PandoraPartyProject

シナリオ詳細

難攻不落のヒロイン達

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ヒロインの墓場
 今にも泣き出しそうな曇天の空の下、ヒールの折れた靴を脱ぎ捨てヒロインは走り続けていた。

「はぁ……はぁっ…! じょ、冗談じゃないわ!あんな奴らに攻略されてたまるもんですか!」

 救いがないのは分かってる。このコロッセウムに迷い込んでしまった以上、どこにも逃げ場が無いという事も。
 それでも彼女は諦める事ができなかった。一分でも一秒でも生きていたい。生き続けたい――

 不条理な世界のルールに押し流され、絶望の淵に立たされようと、決して折れる事のない気丈な精神。
 その輝きこそがヒロインの魅力であり"あいつ"の欲望を掻き立てる罪なのだ。

「ッ……!!」

 ヒロインの瞳に異形の姿が映る。びっしりと鈍色の鱗で覆われた猫背の身体に長い腕。
 モザイクで塗りつぶされたように顔の見えないその怪物は、この世界に迷い込んだヒロイン達から恐れを込めて、こう呼ばれていた――『主人公』と。

「だめよ、だめ! 私にはまだ……」

 目を背けられず後ずさるヒロイン。彼女の震え声に重なって、ヴンッ! と電子音が響く。
 現れたのは神秘の力で構成された巨大な二枚の細長い板。そのうちの一枚を手に取り、主人公はヒロインの頭へ力いっぱい振り落とす。

 鈍い音と共に『やあ、また会ったね!』と記された板は血で染まり、息をひきとったヒロイン"だったもの"を主人公は少しの間みおろしていたが、すぐに次の攻略対象を探しにのそのそと歩き出した。

 彼らにとって攻略し終わったヒロインなど、どうでもいいものだから。

●選択肢を覆せ
「今回、貴方達には『ヒロインの墓場』というライブノベルの世界に向かってもらうわ」
 喪に服すような漆黒の表紙の本に血文字で書かれた表題を撫でながら、『境界案内人』ロベリア・カーネイジは集まった特異運命座標に話を続ける。

「そこは忘れられた作品のヒロインがあらゆる異世界から迷い込んで来る、彼女達の処刑場。
 主人公と呼ばれる怪物に神秘の力『選択肢』を叩きつけられて、酷い死に方をする悲劇の世界よ。
 とても凶暴な相手だけれど、話し合いで解決できない以上、やる事はとても単純だわ」

 課されたのは主人公の討伐。一方的に叩きつけられた選択肢を、運命の力で覆せ!!

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 シミュレーションゲームの終末みたいな世界が出現しました。

●目標
 エネミー「主人公」の討伐

●場所
 異世界『ヒロインの墓場』
  あらゆる世界のヒロインが迷い込むヒロイン達の終末世界。無人のコロッセウムのみで完結した世界で、迷い込めば最後、逃げる場所はありません。
  視界や足場のペナルティはなく、討伐対象となる主人公たちが野放しになってうろうろしている危険な所です。

 この異世界を訪れた特異運命座標は誰であれ『ヒロイン』認定となります。男だろうと女だろうと、性別不明でも『ヒロイン』です。
 
●エネミー
 主人公×20
  銀の鱗をもつ異形の怪物です。ヒロインを見つけると、『選択肢』という長細い板を召喚し、振り回したり投擲したりして容赦なく襲いかかってきます。
  筋骨隆々な長い腕を持つ彼らは、攻撃力と防御力がやや高めです。
  また、選択肢で攻撃を受けると【火炎】や【毒】などのBSに見舞われる可能性があります。

●その他
  この世界では"ヒロイン力"の強いプレイングだと戦闘力が有利になる事があります。
  ヒロインらしい身なりや立ち居振る舞い、信念などなど。特異運命座標の思う『ヒロイン』を楽しんで頂ければ幸いです!
  
●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 境界案内人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 説明は以上となります。それでは、よい旅路を!

  • 難攻不落のヒロイン達完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月01日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

チェル=ヴィオン=アストリティア(p3p005094)
カードは全てを告げる
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ

リプレイ


「さて、皆さん。戦いを始める前に攻略のヒントを出し合っておきましょうか」
 月明かりに輝く水色の髪をサラリとかき上げながら『カードは全てを告げる』チェル=ヴィオン=アストリティア(p3p005094)が仲間に問う。
 訪れた異世界は"ヒロインらしく"あるほど力を得るというが、そもそも物語の中に登場する多くのヒロインが非戦闘員だ。"らしく戦う"にも指針が少ない。

 ヒロインとは?――その哲学めいた問いに『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は考え込む。
「ヒロイン、古今東西に名を馳せつつもいまだその真実の姿に誰もたどり着いたことがないという謎の存在ですね」
「そうなのか? 真の偽聖女のようなのを『お花畑ヒロイン』と称するらしいことは知っているが……」
 依頼を引き受け、はじめてヒロインという単語と向き合う事になった『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)には、睦月の答えが新鮮だった。事前に情報収集はしてきたものの、「どうやったらヒロインになれる?」と知人達に問うと、誰も彼もが何故か「とうとう…」みたいな目を向け黙り込んでしまうのだ。性別を越えて才能があると皆に感づかせてしまうとは、恐るべき巫女補正(※正確には巫女ではない)。
 アーマデルの事情はさておき、睦月は未だ真剣な表情で、己のヒロイン知識を続けて語る。
「花であり嵐であり、味方でありときに悪役であり……。僕は祭具だったんでこういうのうといのですけど、依頼を完遂するため書物を参考に、ヒロイン像を確立させてきました」

「クヒヒ、皆さん……聞くほどなんか抽象的な内容じゃありませんかァ。まあ方向性が被らない方がヒロインの個性が立ちそうですけどねェ?」
 と呑気に問う裏で、『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)はぼんやり、自分がヒロインを演じる事になった数奇な運命を思っていた。
(まさかこの私がヒロイン扱いされようとは……こう言っては何ですがとっても似合わないですねェ?)
 それでも甘んじて受けるつもりである。彼女には思うところがあったのだ。この世界の「主人公」とやらに。

「どうせこの面子で来るなら、事前にネバーランドでヒロインの練習でもしておけばよかったな」
「アーマデルさん、それは……ジェームズさんの胃がストレスでマッハなので止めて差し上げましょう?」
 チェルが思うに、スミ―も嫌がりながら付き合ってくれそうな節がある。律儀すぎるぞ元フック海賊団。
 とはいえ、攻略相手はこれ以上待ってはくれなそうだ。四人のヒロイン達を囲む様にわらわらと群がる黒い影。主人公はいつだって身勝手だ。物語は彼らを中心に都合よくまわり、こちらの用意を待ってはくれない。
 チェルはふぅと呼吸をひとつ。そのまま流れるような手付きで占術のカードを手元で広げた。彼女の鮮やかな手付きに主人公達から感嘆の声があがり、彼らに『攻略対象』として認識された瞬間――ヴォン、と光のディスプレイが現れる。

 ★ヒロインデータ★
 属性「占い師」「お嬢様」
 カード占いを得意とするお嬢様。占いを信じる事で自分を守ってきたが、主人公との出会いをきっかけに、一歩足を踏み出す……!?

「なるほど、ヒロインにはプロフィールが付き物ですもんねェ。攻略意欲があがるってモンです」
 あやめの関心した声とほぼ同時、迫りくる主人公達。相対するチェルはミステリアスな微笑みで告げた。

「貴男、興味深いカードが出ていますわね。
 こんな所でお会いするのも、何か運命めいたものを感じますわ」

 呼応するように主人公達の手にあらゆる選択肢が握られる。
『君は…?』『死神のカードじゃなければいいけど』『生憎、占いは信じない主義だ』
 投げ放たれたそれを優雅に避けながら、彼女は神秘の力を込めてカードを辺りへ展開。
(主人公が選択肢を突き付けてくるのであれば、ここは曲がりなりにも「主人公とヒロインの場面」なのでしょう。
 であれば――遠すぎず近すぎず主人公とヒロインの交わりにふさわしい適切な距離で!)
「わたくしの占いが信じられないとおっしゃるの? それなら結構」
 投げつけられる前に叩き返した選択肢が、主人公達の身体を縛る。身動きがとれなくなった所で、勢いよく放たれたエーテルガトリング。その一撃は彼女のスピリチュアルなヒロイン力を帯びて威力を増大させ、多くの主人公達を巻き込んで炸裂。辺り一帯を激しい炎の海に沈めた。
「残念ですけれど、良くないカードが出ていますの。ごめんあそばせ」

 鮮やかに攻略難度の高いヒロインムーブをキメるチェルに対し、睦月はまず独自の世界観を持ち出す事でヒロイン力を高めていた。
 ぴょいぴょいと赤いアンテナが揺れたかと思えば、身に纏っているブレザーと手元の指輪が光に包まれ形を変え――現れたのは、セーラー服と機関銃!
「凄い取り合わせですわね?」
「徒然草に書いてありましたから!」
 驚くチェルにえへへとはにかんで見せる睦月の笑顔は魅力に満ちあふれている。古きよき時代、主人公達を熱狂させて伝統のスタイルで彼女は戦場に立った。
 無論、礼儀作法も忘れてはいない。ヒロインたるもの楚々と清楚に、かつ堂々と正面から名乗りを上げる。
「ドーモ、主人公=サン。フユミヤ=カンオーイン=ムツキです。イヤーッ!」

 昭和と青年誌の融合に戸惑いを隠せない主人公たち。『ドーモ……?』『セーラー服にはヨーヨー派』『清楚(とは)』など動揺気味の選択肢を手にあわあわしている隙に、機関銃から火力高めのピューピルシールが連射される。刺激的な魔弾を雨の様に浴びて動けなくなった主人公へ、さらなる追撃を加えようと白兵戦に持ち込む睦月。
 ヒロインの奥ゆかしさを表現するには銃撃からの肉弾戦による真っ向勝負以外あり得ない。これは列記としたニン=ジツである!
「タイが曲がっていてよ、主人公=サン!」
 ボキィ!
 さりげない気遣いと共にネクタイごと主人公の首がへし折られる。尚、この時の映像が「面白そうだから」という理由でロベリアより録画され、境界図書館のビデオコーナーに収蔵されたらしいのだが、それはまた別のお話。


「不意を打ち、鋭く抉り、致命の一撃を叩き込む。或いはじわじわと蝕む……ふむふむ」
「何を読んでるんですかァ?」
 あやめに問われてアーマデルは読んでいた本を掲げた。それは小さな文庫本。『呪殺(物理)系霊媒ヒロインの育て方』というタイトルロゴがギラついていて目に痛い。
「様々なトラウマ(BS)を植え付けて苛むのもまたヒロイン道という訳らしい」
 ならば俺はその道を往こう――彼は一呼吸置いた後、主人公の方へと駆け出した。

 眼前に迫る巫女系(※ただし巫女(略))ヒロインに、主人公は胸を高鳴らせ選択肢を両手に掲げた。
『君かわウィーネ!』『激マブ巫女ヒロイン降臨ジャン!?』
 ズガガン! 投擲されたチャラい選択肢の間を蛇の様に滑らかに避け、アーマデルは身に神秘の力を漲らせる。
「『主人公』もさまざまなのだろうが、その肩幅…『スパダリ』とやらの成り損ないか?」
「……!」
「なかなか手強そうだが、主人公とは完全無欠な存在ではない」
 そう。主人公とてハッピーエンドだけが待っている訳ではない。奇怪な姿、ヒロインを求めずにいられないくせに攻略すれば用済みとする業の深さ――彼らはすでに王道ルートを外れた呪いのような存在に他ならない。
『呪いにかけられた』のではなく『存在が呪いのようなもの』だ、周囲にとって
ならば祓わねばなるまい。

「刹那の悪夢の中で切り刻まれるがいい」
 未開放の選択肢が現れる前に、即時即殺。
 放たれたナイトメアミラージュで突きつけられた幻は、死亡フラグかセーブデータ破損か。悪夢を前に、主人公は手元の選択肢を落として発狂しながら逃げ惑う。

「さて、『主人公』とは名ばかりの怪物ですが…ええ!そんな存在にも首輪は似合うもの!」
 主人公からの猛攻の一部を盾代わりに受けていたあやめが、反撃開始とばかりにジャラジャラ首輪と鎖を現す。
「攻略トロフィー代わりに、付けられたい方はこっちに来てください! クヒヒッ!最っ高のものをプレゼントしましょう!」
 誘いは名乗り口上の効果を孕み、わらわらと群がる主人公。その首輪に繋いだ鎖を引き、あやめは敵を引き寄せる。

「私はですね、主人公さんに一言物申したい訳ですよ」
 ヒロインを攻略するという事は、奴隷を大切にする主人の関係に通じる物がある。――が、攻略後の彼女たちに目をくれず捨て置くとなれば話は別だ。
「そういう巫山戯た態度、許せる物ではありませんねェ」
 主人公は、攻略したからこそヒロインを大切にするべきだ。ヒロインもまた、攻略された者として尽くしていくべきなのだ。互いを想う主従関係。それこそ奴隷商人「慈愛のザントマン」の求める思考の愛!
「なにに貴方達はその関係を踏みにじり、軽視した…到底、許せるものではありません!!」
 鋭く放たれた手刀は怒りによって研ぎ澄まされ、主人公の心臓を貫き抉る。ドゥ!と倒れたソレの鎖を引きながら、あやめは長く息を吐いた。
「嗚呼…柄にもなく憤慨してしまいましたねェ。反省しなくては……、アーマデルさん何をしてるんです?」
「次はモブに生まれて平穏に生きられるようにと研鑽の足りない所を直しにかかっていてだな……まず姿勢が悪い」
 猫背を無理やりびたーんと床に叩きつけ治そうとする様は明らかに荒療治だが、睦月も楽しそうだと寄って来る。
「この主人公=サンもタイが曲がってますね」
「鱗は防御力が高そうだが…刃で逆撫ですれば削げるな」
 じょりじょり削る音を背景に、チェルはふぅとため息をひとつ。
『占いの結果ではなく、わたくし自身の心の答えを、申し上げます。貴男が好きです、(主人公)さん』
 用意した告白は、未来の恋人へと持ち越された様だ。

成否

成功

状態異常

なし

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