PandoraPartyProject

シナリオ詳細

カエルと太陽

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●カエルの干上がり
「けろけろ」
「けろろぉ」
 けろけろ、けろけろ、と声が上がる。深緑の森林迷宮。この辺りはどういう訳か非常に暑く、あちこちの草木は萎れ、青々としているはずの葉も、その暑さに次々と落ちていく。
「けろろろぉ」
 先ほどから上がる声は、体長30cmほどの、カエルのような生き物たちがあげる声だった。カエルと言っても、リアルなそれではなく、擬人化したぬいぐるみのような可愛らしさで、二足歩行でぴょこぴょこと歩いている。大きなはっぱをくりぬいて服のようにして着込んでおり、その様子はさながらカエルのような妖精、と言った所だろうか。
 彼らの名を、『レイニー・ロッガ』と言う。恐らく、はるか昔に訪れた旅人(ウォーカー)の末裔か、さもなければ精霊のようなものなのだろう。言葉が通じないという事は、高い知能を有しているわけではないという事だが、犬猫程度の知能は有しているらしく、群れを成して森林迷宮で生活していた。
 さて、ロッガ達は見た通り、性質はカエルに近い。なので、生きるためには水分と適度なひんやりが必要なわけだが、どういう訳か、今年のこの区画は嫌に暑い。そういうわけで、ロッガ達はけろけろ、と悲鳴を上げてているわけである。
「けろけろ……?」
 一匹のロッガが顔をあげる。空がふと曇ったのである――だが、弱まるはずの日差しは弱まらない。むしろ、暑さ、熱、共に強さを増しているように感じられた。
「けろっ!」
 ロッガ達が驚いたようなジェスチャーを見せた。空を見上げれば、目の前にあったのは『太陽』であった――いや、天に輝く本来の太陽は、その太陽よりも高い空に確かに存在する。であるならば、この目の前に浮かぶ灼熱の球体は一体何か――?!
 その正体は不明であったが、おそらく炎の属性の精霊か何かだろうか? なんにしても、近づくまでもなくあたりの灼熱の暑さは、この『太陽』から放たれていることだけは確かだ。つまり、付近の異常気温は、この『太陽』が原因なのだろう。
 ロッガ達が逃げ惑う。それを追うように、或いは無視するように。ゆうゆうと、その巨大な『太陽』は空を泳ぐ。途端、太陽がゆらゆらと蠢いた。するとどうだろう、太陽は膨れ上がると破裂するように分裂して、辺りにいくつもの『太陽』が生まれる。それらの太陽は、またふよふよと漂いながら、少しずつ膨れ上がりはじめた――。

●太陽を堕とせ
「げろげろ、げろげろ」
 何かを訴えかけるようになくロッガを、抱き上げたのは『ぷるぷるぼでぃ』レライム・ミライム・スライマル(p3n000069) である。
「というわけで、お仕事の時間だよ」
 深緑にあるローレットの出張所。足元には数匹のロッガがいてげこげこ鳴いている。
「それは良いんだけどぉ」
 そう言うレライムに、声をあげたのはコルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)だ。
「……なんでアタシがここに呼ばれてるわけぇ?」
「うごけそうなイレギュラーズにコルネリアさんがいたから、なんだけど……嫌だった?」
「嫌って言うか……」
 と、コルネリアは足元を見やる。ロッガ達がコップの水を飲んでいて、げろげろとくつろいでいた。何か非常にメルヘンな光景であり――。
「これ、アタシのイメージからはかけ離れてない?」
「そうかも。でもほら、お仕事だから。出来れば手伝ってあげて?」
 コルネリアは足先でロッガをつんつん突っつきつつ、
「まぁ、話を聞くくらいなら……」
 と頷いた。
「ん。じゃあ、説明するね。
 最近、迷宮森林の方に、以上に炎の属性を取り込んじゃった下級精霊が出現したの。名前を、そうだね、『太陽』ってみんな呼んでる。それ位に、大きくて、暑い。
 『太陽』は積極的に悪事を働いているわけじゃあないんだけど、とにかく傍にいるだけで気温が上がって、草木は枯れちゃうし、動物たちも住めなくなっちゃうの。そのロッガ達も、被害者」
「けろぉ」
 と、ロッガが同情を誘うように見上げてくるので、コルネリアは渋い顔をした。
「えーと? とにかくじゃあ、お仕事としては、その太陽の討伐って事ねぇ?」
「ん。ただ、普通に近づいても、きっと太陽の暑さに、皆参っちゃうと思う。
 そこで、提案。皆には、練達が造った水の放出機を貸し出すから、それを使って水を撃ちだしながら戦って」
 と、レライムが指さしたのは、背中に背負うようなタンクと、そのタンクにとり付けられたホースのようなものだ。
「それから、普通の服だと暑さでやられちゃうから、これを着ていくと良いよ。練達製の、耐熱装備」
「……ねぇ、その耐熱装備、って奴」
 コルネリアが胡散臭そうに尋ねた。
「すごく水着に見えるんだけどぉ?」
「……まぁ、ぶっちゃけるとそう」
 レライムはあっさり認めた。
「ただ、熱への耐性はあるから……つけておいた方がいいと思うよ。つけなくてもいいけど、つけておいた方がいい。絵的にも」
「今絵的にもって言ったわねぇ!?」
「以上、説明終わり」
 ぽん、とレライムは手を叩いて、話を打ち切った。
「といわけで、お仕事、お願いね?」
 そう言うレライムに、コルネリアはうんざりした表情で肩を落とした。足元にはロッガが心配げな表情でコルネリアを見上げていて、コルネリアはその視線に気づいてから、もう一度ため息をついたのだった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 突如現れた異常な熱源精霊『太陽』。
 練達製のポンプを使って水をまきながら、これを討伐しましょう!

●成功条件
 すべての『太陽』の撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 深緑は、森林迷宮に突如出現した異常熱源性精霊『太陽」。その呼び名のごとく、異常な熱を持ったその精霊は、存在するだけで周囲の草木を熱でからし、動物たちを渇かせ、殺してしまいます。
 そんな森林から逃げてきたのは『レイニー・ロッガ』というカエルのような生物たち。彼らの助けを借りつつ、この太陽を撃破しましょう。
 皆さんには、練達製のポンプが貸し出されています。1ターンに一度、このポンプから皆が水を出すことで、太陽のスキル『激熱』を数ターン封じることができます。ロッガ達は、毎ターン一生懸命皆さんのポンプに水を補給してくれますので、水切れなどは考えなくて大丈夫です。
 それから、練達からは耐熱装備も貸与されました。ぶっちゃけ水着なので、着なくても良いですが、着ればなんだか楽しいと思います。自前の水着を着てもOkです。
 真面目に戦いつつ、水着で水をかけ合いながら遊びましょう。暑いので。
 作戦決行時刻は昼。周囲は明るく、森林地帯ですが『太陽』の影響で草木が狩れているため、足元なども歩きやすくなっています。

●エネミーデータ
 異常熱源性精霊『太陽』 ×8
  異常な熱性を持った精霊です。近づくだけで暑い。灼熱の化身。
  基本的に神秘属性の攻撃を仕掛けてきます。また、その攻撃には『火炎系列』のBSが付与されることがあります。また、『防無』を持つ攻撃などにも注意。
  特殊スキルとして、以下のスキルを持ちます。

 『激熱』
  パッシブ。このスキルを持つものがいる限り、周囲に温度が急激に上昇する。
  ターンの最後に『太陽』を除く周囲の存在に、『紅焔』『雷陣』『崩落』『無常』『退化』を判定なしで付与する。
  また、このスキルが発動するたびに、『太陽』の身体が膨らむ……?
  このスキルは、『太陽』に対し、練達製のポンプで水をかけることで、3ターンの間無効化できる。

●味方(?)NPC
 ロッガ ×8
 レイニー・ロッガたちです。戦力にはなりませんが、毎ターン皆さんのポンプに水を供給してくれます。水はなくなりません。
 なお、戦闘ダメージはうまく避けてくれるので、巻き込まれる子をと考慮する必要はありません。

 以上となります。
 それでは、皆様の誤算あkとプレイングをお待ちしております。けろ。

  • カエルと太陽完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
一条 夢心地(p3p008344)
殿
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
ルビー・アールオース(p3p009378)
正義の味方
暁 無黒(p3p009772)
No.696
アルトリウス・モルガン(p3p009981)
金眼黒獅子

リプレイ

●太陽、ぎらぎら
 森林迷宮に足を踏み入れてみれば、確かに異常な暑さがあたりを支配しているように感じた。じりじりと、地面から立ち上るような暑さ。それは、奥に進むにつれて激しさを増し、あちこちの草木も萎れたり枯れたりしているのが見える。
「太陽たぁご大層な名前だが……それに違わねぇ熱さだな、オイ!
 この水着っぽい何かがなければ即死だったぜ……」
 『新たな可能性』アルトリウス・モルガン(p3p009981)が、額の汗をぬぐいつつ言った。水着っぽい何か、つまり依頼のためにローレットが練達から取り寄せた耐熱装備――まぁ見た目は完全に水着なわけだが、とにかくそれ位軽装でなければ、おそらく服に熱がこもり、不快感は今まで以上だっただろう。
 イレギュラーズ達は、水着を着て、背中にタンクとポンプ(これも水鉄砲のようなものだ)を背負った装備で森に来ている。これは、敵である『太陽』と名付けられた異常熱源精霊に対抗するためのものだ。アルトリウスも、シンプルなサーフパンツを履いている。
「しかし暑ぃな。こりゃお前らには辛いだろうよ」
 と、アルトリウスは足元のカエルのような生き物、レイニー・ロッガたちに言った。ロッガたちはケロケロと頷くように鳴いた。
「……耐熱装備、暑さ対策にはいいんだけど、その、ボクの分、変じゃない?」
 と、若干もじもじしながら『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が言った。その格好は、
「なんか、布面積、すっごく小さいって言うか!」
 その言葉通り、布面積の非常にマイクロなビキニだ。なんでこれが自分にだけ? と焔は困惑したが、しかし支給されたものは着なければならない。
「あら、お似合いですわよ。ふふ」
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)はからかうように笑った。
「しかし、この暑さに水着となると、ビーチのバカンスのような気持になってしまいますわね。出来れば水辺で涼みながら、渇いたのどを潤したい所です……ビールとかで」
「びーる、ぱちぱちでしゅわしゅわのお酒ですね」
 『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)が言った。ニルもヴァレーリヤも、もちろん水着だ。ヴァレーリヤは赤を基調にした、この夏新調したばかりのそれで、ニルは白を基調にしたサーフパンツに、コアの露出を防ぐためのストールを撒いている。
「飲んでみたいです。おいしいのかな?」
「ふふー、ニルにはお酒はまだ早いかもですわね? 飲むならソーダ水などがいいと思いますわ! ぱちぱちしゅわしゅわで、とっても冷たいですわよ?」
「わ、ぱちぱちしゅわしゅわ、楽しみです」
 足元のロッガもげこげこと飛び跳ねる。
「ふふ、なんか楽しい依頼だね」
 『正義の味方』ルビー・アールオース(p3p009378)が笑った。ルビーは今年買ったばかりの赤のビキニを着ている。遊ぶ以外に、仕事できることになるとは思わなかったかもしれないが、役に立つならそれでよい。
「元々、カエルさん達と一緒に意地悪な太陽をやっつけよう、なんてファンシーで物語みたいな依頼だとは思ってたけど。
 本当に、こうやってロッガ達と歩いてると、なんだか本当に、おとぎ話みたい。ね、スピネル? 最高じゃない?」
 隣を歩くスピネル・T・ローズへと話しかける。スピネルは、予備のポンプとトランクスタイプの水着を着ながら、
「そうだね。正直いうと、僕も少しわくわくしてる……かな」
 そう言って笑う。
「はいはい、遠足じゃないわよぉ」
 と、『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)が渋い顔で言った。コルネリアも、支給された白の水着に、自前のパーカーを羽織った格好だ。サイズがこう、微妙に合わなかったらしく、色々とこぼれそうらしい。
「しかし、なぁぁんか心がザワつく依頼なのよねぇ。まぁ、やれって言うならやるけれど」
 ダイエットしとけば……などと思いつつ、足元を跳ねるロッガ達に視線をうつす。ロッガ達はコルネリアを気に入ったらしく、足元でぴょんぴょん楽しげに跳ねていた。
「ええい、はしゃぐなカエル! アンタらのための仕事なんだから、ちっとは神妙な顔しないさい!」
 ロッガを一匹捕まえて、その顔をぐにぐにとしてみる。ロッガは楽しいのか、ケロネリァ、と鳴いた。
「なんかアンタいまケロネリアとか言った!? 呼ぶな! 変な呼び方するな!」
「ふむ、ケロネリア、良いではないか」
 と、殿(『殿』一条 夢心地(p3p008344)のことである)がそう言って笑った。殿も、夏なので実にゴージャスな水着を着ていた。
「なんか、こう……しっくりくるというか」
「来ないわよ!」
 コルネリアが吠える。殿はかっかっか、と笑うと、
「しかしこの程度の暑さ、涼しいというものよ。ロッガやケロネリアにはきついかもしれぬが、こう見えても麿、己が居城を百度は炎上させておるからの! 故にこの一条夢心地に生ぬるい炎は通用せぬ!」
「いや、それも誇る事かしら……」
 コルネリアが肩を落とすと、ロッガがケロケロと鳴いて慰めた。
「ええい、慰めんな!」
「コルネリア先輩、すっかり仲良しっすね!」
 にこにこと笑う『No.696』暁 無黒(p3p009772)。無黒も緑を基調としたサーフパンツを履いている。
「不本意ながらね」
 コルネリアが言うのへ、無黒は笑う。
「喧嘩するよりはいいっすよ! それよりほら、太陽のお出ましっすよ!」
 不敵に笑って無黒が構える。仲間達がそれに合わせ身構えると、果たして森の奥より、異常な熱さを持った何かが近づいてくる。同時に、仲間達の足元にいたロッガ達が、怯えたようにその脚の裏に隠れるのが分かった。
「ロッガ様、大丈夫です」
 ニルが優しく笑いかけるのへ、足元のロッガはけろぉ、と鳴いた。果たして森の奥より現れたのは、八体の燃えるような球体だった。
「なるほど、こいつはまさに、太陽だな」
 アルトリウスが言うのへ、
「ええ……それに、事前の情報通り、少しずつ膨らんでいますわね……」
 ヴァレーリヤが頷く。
「確か、すごい熱を出して、分裂しちゃうんだよね?」
 焔が言った。事前の調査では、そのように報告がされている。
「なら、速いとこやっつけないとね! 分裂されちゃったら、こっちの手が足りなくなっちゃうよ!」
 焔が言うのへ、仲間達は頷いた。ゆっくりと水鉄砲を構える。もちろん、遊んでいるわけではない。情報によれば、水をかけて冷ますことで、敵の行動を抑えられるというのだ。
「ふっふー、ポンプを用意してくれてありがとう! これで思いっきり水遊びできますわねっ!
 射撃はあまり得意ではないけれど、接近戦であれば負ける気はしなくてよ!
 ……えっ、趣旨が違う? 少しくらい良いではありませんの。ねえ?」
 そう言って、ロッガを勇気づけるようにヴァレーリヤは笑う。その気持ちを理解したのか、ロッガはケロ、と頷くように鳴いた。
「スピネルも、ロッガも、お手伝いお願いね!」
 ルビーがそう言うのへ、
「うん、精一杯放水するよ!」
 スピネルが水鉄砲を手にして頷く。
「じゃぁ皆さん! 準備は良いっすか!?」
 無黒が言うのへ、仲間達は頷いた。
「さっさと片付けて涼みにいくわよぉ……おら、ケロケロ鳴いてないでついてきなさいロッガ共!」
 コルネリアの号令に、けろけろ! とロッガ達が鳴いた。同時に、こちらを敵と認識したのだろう、太陽たちの熱が上がっていくのを感じる。イレギュラーズ達はそれを感じ取ると、一気に動き出した!

●太陽、さんさん
「先手必勝! 数が増える前にさっさと数減らすっすよ!
 ルビーちん、スピネルさんと一緒に続いてほしいっす!」
「おっけー! スピネル、行こう!」
「ああ!」
 無黒の言葉に、ルビー、そしてスピネルが頷く。真っ先に動き出したのは無黒だ。その素早さを活かして、跳躍。手にした水鉄砲を構えて、
「冷却っす!」
 放つ水が、太陽に降り注ぐ。じゅう、と言う音を立てて、太陽を包む炎の勢いが弱まる。
「効いてるみたい!」
「やるよ、ルビー!」
 ルビーとスピネルが、続いて並んで放水。アーチを描いて飛ぶ水が、太陽たちに降り注ぎ、次々とその熱を低下させていった。残る仲間達も、それに倣って放水を始める。
「やるじゃない! ほら、ロッガ共! 仕事よ仕事!」
 コルネリアが声をあげるのへ、ロッガ達がぴょんぴょんと飛び跳ねた。どこからともなくバケツに水を汲んで持ってくると、イレギュラーズ達の背中のタンクを開けて水を補充する。
「ありがと、ロッガ!」
 焔が笑って言う。
「さぁて、威力は落ちても炎は炎。だけど、ボクにはお父様の加護もあるからね! 君達なんかには負けないよ!」
 焔は太陽たちの前へと立ちはだかる。太陽たちの熱を帯びた魔力の塊が焔へと迫るが、焔は器用に飛び跳ねて避けて見せる。
「ふふん、言ったでしょ、ボクに炎は通用しない……あれ? じゃあボク、耐熱装備なんて必要なかったんじゃ……?」
 空中でくるり、と身をよじりながら困惑しつつ着地。
「郷に入ってはなんとやら、ですわよ、焔!」
 そう言いつつ、ヴァレーリヤが炎を纏ったメイスを掲げ、突撃を敢行する! 炎と炎、その激しいぶつかり合いの果てに、一つの太陽は耐え切れずにはじけ、ぼん、と音を立てて破裂した。
「それにせっかくの機会ですもの! 水着も着なきゃ損ですわよ!」
 反撃に別の太陽から放たれた炎を、炎を纏ったメイスで打ち落としながら、ヴァレーリヤは笑う。
「確かにそうなんだけど……でも、流石にこの格好は恥ずかしいよ!」
 焔が顔を赤らめた。何度も言うように、焔に用意されたのはマイクロなビキニである。
「心頭滅却すれば火もまた涼し! 心頭滅却すればマイクロビキニもまた恥ずかしくなし、じゃ!」
 と、夢心地が殿らしい水着を着て仰る。殿は華麗に水鉄砲を駆使しながら、太陽を的確に弱らせていく。
「やるじゃねぇか、やっぱり殿ってのは、弓術とかの練習とかもすんのか?」
 アルトリウスが、太陽からの攻撃を受け止めながら、笑う。夢心地は、ほほほ、と笑うと、
「こんなこともあろうと、カエルTシャツを着て練習したのよ。
 それに、ウォータガンの命中度は技量や経験によって高まるものではない……。
 おなごをびちゃびちゃにしてやんぞ、という熱き想いが弾丸となるのじゃ!
 太陽を太陽と思うな……アレをぺぇぺぇと思って撃つ! さすれば当たる! 間違いなく!」
 すごく堂々とそう言い放つので、アルトリウスは思わず目を丸くして、
「お、おう……そうか……」
 と声を掠れさせる。一方、放たれた太陽の炎を、アルトリウスはその身体で受け止めて見せた。
「ダァッチィ! くそっ、すまん回復くれ! ニル!」
「おまかせ、なのです!」
 ニルが祈るように跪くと、その背に天使のように羽が出現する。その羽は光となって天に昇り、アルトリウスの身体へ向けて降り注いで祝福をもたらす。
「それから、お水もかけてあげますね」
 出力を絞って、水鉄砲をアルトリウスへと向けるニル。ばしゃばしゃとアルトリウスはその水を被って、笑った。
「おう、生き返ったぜ! 助かる!」
「はい! ロッガ様、おみずのほじゅうをお願いします!」
 ニルの言葉に、ロッガがバケツを持ってタンクに水を注ぎこむ。けろけろ! とロッガは応援するようにニルに鳴いたから、ニルはにっこり笑って頷いた。
「はい、がんばりましょうね!」
「いいペースよ! このまま数を減らせば勝てるわ!」
 コルネリアが叫び、巨大なガトリング砲を太陽たちへと向けた。同時に、発射! 銃弾が太陽たちを撃ち貫いた。耐え切れなかった太陽が一つ、ぽん、と音を立てて消滅する!
「こいつには火炎放射器もついてるけど、今回はなしね! これ以上暑くしちゃたまったもんじゃないわ!
 おら、無黒! ルビー! あんたら走り回って敵をかき集めて! まとめてぶっ飛ばすわよ!」
「了解っす!」
「おっけー! スピネルは放水に専念して!」
 無黒が頷き、ルビーが声をあげる。
「ヒィィィ! 忙しいっすよおおおお!!!
 ……なぁんて……。
 手数で俺を凌駕しようなんざ! 多分? 百万年位早いっすよおおお!!」
 無黒が手を突き出す。指先から放たれた茨の鞭が、炎に耐えながらも太陽を縛り上げ、地にたたきつける!
「カルミーナ、いくよ!」
 足を止めた太陽へ、ルビーの攻撃が迫る。大上段から両手剣の一撃。振り下ろしきった瞬間にカルミーナを変形、大鎌での薙ぎ払う二撃目! ツインストライクが太陽を切り裂き、じゅう、と音を立てて消滅させた!
「とと、やり過ぎた?」
 が、ルビー目がけて複数の太陽が攻撃を始める。ルビーは跳躍、空中で身を翻して回避すると、
「でも結果オーライ!」
 ニッと笑う。
「焔! 俺達で残りの敵を止めるぞ!」
「おっけー! ボクたちに炎は通じない、よっ!」
 アルトリウスと焔が、残る敵を引き付けた。さく裂する炎は、しかし二人の肌を焼くことすら能わない。
「ニル、押し込めますわよ! 夢心地はなんか昔を懐かしんでないで攻撃なさいな!」
「む……済まぬのう! この暑さ、実は57回目の白の炎上の暑さに似ておって……」
「すごいです。でも、今はたたかうのですよ」
 ヴァレーリヤの言葉に、夢心地とニルが動いた。ニルが両手を掲げると、黒の魔球があられて、生命を吸い取る魔力の蔦を伸ばし、太陽の生命力を奪い取る。
「なら魅せよう、東村山! この件の冴え渡り――!」
 夢心地が、これまでからは想像もできぬような早業で斬撃を繰り出す。ニルに生命力を吸い取られた太陽は、夢心地に斬り捨てられ、ぼん、と消滅。
「毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に――」
 聖句を唱えながら、ヴァレーリヤがメイスを突き出す。途端、討ち放たれた衝撃波が、太陽を打ちのめした。太陽はその衝撃に動きを鈍らせ、
「今ですわよ、コルネリア!」
「任せなっ!」
 コルネリアが跳躍、上空でガトリング砲を構え、
「恵みの雨って奴よ! 銃弾で水浴びして、あの世でねんねしなさいな!」
 引き金を引く! 上空からまさに驟雨のごとく降り注ぐ銃弾が、太陽たちの身体を削り取っていく。太陽たちは次々と消滅していき、コルネリアが地上へと降り立った時には、地上の太陽はその姿をまったく消し去っていたのであった。

●虹が、きらきら
「終わったぁ……!」
 焔がふぅ、と息を吐いてしりもちをついた。
「……太陽はやっつけました。でも、枯れた草木が元に戻るわけじゃない、ですよね……」
 ニルが少しだけ、しょんぼりとしながら言った。その熱で、多くの草木がやられてしまった。ニルが保護結界を展開していたから、戦闘での余波は影響なかったけれど、それ以前のものでのダメージは、決して少なくはない。ロッガたちが、心配げにニルを見上げて、ケロケロと鳴いた。
「うん。辛いのは、ロッガ様たちですよね……何とか、してあげたいですけれど……」
 そう呟くニルへ、ヴァレーリヤがゆっくりと近づいていく。
「ねぇ、ニル?」
 それから、笑って、水鉄砲を向けた。えいっ、と引き金を引くと、大量の水が、ニルを濡らした。
「わぷっ、え、ええっ!? な、なにするんですか!?」
 ニルが目を白黒させるのへ、ヴァレーリヤが笑う。
「ふふん、油断している方が悪いのではなくて?
 悔しかったら、反撃してみなさいな!」
「も、もう! ニルだって怒るんですよ!」
 と、ニルが水鉄砲を構えて撃つのへ、ヴァレーリヤはひょい、と避けて見せた。その先には座って休んでいた焔がいて、
「わぁっ! や、やったね!?」
 と、焔がびっくりした様子を見せて、でもすぐに笑って水鉄砲を放水する。
「いいわね、アンタたち!
 よし! 水かけじゃーー! 暑くてやってらんないのだわ!
 無黒ーーー! おら! 濡れろ濡れろ! 太陽の熱さにへばるんじゃないわよぉ!」
「うわっ、コルネリア先輩! いきなりは卑怯っすよ!」
 水をかけられて逃げ惑う無黒が、でたらめに水鉄砲を討ち放つと、ルビーに飛沫がかかって、その冷たさに心地よく笑う。
「ふふ、私達も遊ぼっか!」
 ルビーは笑って、スピネルに水鉄砲の水をかける。スピネルはびっくりした様子で頭を振ると、
「やったな、ルビー!」
 笑って水鉄砲の水をかけ返す。果たして、先ほどまでとは打って変わって、あちこちで水鉄砲の水が飛び交い、あちこちを濡らして回った。
「はっはっは! ホースの撃ち合いか? いいぜ、相手になってやる!
 おら、ロッガよ! お前ら水はこべ! もう一戦やるぞ!」
 笑うアルトリウスに、ロッガ達はケロケロと鳴いて、水を汲んで走り回る。その内、ロッガ達もバケツで直接皆に水をかけるようになって、笑い声と水音が、森に響いていた。
「ほっほっほ、やるのぅ、ケロネリア! 尻は貰ったぞ!」
 夢心地が水鉄砲をコルネリアの尻に向けるのへ、
「止めろバカ殿! おら、ニル! 反撃! バカ殿を迎撃すんのよ!」
「は、はい!」
 と、ニルが水鉄砲を討つ。夢心地は顔面に水を受け止めて、ぬわー、と派手に転んでみせる。
「ねぇニル。失っちゃった自然は確かに戻んないけど。でも、ロッガ達も、この森も大丈夫よ。笑ってんでしょ、あいつらも」
 コルネリアが言うのへ、ニルは頷いて、微笑んだ。
「……そう、ですね!」
「ほらロッガ共! 集合! 空を視なさい、空を!」
 そう言って、コルネリアは上空へと向けて、水鉄砲を放つ。空に水のアーチが描かれて、やがて綺麗な虹を生み出した。虹の橋は手の届くくらいの所で輝いて、ロッガ達がぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「虹が見えるかしら?
 今度はあんなのに負けないように鍛えときなさい、肉食え肉を」
 そう言って、コルネリアが笑う。
「あー! そうだ、クーラーボックスにお酒とジュース入れて持ってきたんすよ! 飲みましょう! みんな!」
「マジですの!? ちょうど喉が渇いていましたわ!」
「そうだね、流石にへとへと……ほら、スピネルも、飲もう!」
「はは、戦った後の一杯は格別だろうな!」
 いつしか宴会のようになっていたが、しかしここにある笑顔こそが、この森の未来を映すものなのかもしれない。
 ロッガ達はケロケロと歌って、激闘に打ち勝ったイレギュラーズ達を祝福していた。

成否

成功

MVP

ニル(p3p009185)
願い紡ぎ

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 太陽は天へと還り、今はロッガたちの合唱が、森に響いています。

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