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シナリオ詳細

レジャープールの怪と零れ落ちる真実

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●レジャープールの夜妖
 希望ヶ浜ウォーターアイランド。希望ヶ浜の中ほどに位置する、大きな屋内型レジャープールである。
 屋内の温度はもちろん、水の温度も完全管理。季節によって冷水と温水が楽しめるほか、一般的な25mプール、流れるプール、波の出るプール、ウォータースライダーなど、多数の仕掛けが満載の、大人気スポットだ。
 ――だが。その大人気スポットが、ここ数日休業している。表向きは施設の点検のためであったが、しかしその実態は違うのだ、と街では噂されていた。
 ――出るのである。幽霊が。
 営業中に何度か遭遇した者もいる、と言う噂である。何でも、各種プールにその幽霊はいて、客に害をなすのだという。
 幽霊など存在しない。仮にいたとしても、その程度で営業を止める営利施設などは存在しないだろう。だからこれは、あくまで噂話。
 されどここは希望ヶ浜。幽霊――夜妖(ヨル)は存在する。故にその噂は、真実であったのだ。

「と言うわけで、お仕事だよ、みんな!」
 と、カフェ・ローレットの一角にて、ぴっ、と手をあげて宣言するのは炎堂 焔 (p3p004727)である。隣に座るリア・クォーツはゆっくりとカプチーノで口を湿らせてから、
「……まともな依頼でしょうね?」
 と尋ねるものだから、焔はむぅ、と頬を膨らませて、
「ボクが変な依頼持ってきたことなんてあった……あったかもしれないけど、それはごくたまに、少数だよ! 両手で数えてみてよ! 足りないはずだから! あれ?」
「焔さんのボケはともかく」
 タイム (p3p007854)は、焔がテーブルに置いたチラシを目にする。それは、希望ヶ浜ウォーターアイランドのチラシだ。
「まともなお仕事なのは確かだと思います。希望ヶ浜ウォーターアイランド。噂は聞いてますよ、幽霊のせいで休業中だって」
「そう! これは希望ヶ浜学園に来たちゃんとした依頼だよ! それをボクが選んだんだ!」
 むふー、と胸を張る焔。リアは嫌そうな顔をする。
「ふふ、なんだか嫌そうな顔をしている気配がするわ。でも、まずは話を聞いてみましょう?」
 白薊 小夜 (p3p006668)がそう言うのへ、焔が語ったところによると、実にシンプルなものである。
 現在、各種プールに、複数の夜妖が出現し、客に悪さを働くのだという。実害も出たため、施設点検の名目で休業中だが、夜妖騒ぎを解決しなければ営業再開のめども立たない。
 そこで、希望ヶ浜学園の専門家に、これを解決してほしい……と、レジャープールオーナーから直々にお声がかかったというわけだ。
「報酬として、追加でレジャープールの年間パスポート貰える……ですか。なるほど、これは少しお得……と言う事になりますね」
 小金井・正純 (p3p008000)が言うのへ、焔がこくこくと頷いた。
「そうだよ! 終わったらみんなで遊びに行けるよね! ふふーん、こんな依頼を見つけてくるなんて、さすがボクだよ!」
「報酬もいいのですが、敵の情報は無いのですか?」
 すずな (p3p005307)が小首をかしげながら尋ねる。
「そうですね、出来れば事前に情報が欲しい所なのです。対策も取りやすいでしょう」
 クラリーチェ・カヴァッツァ (p3p000236)が続けるのへ、焔はうーん、と唸りながら、
「確か……総数は30ほど。でも、各プールに分散してるから、一気に30体と戦うわけじゃないよ。敵の攻撃は、水鉄砲みたいに水を飛ばして攻撃してくるんだって。だから、普段着じゃなくて水着で行った方が、動きやすいと思う!」
「そうだな……確かに、水を含めば衣服は重くなる。もちろん、その程度で行動に制限をされるようなものは私達の中には居ないだろうが、対策を取っておくにこしたことは無いな」
 ふむん、と夜式・十七号 (p3p008363)が頷いた。
「というわけで、どうかな? みんな、依頼、受ける?」
 焔の言葉に、仲間達は喜んで、と頷いた。なに、これは簡単そうな仕事だ。それにプールの年間パスポートもついてくるとなれば、おいしいお仕事と言えるだろう。
「よーし、きまり! じゃあ、早速ウォーターアイランドに行こうか! 水着は向こうに貸し水着があるんだって。自分で用意してもいいけど……とりあえず、行ってみよう!」
 焔の言葉に皆は頷いて、立ち上がった。ただ、リアだけは眉間にしわを寄せて、
「なぁぁぁんか、嫌な予感がすんのよね……」
 と呟いていた。

●幕間
「しぃぃぃぃまったぁぁぁぁ!」
 ずざざざぁぁっ、とカフェ・ローレットに人影が飛び込んでくる。それは、綾敷・なじみ(p3n000168)の姿だった。カフェ・ローレットにはいり、店内をきょろきょろと見まわす。目当ての人物がいなかったことに気づいて、はぁ、と肩を落とす。
「うーん、まさか私についている夜妖……『猫鬼』の『情報を食べられる』代償がこんな所で発動するなんて!
 希望ヶ浜学園に来ていた依頼の情報が抜け落ちちゃうなんて! 綾敷さん一生の不覚!
 ああ、まさか、レジャープールに出てくる夜妖は『紐を結んで止める露出度の高いタイプの水着を着てないと知覚することが出来なくて』、そのうえ『その夜妖が持っている水鉄砲で撃たれると水着の紐が緩んでいく』から恥ずかしい思いをするのは確実! っていう大切な情報が抜け落ちてしまうなんて! これは綾敷さんもびっくりの案件だよ!
 うーん、焔ちゃんたち、大丈夫かな。でもこういうお仕事慣れてそうだから大丈夫だよね。
 そう、これは――『私のせいじゃないよ!』 綾敷さんは怪しくないからね!
 ……走ってきたら喉が渇いちゃったなぁ。ジュース飲んで帰ろ」

GMコメント

 リクエストありがとうございます。綾敷さんは悪くないし、洗井落雲も悪くないです。

●成功条件
『紐で止めるタイプの水着』を着用して『夜妖・プール天狗』を倒す。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 希望ヶ浜ウォーターアイランドと言う名前の屋内型レジャープールに、『プール天狗』と名付けられた夜妖が現れました。
 流れるプール、波の出るプール、25mプール、ウォータースライダーの四か所に出没するプール天狗たちは、客に悪さを働きます。
 依頼を受諾した皆さんは、このプール天狗と戦うために、『紐で縛るタイプの露出度の高い水着』を着て戦わなければなりません。リクエスト文にそう書いてあったから……ではなくて、プール天狗は『ひもで縛るタイプの露出度の高い水着を着て居なければ知覚できないから』です! なんと恐ろしい!
 そしてなんと恐ろしい事でしょう! プール天狗の持つ水鉄砲の受けてしまうと、『水着を縛っているひもが緩みます』。ゆるみます。つまり水着が取れやすくなります。大変ですね。頑張ってください。
 しかも、敵は結構すばしっこいです。必然、皆さんも素早く動くこととなるでしょう……そうなった場合、緩んだ水着で素早く動いたら……想像するのは難しくはありません。
 と言うわけで、紐水着(語弊)を着て戦いましょう! なぁに、頑張れば、えっちな目には合わないと思います! 多分。きっと。めいびー。

●敵出没ポイント
 以下の四か所に敵は分散しています。見つけて倒しましょう。

1.流れるプール
 水が流れるロングプールです。流れながら戦いましょう。水が流れてるので必然的に水着は脱げやすくなります。

2.波の出るプール
 海をイメージしたプールです。波の出る沖と、波打ち際が主戦場。
 波が出るので、必然的に水着は脱げやすくなります。

3.25mプール
 いわゆる普通の25mプールです。非常に安定していて、一番戦いやすいでしょう。

4.ウォータースライダー
 ロングウォータースライダーを滑りながら戦う事となります。足場も悪く、一番戦いにくいでしょう。
 滑りながら戦うので水着は脱げやすくなります。すごく脱げやすくなります。恐ろしく脱げやすくなります。

●戦闘用特殊ルール
 皆さんは、水着を守りながら戦わなければなりません。しかし、水着が脱げるのを気にしていては、戦闘に集中できないでしょう。
 もし皆さんが『水着の緩み具合を気にしながら戦う』ばあい、水着が脱げるような悲劇は置きません。しかし、『命中や回避、防御面で少々のペナルティが発生』します。戦闘に集中できないわけですね。
 もし皆さんが『水着の緩み具合を気にしないで戦う』ばあい、ペナルティは発生せず、十全の状態で戦うことができます! でも水着が脱げる可能性が大幅に上昇します。
 尊厳を守るか、効率を取るか。選んでください。

●エネミーデータ
 プール天狗 ×30
  30cmほどの、天狗のような姿をした夜妖です。手には水鉄砲を持っており、この水鉄砲を駆使した各種攻撃を行ってきます。
  基本的に、乗騎の四か所に、複数体のパーティを組んで潜んでいます。見つけて叩きましょう。
  EXAや回避、機動力は高く、あちこちを飛び回ります。また、プール天狗の行う攻撃には、全て『攻撃が命中した場合、ひもで縛るタイプの露出度の高い水着のひもを緩める』効果を持ちます。恐ろしいですね。

 以上となります。それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。

 ↓ここから地獄↓

  • レジャープールの怪と零れ落ちる真実完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
すずな(p3p005307)
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕

リプレイ

●大騒ぎのレジャープール
「は~~~~~~」
 と、滅茶苦茶大きなため息をつく『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)。更衣室の出口の先、プールの入り口で、イレギュラーズ一行はじろり、と『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)へと視線を送った。
「ち、違うよ! ボクのせいじゃないよ!
 皆も確認したでしょ! ボクもこんな風になるだなんて知らなかったんだよ!」
「焔さんがこの練達で持ってくる仕事にちゃんとしてる訳ないじゃない!
 なんでOPのわたしは何も疑問に思わなかったの? ばかなの?
『まともなお仕事なのは確かだと思います』じゃないわよ! まともな! わけが! ないでしょ!」
 タイムが頭を抱えて項垂れるや、ふと顔をあげると、
「焔さんいい? わざわざエグい露出の水着とか用意しなくていいのよ?
 わたし言ったからね? チアガールの時のこと忘れてないよ?」
「今回はそんなことしないよタイムちゃん!
 チアガールの時はあのままだとボクだけエッチな下着になっちゃうから仕方なかったんだよ!」
「その言い訳もどうなんですか」
 ぎりぎりとこぶしを握る『夏の思い出に燻る』小金井・正純(p3p008000)。正純に限った事ではないが、ここにいるイレギュラーズの面々は、貸衣装から自分で用意したものまで、みな『紐で縛るタイプの水着』を着ている。
「こんなおいしい話が……ええ、あるわけないと思っていました。さくっと殺ってさくっと帰りましょう」
「そうですね。賛成です」
 ハイライトの消えた瞳で『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)が言った。依頼が始まってしまった以上、文句意を言っても仕方がないのだ。此処での最適解は、『心を無にしてさっさと仕事を済ませる事』である。
「幸い、今回は録画とか配信とか、そう言うものもなさそうですし……ありませんよね?」
 クラリーチェがそう言うのへ、『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)が頷く。
「念のため、防犯カメラの類も全部潰しておいたわ」
「ナイスです、小夜さん」
 『一人前』すずな(p3p005307)が言った。
「……と言うか、カメラを敏感に気にしなければならないような状況、かなり悲しいですね」
 すずなが言うのへ、小夜が頷く。
「前例と言うものがあるから……あまりあって欲しくない前例だけれど」
「あーもう、焔ァ!!!!!
 いや、もう分かってたんだけど焔ァ!!!!!
 いつもの面子が居る時点でもう分かってたんだけど!!!!!」
 地団駄を踏む『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)。どうしてこう、わかっているのに付き合ってしまうのだろう。これは何か、運命的な強制力が働いているのかもしれない。さておき。
「とにかく! 正純さんの言う通り、さっさと終わらせてチケット貰うわよ! で、ここで一番ヤバいのは確実にウォータースライダーだけど――」
「ふむ。ならば私がウォータースライダーに行こう」
 と、『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)があっさりと手をあげるのへ、みんな「えっ」って言う顔をした。
「なんだその顔は。危険(ヤバい)のだろう? ならば望むところだ。それに、元よりこの義手では器用に泳ぐことは得手とはしない。ならば滑っているだけで充分なスライダーは、私としても望む所――」
「よし、決まり! 決定! 有難う!」
 リアはぐっ、と十七号の手を握ると、上下にぱたぱたと振った。
「あなたの勇敢さに敬意を表するわ――あと一人! そうね、ちょうど義手つながりで正純さんなんてどうかしら!?」
「えっ」
 正純が目を丸くする。助けを求めようとしたが、ここに味方はいない。
「決定! 有難う、正純さん! あなたの犠牲に……いや、勇敢さに敬意を表するわ! じゃあそう言うわけで! あとは流れで! 解散!」
 一番の危険地帯をさっさと避けた一同が、まるで波が引くように去っていく。残された二人は、十七号はぽかんと、正純は口をパクパクとさせながら、ぽつんと佇む。十七号はこほん、と咳払い一つ。
「ふむ。よくわからんが、パートナーは正純のようだ。よろしく頼むぞ」
 そう言って頷いたので、正純はにこりと笑って、
「クソがよ」
 と言った。

●パニック・ウォータースライダー
 と言うわけで、ウォータースライダーまでやってきたのだ――。
「……大きいですね」
 正純がげんなりした様子で言うのへ、十七号はパンフレットを片手に応える。
「なんでも施設の目玉の一つだそうだ。長大、巨大。長い滑り台には様々なアトラクション風の仕掛けがあって、大人から子供まで楽しめますと」
 階段を上って頂上まで到着すると、上から他のプールを眺めることができる。正純は、クソがよ、と言いかけて黙った。もうこうなっては仕方ない。やるしかない。やる事やってさっさと帰ろう。
「十七号さん。一回でケリをつけましょう。倒しきれずにもう一度登って滑ってね♪ と言うのが一番避けたい状況です」
「ああ。さて、改めてよろしく頼むぞ。正純。足場は不安定だが……うん、水深だけは浅いんじゃないか。多分」
「滑り台は確かに浅そうですけどね……」
 出口のプールは相応に深い。まぁ、戦いの最中に溺れる心配は無いのは救いだが。
「さて、プール天狗とやらの姿を拝みに行こうか」
 一つの入り口に、二人は身を寄せ合わせて突入した。あまり良い姿勢ではないが、これは戦いなので良いのである。良い子の皆は真似しないで、ウォータースライダーを滑る時は係員の指示に従って楽しんでください。
 さて、十七号が前、正純が後ろ、と言った体勢で、一気に滑り始める。思いのほかの速度が出るので、十七号は感心した。
「さて、中々……だが、これで戦うとはな! 純粋に体力勝負となりそうだ!」
「そっちですか!? いや、これ絶対脱げる奴ですよ!」
 正純が悲鳴をあげるのへ、前方の物陰から、何かが飛び出してきた! みれば、30cmほどの、デフォルメされた天狗のような妖怪である! 手には水鉄砲を持ち、その銃口をこちらへと向ける! ヤバい、あれを喰らったら! 本能的な危機を察知した正純が、躊躇なく無差別攻撃(プラチナムインベルタ)をぶっ放す! え、これは識別攻撃? 目に映る全ての者は敵ですよ。特に25mプールとか流れるプールにいる奴。果たして正純が放った矢は、天狗を射抜いて消滅させる!
「やったか!?」
 十七号が叫ぶ!
「それは言っちゃだめです!」
 正純が叫ぶ! はたしてそのフラグ通り、あちこちから現れる別個体の天狗たち! その数7。
「くっ、戦闘能力は大したことはないが、数が多いタイプだな!」
 まだ純戦シナリオだと思っている十七号が叫ぶ。敵の銃口が一斉にこちらを向き、放たれる水!
「ええい貴様ら、女の肉が見たいなら精々私を狙ってみろ!」
 十七号はとっさに正純をかばった! 当然のごとく緩む水着の紐! そして激しいスライダーの水の流れが、当然のごとく十七号の胸の水着を取り払う!(ここで陽光が差し込み、謎の光が直接的な描写を遮った)。
「あああああああああッッ!! この畜生共め……!!」
 目を真ん丸にし、顔を真っ赤にする十七号。所で、普段凛としてる武人的な女性が顔真っ赤にして恥ずかしがるのってすごい好き。
 慌てたように腕を振り回すと、手甲が天狗をぶん殴って吹き飛ばした。実際、個々の戦闘能力は低いのだ。水着を脱がすことに特化しているのが厄介なだけで。
「正純! 狙え! はやくっ!」
「はぁっ!? この状況で両手はなせるわけないでしょう!? 絶対に流れます! 水着が!」
「私しかいないんだから見られてもいいだろう!? はやく……うおっ!?」
 果たして、そう叫んだ瞬間、スライダーの終わりがやってきた。ざばぁっ、と激しい勢いで水面に突っ込み、結局正純の水着もぷかぷかと水面に浮かぶ。正純は片手で胸を抑え、恥ずかし気にスライダーを睨みつけた。
「……もう一回だ、正純」
 目の端に恥ずかしさの涙を浮かべて言う十七号に、正純は悔しげに頷いた。
 かくしていそいそと流れた水着を拾って、怒りを旨に再びスライダーへの階段を上り始める二人であった。どうでもいいけど、この二人が顔真っ赤にして涙目になってるのすごくいいと思う。

●ウェーブ・ストラテジー
「――ふっ」
 吐息と共に、一閃。翻る刃が一刀、天狗を切り裂く――。
 と、描写すれば格好もつくが、しかし小夜が相手をしているのは水着を脱がすことに心血を注いでいる生臭天狗である。事実、小夜の数発の被弾を受け、その水着のひもは緩み、今にも胸が零れ落ちそうであった。もうすぐ陽光の世話になるほどであったが、しかし。
「ここにはすずなしかいないし、天狗は全部を殺す。ならば見られても問題は無いわ」
 実に合理的なお小夜様である。それに、波打ち際は多少脚はとられても、水着を巻き込むほどの大波はそうはやってこない。よって水着もギリギリのところで耐えていた――健気である。今年新調したばかりの水着は、ここでもしっかりと役に立っていた。
 一方、沖にいるすずなは、なれぬ大波の中での戦いに少々手間取っていた。
「うう、予想外に揺れる……揺れると水着が取れそうになる……!」
 顔を赤らめて、すずなが右手に刀を、左手で水着を抑える。嘲笑するように周りを飛ぶ天狗が水鉄砲を放ち、また少し、水着のひもが緩くなった。
「ああああ! もう!」
 顔赤らめ、めをぐるぐるとさせ。すずなが叫んだ。僕はこうやって恥ずかしさに焦る女の子を見ると心が洗われるんだ。さておき、すずなも剣客、肝は据わっている。
「カメラは無し! 敵も殺す! 此処にいるのは小夜さんだけ! ならば見ているものは誰も無し!」
 仮にみられても、小夜なら良い。と言うわけで、意を決してすずなは刀を構えると、波に合わせて強く水を蹴る。陸上と変わらぬほどの跳躍。水しぶきと共に、上の水着がはらりと落ちる。照らす陽光。翻る刃。斬。プール天狗がはらりと切って捨てられる。
「残りは――!」
 すずなが叫び、振り返る。いた。だが、その銃口はこちらを捉えている。マズい、と本能的に察した。マズい。上はともかく下はマズい! 絶対に!
 放たれた水鉄砲が、すずなを捉える。無理矢理身体をひねって回避――だが、崩れた体勢が、背中から着水することを示唆していた。このまま落ちれば、激しく背中を打ち、息がつまるかもしれない。呼吸は、戦いにおいては重要だ。ましてや水の中となれば、存分な呼吸も出来ずに戦うことなどは――!
 だが、その背中を、優しく誰かが抱き留めていた。
「すずな」
「小夜さん!?」
 波打ち際にいたはずの、小夜だった。小夜は危機を察し、こちらへとやってきたのだ。そして今、すずなを救った。空中で体勢を整えさせると、ともにあしから着水する。刹那、小夜の刃が翻り、残る天狗を切り裂いた。ぷかりと浮かぶ、二人の水着。
「小夜さん、大丈夫ですか!?」
 すずなが叫ぶ。小夜は優しく笑った。
「あら、ちゃんと水練もしたもの。大丈夫よ……でも、良かったら支えて頂戴。少し不安だわ」
 そう言って、小夜はゆっくりと、すずなに手を差し出した。
「はい、どうか、やさしく」
 すずなはそう言って手を差し出し――二人の手はすれ違った。小夜はそのまま、すずなのしっぽをきゅ、と握る。
「これでいいかしら?」
「良くないです! ひゃ、あ、あの、尻尾はダメ、ダメって言ったじゃないですか! ひゅんっ、も、は、放して~~~~!!」
 そのままぶくぶくと二人は沈んでいったのです。

●25mプールの静闘
 25mプール。いわゆるごく普通標準的な『プール』であるが、ここならば何のトラブルも起きないはずだ!
「ふふふ、見事にボク達は勝ち取ったんだね! 勝利を!」
 と、焔が胸を張る。タイムはにっこりと笑いながら、
「ええ、ここならよほどのことがない限り何も起きないはず……! さぁ、焔さん、さくっと行くよ!」
「あ、その前に、タイムちゃんの水着の背中、きゅって縛ってあげるね! 背中って結びにくいでしょ?」
 と、焔が言うので、
「あら、ありがとう……」
 と、タイムは素直に背中を差し出した。焔は適当にちょうちょ結びをしつつ、
(でもボクちょうちょ結びって苦手なんだよね……いつもはすぐ解けちゃうんだけど今日は完璧なはず!)
 などと胸中で呟いていた。さて、そんな二人の間に天狗が現れた。プールの上を飛び跳ねつつ、挑発するように銃口を向ける天狗たち!
「来たね! いくよ、タイムちゃん!」
「ええ! まずは聖躰降臨! それから……ていっ」
 と、タイムは可愛らしく声をあげると、無慈悲に焔をプールにつき落した!
「あ゛っ゛」
 悲鳴をあげる焔が、とっさにタイムのブラを引っ張る!
「ちょ、焔さん! もう、こうなったら!」
 タイムはタイムで、とっさに焔のブラを握った! わずかな均衡! しかしすぐに水着はほどけ、二人は陽光に胸を隠しながらプールの中に転落! 天狗はまだ何もしてないのに、こいつ等勝手に水着を脱いだぞ!
「た、タイムちゃん! いきなりひどいよ!」
 前を丸出しで(陽光に隠されながら)抗議する焔に、タイムは焔の水着を自分に装着しつつ、
「そんなことより! 来るよ!」
 と、叫ぶ。同時、天狗たちの水鉄砲が焔とタイムを狙う。二人は泳いで/走って回避。ざばぁ、と水をかき分けつつ、焔が泳ぐ(ダッシュ)!
「焔さん、とにかく攻撃して!」
「わ、わかったよ! えーい、火炎弾!」
 と、炎をその手に巻き起こすと、水と反応してぶくぶくと泡を立てる。それを球状にして、天狗へと叩きつけた! 巻き起こる爆発!天狗がフッ飛ばされるが、同時に爆風が二人の水着のひもを緩める!
「なあああんでええええ!!!」
 水着を抑えながら悲鳴をあげるタイム! 涙目になりつつも、その手を突き出して裁きの閃光を打ち放つ! 閃光が鋭い刃と化して、天狗たちを薙ぎ払う!
「いいペースだよ、タイムちゃん! このままやっつければポロリしないかも!」
「焔さんはしてますけどね! ぽろり! けど私は無傷! このまま――」
 叫ぶタイムだが、そうは問屋が卸さないのが自然の摂理である。この時、正純の放った無差別攻撃の余波が、25mプールに着弾していた。
『えっ』
 二人が思わず声をあげる。プラチナムインベルタは、本来爆発起こすようなスキルではない。が、この時、洗井落雲は、ここで爆発したら面白いなぁ、と思ったので爆発させた。この処理は、このシナリオ特有のものである。
 かくして、25mプールは盛大に爆発した! その爆発は残っていた少数の天狗を吹き飛ばし、そのまま焔、タイムも吹き飛ばす! 当然、水着もだ!
『なあああんでええええ!!!』
 本日二度目の悲鳴をあげながら、二人は全裸で吹っ飛んでいった。

●流れ流れて
「こいつらすばしっこくて面倒な……やめろやめろ! 紐を狙うな、紐を!
 あっちょっやめろ! やめて!! 解けるから!!!」
 リアが叫び、
「ちょ、ちょっと! やめてください! 私を盾にするのは!」
 クラリーチェが悲鳴をあげる。きゃいきゃいと言う悲鳴が、流れるプールに響き渡っていた。此処は最後の戦場。当然のごとく、水着を巡る激しい攻防が繰り広げられていた。
「り、リアさん!!! 水着が! 私の水着が!!!!」
「あら、貴女も水着が流れたの!? それは大変ね!!
 でも、早く敵を片付けないといけないから、協力してね!?」
 ぎりぎりとクラリーチェを羽交い絞めするリア。もがくクラリーチェ。醜い争いが食い広げられる中、天狗たちは確実に数を減らしていた……。
「あれれ~? リアさんまだ終わってないんですか?
 遅いですねぇ、ぷーくすくす!
 シスターコンビがんばえ~」
 戦いを終えたすずなが煽りにやってくる。その隣には、困ったように微笑む小夜の姿もあった。
「ええいわんこめ! 先に終わったからって得意げな顔を!」
「だから放してください! 胸が! その、胸が!」
 力を籠めるリアに、クラリーチェが悲鳴をあげる。
「まったく……ひどい目に遭ったな。これが練達の洗礼か……恐ろしい……」
「まぁ、これも焔さんとリアさんに関わった時くらいですから……」
 肩を落とし、疲れた様子で合流する十七号と正純。
「げ、もしかして皆終わってるわけ?」
 リアが声をあげるのへ、クラリーチェがむっとした表情で言う。
「ちゃんと協力してくれれば早く終わったかもですけれど」
「してるじゃない、協力。でも、もう少しでこの仕事も終わりよ! この天狗でラスト!」
 リアが最後の天狗に止めを刺した瞬間である。空から何か、光るものが降ってくるのが見えた。一同が空を見てみれば、それは全裸で落下してくる焔とタイムで、真っすぐ、プール目がけて落ちてくるのだ。
『えっ』
 全員が、あっけに取られて声をあげた。ほどなく、焔とタイムが悲鳴をあげながら落下してくる。盛大な音を立てて、プールに着水。ついでに正純の無差別攻撃の余波が今頃着弾。激しい水しぶきが、辺り全てを吹き飛ばし――。
 あとに残されたのは、激しい水流ですべての水着を吹き飛ばされ、プールサイドで目を回す、イレギュラーズ達の姿であった。

 めでたしめでたし。

「どこがですか!!」
 クラリーチェの叫びで締め。

成否

成功

MVP

小金井・正純(p3p008000)
ただの女

状態異常

なし

あとがき

 無料プール入場券、使ってくださいね☆

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