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シナリオ詳細

船底を叩く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●船底を叩く
 広大な海が広がる、ネオフロンティア海洋王国。
 夏の照り付ける日差しが眩しく差し込み、陽射しの下、物資を運ぶ交易船やら、島を渡る旅客を乗せた旅客船、そして物資を運ぶ船を襲う海賊船……等々、様々な船が一つの海の上を行き交い、その営みが育まれている。
 勿論大勢としては、大きな争いとかも無く平穏無事な海の上の光景が広がっている、という事にはなる。
 ……そんな海洋王国を構成する島の一つ……『ヴェノーラ』島では、一つの噂話がまことしやかに最近囁かれている。

『この島から南方に三日行った所に、小さな島が存在する。その島には壊滅した海賊のお宝が眠っている』

 この噂話の真偽は分からないものの、もし本当であれば一攫千金。
『その噂、本当かどうかは分かんねえが、一度行ってみる価値はありそうじゃね?』
『そうでですな兄貴ぃ! お宝を手に入れて、楽して生活してみてぇもんだぜ!』
 と、偶然島を訪れたのは、交易船を偽装した海賊船。
 そして彼らの船は、噂の詳細を詳しく聞いて、島から真っ直ぐ南方へと航路を取る。
 一日、二日……そして三日。
 噂の通りであれば、この近くにその島がある筈。
『おい、この辺りの筈だけど、島はねえか?』
『そうですねぇ兄貴……ん? あ、あれじゃねえっすか!』
 望遠鏡に僅かに映る島を見つけた船員が指指した先には……本当に小さな島がぽつんと一つ。
『っしゃぁ、よーしお前等、あの島に向けて全速前進!!』
『オーっ!』
 意気揚々とその島に向けて針路を取った彼らだったが……瞬く間に、船の周囲に深い霧が立ちこめてくる。
 殆ど視界もない状態で……そのまま航海しては、不意の事故に遭うかも知れない……なので、一旦その場に停泊し、様子を見る。
 ……だが。
『……コツ、コツ……』
「ん……何だ、この音?」
 船倉の部屋で休んでいた船員の一人が、船底から響いてくる音に気付く。
 まぁ、気のせいかと思い、船長に知らせる事無く、再び眠りについた彼。
 ……そして、停泊して小一時間程が経過した、その時。
『……ガタンっ!』
 大きな音と共に、船は大きく傾く。
『お、おいっ、どうした!?』
 船長が叫ぶも、船は凄まじいスピードで傾いていき……混乱の境地の中に沈む船。
 その船が沈むと共に、今迄辺りを包んでいた霧は瞬く間に晴れ、その場には何も残らなかった。


「……ああ、集まってた様だな。んじゃ、早速だが始めるぜ」
 と、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、周りのイレギュラーズ達を見わたしつつ。
「ちと今回は奇妙な事件が発生しててな……その事件の真相を確かめてきて欲しい、って訳なんだわ」
「ネオフロンティア海洋王国の『ヴェノーラ』島、そこから三日ほど南に航路を取った所に、お宝がある島があるって話しなんだわ。正直、今迄そんな所に島があるだなんて聞いた事もねぇんだが……まぁ俺達がまだ見つけられてない島の一つや二つ、あっても仕方ないだろう」
「でも、その島に向かった船は、誰一人として帰ってきて無いって言うのが今の所判明している事実なんだわ。どういう理由で船が戻って来てないのかは分からねえが……ま、何か人知れず船を沈める様な奴らが、その辺りにでているのは間違いないだろう」
「今迄に何隻もの船が向かい、帰って来ない……となると、何らかの理由で船は沈んだと考えるのが自然だ。沈んだ船に乗り込んでいた乗組員達は、もう命は亡いだろう。だが……このような事件を放っておく訳にもいかない。という訳で……皆の出番、って訳さ」
「どうして船が帰って来ないのか……そして、お宝があるってのも本当かどうかは分からねえが、ちょっと調べてきて欲しい。宜しく頼むな」
 とショウは、イレギュラーズ達の方をぽん、と軽く叩くのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
 今回は幽霊の現れる海域での実地調査、というものになります。

●成功条件
 船が沈む原因を叩き潰す事です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●周りの状況
 指定された海域につくと、遠くに小さな島の影が浮かびます。
 そしてその島の影に向けて航行すると、とたんに周囲に深い霧が立ちこめ、船の身動きを取らせなくします。
 そして身動きが取れなくなった所に、船底に亡者が取り憑き、穴を空けて船を沈める……という行為を行ってくる様です。
 敵は全て船底の海中に居ますので、戦う際には水中で行動出来るアビリティはほぼ必須と言えるでしょう。
 尚、船底に穴を空ける場合、彼らはトン、トン、と船底の厚さを確認する為に叩いてくるので、それが襲撃の合図、となります。に御願いします。

●討伐目標
・亡者の海員達 x 40匹
  今迄幾度となく沈没した船に乗っていた乗組員達です。
  彼らは苦しんで死んだ為……生への執着がとても強く、イレギュラーズ達を道連れにしようと取り囲んで攻撃してきます。
  その怨みを込めた一撃はかなり強力ですが……体力は既に亡者と化してしまっている為、そこまで高くありません。
  とは言え皆様の五倍という数がいるので、物量作戦で押しきってくる可能性が高いでしょう。
  又、彼ら全員、水中で行動出来る特性を常に発揮していますので、溺れたりする事は絶対にありません。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 船底を叩く完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
EX=S=マキヤ(p3p010023)

リプレイ

●大海原と
 一面に広大な海が広がる、ネオフロンティア海洋王国。
 時は夏、暑い日々が続く中においても、交易路の通商に変わる事は無い。
 様々な船が行き交い、変わらぬ日常が繰り広げられている。
 ……しかし、そんな日常に差し込んだのは、嘘か真かは判らない伝承。

--『ヴェノーラ島』から南へ三日航海した所、そこに小さな島がある。
--その島には、壊滅してしまった海賊のお宝が眠っており、選ばれたものしか手に入れる事が出来ない。

「お宝のある島に、沈んで帰って来ない船……ですよ?」
 そんな噂話を聞いた『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)が、きょとんと小首をかしげると。
「うん……海賊の宝、ねぇ……例えば隠された地図とか、情報の取得が限定的ならともかく、誰にでも聞ける噂なんて信憑性低いし、本当だったとしてももう残っていないパターンだったりするのが多いんだよねぇ……」
 『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)も、肩を竦める。
 確かに彼女の言う通り、この噂の出処ははっきりとはしていないものの、この辺りの島に住む人ならば、大方知って居る模様。
 ……そんな村人達の話だからこそ、今迄の被害者達はすっかり信じ込んでしまった様で。
 でも、その真実こそ……その海域に巣くう亡者共の話である、という。
「どうやら……この海域に捕まってしまったんだね? 天へ行く事もなく、冷たい海の中で永遠に獲物を求めて彷徨うだなんて……想像するだにぞっとする。早く解放してあげなくちゃ」
 とショウの情報に肩を落とす『若木』秋宮・史之(p3p002233)に対し、またかい……と諦めの表情を浮かべるのが『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)。
「全くだ。いつもの幽霊船騒ぎ……だと思ってたが、今回は違うらしい。ま……ミイラ取りがミイラにされちまってるって意味では、大して変わらねえんだがな」
「うん。海賊の宝を我が物にしようとした海賊達も海賊達ではあるよね。まぁ……お宝探しには、危険がつきものだけどさ」
 そんな二人の会話に、更にイリスが。
「ま、噂は噂だとしても、気になるのはその噂がまことしやかに囁かれ始めたのがいつ、って所よね? 帰還者なしの情報を得る前に、立て続けに船が向かって行ったみたいな話に私は聞こえるんだけど?」
 と、疑問を呈する。
 でも、そういった噂話……いつ、どこから噂が始まったのかを調べるのは、相応に骨が折れる事は間違いない。
「そうだな……ま、島民達からすれば、どっかから聞いてきた噂話が根も葉もなく広がるだなんて事、良くある話だ。偶然宝を手に入れたら、そいつらが『本当に宝があった!』なんて報告する訳もないだろうしな」
「……確かに、その通りですね」
 縁の指摘に、頷くイリス。
 そして『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も。
「まぁ……今迄知られていなかった島って聞くと、ちょっと興味が湧くのは俺でもあるかな。何かが隠された島か、何もなくて話題に上らなかっただけの島か、何かによって新しく生まれた島か……もし上陸出来るなら、確かめてみたい所だな」
 イレギュラーズ達の冒険心を刺激する、正体不明の宝島。
 ……勿論、依頼の本懐である、海底から船底を叩く亡者達を倒すことは、忘れてはいけない。
「でも、船幽霊か……船底に穴を開けるだなんて、大胆な行動をとるものね。船幽霊なら大人しく柄杓で浸水させなさいよ、って想うのよね」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の言葉、それにEX=S=マキヤ(p3p010023)は。
「え、そうなのですか? キシンサマ、判りませんか?」
 そんなマキヤの問いかけに対しての回答は……取りあえず現物を見てもいないからか、脳内に何も浮かばず。
「キシンサマでも知らない!? それは未知ですね……データを集めなければなりませんね」
 とマキヤが息巻く。
 ……まぁ、ともかく。
「取りあえず正体不明のお宝島に大量の船幽霊とは、なんともきな臭い話になりそうだぜ、な?」
 と『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)は煙草の煙を噴かしながら言うと、イナリとイズマも。
「そうね……とにかく、さっさと退治するわよ!」
「うん。船が沈む原因がある程度はっきりしているのなら、放っては置けない。俺達で排除しよう」
 と気合いを込める。
 そして、以蔵は持ち込んだボトルの中の船を水辺でキュポン、と開封。
 ……すると、イレギュラーズ達の目の前に船が出現。
「わぁ、これはこれは、すごいのです!」
 目をキラキラ光らせるルシアに、以蔵は。
「……ちょっと8人だと狭いかもしれんが、そこんところは我慢してくれ。こいつは壊れたとしても、そんなに被害ねぇしな」
 そしてイレギュラーズ達は、以蔵の船へと乗り込み……島を発つのであった。

●海底に潜みし
 そして、ヴェノーラ島から南方に向けて航海し、三日目の深夜。
 周りには一切の島影もなく、ただっぴろい深夜の海原が広がるばかり。
「……さて、と……噂話では、この辺りの様だしな。取りあえず、暫し待つとするか」
 と以蔵はその場に船を止めて、灯りも衝突を防ぐための、最小限の灯りだけを灯す。
 ……まぁこの辺りの海域図からして、ここは航路には入っているエリアではない。
 決められたルートを通る通商船やら、観光船などが、ここを通る可能性は余り無い……通りがかる可能性があるとすれば、無秩序に航海する海賊船位だろう。
 幸い海はそこまであれておらず、穏やかな波の揺れが船を上下に軽く揺らす程度……そのゆったりとっした揺れは、少しずつではあるけれど、睡眠欲を刺激してくる。
「……ふぁ……」
 と、ちょっと眠そうに欠伸をするのはルシア。
 彼女はこの三日間、釣りをしたり、入手した魚で仲間達に料理を振る舞ったり、お茶会をしたり……と、仲間達を飽きさせない……というよりかは、自分が思いっきり楽しもうと、船上生活をエンジョイしていた。
「ん……大丈夫?」
 とイリスが声を掛けると、はっ、と気がつき、ぶんぶんと首を振って。
「だ、大丈夫なのです! 何かが起きるまでは、普通に楽しむのでしてー!!」
 慌ててまた釣り糸を垂らして、魚釣りを初めてみたり。
 ……まぁ、そんな海を楽しむのは良しとしつつも、今日は約束の時。
「しかしなぁ……亡霊とは今迄何度も遭っているけど、今度のはフジツボか何かか?」
 とイズマが溜息をつくと、それにイナリも。
「そうね、言い得て妙ね……まぁ彼らからすれば、無差別に命を狙っている様だし、船底に穴が開けば、船は浸水し、沈む……それも余り音を立てずにするというから、厄介な事この上ないわね」
「ああ。船の底に取り憑くのは厄介だ。海中は見辛いしな……だが、亡霊に襲撃される直前には霧が立ちこめ、音がするという予兆があるとの事だ。船を叩く音に集中するとしよう」
「そうね……ま、一応船の内側から出来る限りの補強はして置いたし、穴が開いてすぐに船が沈むことは無い筈……だからこそ、音に出来る限り早く気付かないとね」
「判った」
 イナリに頷くイズマ。
 そして、船を停泊させて……小一時間程が経過した刻。
 今迄見晴らしが良かった周囲の大海原が、突如……見通しが悪くなる。
 もわん、とした霧状の何かが周囲に立ちこめ、視界を妨げる。
「あれ……急に霧が濃くなったのですよ……? これが、あの前触れでして?」
 とルシアが言うと、それに。
「ああ……どうやら靄が出て来た様だ」
 脳裏に響く、悲痛な叫び声をおくびにも出さず、涼しい表情で仲間達に伝える縁。
 更にその不鮮明な視界の中に、ぼんやりと浮かび上がる島の影。
「……あれ、あんな所に島が? あの島が、噂の宝島、でしょうか?」
 とマキヤが声を上げる。
 とは言えそれよりも先に調べねばならないのは、船を叩く音。
 甲板に寝そべり、船底の音を鋭い聴覚で以て縁が確認。
「……そら、おいでなすった様だぜ……下だ」
 彼の耳に聞こえたのは、コン、コン……と船底を叩く音。
 本当に僅かな音だが、その音葉少しずつ数を増やしていき、誰しもの耳にも聞こえ始める。
「増えてきたわね……みなさん、準備は良いですか?」
 とイリスが仲間達に確認……皆頷くと共に、全員が水中へと飛び込み、水中行動の力を発揮。
 海の中へと潜り、船底へ向けて深度を下げていくと……そこには。
「うわ……キシンサマ、あれは何でしょう? 半透明な人がなんか蠢いていて、気持ち悪いです……」
 マキヤの言う通り、船底に大量に纏わり付く、亡者達。
 海の中故かは判らないが、ほんの僅かの象が見えるだけで、本当に存在しているのかすら疑わしい存在。
 ……だが、そんな亡者達はイレギュラーズ達に気付くと……攻撃のターゲットを船底から、イレギュラーズ達に、順次シフト。
「彼らは、この海域で沈んだ船が原因……でしょうか。島に行かせないように、つまり宝を取られないようにするための……でしょうか?」
 刃を剥く敵の動きに、マキヤがキシンサマに問いかける。
 でも、その答えは見つからない。
 ……ともあれ、刃を剥けてきた彼らを倒す他に、イレギュラーズとしての解決策は無い訳で。
「俺はお前たちとつるむ気はない。海に沈む気もない。生への執着は俺にもある。だから悪いが、ここは譲れない!」
「そうだな。さぁ、水中行動できりきり舞いさせてやろう!」
 イズマと史之が宣告。
 ……しかし敵の数は40人と多数、更に大多数は戦い馴れていない水中なので、敵の方が優位であろう。
「取りあえず、少し分けて惹きつけておくとするか」
 と戦い馴れている縁は、敢えて自分を囮とするべく、魂を燃やした火の玉を己が周囲に展開。
「……こっちだ」
 仲間達と距離を取る位置に展開すると、それに吸い寄せられるように数体の亡者達がその方角へと向かう。
 そして残った敵にワンテンポずらし、史之らが一斉に突撃。
「たくさんいるなら、纏めてずどーん! ですよ!」
 と、まだまだ纏まって密集している亡者達の群れにルシアが魔力を凝縮した魔砲をずどーん、と放つ。
『グゥァアア……!』
 その攻撃を受けて、苦悶の叫びが海中に響く。
 だが、続けて史之が敵の群れへと接近し、全身全霊で吐き出す大喝で敵を吹き飛ばして、分割。
 更に分割された敵陣の所に以蔵とイズマが接近し、敵を範囲攻撃で纏めてダメージを与える。
 そして、まだ一番数が多く残る敵の一班に対しては、イリスとイナリの二人が対峙。
「君達の相手は私だよ……この先はイリスが通さないんだから!」
 とイリスが威風堂々と名乗りを上げて敵の怒りを買いつつ、彼女に対し魔力障壁と破邪の結界を付与し、防御力を最大限に引き上げるイナリ。
 イリスは盾となり、仲間達が個々に少数ずつ倒して行くのを待つ作戦。
 勿論多勢故、立ち塞がり続ける時間はかなり長いものになるだろうが……絶対に倒れないと言う気迫で、毅然と振る舞う。
 ……そんな彼女の動きのお陰で、取りあえず史之が誘い出した4、5人の亡者第一陣は程なく殲滅。
「イリスさん、大丈夫?」
「ええ、大丈夫だよ! さぁ、次次!」
 とイリスは促し、頷いた史之が再度敵の群れを吹き飛ばし、数匹を分離……そこを叩く。
 確実に史之達が敵の数を減らして行く一方で、縁は灯りで誘導した敵に一人対峙。
「こいつらがどういう理由で死んじまったかは……まあ大体の予想はつく。その未練を断ち切ってやらんとな」
 短く瞑目すると共に、彼の手により生み出された黒の顎が、敵を一匹貪り、喰らう。
 他の亡者達からの攻撃は敢えて受け、ターゲットが余所へ向かない様にする。
 更にそこへ、マキヤが追撃。
「微力ですが、加勢します」
 と速度の刃にて、敵へ攻撃を加えていく。
「ん……まぁ、無理すんなよ」
 と縁は言いつつも、その加勢を受け入れながら敵を誘導。
 水中という特殊な環境ではあるが、一度に対峙する敵の数を出来る限り抑えた上で、的確に敵を仕留めて行く作戦。
 それが功を奏した様で、イリスと縁の二人にはかなりのダメージがあるものの、イレギュラーズ達を無視して船底を攻撃する様な敵はほぼ居らず……40匹もの大集団な亡者達は、深い海の藻屑へと消えていくのであった。

●静けさと共に
 そして……多数の亡者達を倒したイレギュラーズ達は、再度船の上へ。
 潜水前まで立ちこめていたはずの靄は、まるで幻であったかの様に既に晴れている。
「ん……取りあえずあの靄は、亡者達が作り出していた幻想、って事だった様だな」
 と以蔵が息を吐く。
 それにイズマは頷きつつ。
「そうだな……これで怨みや執着からは解放される筈だ。安息を願おう」
 と呟くと共に眼を閉じ、彼らの安息を願う。
 ……そして、彼の安寧の願いが終わった所に、史之が。
「さて、みんな取りあえずお疲れ様。取りあえず一息つかないかい?」
 と、労いのドリンクを振る舞う。
 それを一口、二口つけて周りの海域を見渡すと……靄の中にあった筈の島の影は、不思議と見つからない。
「おかしいな……あの方向に島があった筈なんだが……」
 と縁が零し、単眼鏡でその方向を観察。
 しかしその先に見えるのは、やはり大海原……島の影の様なものは、見つからない。
「おかしいですね……私もあの方角に、島があったと想うのですが……」
 マキヤも頚を傾げ、そして以蔵が。
「取りあえず、ちょっとあっちの方に行ってみるか。屈折の現象で、遠くにあった島が靄の中に見える、って現象もあるからな」
 そう以蔵が提案し、その場に停船していた船を再度動かし始める。
 それから数時間……でも、やはり島の姿は見えない。
「……やはり……あの島は、亡霊が見せた幻かもしれないな」
 とイズマが言うと、ルシアが。
「え、そうなのですか!?」
 と驚きの表情。
 それに縁とイリスも。
「まぁ……あいつらはこの海域に眠る亡霊だった様だしな。奴らが島を見せ、油断をした所を狙う……というやり方は十分にあり得るだろう」
「そうね……でもあの島を見せる事は結果であって原因じゃない、っていうのが妥当な考えだと思うよ?」
 あの亡霊達が仲間を作りたいが為に、噂話を流したのだろうか……?
 そんな噂話の出処がやはり気になる所ではあるが……だが、今の時点では何も言えない。
「まだまだこの海域には謎解きが眠っているんだろうね。でも、何度だって俺は、俺達は立ち向かうよ。いつかこの海が、静寂の海の名にふさわしくなる時まで、ね」
 と史之が確固たる意思をその拳に込めると、ああ、と頷く縁。
「……取りあえず、お前達はもう……眠れ。この海域には、俺達から噂を流しておこう。ここに来てはいけない、とな」
 噂には、噂で対抗する……この海域に来る者が減れば、静かな海になる筈。
 ……勿論、それでも来る奴はいるだろうが……。
「連中が、大人しく眠れるように……そう願うぜ」
 縁の一言に皆、静かに頷く。
 そしてイレギュラーズ達は、その海域を後にするのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

依頼に参加いただき、ありがとうございました!
船の墓場、と呼ばれる海域から、今回の話に膨らませてみました。
あの海ではコンパスも効かず、本当に船が迷ってしまうと効きますし……それも、同様な事件なのかもしれませんね。

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