣装はまるでこの国のかつての装い。
 ……武士とも言うべき、この時代の文明にそぐわぬ時代錯誤。
「――天誅」
 彼らはかつてこの国の光側であった存在。
 時代の移ろいと共に駆逐された、かつての体制側――という概念の残滓だ。
 彼らは再びの光を求め、その強き我が『豊底比売』に照らされた。
 そして彼らは跋扈する。
 再び己らが権勢を手に入れる事を夢見て。
 同時に神たる『豊底比売』を害す者らを許さず世を練り歩く――歪なりし者達。
「むっ?」
 が、今宵はその刃が罪なき者に振るわれる前に疑問符一つ。
 それは妙な人影たちがいたから。
 狩られるべき一般人に在らぬ――その影は。
「汝、何者らか」
「――高天京特務高等警察:月将七課」
 イレギュラーズたる、貴方達であった。

GMコメント

 光と闇に浸食される世界……
 止めていきましょう。よろしくお願いします。

●依頼達成条件
 夜妖『武士残滓』の撃破

●フィールド
 ヒイズルが帝都の郊外。住宅街に続く路地裏です。
 周囲は薄暗く、人の気配はあまりありません。

●敵戦力『武士残滓』×10
 その姿はまるで『武士』とも言うべき者達です。
 それは幽霊か――或いはかつての時代の名残から生じた残滓か――
 ともあれ只の怪異、夜妖の一種であるのに違いはありません。帝都に巣食う『豊底比売』の尖兵となり『豊底比売』の影響下にない者を害しているようです。皆さんには彼らを撃滅してもらいます。

 その主装備は刀であり近接戦闘型ですが、三名は弓を所持しており遠距離が可能な者も存在している様です。これらの攻撃では皆さんに【出血系列】のBSを付与することがあります。

 また、戦闘不能と同時に一番近い近接範囲内にいる敵を『道連れ』にしようとします。これはこの瞬間にのみ放てる超高威力攻撃スキルの様なモノです。心臓を抉ろうとする、首を狙ってくるなどとにかく致命傷になり得る一撃を放ちます。
 ただし絶対に防げない訳ではなくHP0を遥かに超える大きなダメージを与えたりすると消し飛んで『道連れ』は不発になったりもします。その他なんらかの工夫によって実質不発にさせる事も可能かもしれません。

●魔哭天焦『月閃』
 当シナリオは『月閃』という能力を、一人につき一度だけ使用することが出来ます。
 プレイングで月閃を宣言した際には、数ターンの間、戦闘能力がハネ上がります。
 夜妖を纏うため、禍々しいオーラに包まれます。
 またこの時『反転イラスト』などの姿になることも出来ます。
 月閃はイレギュラーズに強大な力を与えますが、その代償は謎に包まれています。

●情報精度なし
 ヒイズル『帝都星読キネマ譚』には、情報精度が存在しません。
 未来が予知されているからです。

●侵食度
 当シナリオは成功することで希望ヶ浜及び神光の共通パラメーターである『侵食度』の進行を遅らせることが出来ます。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <月没>武士の残光完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月14日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア(p3x001034)
天真爛漫
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
スキャット・セプテット(p3x002941)
切れぬ絆と拭えぬ声音
ファン・ドルド(p3x005073)
仮想ファンドマネージャ
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
Adam(p3x008414)
Hide Ranger
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス
フィーネ(p3x009867)
ヒーラー

リプレイ


 光に対抗する闇――故にこそ、闇を纏いて光を祓う。
「……さて、額面通りに受け取って良いものやら。
 天秤の均衡が取れるならば良いのですが、ねぇ」
 その言葉に些かの疑問を抱いているのは『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)だ――無理やりにバランスを取ろうとすれば、天秤は容易に逆際へと振れるもの。或いは両者が譲らずただ只管に己を積み重ねてゆけば……
 いずれは天秤そのものが瓦解する事態となろう。
「七課、ファン・ドルド。お相手仕ります」
 ――チカラは細心の注意を払っての使用が必要だと思考しながら、ファン・ドルドが見据える先にいるのは件の光共だ。己が視界の片隅に映るマップ機能にて周囲の存在を確認しながら、潜む者がいないか警戒しつつ。
 見据えた敵があらば――放つ一撃は斬撃。
 抜刀の瞬間に刃が伸びる。軌跡を描いてその一閃が到達せしは遥か彼方へと――さすれば。
「闇の狭間よりスティア・エイル・ヴァークライト――推して参る!」
「ぬかせ――天の裁きを知るがいいっ!!」
 同時。跳躍と共に剣撃浴びせるは『天真爛漫』スティア(p3x001034)だ。
 対抗する者が悪だの闇だのではなく光とは……なんとも不思議な気分が胸中にあるものだ、が。それが世界を守る手段であるのならやるしかない。
 花弁舞う。その最中、花弁の奥より繰り出される刃の切っ先が穿ちて衝突。
 金属音。
 二閃、三閃の斬り合いを皮切りとして――武士の残光らと死合いが始まれば。
「高天京特務高等警察・月将七課、現場・ネイコ……行くよッ!」
「──武士よ。現へと存在を残す光の残滓よ。
 その太刀に載せる物――教えて頂きたく思う」
 『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)と『蒼竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)も眼前の武士へと至るものだ。敵が光の者であるならば闇を纏って彼らと戦う己らは――さながら闇の戦士とでも思えばいいのだろうか。
「――何れにせよ道は示されたんだ。だったら!」
 後は目的に向かって進んでいくだけだと、ネイコらは往く。
 一撃。纏わせる漆黒の輝きが妖刀に纏いてエフェクトと成せば――彼方まで一閃。
 武士の幾人かを巻き込んで戦場を穿ち、そこへ間髪入れずベネディクトの刃が至りて。
「大いなる先達よ。いざ、尋常に勝負──!」
「ぬぅ! 天誅ッ!」
 宿す竜の輝きが彼に力を齎す。
 獰猛にして気高き竜の一片は武士の刃と交差して尚――押し切るものだ。
 激しき衝突音。後、二の太刀を繰り出し連撃として態勢を立て直させぬ。
 憎しみも侮りもなく。ベネディクトはただ魂の儘に。
「かかってくるがいい、狂いし残り香よ。
 正義とは強さがなくば成立しないのであれば、力を示せッ!」
「後方は私がッ――! 皆の背中を護ります! 安心して戦ってください!」
 そして。続けざまに『描く者』スキャット・セプテット(p3x002941)と『ヒーラー』フィーネ(p3x009867)の力も戦場を舞うものだ。光も過ぎれば“歪んでいる”のだとすれば倒すべき存在と割り切れる――スキャットの瞳に迷いはない。
 スキャットの一撃が彼方より武士へと飛来し、直撃。大きく体を揺るがせ……されど武士らもこの国に存在していた誇りがあらばそう簡単には倒れぬのだと腕に力を。
 込めて返しの一撃を紡ぐものだ。
 ――故にフィーネが即座に治癒の力を齎す。
 慈愛の聖職者としての誇りが傷を塞ぐ。遥か後方に位置しながらも十全に振るう事の出来る彼女には弓を持つ者といえど早々攻撃を届かせる事叶わず――そして天使の祝福が彼女自身に加護を与えれば、呪文の紡ぎも高速化するものだ。
「どうも今の今までお勤めご苦労様でした――ってな!
 でもこれからは、これからの時代ってものがあるもんさ。
 ――次代を認めて治安の為にやられちゃってくださいね!!」
 正に万全というべきイレギュラーズらの陣形。
 だがこれでは終わらぬ――『Hide Ranger』Adam(p3x008414)の一撃は、正に雨の如く。
「そら、針の雨だ! そのまま浴び続けたら死んじゃうかもね。
 まぁそちらさん方が元々『生きている』判定なのかは知らないけれど!」
 穿ち放つAdamの撃。武士の時代は終わったのだ――これからの時代はレンジャーであれば彼らは不要! 故に討滅せん。よもやよもや自らが『警察』の一員などお笑いであるが、と。
「くっ――不心得共が。なにゆえ我らが神に抗うか!」
『ひめ? ひめ どんなの だろ』
 同時。武士らの言に述べるは『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)だ。意思疎通かも分からぬ謎の言語――されどたどたどしい口調のテレパシーが、かの者の意志を朧げながらにも伝えるもので。
 思うは彼らが親交せし『神』の事。
 神――少なくともそう呼ばれる存在には違いない。仮にこちらの世界でも文字通り『対応』が必要であるならば……
『つかう つかっ? う?』
 月閃の力も前提になりそうかと。心の中で笑みを灯しながら――
 万物を薙ぐ一撃を。繧「ク$ィブ◆キル1が敵の陣内に投擲された。


 踏み込む。踏み込まれる。前線は入り乱れまるで乱戦の様に。
 こうなってしまえば多くの敵を纏めて巻き込む技は使いにくいものだ――しかしやる事が大きく変わる訳でもない。各個撃破し、敵の数を減らし、一気に削ってゆくのだ。
 その為に。
「さあ、私の美しき"青"をくれてやる。
 生き過ぎた者よ。然るべき時に眠りについた者らに置いて行かれた者よ――
 安らかなる眠りにつけ!」
 スキャットは狙うものだ。前衛の中、特に傷が深いと思わしき者を。
 青き力の一筋が敵を塗りつぶす――敵の刃が抗いの意志を見せるも、逃さない。

「――月閃」

 直後に紡ぐのはスティアだ。いや、違う。ベネディクトも同時に――か。
「ぬ!? 貴様ら、なんだソレは……!」
「――我が内に眠る蒼竜の力、その目に焼き付けるが良い!」
 気質が異なる。存在が異なる。
 それこそが月閃。光に抗する禍々しき産物。闇に堕ちしもう一つの姿――
 光に仇名す戦人。
 武士らの動揺、一息すらつかせぬままに彼らは踏み込むものだ。月閃にて纏いし一時の刹那はスティアとベネディクトに力を与える――一歩が鋭く、腕に籠められし力は鉄すら砕かんばかりに。
 ベネディクトは解き放つ――己が刀の一閃を。
 闇の中、より深く濁りし黒が動きて武士の身を裂けば、続くスティアもまた刀煌めかせ。
「っ――! これが、夜妖を纏うっていう事なんだねッ……!」
 先程までの己を超える力がスティアを振り回さんとする――
 しかし力に振り回される主などあろうものか。そして彼女がそこまで未熟であろうか。
 奥歯噛みしめ制御する。この姿は呑まれし一時ではなく。
「真の力を開放した私の力……みせてあげるッ!」
 己の奥底にあった、真の力なだけであれば――と。
 居合の一閃が神速に。瞬きの間には既に音を超えて両断の世界へ。
「ご、ぉ――な、なんたる力……!」
「魔に魂を売ったか……やはりこ奴ら、生かしてはおけぬッ!」
 その一撃たるや道連れにせんとする暇すら与えぬ。
 武士の一人が倒れ、だがだからこそとばかりに残った者らは奮起するものだ。こ奴らは絶対に倒さねばならぬ。光害する愚か者であると――ばかりに。
「どんなものだって力は力……使う者次第なんだ。
 だから絶対、使いこなしてみせるよ!」
 だが。ネイコは恐れない。
 武士らの攻勢にも、この夜妖を纏いし強大な力の見えぬ影響にも。
 どういった影響をもたらすのか、代償があるのか分からない……けれど!

「――行くよ、闇夜の一時に『夜妖』を纏え『月閃』っ!」

 彼女もまた同じ領域へと至る。
 その瞳は暗く染まり反転し、紅き輝きが漆黒の中に蠢く――
 同時。妖刀に纏いし『圧』もまた巨大となるものだ。
 壮絶なるエフェクトがただそこに在るだけで、只人ならば怯ませよう。
 ――往く。武士らの刃が振るわれど、凌駕せし速度が全てを置き去りに。さすればスティア、ベネディクト、ネイコの苛烈なる撃がどこまでも、まるで暴風の如く敵らへと降り注ぐものだ。誰が止めれようかその進撃を。誰が阻めようか天災が如き濁流を。
「凄まじいものです。ですが、だからこそ……やはり注意しておかねばならないでしょうね。
 ともあれ今は流れに乗ります――押しましょう」
「道連れにされて同じくお陀仏……なんてのは避けたいしな!」
 更にファン・ドルドとAdamの一撃が続くものだ。
 月閃の強烈さはよくわかった。しかしアレは永遠に持続可能な訳ではない――
 やがては途切れる夢幻。
 故に押し込む。ファン・ドルドは己が道連れにされぬ様に位置取りしながら斬撃を再び放ちて、Adamもまた無音の一突きが影より武士の首を狙うものだ。なんの抵抗の余地も残さぬ圧倒を。光を呑み込む闇の如く――!
「ぬっぅぅぅぅ! そうそう貴様らの思い通りにはさせんぞッ!」
 が。流石に全てが上手くはいかぬか――撃の波から逃れた武士が最後の一太刀とばかりに。
 穿つ。命喰らわんと刃突き立て……

【読み込み中──】
【不明なエラーを検出しました】
【不正な接zzzzz讀懷?縺励∪縺励◆】
【完了】

「ァ゛、……あ゜ー…………」
 されど、寸前。
 確かに穿たれた筈の縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の姿が変質する――
 それは現の姿。『武器商人』と人に呼ばれしもの。
 纏う闇の中にはステンドグラスの様な目が浮いており……貫いた筈の刃に、そっと指先を這わせれば。
『ふむ。まだ声が覚束ないが……なに、少しすれば慣れるであろ』
 一撃見舞う。まだ拙い、言の葉を共に乗せて。
 狙うは変わらずオーバーキル。抵抗させぬ命の簒奪で。
「……あれが、月閃ですか……ですがまだまだ油断は出来ませんね……!」
 瞬間。後方より全霊の治癒を紡ぎ続けるフィーネが言葉を零すものだ。
 いずれもが現在を超越している。
 だが、武士もその中で刃を届かせるべく奮闘し――今のを一瞬危なかった所だ。
 やはり気は抜けぬと彼女の紡ぎがより鮮烈に。
 誰の命をも奪わせぬと。簒奪の逆しまたる救済の光を――常に降り注がせる。


 闇の煌めき、月閃。
 それはイレギュラーズ達に力を与え、明らかに優勢な勢いを見せている、が。
「――くっ、ここまでが限度かッ」
 やがて月閃の一時は過ぎ去る。ベネディクトに纏っていた闇が晴れる――
 それはほぼ同時に使っていたスティアやネイコも遠からず、だ。
 ならばこの時こそが好機と。激流に耐え忍んでいた武士の瞳が鋭く煌めき……
「今こそ逆襲の時よ、天誅ッ!」
「そうはいかないよ! 月将七課の初陣として、負けられないんだ!!」
 先程よりも明らかに動きが鈍った――いや正確には元に戻っただけだが――のベネディクトの首筋へと刃一閃。さすればまだ闇の力在りしネイコが跳躍し、真下より直上へと己が妖刀を跳ね上げさせる。
 ――衝突音。刹那の狭間が生まれればベネディクトが一歩を成すに十分。
 内より沸き立たせし竜の激烈が腕に力を。武士の体を穿つ様に刃を捻じ込ませ、て。
「――ネイコッ!」
 が。月閃の力失いし身では些か押し切るに足りなかったか。
 道連れの一撃がネイコを両断せんとし、気づいたベネディクトが押しのける様に間へと。
 庇えば炸裂する武士の一撃。多量の出血が意識を奪う――

「いいえ。私の前で、道連れ程度で死んでもらっては困りますよ?」

 かと、思われたその時。
 命を掴み取り現へと引き戻すはフィーネの旋律だ。
 彼女の治癒術――いやしかしこれは先程よりも遥かに――
「くっ! 奴もまた闇の力を……狙え! 狙い、ねじ伏せろ!」
 それはフィーネが絶好のタイミングで月閃の力を纏ったからだ。
 前衛らのタイミングとはずらし発動した闇纏いが彼女に力を齎している。その治癒速度たるや正に高速……数多の紡ぎが前線を支えて、ともすれば致死の一撃すらせき止めん程である。
 ――故に武士らは。特に弓を持ちし者は彼女を狙った。
 狙いすまし剛力をもって矢を一つ。彼方に居ようと届かせねば不利だと投じた一つあらば。
「いえいえそうはさせませんよ――其方の動きも予測出来れば、尚更に」
 直後。ファン・ドルドの斬撃がその弓の者を襲った。
 その一撃もまた強烈だ――月閃の力か。見据えれば、ファン・ドルドの身が『剥がれて』いる。
 それはまるで新生するように。殻を脱ぎ捨て新たな呼吸を果たす如く。
 ――その身をなんと形容したものか。再現CGが如き蒼き身は声すら変質させ、麗しきASAKURAボイスから重厚なるSYOJIボイスへと。魂はそのままに、身も声も別種へと至ったファン・ドルドは。
「さぁこれよりは七課の真髄をお見せするとしましょうか」
 先程まで闇の力にて撃滅を担っていたスティア達の様に――武士らへと一撃を。
 薙ぎ払う。陣形に穴を開ける。ここが攻め時にして、敵を挫き折る絶好の機会と思えば。
(ヒヒ――いやはや全くあまりに凄い力だよねぇ。
 だからこそ隠された代償にはどんなのが潜んでいる事やら……)
「くっ、背に腹は代えられない……か!」
 同時。未だ闇纏いの時に猶予のある縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が疲労困憊気味の武士を狙い、スキャットもまたその動きに呼応するべく――遂に月閃の力の行使を決めるものだ。
 ……実はスキャットは些か躊躇気味であった。それは何故か? 反転に似た姿にもなるとされる月閃は――ともすれば現実の姿=ネカマバレするという事に繋がる恐れがあったからだ!! これは深刻な問題である。冗談ではない、いやホントに冗談ではない!!
 ――が。それでも己は先に進まねばならぬのだと。
 意を決して夜の闇に身を委ねれば……その身が変わりしは拘束衣。

 まるで、アネモネ=バードケージそのものの様で。

「あら、これはこれは……
 ふふっ。どちらに縛られるのが幸福かしら。『豊底比売』? それとも私?」
 それは良しであったかそれとも――
 いやそれよりは見るべきは彼女の周囲に浮くマテリアか。浮遊せしそれらから感じるは力の収束。
「――傀儡よねえ。ただのお人形さん」
 同時、放つは光の鎖。
 全力をもって投じたその鎖が武士の身に纏わりつけばそのまま絞める――!!
 嗚呼そうだ。反転でなかろうと、この姿は私の罪の姿。
 決して逃れられぬ魂の宿命!

 ――アネモネを救うために強くなるんだ。もっと……!

 押し込む。隣におわす文字化けさんと共に。
 さすればまた一体、一体と武士が倒れ往くものだ。
 月閃の力は強力なれど……もしも全員が一気に使っていれば武士らはとにかく一時を耐える様に防御の姿勢で塗り固めていただろう。しかしタイミングをずらし、それぞれが使用を試みた事で長期的に勢いを維持できていた。
「おのれ……だがこのままでは終われぬ……!」
 それでも神の為にと武士らは未だ此処にある。
 己らの生命などどうでもよし。仇名す者らを誅する為にと――!
「大分追い詰めてきた今、道連れも怖いしなッ――! いっちょやるか!」
 さすればAdamもまた往く。
 夜妖の力。無敵モードに等しき一時の黄金時間を。
 勝ち戦とも言うべき流れで死ねるかと。このまま好調を維持するためにもAdamは闇へ身を。
 ――さすれば全てが超越する。
「すげえ、この力とオーラ……マジ、無敵モードだろ……!!」
 タイム・リミットがある事は分かっているが、それでも笑みが零れるものだ。
 まるで周囲が遅くなったかのように感覚が研ぎ澄まされ――穿つ一閃が幾重にも。
 最早ソレは霤ではない。苛烈たる雷の如く。
 雷神の権能とも言うべき鮮烈さによって敵を圧す!
 ――さすれば武士らの刃がイレギュラーズの身を裂けど、矢が身を穿とうとも最早変えられぬ。月閃の解けたベネディクトやネイコらも戦えぬ訳ではないのだ――フィーネからの治癒を受け取れば万全をもってして未だ戦えており。
 ファン・ドルドや縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧、Adamにスキャットは敵を積極的に打ち滅ぼす――
「ぐぅ……闇に傾倒せし、者めらが……!」
「使えるものはどんどん使っていくだけだよ。世の中一つだけが本質じゃないんだ」
 そして遂に最後の一人となった武士へと、往くはスティアだ。
 敵の構えの性質を見据える。動きの一つ一つから流派を看破出来る事もあるのだ――
 そして何より、この戦いで全てが終わる訳ではない。
 これからも続くのだろう。七課としての戦いは、神光の国での戦いは。
「無念ッ――!」
「おっと! 道連れ? その前に押し切っちゃうよ! いっちゃえ――!!」
 最期。その一時を理解した武士が撃を紡ぐ、も。
 常に観察を怠らなかったスティアはその一閃を完全に見切っていた。
 首狙う一撃。それを潜りて、まるで地を這うかの如く姿勢を低く、低くすれば――
 左手からの神速の居合。
 死間際に見えた氷の花弁が――闇夜の中に煌めいた。

 これにて武士の残光は潰えて消える。
 帝都に在る光と闇。やがて征すははたして――どちらか。

成否

成功

MVP

フィーネ(p3x009867)
ヒーラー

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!

 初めて『月閃』が使えたかと思いますが、如何でしたでしょうか。
 神光を巡る戦いはこれより先に。またお会いしましょう。

 それではありがとうございました!!

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