PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<イデア崩壊>ぼくとあなたのハッピー・エンド・ロール

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ワールドオーダー
 介入手続きを行ないます。
 存在固定値を検出。
 ――イレギュラーズ、検出完了。
 世界値を入力してください。
 ――当該世界です。
 介入可能域を測定。
 ――介入可能です。
 発生確率を固定。
 宿命率を固定。
 存在情報の流入を開始。
 ――介入完了。
 Rapid Origin Onlineへようこそ。今よりここはあなたの世界です。

 ――■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA
 ――boot...OK

 ――すべての前提フラグを獲得したことにより、秘匿オブジェクトCCCを解放します。
 ――おめでとうございます。隠しイベント『■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA』が開始されました。
 
 縺雁?縺。繧?s繧貞勧縺代※

●夕焼けと渡り廊下
 学校のチャイムが鳴る。コンクリートで舗装した渡り廊下を、桃のパックジュースをちゅるちゅるしながら歩いていた姉ヶ崎エイス(p3z000000)は足を止めた。
 教室がある校舎は後ろ側。一度振り返ってから、ストローをくわえたまま前を向く。
 中身は既にからっぽだったが、ストローごしに手を使わず保持したまま再びとなり校舎へと歩き出す。
「ちょっと姉ヶ崎さん! また授業を欠席するつもり?」
 教室側の校舎から姿をみせた藤野 蛍(p3z003861)。
 その一方でとなり校舎から桜咲 珠緒(p3z004426)が姿を見せる。
「別にいいではないですか。授業をサボるのも学生の特権なのです」
「そんな特権はないわよ! 学生の本分は勉強! 二人とも勉強の大切さを知るべきよ。社会に出たらきっと――」
 目くじらをたてる蛍と、口を尖らせる珠緒。
 エイスは二人を交互に見てから、蛍にくいくいと手招きした。
 ストローをくわえたまま。
「一緒にサボろ、いいんちょ」
 きょとんとした蛍。エイスごしに体を傾け、マネするみたいに手招きする珠緒。
「失ってこそ、大切なものの価値がわかるのですよ」
「おっ、たまちゃんいいこと言う」
 両手の人差し指をビシッと珠緒にむけると、エイスは歩き出した。さすがに無理があったのか、ストローからジュースのパックが滑り落ち――た所を、蛍がぱしりとキャッチ。そのまま流れるよに放り投げくずかごへとホールインさせた。
「ナイスいいんちょ」
「まったくもう……」
 肩をすくめ、蛍も同じ方向へと歩き出す。
 ここはメーヴィン領に古くからあるメーヴィン領立六■高校。彼女たちはその二年生である。
 エイスたち女子高生は、別棟校舎の屋上へとのぼっていく。
 授業開始のベルを無視しながら。

 女子高生はきっと何者にだってなれない。そう完成されてしまったから。
 何かになるのは、きっと女子高生をやめたときだろう。
 世界のひとつ上のなにかが、そうあれかしとしたのだから。

●隠しイベント『■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA』
 藤野 蛍(p3p003861)と桜咲 珠緒(p3p004426)、そしてその仲間達はセフィロトの研究室の一角。それも『行き慣れた』実験室へと集まっていた。
 ログイン装置につながれた九つのチャンバーたち。部屋の隅におかれた小さなテーブル。まわる換気扇の音と、やけに白っぽい照明。
 あの日のままの風景に、蛍はついため息をもらした。
「私なりに、まとめた考えを話すわね……」
 そうきりだした彼女が語ったのは、彼女を含めた八人のウォーカーたちが被験した異世界研究プロジェクトについてである。
 その概要は、各被験者の経験談や肉体から抽出できる情報から彼らの元いた世界を仮想空間に再現し、歴史を動かすような行いをさせることでその世界情報を理解・収集しようというものだ。
 今考えれば、これらの研究が練達の超上位計画であるProjectIDEAに寄与していたことは明らかであり、図らずも彼女たちは練達国の悲願に協力していた格好になる。海洋王国で例えるなら、絶望の青攻略のための船造り海路作りをしていたようなものだ。
 そこまで説明する蛍に頷いて、珠緒がその先を話す。
「けれど、その実験は途中から少しずつおかしくなっていきました。
 意図しない九人目、ないし十人目の出現。オルタと呼ばれる同一存在。
 当時はわけもわからず混乱していましたが、ROO内のネクスト世界をここまで攻略した今ならわかります。
 このネクストには『PCNPC』とでも呼ぶべき、自分と似て非なる存在が生きています。それも、場合によっては複数」
「当時もその予想はあったけど、考えてみればそうなのよね。例えばボクのいた世界を再現したならボクこと藤野 蛍がそこに存在していて然るべきだもの。
 バグによる歪みで立場や性格が異なることが多いみたいだけど……」
 そう語って、同じようにネクストを探索し、自分の類似存在に出会った仲間達の顔を見た。
「けれどそれでも解せないのが、『姉ヶ崎エイス』と『イデア』という存在です。
 意図しない9から10人目のプレイヤー。彼らが何者なのか……そのヒントは多く獲得できましたが、未だ謎のままなのです。
 ですが実験が終わった今でも諦めていません。なぜなら、ネクストの各所でエイスまたはイデアとおぼしき人物の発見報告があるからです」
 ネクストに繋がる、そして深く食い込んでいる謎。
 それを解明する巨大な手がかりが――隠しイベント『■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA』なのだ。
「ジーニアスゲームネクストしかり、ネクスト世界に発生するイベントやクエストは謎の解明や研究者の救出に繋がる重要な要素よ。
 私達の抱える謎が無かったとしても、積極的に攻略していくべき案件だわ」
 そして今。
 やるべきこととやりたいことが重なった。
 そんな風に思えた。
 なぜならば……。
「次のクエストは、『私の学校』の崩壊だから」

GMコメント

※こちらは連動シナリオ<イデア崩壊>です。
 同時公開されている同シナリオタグのなかから一つにだけ参加することができます。
 複数に同時予約した場合もひとつにだけ当選できます。

●オーダー
・成功条件:六■高校という社会を崩壊させること
・オプションA:姉ヶ崎エイスの生存
・オプションB:姉ヶ崎エイスの死亡
・オプションC:■■■の生存
・オプションD:■■■の死亡
・オプションE:ROO世界の蛍、珠緒の生存

 六■高校という社会をあらゆる手段をもって崩壊させることがクエストの成功条件です。
 物理的に校舎を破壊してまわってもいいですし、生徒や教師になりすまして潜入し社会性を破壊してしまってもいいでしょう。
 どんな形でも『破壊できた』とこのネクスト世界が判断したならOKとなります。なお、完全破壊までいかなくても一定以上の破壊ができていればよいようです。

●六■高校
 平成20~25年頃の現代日本をモチーフとした普通高校です。
 共学二学年制で制服はセーラー服(白と黒から選べる)と学ランとなっています。が、服装規定は緩く結構みんな着崩しています。
 偏差値は中の上くらいで部活動はそこそこに盛ん。卓球部とアーチェリー部の成績がいいくらいで他に特筆した成果は出していません。
 校風は地味ですが裏を返せばそれだけ平和だということです。
 校舎は三階建てで、一階は特別教室、二階は職員室と教室、三階は教室と放送室。別棟は旧校舎で一部の特別教室を除いて使われていません。エイスや蛍や珠緒たちはこれをいいことに別棟校舎の屋上に忍び込んで授業をサボったりしています。おそらく皆さんが襲撃を行う際にも三人は(もしくは他にも)ここに居るでしょう。

 尚、ごく一部の生徒を除くすべての生徒及び教職員の顔はピクセルモザイクに隠されており、姉ヶ崎エイスもまた、同じようなモザイクに顔が隠れています。

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●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <イデア崩壊>ぼくとあなたのハッピー・エンド・ロール完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

プロメッサ(p3x000614)
屋上の約束
蛍(p3x003861)
屋上の約束
珠緒(p3x004426)
屋上の約束
アウラ(p3x005065)
Reisender
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
ネコモ(p3x008783)
ニャンラトテップ
アマト(p3x009185)
うさぎははねる
ミミサキ(p3x009818)
うわキツ

リプレイ

●もしかしたらの特異点
 メーヴィン領立六■高校は、伝承王国メーヴィン領に建設された学校である。
 非常に伝承王国スタンダードな街並みにもかかわらず、突然このような建物が建設されたことには奇妙というか異様というか、いっそ不気味さすら感じさせる。
(うーん……どっからどうみてもボクの通ってた学校……)
 日本の、それも平成中期くらいの高等学校の雰囲気そのままである。生徒達は揃いの学生服をきており、帯剣している者もなければ伝承町娘的な雰囲気の者もみられない。びっくりするくらいみんな日本人風の顔立ちをしていた。
「いや、おかしくないですか? 街の人達はふつうの伝承国民なんですよね? その子供だけ急に日本人風ってどういうこと……遺伝が途中でぶっ壊、コホン」
 一瞬素が出そうになった『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)は咳払いをして、隣の『にゃーん』ネコモ(p3x008783)へ視線をやる。
 さっきからずーっと珈琲をフーフーしている。
 ここは高校の近くにたつカフェである。珍しく三階建てのテナントに入っているせいで景色がよく、高校の様子がよく見える。視力に優れた者ならひとりひとりの顔だって見えたらかもしれない。まあ、見えたところでピクセルモザイクに隠れているという異様さなのだが。
「この学校を壊す? じゃなく崩壊される? って、物騒かつふわっとした任務にゃねー」
 尻尾をくねくねとさせるネコモ。
「とりま学校を物理的に壊してく方向でいいのかにゃ?」
「…………」
 『Reisender』アウラ(p3x005065)は珈琲にすら手を付けずじっと黙っていたが、ネコモの言葉をうけてサングラスの下の目を動かす。
「物理的に破壊したところで、再建されれば学校運営は継続される。それを『崩壊されていない』と判断するかは不明だが、ね」
「なんだかとっても難しいのです……」
 『うさぎははねる』アマト(p3x009185)は非常に正直な感想をもらした。
 正直というよりむしろ、本件に関わった誰もが思っていることを代弁したといってもいい。
「ピクセル、隠しクエスト、エイス様……あと、イデア様? というかた……」
 話にきけばこの領地自体が何度も『リセット』現象をおこしており、そのトリガーとして領主の死などの致命的な崩壊が起きているという。
 これだけ明確な異常が集中しておきているのだ。このROOにログインするそもそもの目的である『バグの原因解明』という大目標に近づくチャンスであるとも、今回は言えた。
 しかし、そのなかで発生する最初のクエストが『学校を崩壊させる』とは……。
「アマトは壊すのあんまり慣れないですけど、それが必要なことなら全力でやるのです。
 でもできるだけ、人への被害は出さないようにしたいです」
「ソレはもちろん」
 『開けてください』ミミサキ(p3x009818)が最初からずっと同じ気持ちですよというふうにこたえた。
 実は内心で『絶対殺し回ったほうが楽でスよね』と思っているが、表には決して出ない。
 たしかに、『日本の学校』という社会はその生徒を数人殺しただけでも激しいヒビが入るし、それが全体の3割にも達した場合機能を喪失せざるをえない。要職を含めたり主要な施設をピンポイントで破壊することも加えたら完璧だ。きっとその場所は未来永劫廃墟か駐車場になるだろう。
 が、それはしない。
(簡単に達成する方法があって、それができない場合……大抵、『より大きい秘密』に繋がってるもの。デスクの引き出しよりも金庫に入った金のほうが大量なように)
 そして、今この面々……とくに深く食い込んだ経験のある者は、『より大きい秘密』を求めているようだった。
「此度のイベントがイデアに関する手がかりを得られる可能性が少しでもあるのならば、全力で攻略にかかるとしよう。たとえそれが、平和を破壊する役割なのだとしても」
 『UNKNOWN』プロメッサ(p3x000614)が仮面で覆われた顔をうつむける。
「――全ては、約束のために」
 その言葉に、『R.O.O tester?』珠緒(p3x004426)も頷いた。
「穏やかな世界で珠緒と蛍さんを友としてくれた事。そこはかとなく嬉しさは感じますが……問わねば。答えを聞かねばなりせん」
 これだ。蛍や珠緒たちが共有する、一種独特なモチベーション。これが、秘密へと駆り立てている。
 けれど、同時に全員が共通にわかっていることもある。
 より大きいものを得ることは、それだけ困難が大きくなるということ。
 目指した結果失敗するというリスクは承知しておくべきだ。そしてゼロかイチかではなく、指の間からこぼれ落ちるように部分的に失うこともあるということ。
 そしてそれらを理解した上で、今回の『タスク』を決めたのだった。
 蛍は再び学校へと視線を向ける。
 あまりにも純粋に『あの場所』を再現した六■高校にとって、自分たちは外からやってきた異物にしか思えない。どちらかといえば、排除されるべきは自分たちなのかもしれない。
 いや。だからこそ……なのだろうか。
「現状維持じゃ変われない。伸ばさなきゃ、あの子の手を掴めないから」

●社会的崩壊
 がらり、と校長室の扉が開いた。
 中には誰もいない。いないことを確認している。校長は校庭に出て庭いじりのようなことをしているようだ。しばらくは戻らないだろう。
 扉に鍵はかかっていたが、それを開くことはそう難しくなかった。まあ、古い仕組みの鍵だ。それこそ針金一本で開く。
 部屋に入ったアウラは後ろ手に扉をしめ、小脇に抱えていた箱を地面に下ろす。
 箱から現れたのはミミサキだ。
 およそ人間が詰まっていられそうな箱ではないが、ミミサキはあたりまえのように上半身を出してうーんと背伸びをした。そして続けて右足、左足と順に箱から抜いていく。
「はあ、アオハルまっさかりな高校。いろんないみでまぶしいッスねえ」
 ため息をつく。
 今のアバターを作ったのはそういう美少女とかに噛みついたり絡みついたりするためじゃあなかったろうか。日常からの脱却くらいのつもりでミミックになった筈なのに、逆にコレになってからのほうが旧来の動きをしているような気すらする。
「あまり時間はないよ。破壊班と入れ替わりに脱出するのだからね」
 アウラがそう言って、棚や机を探り始める。
 はいはいと言って自分も別の作業にかかるミミサキ。
 まずミミサキに課せられた仕事は、今回の襲撃にある程度の真実味をもたせることだ。カバーストーリー作りである。
 といっても単純に、校長室に隠し資産があることにして、それを奪わせるという筋書きなのだが。
「それなら……コレでいいっスかね」
 なんか豪華な宝箱をドンて置くミミサキ。
 まあ、ぶっちゃけ中身なんでなくてもいいのだ。目撃者を作らない偽証拠は、その存在感だけがあればいい。
 一方のアウラは校長や職員などが犯した汚職の証拠を探していた。証拠探しというより、証拠にできそうなものを手に入れてでっち上げようとしているだけだ。事実汚職がなくても別にいい。
 社会的に破壊するには、罪による淘汰が一番だろうと考えてのことだ。
「さて、この破壊が何を意味するのか気になるけど……」
 そんな風にいうアウラをよそに、ミミサキは次の仕事にうつっていた。
 仕事というより、余裕があったら調べようと思っていた内容にふれたのだ。
「何を?」
 ファイルをぱらぱらめくり始めるミミサキに、アウラが問いかける。
「あー、この六■高校がどういう経緯で、いつできたのか調べたくってですね……」
 ミミサキはそう答え……手が、止まった。
 小首をかしげ、同じ資料を覗き込むアウラ。
 何の変哲もない資料だ。その年の金の動きなどが書かれた普通の資料である。
 が、めくっていくと分かる。
 ずっと。
 ずっとずっとずっと、同じ年が続いていた。それも、最低でも30年以上は継続していることになる。金の流れはそのときどきで違い、年がループしている以外は普通に時がすすんでいるのとかわらない。
 そして情報を遡って設立時の状態を調べて、またミミサキは顔をしかめた。
「今度は何が?」
 アウラに問いかけられ、ミミサキは証拠になる資料をかざし手の甲でぽんぽんと叩いて見せた。
「この学校。ある日突然、できてます。後者も職員も生徒も、花壇のチューリップでさえ、一日で全部はえました。生徒の住所もその瞬間に新規作成されたんじゃないですか?」
「……いや」
 なんだそれは。
 アウラは額に手を当てた。
 罪の証拠とか、マスコミとか、そういうレベルの秘密ではない。
 この学校はおかしい。
 まるで誰かが、こういう環境が欲しいからといっていちから全部『でっちあげた』かのようではないか。

●破壊と崩壊
「おらおらおらー! KANTOにゃん虎会特攻隊長ネコモ参上にゃー! 夜露死苦にゃー!
 今日から六■高校はにゃん虎会の傘下入りにゃー! 歯向かうならこうにゃー!」
 バットを持ったネコモが突如校門のゲートを飛び越えて現れた。
 突然のことにたまたま近くにいた生徒や、窓際の生徒たちが怪訝な顔でそれを見る。
 まずネコモがやったのは、目につく窓ガラスをそのバットでたたき割って回ることである。
 非常識な凶行に、生徒たちは驚いた様子で観察していた。一部の生徒は本気で恐怖していたが、まだ大半は『他人のやんちゃを観察して楽しむ』段階だ。
 ネコモはそれを察してか、駆けつけてきた大人へ向き直った。
「大乱闘ネコモシスターズはっじまっるにゃー♪ おらー!」
 形だけの警備員がひとり巡回してるだけの、もっといえば用務員兼警備員というかなりなんでもない人物に対するネコモの戦力は圧倒的である。
 ネコモの猫道拳一発で吹き飛び、警備員は大きなスチール製の下駄箱を歪ませ、転倒させた。
 そのあまりの暴力を一部の生徒達が高い窓などから目撃した、その時。
 火災報知器のベルが学校じゅうに鳴り響いた。

 若干時を遡り、アマトセーラー服姿のアマトは学校の裏側からフェンスを跳び越えるかたちで侵入。空中でくるんと宙返りまでかけてから草のはえた地面に着地すると、今度はぴょんと柵の上に飛び乗り、その足でさらなるジャンプをかけた。
 夏場ゆえか全開になった窓の隙間をスルッと器用に通り抜け、窓の縁を掴んでブレーキをかけたアマトはそのまま階段の踊り場へと着地。2~3階の踊り場から耳(うさみみ)を澄まし、外でネコモが大声で暴れ始める音を聞きつける。
 誰もがそっちへ集中している隙を狙って三階へと移動。
 話に聞いた火災報知器を見つけ、『強く押す』と書かれたプレートをぐっと親指で押し込んだ。
 次に適当な新聞紙をくしゃくしゃにして狼煙薬を包んでトイレへ放り込み、油をかけて火を付ける。
 いきなりとんでもない量の煙が吹き出し、鳴り響く報知器。
 それによって学校じゅうからざわめきがおこった。
「流石に罪悪感があるのです……」
 が、おしごとはキッチリやらねばならぬ。せめて生徒の被害が少なくなるようにと消化器をひっこぬくと、それをぐるんぐるんと振り回したあと窓に向かって放り投げた。
 激しいおとをたてて割れるガラス。中庭へおちていく消化器。駆けつけた教員らしき人物画消化器を探して慌てふためく様子が煙のなかに紛れて見え、アマトは心の中で『ごめんなさい』してから逃げた。もちろん、窓から。
 その一方。
 アマトが火災報知器を鳴らしてくれたおかげで壱狐の仕事はより簡略化された。
 先ほどアマトがやったものと同じ方法でトイレや空き教室から煙を出し、消化器を放り出し、場を混乱させる。というか、この手順をアマトに教えたのが壱狐である。類い希なる技術力と知識をもつ壱狐ならではの。
 ちらりと中庭側を見ると、それを挟んで反対側にある後者から飛び降りるセーラー服の少女が見えた。特徴的なうさみみからしてアマトだろう。
「そろそろ、本格的な破壊にうつってもイイ頃ですかね……」
 壱狐は腰に下げていた刀を抜くと、鞘部分を腰から外して窓ガラスを一枚ずつたたき割りながら廊下を歩いて行く。
 そうしたのは、あえて自分の姿を見せるためである。
「やめろ! 何者だ!」
 そう叫ぶ声が、後方からした。
 振り返ると、掃除用のモップを握りしめた男子高校生がひとり立っていた。

「…………」
 堂々と玄関から入り、階段を上って校舎内を制圧していくプロメッサ。
 元々可能な限り死者を出さないという計画にそって動いており、パニックを起こした学生や教師たちが半信半疑になりながらも校舎の外へと逃げはじめているのが見えていた。
 プロメッサが目指したのは放送室。無人であった放送室に入ると、放送設備へと棍棒を振り上げた。
 鋼の棍棒が叩きつけられ、激しい火花を散らす。
 その様子を目撃した教師らしき人物に振り返り、プロメッサはフェイスシールドの奥から浮かぶ赤い光の紋様をやや強くした。
 薄暗い部屋でそんな存在が振り返れば、常人ならば恐怖にとらわれるだろう。
「これより、この校舎は襲撃を受ける。大人しく避難すれば危害は与えぬ――だが、逃げぬのであれば……分かるな?」
 慌てて逃げ出す職員。
 プロメッサはため息をつくと、放送室を出て窓際に立つ。そして次に何をすべきか考えた。
 考えながら……窓越し向かい側校舎の、一階層下。モップを握りしめて壱狐へ襲いかかる男子高校生を見つけた。
 見間違えるはずはない。
 あの顔は。
「イデア……!」
 壱狐の剣が、五行の術式を纏って男子へと迫る。モップで武装した程度の高校生にそれをかわすすべなどなく、刀身は一直線に――。

●問いかけと意味
「まずは目の前のクエストの完遂!
 そして――今度こそ話を聞かせてもらうわよ、『姉ヶ崎』エイス!!」
 旧校舎の側面を駆け上がる蛍。
 魔力によって補強された彼女の身体は重力など意味をなさないように壁を走り、屋上へ向けて迫る。
 最後にフェンスを駆け抜け、その縁を掴んでくるりと身を転じ、コンクリートの地面へと着地する。
 元々は出ることが許されていた屋上設備だったのだろうか。古びた三つほどのコンクリート製ベンチと屋上を囲むフェンス。
 本来誰もいるはずのない屋上に、三人の生徒がいた。
 突然出現した蛍に驚いて、あるいは身構えて。
 誰かは分かっている。
 ROO世界におけるNPCの蛍と、珠緒と、そしてエイスだ。
 エイスの顔にはピクセルモザイクがかかり、蛍と珠緒にも同様のモザイクがかかっているのが確認できる。
「お久しぶりね、エイスさん」
「……だれ……?」
 そっと後退し、屋上の扉へと近づくエイス。
 だが扉は向こう側から破壊され、珠緒が姿を現した。
 珠緒はちらりとROO珠緒へと視線を向けてから、次にエイスへと目を向けた。
「姉ヶ崎エイスさん。貴女に伺いたい事があり、罷り越しました」
「ボク達の<八界巡り>を利用して、貴女が成そうとしていることは何?」
 代表して問いかける蛍。加えて、珠緒も問いかける。
「珠緒(わたし)たちを含むかの8人に対し、貴女が望むもの・願うことはありますか?
 答えを聞き向き合い方を決めねば、どんな顔で噴水前に行けばよいかわからないのですよ」
 求めてやまない、彼女たちが追う『秘密』の中核である。
 対して、姉ヶ崎エイスは……震えた声で首を振った。
「あなたたち、誰? しらない、そんなの……」
 ごまかしているようにも、嘘を言っているようにも見えなかった。
 だからこそ。
 『この情報に何の理解も示さないからこそ』、わかることがある。
 珠緒の理解と蛍の理解は同時だった。
「エイスさん。あなたは、誰ですか? ……一体『いつ誰に作られた』のですか!」
 同時に、本校舎から爆発が起きた。
 生徒の多くが逃げた事を確認してからより派手な破壊にうつったのだろう。
「とにかく個々は危険よ。今すぐ――」
 蛍が呼びかけようとした、その瞬間に。

 バキン――と、ガラスの割れる音がした。
 ガラスのように空が割れて、海のように空がうねって、世界に大きな亀裂が入った。
『縺ゅj縺後→縺』
 という声が、亀裂の向こうから聞こえた気がした。

●崩壊と『リセット』
 すべて消えていた。
 学校も、生徒も、教員も、そもそも学校があったという物理的な形跡すらなかった。
 伝承王国の街の一角がぼろぼろに破壊され、瓦礫と死体がころがる風景だけがあった。
 表示されたウィンドウには、『クエストクリア! おめでとうございまーす!』という文字が表示されていた。

成否

成功

MVP

ミミサキ(p3x009818)
うわキツ

状態異常

なし

あとがき

 ――クエストクリア

 ――六■高校の崩壊:成功
 ――姉ヶ崎エイスの生存:true
 ――イデアの生存:true
 ――ROO世界の蛍、珠緒の生存:true

 ――システム障害が発生しました
 ――六■高校に関するデータが消滅しました
 ――不明なデータが検出されました。現在解析が行われています……

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