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シナリオ詳細

クソザコ神とサイクロプスの群れ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●クソザコ神がやってやらぁ!
「大変ですじゃあ! ヤキチャライ山脈の鬼どもがまとめて山を下りてきよったぞ!」
 『私が村長です』の文字Tシャツを着た老人が酒場の前へヘッドスライディングをかけた。
 寂しい頭皮と毛髪を案ずる者はなく、周囲はただ彼の言に動揺していた。
「ヤキチャライの鬼――『サイクロプス』か!」
「一体だけでも面倒だってのに、まとめてかよ……」
「このままじゃ家畜や畑がやられちまう」
 御視聴諸兄の中に混沌モンスター知識に詳しい方はおられようか? 詳しいならば分かる筈だ。サイクロプスとはヤキチャライ山脈に古くから生息する単眼の巨人である。
 がばっと顔を上げる老人。
「傭兵じゃ! 腕の立つモンを今すぐ10人ほど集めてくれェ!」
「分かった、今すぐギルドに依頼書を――」
「それには及ばないッス!」
 どんちゃかちゃーどんちゃかちゃー。
 行進曲にのって現われたのは『可愛い狂信者』青雀(p3n000014)と愉快な仲間たち。
 彼女らの担ぐ神輿には金色のプレートで『クソザコ神』と刻まれていた。
 何を奉ってんのかって、そんなの一目瞭然だった。
「オーッホッホッホ! オーッホッホッホッホッホ! わたくし、降臨ですわァ!」
 天より高く調子に乗った『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)が、神輿の上で高笑いをしていた。
 ひかえおろーと言って印籠を翳す青雀。
「このクソザコ神様は一騎当千ッス! 七つの世界を転生しチートの限りを尽くしたクソザコ神様は混沌の世を救うべく降臨なされたんッス!」
「今まで全く気づきませんでしたわ。わたくし、今朝知りましたの!」
 不安しかないことを口走るクソザコ美少女。
 あんたこの前そのノリで唐辛子まみれにされたでしょーに。
「クソザコ神様は仰せになりましたッス。サイクロプスの群れなどたやすく蹴散らしてくれよう、と!」
「そうらしいですわ! わたくし、ついさっき聞きましたの!」
「ご心配めされるな。クソザコ神様は一人でサイクロプスの群れを討伐せしめると言っています。しかもタダで! 今ならクリアファイルもおつけするッス!」
「そうらしいですわ! わたくし今知――えっなんて?」
「「素晴らしい! ぜひお願いします!」」
 村人たちが書きかけの依頼書をびりびりに破いて紙吹雪にすると、万歳三唱でクソザコ美少女をたたえはじめた。
「その素晴らしいお力で村をお救いください!」
「えっ、わっ、わっかりましたわ! わたくしにお任せあれですわ! オーッホッホッホ!」
 どんちゃかちゃーどんちゃかちゃー。
 村人たちのパレードはサイクロプスの群れがいるというヤキチャライ山脈へと繰り出していく。
「…………」
 その様子をカプチーノ片手に見ていた『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)。
「死ぬよなぁ、アレ」
 二度ほど目をこすったあと、さらさらと依頼書を作成しはじめた。

 この後、こっそりと集められた10人のイレギュラーズにはある依頼が託された。
 『自称クソザコ神をこっそり支援し、サイクロプスの群れを撃滅せよ』

GMコメント

 この依頼には『覚悟』したやつしかいない……そうだな?

【オーダー】
 成功条件A:サイクロプスの群れを撃滅する
 成功条件B:クソザコ美少女の夢を壊さない

 ナイショで集められた10人のイレギュラーズたちは、祭り上げられて単身サイクロプスの群れに放り込まれたクソザコ美少女を助け、こっそりサイクロプスの群れを撃滅することになりました。
 クソザコ美少女は『我々は邪魔にならないように宴会の準備しときますんで!』ってサイクロプスが突っ込んでくるとされる廃村に置き去りにされています。青雀さんはとっくに飽きて別の神様を信仰しています。
 クソザコ美少女本人は調子に乗りにのっているため自分をクソザコ神だと思い込んでいるらしく、ぜんぜんやる気です。
 でもみんな知ってるよな。
 クソザコ美少女がクソザコだってこと。
 クソザコパンチだってこと。
 なのでこっそり現地入りし、見えない所から狙撃したり(クソザコ美少女の)目をつぶしてその間に倒したり盛大に空振りしてるのを当たったことにして倒したり、あの手この手でこっそりサイクロプスたちを倒し、村の作物とクソザコドリームを守りましょう。

 追伸。
 サイクロプスの弱点は目です。
 クソザコ美少女はそのことに全く気づいていません。

●サイクロプス
 身長3m超えの単眼巨人。
 わかりやすく目が弱点。砂とか唐辛子ジュースとかかけられただけでギャーってなる。
 すごくパワフルで牛とか片手で投げるらしい。
 全部で10体。

●廃村
 サイクロプスの群れが通過するらしい廃村。
 数件の空家、荒れ畑、空っぽの馬小屋、無人教会――といったものがちょこちょこあります。村っていうかもう集落の規模。
 そのド真ん中の路上にクソザコ美少女はぽつーんと立っています。

●クソザコ美少女
 https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3n000015
 やや高いファンブル値。低すぎる攻撃力。回避命中の下手さ。要領の悪さ。頭の悪さ。調子の軽さが特徴です。とくちょう?
 強みは今まで散々酷い目にあったおかげでミョーにタフってところです。ギャグキャラのごとく死にません。
 装備はナシ。
 『応援団長のタスキ』と『クソザコ神のクリアファイル』だけ持っています。
 当然武器なんてありません。だって青雀ちゃんがサイクロプスはワンパンだっていうから。

★前回までのクソザコ美少女
『ファンブル低下』:慎重さを学びました。
『防技アップ』ハラパンに耐性がつきました。
『HPアップ』:ひどい目にあって体力がつきました。
『遠術』:前に出ない戦い方を覚えました。
『祈祷師/鼓舞』:応援団長を自負しています(タスキは宝物です)。
『料理(悪)』:雑草を沢山食べて味覚が崩壊しました。
『騎乗』:馬で死ぬほど振り回されて慣れました。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • クソザコ神とサイクロプスの群れ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月07日 21時35分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
如月 ユウ(p3p000205)
浄謐たるセルリアン・ブルー
マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
グレイ=アッシュ(p3p000901)
灰燼
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
アト・サイン(p3p001394)
観光客
リリー・プリムローズ(p3p001773)
筋肉信仰者
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
イーサン(p3p004429)
特異運命座標

リプレイ

●誰だこんな依頼を思いついた奴は(私じゃない)
 『浄謐たるセルリアン・ブルー』如月 ユウ(p3p000205)は熟練のローレットギルドメンバーである。激戦は数知れず、あらゆる依頼で一定以上の成果をあげてきた彼女が今回手にした依頼書は……。
「この『サイクロプスの撃破』はいいわ。その下にある『クソザコ神の夢を壊さない』ってなによ」
 ユウは頭を抱えた。
「大体クソザコ神ってなによ。村人たちも何で一人に任せるのよ、村の危機なら安全策を取っておきなさいよ、何かあってからでは遅いじゃないああもう……!」
 依頼書をぐしゃっと握って、ユウは現地へ向けた馬車に飛び乗った。
「このまま死なれても寝覚めが悪いし、いいわよ! ……本当に仕方がないわね。おっと」
 口に手を当てるユウ。ついつい人の居る場所で頭の中身を喋ってしまった。
 馬車に飛び乗ってからの一端とはいえ聞かれてしまったろうか。
 と、前を見ると。
「…………」
 『筋肉信仰者』リリー・プリムローズ(p3p001773)が無言で大胸筋をぴくぴくいわせていた。
「えっ」
 筋肉の躍動が言語となってユウに伝わってきた。
『大丈夫だ。聞いていない』
「筋肉で直接!?」
 あとそれ聞いてるやつ!

 馬車には偶然乗り合わせた、というか偶然依頼を受けたローレットのギルドメンバーたちが何人か集まっていた。十人乗りってこたぁないので三台くらいに分かれちゃいるが……。
「マジで村だけじゃなくアイツの夢まで守んなきゃなんねーのか? 大体何だってアイツは武器も持ってねーのに、あのタスキは持ってきてんだよ」
 クソザコ神こと『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)が無駄に装備しているっぽいタスキ。元をたどるとマグナが彼女に渡したものである。
 思えばあの時も『応援団長だから後ろで応援してろ(戦闘に邪魔だから下がってろ)』とテイよく騙すために渡したのだが、どうやら未だにあの言葉を信じているらしい。
「しょうがねえな、まったく」
 マグナは左右非対称に苦笑した。
「神と名乗るものや神であるものは数あれど、これほど哀れな神もいまい……」
 ぽつりと声を漏らす『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)。
「なんだか昔を思い出すわ」
「アンタも応援団長だったのか?」
「そんなフレーバーがついたことはないけど……そうね、色んなあだ名はついたわ」
 フッと遠い次元を見て思い出にひたるレジーナであった。

 一方別の馬車。『誓いは輝く剣に』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は依頼書を隅から隅まで凝視してからぷるぷると震えた。
「夢を壊さないように戦ってくれ、ですか……ただ戦うよりも難しい注文です!」
「そうだねえ」
 『灰燼』グレイ=アッシュ(p3p000901)が黒猫とたわむれながらぼんやりと応えた。
「いくつかの報告書から聞き及んでいたけれど、なかなかどうして面白い子みたいだね。そういう子は好きさ。どうかありのままで夢を見続けてほしいものだ」
「たしかに……」
 ネコをちらちらみながら、シフォリィは覚悟をきめたように拳を握った。
「依頼を受けてしまった以上背に腹は変えられません! 頑張ります!」
「そうね。子供は夢見て笑顔で居るのが一番だわ~」
 『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)が指の上でリスに木の実をあげながら笑った。
「ビューティーちゃんの夢を、みんなで守ってあげましょうね~」
「……!」
 ネコとリス。小動物に挟まれて、シフォリィははわわっと顔を赤くした。

 馬車が三台くらいといったが、三台目には『観光客』アト・サイン(p3p001394)が乗っていた。
「彼女は観光客だ、間違いない」
「はい?」
「なの?」
 同時に首を傾げる『年齢不詳、経歴詐称の情報屋』イーサン(p3p004429)と『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)。
 アトのいう『観光客』という概念を理解するのは、その手のことに詳しいひとにもちょっと難しい。要点だけいうとRPGにおける縛りプレイ専用クラスみたいなものだと思っていい。
「その観光客が十匹のサイクロプスに単身挑むとはそりゃあ何ていうかクールだな! 報酬独り占めを狙って無謀とも言える冒険! そのまま死んでしまっても……」
「だめなの」
「だめか」
「それにあの人報酬貰ってませんしね」
 『タダで!』って明言されていたので、クソザコ神は当然のように無料奉仕である。ボランティアでサイクロプスの群れに放り込まれていた。
 ちゃきっと眼鏡らしきものをなおすイーサン。
「なんなんでしょうねぇこの人。騙しやすそうなのに情報料ふっかけてやろうって気がしないっすわー、微笑ましいって感想が先にきちゃいますよ」
「一体くらいは、ビューティに、本当に倒させてあげたい……の」
 ビギナーズラックなの。とガッツポーズをとってふんすするミア。
 ビギナーではない、が、悪運(ラック)は強そうだ……とアトとイーサンは思った。

●クソザコ美少女はクソザコである
「オーッホッホッホッホ! 神となったわたくしが村の危機を救ってさしあげますわ! 神となったからには! からには……ええと……ええと、どうするのかしら……」
 村の中心でクソザコ神がプルプルしていた。
 頭を抱えて『もうおしまいですわー!』と叫ぶクソザコ美少女。
 底へ、謎の二人組が現われた。
「おお、神よ! 御光臨なされましたか」
「街では今、クソザコ神様の話題で持ちきりなんですよぉ」
「えっ」
 振り返ると奴が居る。謎っていうかレストとイーサンの二人組が変な格好して立っていた。『クソザコ神』と書かれたちっちゃい旗とか振っていた。
「なんですのあなたたち。なんだかどこかで見たような――」
「その身から溢れんばかりの光輝! すぐに分かりましたぞ!」
「クソザコ神様の活躍を、信者としては是非この目で見ておきたくて~」
 相手の話をまるで聞かない人のテンションで至近距離まで詰め寄ると、のけぞるクソザコ美少女に二人して顔を近づけた。
「聞きましたぞ! クソザコ神が敵をワンパン出来るのは、儀式によって敵を弱体化させられるからである……と!」
「えっそうなんですの?」
「すごいわぁ! クリアファイルをぱたぱたしただけで巨人を倒してしまうなんて~」
「そうだったんですの!?」
 このクリアファイルが? とクソザコ神が写真うつりに失敗して半目になりつつ微妙に上向いてる半笑いのクリアファイルを見なおした。
「さあ来ますよ!」
「えっでも」
「ぱたぱたして~」
 振り返ると、サイクロプスの群れがバーゲンセールもかくやという勢いで突っ込んできた。全員棍棒みたいなモンを振りかざし、なぜか涙目になってあちこちの小屋とか塔とかをたたき壊していた。
「……なんか、聞いてたのと数違いません?」

 時間をちょっぴり遡ろう。
「まずはサイクロプスの数を減らしてから彼女にけしかけよう」
「……」
 村より北に離れたなんでもないトコロ。グレイとリリーが迫るサイクロプスの群れに立ちはだかっていた。
 勿論倒そうってハラじゃない。それじゃあ人数差がヤバすぎて袋だたきにされちゃう流れである。
「まずは地固めからだ」
 グレイがカラスを空に飛ばすと、それに伴ってレジーナが天高く飛翔し始めた。
「いくわよ……アルファ、ベータ」
 レジーナは自らが使役するカラスになんか赤い液体のはいった袋をくわえさせると、迫るサイクロプスたちへと爆撃機よろしく投下させはじめた。
 自らも同じような袋を持ち、えいえいと(言ってないけど)袋をサイクロプスへ投げつける。狙いは勿論目である。
 サイクロプスの巨大さに比べれば、レジーナの投げた袋なんてヒトでいうところの一滴の水程度の影響しかないだろう。
 でも自分の身で想像してみて。タバスコ目薬にするところ。
「「ギャアアアアアアアアアアアン!?」」
 さっきまで強キャラ臭をただよわせて行進していたサイクロプスたちが目を押さえてのたうち回った。
「さて、追い打ちだ」
 グレイは天に向かって魔術の杭を発射。はじけて降り注ぐ杭がサイクロプスたちを襲う。
「……」
 更にリリーが筋肉言語でなんとも言葉にしがたい迫力や美を語りながらサイクロプスたちに突撃。
 のたうち回ってる連中にスネとか腹とかとにかく叩いちゃいけない所をそれはもうドッカンドッカンいった。魔力っていうか筋力を込めていった。
 他人にタバスコ目薬されたあとハラパンされたら誰だって怒る。
 サイクロプスたちは怒り狂って棍棒を振り回し、目を血走らせてグレイたちを追いかけ始めた。
「おっと付き合うつもりはないよ。だよね?」
「…………」
 リリーは筋肉で即時撤退を呼びかけ、その場から引き上げる。
 レジーナも空に向けて合図を出し――。

 今に至る。
「「ギャアアアアアアアアアアアン!」」
「サイクロプスってあんなに荒くれた生き物でしたの!?」
「クソザコ神様~、やっちゃって~!」
「え、こう? こうですの!?」
 クリアファイルのかろうじて鋭そうなところをシュッシュッて振るクソザコ神。
 すると、どこからともなく現われた氷の刃がサイクロプスの目の所をシャーッってやっていった。
 これは想像しないでほしいんだけど、目にコピー用紙の鋭いところをシャッてやったらすごく痛いと思う。サイクロプスもそうだった。っていうか死んだ方がマシくらいの痛がり方をした。
「ほ……本当に目が弱点なのね。わかりやすすぎない?」
 ユウは物陰から様子をみつつ、クソザコ神のモーションに合わせるようにしてフロストカッターを放っていた。都合良くと言うべきか、クソザコ神は目を瞑ってクリアファイルを振り回しているだけなので本当に自分が当てたみたいな気持ちになっているらしかった。
 『ええっ!? すごすぎますわこれ!』とかいってぴょんぴょん跳ねていた。
「ものを信じすぎるのも考えもんだな……」
 マグナが世にも微妙な顔をして、ロブスターハンドの左手をそっと物陰から突きだした。
「じゃ、じゃあこれは!」
 へやーとかいいながらクリアファイルをぱたぱたするクソザコ神。
 (マグナの放った)紅蓮のオーラがサイクロプスの目をぐしゃーってやってとんでもない悲鳴をあげさせた。
 絶叫しながら息絶えるサイクロプス。
「これで目が弱点だと気づけばいいんだが……」
 様子をうかがっていると、クソザコ神は急に威勢を取り戻して胸を張った。
「わたくしがパタパタしたらなんか敵が倒れましたわ! どうしてかしら!? でもすごいですわ! わたくし!」
「ええすごいですとも!」
「神様だわ~」
 全然気づいてなかった。頭と察しの悪さが半端なかった。
 ガクリと肩を落とすマグナ。
 とかやっていると、クソザコ神の後ろをネコ的なものがサッと横切った。
 あと馬も横切った。
「ハッ、あれは?」
 ネコ的なものが落としていったメモらしきものを拾い上げるイーサン。
「クソザコ神様見てください。サイクロプスの弱点は目だと書いてあります!」
「なんですって!? ……あとその馬はなんですの? 迷子ですの?」
 イーサンの後ろでぶるるんぶるるんいってる馬を指さすクソザコ神。
 馬の側面(クソザコ神とは逆面)にプルプルしながらしがみつくアト。アンドミア。
 アトが小声で語りかけた。
「あのね、観光客が言うのヘンなんだけど、この世界の人って知的な猫を見たら即ブルーブラッドをだと見ると思うんだよね。ごまかしが利かないっていうか……あと変化Ⅱいるんじゃなかったっけそれ」
「にゃ……」
「だからもう暫く我慢してて。できれば次の攻撃まで」
「にゃ……」
 そうこうしていると、クソザコ神はその辺の小石を拾って投擲の構えをとった。
「そうとわかればサイクロプスなんてイチコロですわ!」
 てやーと言って投げた小石が、小さな山を描いて3メートルくらい先にことんと落ちた。
 真顔になるクソザコ神。
 真顔になるマグナ。
 だよねと笑うアト。
「今だ打てっ」
 馬の側面にしがみつきながら巧みな騎乗戦闘センスで銃を撃つアト。と、レールガンをぶっ放すミア。
 二人の攻撃によってサイクロプスは『目がー』みたいなことを言ってぶっ倒れた。
「えっなぜですの!?」
「さすがクソザコ神様! 小石にオーラを乗せて相手に当てるとは」
「一瞬すぎて見えなかったわ~」
「これほんとにわたくしですの!?」

 そこから先はもうお祭りみたいな騒ぎである。
「クソザコ神様! ビームの構え! ビームの構えです!」
「こうよ~クソザコ神様~!」
 イーサンとレストがテキトーにおだてて誘導すると、両腕で光線を打つ姿勢を素直にとり、直後にユウが物陰からダイアモンドダスト。
 無数の氷結晶がサイクロプスの群れへと降り注ぐ。
「次はこうです!」
「おでこから撃つイメージよ~」
「こうですの!?」
 クソザコ神が言われるままにピースサインでおでこを覆った感じの姿勢をとるやいなやマグナがクラブハンドから紅蓮のキャノン砲を発射。サイクロプスの頭がどかーんと破裂する。
「すごいことになってますわ!? わたくし!? これ本当にわたくしがやってますの!?」
「本当です本当です。ほら虚空をパンチして!」
「何も無いところを打ち抜くイメージよ~」
 クソザコふにゃふにゃパンチが出れば、飛行して物陰に潜んでいたレジーナやそばにいたミアたちが一斉射撃。
 レジーナの矢やミアの弾丸やアトの鉛玉がここぞとばかりにサイクロプスの目ばっか打ち抜いていく。
「ハッ、今さっきあそこに誰かいたような――」
「あらこんなところにリスちゃんが」
「あら本当! かわいいですわ!」
 気づきそうになった所ですかさずレストが可愛いリスちゃんを取り出して目を引く完璧な作戦である。
「こんな作戦ひっかかるの、世界広といえどもアイツだけなんじゃないか?」
「くっ……!」
 リリーが上腕二頭筋を激しく誇張し、筋肉の美しさをアレした筋力砲ビームを発射。
 サイクロプスを薙ぎ払う。
「くう……!」
 かつ、リリーは自分の左腕を押さえこむように掴んだ。
「なっどうした!?」
「リリー……」
 ユウがたらりと頬に汗を流す。
「クソザコ神より自分のほうが美しいって主張したくてうずうずしてる、って言ってるわ」
「なんで分かるんだよ」
「ミアくん、暫くリリーくんを羽交い締めにしておいてね」
 グレイはそう言うと、サイクロプスめがけて嵐のような魔術を解き放った。
 クソザコ神は言われるがままに応援団長のたすきを頭上でくるくる振り回し『なんで竜巻がおきてますの!? このタスキそんな効果ありましたの!?』と困惑していた。

 さて、そろそろお気づきかもしれないがサイクロプスはシルエットのわりに結構弱いモンスターである。弱点丸わかりだし。
 おかげで残り一体まで減らすことができた。
「最後の一体は、自分で倒して欲しい、の」
 グッとガッツポーズをとるミア。
「確かに、折角だしね。夢も持てそうだ」
 グレイもそれに同意して指をパチンとならした。
 腕組みして唸るユウ。
「けどあの戦力じゃ最悪死ぬわよ。一体どうすれば……」
「我に秘策あり」
 アトがニヤリと笑って銃をリロードした。
 イーサンとレストに合図を出しつつ馬を走らせるアト。
 普通絶対気づくだろってくらいの強引な側面乗りでクソザコ神から身を隠しつつ、アトはサイクロプスの裏へと回り込んだ。
 と同時にイーサンがサイクロプスの目めがけて信号弾を発射。
 でもってレストが今度はウサギちゃんよ~と偽ってクソザコ神の両目にコショウをさっさか振りかけまくった。
「ぎゃーん! 目がー!」
「ぎゃああああん!」
 サイクロプスもクソザコ神も目を押さえるその瞬間、アトはサイクロプスの膝めがけて銃を撃ちまくった。遠くから狙いを定めていたミアも同時にもう一方の膝を撃つ。
 何がおきるかっていうと。サイクロプスがバランスを崩して派手に転倒したのだ。
 転倒し――。
「えっちょこっちに倒れてき――めぎゅ!?」
 クソザコ神がサイクロプスの目に刺さった。

「うん、まあ、クソザコが倒したってことでいいんじゃないか?」
「そ、そうね。なにせ自分が刺さってるし」
 なんかドロドロになったクソザコ神あらためクソザコ美少女がぐったりした顔で這い出てくる。
 と、サイクロプスが倒れた衝撃でマグナたちの隠れていた壁が盛大に崩壊した
「…………」
「…………」
 咄嗟に巨大なロブスター(しかも赤い)に変身するマグナ。
 さすがにバレるでしょって思ったグレイたち。
 クソザコ美少女は顔をぐいぐいとぬぐってから……。
「なんだ、ただのロブスターですのね」
「……!」
 というところにリリーが高所からのスーパーヒーロー着地。
 全身の筋肉で美と筋肉について急に主張しはじめようとしたので、それを見ていたレジーナが魔方陣から大量にコショウをばらまいた。
「めがー!?」
 目を押さえて悶絶するクソザコ美少女。
 リリーを抱えて急いで撤退するレジーナたち。
「さてと、これにて一件落着ね。逃げるわよ」
「よしきた!」
 アトたちは馬をはしらせ、悶絶するクソザコ美少女から逃げた。

 後日談。
 クソザコ美少女はさんざん目ぇ潰されたのにお腹いっぱい夢いっぱいの顔で町に帰ってきたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 もうひとつの後日談。
 調子に乗ったクソザコ美少女が意気揚々とノーマルな個人依頼を受けて、ボッコボコにされて帰ってくるのはこの翌日の話でした。
 『もうクソザコ神なんて信じませんわー!』と叫んでいたというが……

★これまでのクソザコ美少女成長記録
『ファンブル低下』:慎重さを学びました。
『防技アップ』ハラパンに耐性がつきました。
『HPアップ』:ひどい目にあって体力がつきました。
『遠術』:前に出ない戦い方を覚えました。
『祈祷師/鼓舞』:応援団長を自負しています(タスキは宝物です)。
『料理(悪)』:雑草を沢山食べて味覚が崩壊しました。
『騎乗』:馬で死ぬほど振り回されて慣れました。
『クソザコ神』:おだてられるとなんでもやる子になりました。←NEW

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