PandoraPartyProject

シナリオ詳細

陽気なグランヴィルは甦らず

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●憐れな男のできあがり
 暗がりの会場で、明るく照らされたステージを、男が一人で踊ってる。
 横笛鳴らして響かせば、「さぁ踊りましょ」と動物たちが躍り出す。
 身体を上げて、飛んできたフラフープに突っ込みクネクネと動かすは白い蛇。
 口から炎を吐いたライオンが、燃え盛る炎のわっかに自ら跳びこんだ。

 曲の音が終わりを告げて。
 男がピシッと構えを取ると、シルクハットをくるりと回して礼を示す。
 演目一つの終わりを察し、拍手の音が会場を揺らすのだ。

「さあ! さぁ! 皆さんお待ちかね! お次は当劇団屈指の変わり者!
 不死身で陽気なグランヴィル! 刺しても死なず、刎ねてても死なぬ!
 神に愛されるはこの男! 一体今日は何してくれる!」
 変わって司会の声が次の男の紹介を始めると、周囲が沸き立つのが確かに分かる。

 ステージ上に姿を見せ、スポットライトに照らされたのは1人のピエロ。
 かなりのやせ型、身長だって高くない。その両手には指の間で握る8つのナイフ。

 不死身で陽気なグランヴィル。
 用意された円筒状の中心に立つや、彼は上半身が床と並行になるほど深々頭を下げて。
 頭を上げると同時に、頭上目掛けてナイフを投げた。

 落下するナイフは次々に彼の身体へ突き立って――アシスタントが円筒を持ち上げる。
 アシスタントが手を離せば、そこには血を一つ流れぬグランヴィル。

 さてさて、それは種も仕掛けもありはしない。
 体質的な特徴だ。

 どよめく会場わらいかけ、アシスタントへナイフを手渡して。
 舞台袖から出てきた十字架に自らの身体を括り付ける。
 そんな彼目掛け、アシスタントたちがナイフを投げていく。
 ぷつんと降りた照明が、会場全てを暗がりに。
 けれどここまでは唯の演出で――

 ――さて、その時だ。
 君達は確かにそれを聞いたはず。
 いやいや、或いは見たのだろうか。

 すくりと立ち上がった一人の男。
 静音の弾丸が、幾度か会場を裂いて不死身を撃ち抜いた。
 パッと輝く照明の中心で――十字架に括りつけられた、憐れな男の出来上がり。
 どよめき、疑惑は数知れず。
「やったぞ! やった! あははは!」
 それが『死』だと知る頃に――悲鳴も上がれば、小さな嘲笑など一般人には聞き届けれまい。

 ――それでも。混乱の会場を紛れるように立ち去る男の姿を君はきっと見逃さない。

「……皆様」
 混乱が混沌を呼びつつある中で、近くの席にいた情報屋のアナイスが声をかけてくる。
「依頼に追加事項が発生しました。大丈夫そうですか?」
「もちろん――」
 この状況、してほしいという内容は、1つだろう。
「それでは、よろしくお願いします、皆様……犯人を、捕まえてください」
 アナイスの言葉を聞き終えるのを待つ間もなく、君達は走り出した。

●悲しくも残る悪意の傷に
 時は数日ほど遡る。
 ローレットへ訪れた君達へ、情報屋のアナイスが声をかけてきた。
「皆さん、良ければサーカスを見に行きませんか?」
「サーカス?」
 サーカスの単語には、一部のイレギュラーズにとっては少々良いイメージがない――が。
「はい。でもご安心ください。かの幻想楽団とは無関係です。
 それどころか、彼らのせいでサーカス団というものへの風評被害を受けている方々なのですが」
 魔種だらけのシルク・ド・マントゥールが幻想王国を襲ったのも、もう数年前。
 たしかに、『サーカス団といえば彼らと同じ……』という偏見や風評被害がこびりついていてもおかしくない。
「なるほど……それで、どうしたって私達にサーカスを?」
「先ほども申しましたが、彼らは幻想楽団のせいで、偏見を受けています。
 他ならぬ皆様に、我々は違うのだと、そう証言してほしいという事でしょう」
 つまりは、受けた悪影響を払拭するための広告塔のようなものか。
 彼らを倒したイレギュラーズに証明されれば、これほどの太鼓判もなかろうというもの。
「チケット代はあちら持ち、つまり、これは無料ですね」
 日付を見れば、ちょうどオフの日だ。
 折角だからと、チケットを受け取って、依頼についても了承した。
 だから――まさか、この時は殺人事件の現場に居合わせる等、思いもよらなかったのだ。

GMコメント

 こんばんは春野紅葉です。
 早速詳細をば。

●オーダー
犯人の確保

●フィールド
 昼過ぎの街中です。
 昼食時にはやや遅く、夕食の買い物時にはやや早め。
 人通りが少ないので犯人を見逃すことはほとんどないでしょう。

●エネミーデータ
・ボニフェース
 被害者を殺した犯人、魔術師です。現場から逃亡中。
 犯行動機は不明ですが、被害者がグランヴィルのみであるため、怨恨ないし一方的逆恨みの類である可能性が高そうです。
 なお、犯行には杜撰な部分が多いため、恐らくは素人です。
 グランヴィルを殺したことから【必殺】属性を持っていると思われます。

●NPCデータ
・グランヴィル
 被害者。EXF100オーバーの疑似不死系のピエロでした。
 サーカス中に芸として十字架に括りつけられたのち復活する……
 という芸のはずがボニフェースに暗殺されました。
 後ろ暗いところもなく、仕事熱心で家族思い、嫁と娘を持つ幸せな好青年でした。
 しいていえば、こんな仕事を選びさえしていなければ、といったところでしょうか……。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 陽気なグランヴィルは甦らず完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ


「ええい久しぶりに平和な依頼かと思えばこれか!」
 思わずごちる『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は路地を1つ分けた場所をエーレンは走っていた。
 大通りを離れた路地には、ぽつぽつと人々の影がある。
「ええ、サーカスを拝見するだけの依頼でしたが、思わぬことになってしまいましたね」
 保護結界も行使しながら走る『白き不撓』グリーフ・ロス(p3p008615)も頷いている。
「サーカスの会場で殺人が発生し、現在犯人は逃亡中です。危険なので皆さん建物の中に隠れるようにして下さい」
 街の中を『空に願う』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は演説がてら声をかけながら走っていた。
 その声を聞いて、路地に面する人々が窓越しにこちらを見ているのが分かった。
「外には出ないでください!」
 それに続けるように『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)も走り続けていた。
 建物の壁を跳び越え、或いは通り抜けながら、迂回するように走り続ける。

「あははははっ! 不死身が死んじゃってるよ!! おもしろー……ってあれ? 死なない芸人が死んだ時って笑い所じゃなかったりする??」
 思わず笑い転げていた『太陽の沈む先へ』金枝 繁茂(p3p008917)も周囲の様子に少しばかり遅れて気づく。
「これも勇者の仕事かと思い参加したが……厄介な事になったな」
 元々の依頼――『サーカスの観光』などではいられない状況に『幻想の勇者』ヲルト・アドバライト(p3p008506)は外へと出ていった男を見据えた。
「だがまぁ、例えどんな理由があれど、白昼堂々と殺人を犯した者を見過ごすわけにはいかない。追おう」
「あーまって! あの人の遺体に合わせてもらっていい?」
 繁茂に声をかけられた情報屋のアナイスが頷いてすぐさま繁茂をグランヴィルの前へ連れていく。
「いやー最後の最期までめちゃくちゃ笑いましたよグランヴィルさん!」
 遺体の上にふわふわ浮かぶグランヴィルの霊魂へ声をかければ、周囲の者達は虚空に語り掛ける繁茂を遠巻きに見ている。
「でもステージは途中も途中! アドリブはお得意ですか?
 それでは次の幕へ行きますよ! 道中説明しますから! ゴーゴー!!」
 快活に笑ってそう言って繁茂に応じるように、グランヴィルの霊魂は保霊棺(小)の中へ。
 それを確かめてから、繁茂は犯人確保に向けて走り出した。
「サーカス、ってのは本当に凄いものだ。種は色々あるけれども、技術を魅せて売る人たち。
 それはどんなサーカスでも変わらないし『これが俺達の芸だ! どうだ、凄いだろう』って見せてくれる。
 それがこうなるとは、ね……ここは任せた。僕も追うよ」
 飛ぶように走り出した『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)は案内された従業員の出入り口から外へ。
 走り出していた行人は視線の先で見覚えのある顔を見た。
「お、久しぶり。急いでるんだけど、逃げてる魔術師見なかった?」
「おお! 久しぶりじゃねえか! 魔術師かどうかは分かんねえけど、随分と有頂天で走っていく奴ならあっちに行ったぜ?」
「ありがと!」
 指し示された方向めがけて、行人は走り出した。
「衆人環視の中で平然と殺すなんて……常軌を逸している」
 そんな行人の後ろを続くように走るマルク・シリング(p3p001309)は思わず言葉を漏らしていた。
 本の偶然ながら聞こえたその男の台詞を思い起こせば、更にその気持ちは大きくなる。
『やったぞ! やった! あははは!』
 それは、あまりにも嬉しそうに言った台詞だった。
(同時にこれは、相手は一人だからといって侮れる状況でもない)
 会場が電気を消されることを差し引いても、白昼堂々人を殺すなんて芸当はそうできるものではない。



 イレギュラーズとボニフェースの追想劇はイレギュラーズの想定通りとはいかなかった。
 全体的に行動指針にばらつきがあったのも影響していた。
「は、は、はっ……ちくしょう、誰だか知らねえが、しつけぇなぁ!」
 そう声を荒げる敵の様子を、マルクはファミリアーごしに見ていた。
「――行ける」
 その一瞬、行人は脚を一歩踏み込み――壁を越えた。
 建物の壁面を蹴りつけるようにして空を舞い、すさまじい速度で加速し、ボニフェースへ肉薄。
 乗りに乗った慣性を刃に乗せて振り払う。
「ったぁ!? んだよてめえ!」
 微かに切り開いた斬撃に、ハトが豆鉄砲でも食らったように、男が目を見開いた。
 激昂と共に、くるりと身を翻して路地の方へと走り出す。
 撒くためなのか走り出したそちらに、偶然ながら壮年の男が一人。
 掃除をしていたのか、その手には彗が1本。
「邪魔だ!」
 その男を押しのけ、そのまま男が持っていた箒に引っかかってボニフェースがずっこける。
「おいこら、あぶねえだろうが!」
 男がボニフェースへ怒りを露わにする横を、イレギュラーズは走り抜ける。
 行人はその様子を見ながら、再び追いついた。
「やれやれ……」
 一歩踏み出して真っすぐに見下ろせば、男がこちらに手を掲げ――旋風が行人を切り刻み、その隙にボニフェースは更に走り出した。
「このままいけば、路地裏に追いつめられそうだな」
 ヲルトが続けて追いつけば、箒の男が驚いた様子を見せる。
「誰だか知らねえけど、こいつ、なにかやったんかい?」
「ちょっとな」
 驚いた様子で問いかけてきた男にそう返してから、ヲルトは続けるように視線を逃げ続けるボニフェースへ向けた。
「このままいけば、目的の場所にいけそうだね」
 追いついてきたマルクがファミリアー越しに仲間達へ場所の指示を出す。
「このままいけば次の次の路地で追い詰めることが出来そうだよ」
 俯瞰する視線で見据えるマルクは、その話を追走班の3人に告げてもう一度走り出す。
 俯瞰する視界にはこちらを気にしながら走る男の様子が見える。
 たった今、曲がり際に女性にぶつかって振り払っていた。

 挟撃班はマルクからの情報を聞きながら、徐々に追手側へと近づきつつある。
 壁越えは逆に時間がかかる場合が多く、壁抜けに関しては入られた側の住民に怪しまれてしまう場合があった。
 結果として、最短は普通に路地の道を走り抜ける事だった。
「サーカスの会場で殺人が発生しています!
 現在、犯人を追跡中です。危険なので建物の中に隠れていてください!」
 フォルトゥナリアは同じような内容を、徐々に小声にしながら走っていた。
 同じ言葉だが、声を小さくしていけば相手に遠くへ行っているように思わせられそうだからだ。
 向こうがどう思っているかは定かではないが、きっとこれは意味があることだと信じていた。
「逃走中の男はとても危ないので、絶対に近寄らないようにしてください! 相手は魔術師です!」
 一喝しながら走るウィズィは、更新される情報を聞きながら、今のところボニフェースが逃走するルートには誰もいないことを目に止める。
 幸か不幸か、ボニフェースの逃走していた大通りは人通りが少なかったが、一つ路地に進んだことで井戸端会議や子供を遊ばせている主婦、商人らしき人物同士の会談などなどが見受けられていた。
 それらの人々を避け、或いはパルクールの要領で飛び越しながら、柱の遠心力で速度を上げつつ走り抜ける。
「……できるだけ早期に確保できればいいのですが」
 ぽつりとつぶやくグリーフは、環境適応能力をウィズィとフォルトゥナリアへ施してからの移動となった分、他の3人よりも後ろ気味に進んでいる。
 それでも素の機動性の高さによって遅れを取り戻している。
 それに加えて、彼ないし彼女が常に張り巡らせる保護結界のおかげで、そのままであれば追走劇がもたらしたであろう損害の多くをゼロに等しいものにしている。
「よし、このままいけば次の角を曲がれば敵の前へ回り込めるぞ」
 パルクールの要領で走り抜けるエーレンはマルクから来る情報の更新を耳に入れながら、走る速度を上げていく。
 不意に足元少し前へ影。
 一瞬の判断で、踏み込んで跳躍。くるりと空中でバク転しながら着地すると、そこには小さな子供の姿があった。
「こら! 人の前を走っちゃ危ないでしょうが!」
 声をする方を見れば、その子の母親らしき壮年の女性が声を荒げている。
「すまない!」
 一言、走りながらそう謝罪の言葉を返せば。
「そんなことより、あんたはさっさとその犯人? とやらを捕まえな!」
 そんな激励の言葉を残して、母親は子供を担ぎ上げて家らしき方へ戻っていった。
「承知」
 頷きざま、エーレンは更に速度を上げる。


 再度追走を始めたイレギュラーズは、路地の近くまで追い詰めていた。
 機動力の差もあり若干ながら先に進んでいた行人は、再び大きく踏み込むと、勢いのままに突っ込んで行く。
 再度の慣性を抱き、振り抜いた斬撃は袈裟気味にボニフェースの身体を切り裂いた。
「今度こそ逃がさないよ」
 立ち塞がるようにして構えれば、苛立ちを露わにこちらを見てきた。
「このまま大人しく連行されるなら危害は加えない。どうする?」
「邪魔をするな! リサが待ってるんだよ!」
 ヲルトの通告に、ボニフェースが激昂する。
「そうか、では容赦はしない」
 それを受けて、ヲルトは静かに自身の血を散らせてボニフェースへと放つ。
 特異なる血液はボニフェースの身体に付着、その内側へと浸透し、その内側から神経を冒す。
「やぁ! 不死身殺しの下手人さん! 夢か目標かしらないけど不死身を殺せてよかったね! おめでとう。
 それはそれとして不死身を殺したら人殺しで犯罪だから大人しく捕まってね☆」
 続けてたどり着いた繁茂は、開口一番からりと笑って声をかける。
「なんでそれを……ああ、そうか、あんたらはあそこにいたのか!?
 ばれちまってるのか! でもまあいい! リサなら俺の気持ちも分かってくれるはずだからな!」
 正気を失ったボニフェースは絶叫し、魔力を収束させていく。
「もう逃さない。なんでこんな事をしたのか……グランヴィルさんは帰ってこないけれど、罪は、償ってもらう」
 たどり着いたマルクは静かに宣告しながら、魔力を杖の先に集束させた。
 収束していく魔力の量を見て、それが驚異的な魔術であることを理解したのか、眼を見開いたボニフェースが魔方陣を障壁のように構えた。
 叩き込まれる雷撃の如き魔弾が迸り、一直線にボニフェースへと炸裂する。
「く。くそがああ!」
 絶叫するボニフェースの魔方陣が砕け、その身を焼き付ける。

 その時、ウィズィの視線の先にボニフェースの姿が映った。
 既に追撃班との戦いが開始されているようだった。
「見つけた!」
 真っすぐに走るボニフェースに一喝し、そのまま足に付けていたブリンクスターを起動――爆発的な速度で疾走する。
「いっけェェ!!」
 ハーロヴィット片手に肉薄したウィズィにボニフェースがのけ反りを見せる。
「だ、だれだアンタ達! もしかして、アンタらもそいつらの仲間か!?」
「ローレットのウィズィ ニャ ラァム! 罪を犯したのなら、捕まって償いなさい」
 名乗り口上をあげれば、ぎょっとした様子を見せた。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。やったことの始末は付けてもらわねばならんぞ」
 事も無げに返したエーレンに、ボニフェースは忌々し気な視線を向けてくる。
「ちっ……始末だなんだと、そもそも、俺はまだ捕まるわけにゃいかないんだよ!
 俺の花嫁が! リサが待ってるんだ!」
 そう言ったボニフェースはその手に魔方陣を浮かべ、暴風をエーレンとウィズィめがけて叩きつける。
 それを潜り抜けたエーレンは一気に踏み込む。
 空間的な疾走より放たれる慣性が居合と共に斬り上げられ、刻まれていく。
 それらの殆どは障壁に勢いを殺されつつも、強かに敵を削る。
(殺された方も、同じEXFの方だったのでしょうが、動機はなんだったのでしょう。
 被害者との関係由来なのか、あるいはこの方個人の思想か何かが影響しているのか)
「――あるいは、不死性(EXF)に対する恨みや超越願望、実験由来であれば。
 私のことも許せませんか? 私のことも、殺しますか?」
 挑発と共にグリーフは自らの身体を見せるように立ちふさがる。
 しかし、ボニフェースの反応は薄い。
 それだけで、不死性への何らかの思いというわけではないのは分かる。
「逃がすわけにはいかない! ここで捕まってもらうよ!」
 フォルトゥナリアはそれらに続くように戦場へと近づくと、杖を立てて魔術を起こす。
 魔力が集束し美しき輝きを放ちながら周囲に齎されれば、仲間たちの状態異常と魔力を回復させる。
 そのまま空へ杖を掲げれば、鮮やかなる聖別の輝きがボニフェースへと苛烈に瞬きを放つ。
「リサ、リサ、あぁぁ……」
 連撃を受けて疲弊したボニフェースは、その手に魔方陣を抱き、キッとイレギュラーズを見て――それを路地の壁へ叩きつけた。
 直後――暴風が壁を砕き道を作れば、マルクの制止も無視してボニフェースは壁の向こう側へ走り去っていった。


 更なる追走劇の末、イレギュラーズがたどり着いたのは、町外れにある小さな建物だった。
 扉をあけ放たれたその中には、ぽっかりと床に穴が開いている。
 近づいてみれば、そこは明確に『誰かが開いた道』があり、逃走経路の予定だったことが分かる。
 今から追ったとしても、もはや追いつけないだろう。
 イレギュラーズの失敗は明確な作戦ミスだった。
 そもそも、人の少ない大通りを行く相手を追うとはいえ自由に走らせてしまったのは失敗だった。
 それよりはより積極的にボニフェースの注意を引いて足止めした方が良かったのだろう。
 それに加え、いざ戦闘になった時、攻め手より動きを止めることに注力しすぎてしまったところがあった。
「リサってだれ?」
 繁茂はグランヴィルの霊魂に声をかける。
 次の瞬間、繁茂の中にグランヴィルが入ってくる。
 広がる光景は彼視点、彼の眼から見る子供と女性の姿。
 恐らくは妻子なのだろう。となれば、リサとは彼の妻なのだろうか。
 ああ、なんて下らない話か。
 これは『芸』にも『道化』にもなりやしない。
 あの男には、思想もなにもありはしない。
 あれは――グランヴィルの妻への横恋慕から事件を引き起こしたのだ。
 『彼』の人生最後の劇としては、あまりにもありふれた話――つまらない話だった。

成否

失敗

MVP

金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸

状態異常

なし

あとがき

大変おまたせしてしまい申し訳ございませんが、この度は失敗となります。
理由についてはリプレイに記載しております。

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