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シナリオ詳細

<半影食>憤怒を内に、振るえし拳

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<半影食>憤怒を内に、振るえし拳
 お盆の時期も過ぎた、8月下旬。
 まだまだ夏の暑さは緩む気配がなく、昼はうだるような暑さ、夜は寝苦しい熱帯夜が続く日々。
 ……そんな寝苦しい夜。
『……うう、暑い……暑いっ……』
 寝汗を掻くのは、最近寝不足気味な希望ヶ浜の大学に通う大学生。
 クーラーもなく、扇風機は暑い風を掻き回すのみ……この夏の時期はいつも苛立っている。
『……あー、ダメだ! ちっとコンビニに行ってアイスでも買って来るか……』
 体を芯から冷やそうと、スウェットにぱぱっと着替えて、街灯がぽつりぽつりと灯るコンビニへの街角を歩く彼。
 行き慣れた道を辿り、一つ目の角を左、二つ目の角を右、そして三つ目の角を左に曲がり、少し行った所にコンビニが……無い。
『……あれ? おっかしいなぁ……ここにあった筈なのに……移転したか?』
 寝不足でイライラしている気分の中、周りを見渡した彼の視界には……いつもと同じようで、何かが違う街並み。
 ……更に空に視線を向けると、深夜で真っ暗だった筈なのに……何故か赤く染まっていた。
『何なんだよ……くそが……!』
 暑さのせいもあり、更に苛立ち、吐き捨てる彼。
 そんな彼の元に、忍び寄るのは……漆黒の鴉達。
『カァー、カァー……』
『何だよこの鴉! 俺をからかってんのか!!』
 その鳴き声に、今迄のイライラが一気に噴出したのか、大声で吐き捨てる彼。
 そんな彼の言葉を敵対行動と判断したのか、漆黒の鴉は……彼に向けて急降下。
『……っ!』
 その闇の体が当たった衝撃で、その場に倒れる彼。
 だが、次の瞬間……。
『……ヒヒヒヒ……!! 殺シテヤル! ナニモカモ!!』
 すくっ、と立ち上がった彼の身からは、漆黒の煙のような物が立ち上り、その身の周りには黒い羽の様なものが生えて……目は赤く染まる。
 そして彼の周りには、他の漆黒の鴉達がその周りを取り囲み、彼を守るかの如くカァ、カァと鳴き続けるのであった。


「あ、皆さんどうも……今日も来て頂けた様ですね? それでは……また依頼を任しても、宜しいでしょうか?」
 と、カフェ・ローレットに居た君達へ声を掛けるのは音呂木・ひよの。
 彼女の声掛けに頷く君達へ、早速彼女は。
「ありがとうございます。皆さんも知っての通り、最近はここ、希望ヶ浜の悪性怪異:夜妖<ヨル>の活動が活発化しているのは知って居ますよね? どうやらその原因は、今迄無害であった神がこの現世に急速的に影響をおよぼしているという事象が起きてしまっている様なのです」
「それに加え、その神が夜妖と無縁な生活を送る一般人達にも強い影響をおよぼし始めて織……神が作りし異世界が、希望ヶ浜の様々な所に現れており、そこに一般人が迷い込んでしまうという事件が多発しています」
「そして今日も……そんな事件が予測されました。本当に、ただただ普通の街角に異世界の入口が口を開け、何の変哲も無い一般人が迷い込んでしまったのです……」
「そして……迷い込んでしまった方はどうも夜妖の影響を強く受けてしまった様で……夜妖の力を扱うモノと化してしまいました。皆様の力で夜妖と、彼を夜妖に陥れたモノを倒せば、彼は正気を取り戻すでしょう。どうにかイレギュラーズの皆さんには、彼を夜妖から救い出してきて頂きたい、と思います」
 そして、最後にひよりは。
「本当……詳細が不明な事件が多発しており、皆さんに申し訳無いと思っています。ですが、救わないことには希望ヶ浜が夜妖の力に支配されかねません。どうか、宜しくお願いします」
 と、深く頭を下げるのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
 希望ヶ浜に次々と開く異世界への門……とうとう、その夜妖の力に堕とされてしまった者がでてしまいました。

●Danger!(狂気)
 当シナリオには『見てはいけないものを見たときに狂気に陥る』可能性が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●成功条件
 希望ヶ浜の大学に通う大学生『アキラ』を夜妖から救い出す事です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●周りの状況
 今回舞台となる場所は、本当に何の変哲も無い街角の一角です。
 当然人家はありますが、異世界ですのでそこでの被害はさほど問題ありません。
 街角なので、道はそんなに広いという訳ではありません……なので、余り広範に戦列を展開する、という様な事は出来ないので注意して下さい。
 又、夜妖が取り憑いた彼は、周りの夜妖達を含めて全てを倒した上で、彼を不殺で倒す事で正気に戻ります。
 勿論彼は正気を失っているので、何か説得の言葉を掛けても一切反応しませんので、倒す以外で対応は出来ません。

●討伐目標
・怒れる鴉天狗『アキラ』 x 1人
 夜妖に取り憑かれてしまった、希望ヶ浜の大学生です。
 寝不足で苛立っている中の心の隙に取り憑かれてしまった様で、その苛立ちを拳に乗せて殴り掛かりの攻撃を仕掛けてきます。
 この殴打の一撃は攻撃力がかなり高く、HP吸収の効果も持っているので、攻撃兼防御が可能です。
 又、黒い羽を生やしており、それを吹き飛ばす事での視界を奪う(戦場に暗闇効果)と、羽を突き刺し遠距離攻撃、かつてその対象を周りの夜妖鴉達に集中させる(対象が鴉達に怒りを付与したのと同等)行動を行います。

・夜妖の力を持った『闇鴉』x12匹
 影の姿形の鴉達です。
 一体毎の攻撃力、防御力は皆様よりちょっと弱い程度ですが、体力だけはかなり多いです。
 また、当然鴉なので空からのヒットアンドアウエイの攻撃を繰り返します。
 尚、この闇鴉達だけを倒しても、鴉天狗の『アキラ』は正気に戻りませんので、どちらも倒すのは必須、となります。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <半影食>憤怒を内に、振るえし拳完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き
原田 幸村(p3p009848)
あやかし憑き
ウルファ=ハウラ(p3p009914)
砂礫の風狼

リプレイ

●寝苦しさの中
 お盆も過ぎた、8月の下旬。
 夏の寝苦しさはまだまだ残り、熱帯夜の続く、夏のある夜。
 ……しかしそんな夏の夜に現れたのは、希望ヶ浜の大学に通う、極々普通の大学生。
 エアコンもなく、この様な熱帯夜は扇風機だけで過ごすような苦学生。
 身体を冷やす為にコンビニにアイスを買いに出かけた所に、事件に巻き込まれてしまったという……話。
「やれやれ……また夜妖絡みの事件か。本当にうんざりする話だぜ」
 と『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が肩を竦めると、それに『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)も。
「ああ……本当にどこでも開いているよな、この入口」
 と溜息をつく。
 確かに二人の言う通り、今回の様な事件は最近、この希望ヶ浜で度々発生している。
 極々普通の生活を送っていた一般人が、何も知らぬまま、赤い月が浮かぶ世界へと迷い込んで仕舞うという話。
 そんな、嬉しくない異世界転生の話に、『闇之雲』武器商人(p3p001107)はニヤリ、と笑みを浮かべ。
「おやまァ……商店街や廃墟の区画とかではなく、ただの街角が異世界化するのであれば、いよいよ影響力が強まっているのかねぇ?」
 と、ニヤリ笑う。
 ……勿論その真実こそまだまだ分からない所。
 とは言え今回の依頼においては、異世界へと迷い込んでしまった彼は夜妖に憑かれて、力を振るい対抗してくるであろう、という話もひよのから聞いていた。
「ふぅん……怪異に取り憑かれるだなんて有りなんだな。ハッハー! まるで悪魔憑きだな!」
 と『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)はどこか嬉しそうに叫ぶと、それに『砂礫の風狼』ウルファ=ハウラ(p3p009914)と『あやかし憑き』原田 幸村(p3p009848)も。
「うむ。夜妖か……最近よく聞くのぅ。ネクストでも混沌でも暴れるとは、奴らは加減を知らぬと見える」
「そうだな……夜妖に取り憑かれた男性か……俺と同じ感じだけど、全く方向性は違うよね……ああはなりたくないと切に願うな……これもやっぱり幼い頃から憑いてくれている八尺ちゃんのお陰なのかな? いつもありがとう、八尺ちゃん」
 頭を下げる幸村に、その背後の八尺ちゃんは、うんうん、と頷く。
 ともあれ、夜妖の憑いた極々普通な一般人の高校生を救い出すことが、今回の依頼……その為には、憑かれた彼を含めた全ての夜妖達を倒さなければならない。
「本当は一般人の方を叩きのめすのは気が進まないけれど、そうしないとアキラさんを救い出せないのなら、やるしかないね……」
 と『空に願う』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が呟くと、幸村、ウルファが。
「そうだね。男性も助けなきゃだよね。それがオレ達のお仕事なんだから」
「うむ。何、似たような存在であれなんであれ、今は戦うより他にはない。存分にやり合おうぞ」
 そしてジェイク、グリムも。
「そうだな。まずい事に夜妖共の力は日に日に増していると来たモンだ。この件で希望ヶ浜とヒイズルの関連性も気になるが、今は目の前の問題を何とかしねえとな」
「ああ。ゴテゴテにしか回れないというのはもどかしいが、とにかく今は救出あるのみか…彼と、その周りを飛び回っている鴉の様な夜妖、だったな?」
 とグリムの言葉に『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が。
「ああ……漆黒の黒羽を纏った鴉だ、という話しだ。ま、鴉は体色の為か、不吉なものと忌まわれやすいらしいからな……このような件の場合、そういう広く普及した認識が、それを現実にするのだろうな?」
 と言うと、ブライアンが。
「ん、まぁそうかもしれんなぁ……ま、不吉な者を払うオレ達はさながらエクソシストって感じかねぇ! 生憎と俺はエクソシストじゃないからな。十字架や聖水の代わりに、弾丸を腹一杯喰らわせてやるぜ!!」
 嬉々としたブライアンの言葉にフォルトゥナリアも。
「そうですうね……今回は取り巻きの体力も多いらしい以上、長期戦にはなりそうです。ですがしっかりみんなを補給して、息切れしないように頑張りますね」
 ぐっ、と拳を握りしめる。
 ……そして武器商人と、アーマデルが。
「まぁなんにせよ、夜妖関連であれば放っておくのは害にしかならないし、ちょいと祓うとしようか、ヒヒヒ!!」
「そうだな。安心して生活出来ないのは困りものだ。現実から目をそらした代償とこじつけるにも重すぎるしな……だからこそ、オレ達がしっかりと対処していくとしよう」
 そんなイレギュラーズ達の各々の言葉を胸に抱きつつ、イレギュラーズ達は極々普通な街角の一角へと急ぐのであった。

●命を掠める
 そしてイレギュラーズ達が足を踏み入れた異世界。
 周囲に何か特殊なものがある、というわけはなく……何の変哲も無い街角の一角が広がっている。
 しかしそんな空間を彩るのは、一面の赤い空……夕焼け空とは全く違い、何か不思議な焦燥感を抱かせる……そんな、気持ちざわめく空。
「さて、と……何処に『アキラ』は居るんだろうな?」
 とジェイクが周りを見渡しながら、耳を澄ませる。
『……カァ、カァ……』
 と、イレギュラーズ達の耳に僅かに聞こえ始めるのは、鴉の鳴き声。
 まだ、かなり遠くに居る様だが、その声色は、何かを威嚇しているかの様にも聞こえる。
「む……どうやらこの方角から鳴き声が聞こえるぞ」
「ああ。んじゃ、早速だが向かうぜ!」
 ウルファの指さした方向へ、先陣切って向かうブライアン。
 声の方角を確かめつつ、赤い空の街角を駆けて行くと……。
『クソっ……カァカァうるせえんだよ!! この鴉共が!!』
 明らかに苛立つ人の声。
 間違いないだろう……その声は、『アキラ』の物。
 苛立つ彼の周りに恐らく鴉達が取り囲み始め、それに更なる苛立ちで叫んでいるのだろう。
 しかし鴉達……いや、夜妖達は仲間を増やすべく、彼の頭上をぐるぐると飛び回り怒りを誘い、冷静な判断力を削っていく。
『くんな、巫山戯やがってよ!!』
 とうと堪忍袋の緒が切れ、鴉に向けて拳を振るうアキラ。
 だが、ただの一般人に過ぎない彼の拳は空を切り……その後の隙を突いて、一匹の鴉夜妖は、彼の心臓に突撃。
 すっ、と夜妖の影が消えたかと思うと、次の瞬間、彼の身体に黒い羽が瞬く間に生えていく。
『ぐっ……ぐ、ガァアアアア!!』
 一時の苦悶の後に、発狂する『アキラ』……と、その瞬間、イレギュラーズ達もその場に辿り着く。
「アキラ、大丈夫か!?」
 とジェイクが呼びかけるが、黒い羽を生やした『アキラ』だったもの、は。
『ウグゥゥアア……!!』
 明らかに人語ではない言葉を叫びながら、目に付いたイレギュラーズ達に向けて駆け込み、殴り掛かる。
 咄嗟にアキラの一撃を受け止めたのは武器商人。
「ヒヒヒ……危ないねぇ! ま、既に狂っている様だから、危ないも何もないんだろうけど」
『グゥウゥウ……!!』
 武器商人の言葉を認識為たかどうかは分からないが……その目は血走り、明らかに狂気に陥っている、と分かる。
 ……そして、イレギュラーズ達が対抗してきたのを開戦の合図としたのか、彼の周りで飛んでいた漆黒の鴉達も。
『カァ、カァー!!』
 左から右から……次々と鳴き声を上げながら、イレギュラーズ達に向けて空からのヒット&アウェイの攻撃を繰り出してくる。
「空からちょこまかと鳴いてきやがって……!」
「うむ。五月蠅い奴らじゃ……何にせよ、ゆくぞ」
「ああ。一匹残らずボコボコにしてやるぜ!」
 ウルファとブライアンが言葉を交わし、そしてアーマデル、グリム、フォルトゥナリアとブライアンらは夜妖の「闇鴉」達へ真っ向から対峙。
 一方でジェイクと武器商人の二人はアキラへと向く
「取りあえずアキラはこっちに任せてくれ。そっちは頼んだぞ!」
 とジェイクは仲間達に声を掛けつつ、アキラとは適正距離を取りつつ、狙撃の一射。
 それを補助する様に、鴉も多少範囲に巻き込みつつ、武器商人は神の光を周囲に放散。
 無論、それで死ぬ程柔ではないアキラと夜妖……ただ、攻撃されたことに怒りを覚えた様で、その攻撃の矛先は武器商人へ。
 致命傷にならないよう、身を逸らせて躱して行く武器商人。
 何はともあれ、二人でアキラの相手はこなせるであろう……だから、他のイレギュラーズ達は。
「取りあえず、あの闇鴉達を先に片付けるとしよう。俺はもともと火力は高くないから、調整はしやすい筈だ」
「ああ、分かった」
 アーマデルに頷くグリム……そして、夜妖達の攻撃をひとまずは掻い潜った後。
「ハッハー! 曲芸みてーで面白いだろ!」
 と先陣切ったブライアンが、識別で敵味方を区別して繰り出す鋼の驟雨。
 次々と、的確に敵を撃ち抜き、ダメージを与える。
 一方、アーマデルは、ターゲットする方向を鴉達……つまり斜め方向に向けて、英霊の焦燥を奏で、鴉達を攻撃。
 二人の攻撃の後、フォルトゥナリアは。
「ここかな? みんな頑張って、クェーサーアナライズ!」
 と仲間の回復を優先して動く。
 そして回復を受けた後に幸村が。
「八尺ちゃん! 御願い、あいつら撃ち落としてくれ!」
 と八尺ちゃんへの指示と共に、降下攻撃を繰り返す夜妖を手刀の乱撃で迎撃。
 続いてウルファは、熱砂の精を使役。
「異界を生み出す力がある割に、人を操るその所業、ちと気に食わぬの。一匹たりとて逃すつもりはない」
 鋭く見据え、使役した精を放ち、叩きのめしていく。
 そして、グリムも。
「聖光よ、悪なる者を払い給え」
 ウルファと同様、熱砂の精で攻撃を重ねていく。
 ……そんなイレギュラーズ達の連携攻撃は、夜妖断ちの体力を確実に削り去る。
 ただ、流石に敵数も多く、体力も多い奴らなので、中々倒れない。
 数分を掛けて、どうにか一匹を倒せる程度。
「これは……中々しぶとい相手ですね。ジェイクさん達は、大丈夫ですか?」
 とフォルトゥナリアが呼びかけると、ジェイクは。
「こっちは問題無い。殺さないように気をつけているからな」
 そんなジェイクの言葉に武器商人も。
「そうだねぇ……気をつけないといけないね。うっかりしていると握りつぶしてしまいそうだ。ヒヒヒヒ……!」
 笑い声を上げながらも、きっかり敵の体力を見極め、攻撃の威力を調整。
 勿論残り体力が減れば、不意に殺してしまいかねない。だから、油断は禁物。
「兎に角、こちらも急ぎましょう……!」
「そうだね、やっちゃえ八尺ちゃん! ……あっ、でも味方の皆さんには当てないでね! 絶対だよ!?」
 フォルトゥナリアに頷きつつ、幸村は更なる攻撃へ。
 ……戦闘開始から数十分し、確実に夜妖鴉を倒していく。
 残る夜妖は後2匹となった所で……一匹の夜妖が。
『カァー!!』
 今迄とはちょっと声色を変えて鳴く。
 ……そして次の瞬間、攻勢を強めていた鴉達は、くるくると回転……そして踵を返す様に、イレギュラーズ達から距離を取る。
「……言うたぞ、逃がさぬと」
 しかしそれを見越していたウルファが、素早く間合いを詰めて、悪意の弾丸を翼に向けて放つ。
 更にアーマデルも、中距離に届く万死の一撃で夜妖を捕らえ、逃さない。
 逃げを塞ぎ止められた夜妖達に、幸村が。
「これで、夜妖達は終わりだよ、いっけー、八尺ちゃん1」
 奇をついた一撃を食らわせ、最後に残った二匹の夜妖を地面へとたたき落とす。
 そしてそこに、ブライアンの致命傷の一撃を与え……鴉夜妖達を全て倒す。
「夜妖は倒せましたね……後は、『アキラ』さんだけです」
「うん、了解! 八尺ちゃん、 今度はあっち。でも殺しちゃダメだからね! おねがいね、マジで!!」
 フォルトゥナリアに頷きながら、不殺を懇願する幸村。
 既に武器商人とジェイクの攻防もあり、彼の体力は残り少ない状態……不意に渾身の一撃を放てば死んでしまうだろう。
「……さぁ、この声を聞け」
 とアーマデルが不協和音を奏でて、アキラを蝕んでいくと同時に、ジェイクも不殺の銃から放つ一撃で敵を射止める。
『グゥアアア……! クル……シィ……』
 その攻撃に、苦悶を叫ぶ『アキラ』。
「……? ……声が聞こえたような気がしたが」
「ああ……夜妖側の方が弱って、本来の人格が顔を出し始めたか? まぁ、後少しだ」
 ウルファの疑問に、アーマデルが頷く。
 そんなイレギュラーズ達の、決して殺さずの剣撃により……苦しむ『アキラ』は。
『グ……グガァァァ……!!』
 最後の咆哮と共に……その場に崩れ墜ちるのであった。

●怒を過ぎて
 ……そして、『アキラ』が倒れてから、暫しの時が経過。
「……本当にこの異界は、夜妖を払う事で消えるのだろうか?」
 反応が無い彼に、アーマデルがぽつり不信を呟く。
 未だに不明瞭な事が多い、この事件……夜妖を倒せば、払われるとは聞いたものの……彼が目を覚ますまでは、真実は分からない。
 ……そんな不安を抱きつつ、更に暫くの間待ち続けるイレギュラーズ。
『……ん……ぅ……うう……』
 ……すると暫くの間動かなかったその体が僅かに身じろぎ……声と吐息が漏れる。
 更に、彼の身体の周りを包んでいた黒い羽も、いつの間にか消え失せていて。
「……どうやら、息を吹き返した様だな。どうだ、何か覚えているか?」
 と、安堵の溜息を吐きつつ、肩を叩くジェイク。
『……? な、何だ……ここ!?』
 突然の事に、流石に混乱している模様。
 そんな彼を落ちつかせつつも、周囲を見渡し警戒し続けるのは武器商人とブライアン。
「いやぁ……どこからか『見てはいけないもの』が出てくるかもしれないからねぇ……ヒヒヒ」
「そうだな。ま……何も起きなきゃいいけどよ、細かい事が分かっていない以上は、警戒するに越した事はねぇ」
 イレギュラーズ達であっても、狂気に陥る可能性が警告されていた訳で……それが何かは、全くもって分からない。
 少なくともそれを一般人が見れば、取り返しの付かない事態になる可能性もあるからこそ、一層警戒をし続けるイレギュラーズ。
 ……そして、何とか『アキラ』が正気を取り戻したところで、彼がこの世界に足を踏み入れた後……何も覚えてない事を確認。
「そうか……ま、仕方ないな。んじゃ、帰るか」
 とアーマデルが言うと、ジェイクも頷き、『アキラ』に肩を貸して立たせる。
「異界は長いするものではないからな。必要なくば、早急に脱出しよう……来た道を戻れば、多分出られるだろうからな」
「そうだな……本当災難だったな。しかし、お前は運が良い。何せ俺達に命を救われたんだ。一生感謝しろよ……なんてな」
 二人の言葉に、アキラは。
『な……何を…………まぁ、な……』
 助けられたという事実は変わらない。
 ……まぁ、彼がこの世に足を踏み入れたのも、また偶然ではあるし……こうして助けられたのも、何かの縁。
 苛ついていた彼も、本心は普通の大学生な訳で……同年代のアーマデルらの言葉に……照れ隠しするかの様に、頷くのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

赤き世界の夜妖退治、お疲れ様でした!
熱帯夜にクーラーが無い生活って厳しいですよね……去年までは同じ経験してました……。
この一夏の経験が、彼をある意味成長させるかもしれません……ね?

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