PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Lost page's>七色かけるほ【し】ぞらは

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●吸血鬼、日向に咲く
 僕の家は大陸の東側、山に囲まれた平凡で小さな村にある。
 だけどこの村は、ひとつだけ秘密を抱えているんだ。

「今年も大輪だね!」
「えぇ、おかげさまで」

 地平を覆い尽くすような黄色。月光を受けながら、ざわざわと大輪を揺らす向日葵たち。
 毎年、この立派な向日葵畑をつくっているのは、僕の目の前に立っているエルドというお兄さん。
 ぱっと見、のほほんとしているけれど、実はこれでも吸血鬼。土いじりと読書が趣味で、争いも人を傷つける事も好まない。
 吸血鬼と人間のいざこざが多い『グラン=ヴァンペール』の中では例外中の例外である。

「エルドは、どうして向日葵畑なんか作ろうって思ったの?」
「私たち吸血鬼は、陽の光にさえ見放された怪物だ。どんなに望んでも、太陽の下に出ていく事は叶わない。
 けれど彼等は私の代わりに、いつでも光のある方を向いてーー元気を分けてくれるから」

 僕はその時、はじめて向日葵が太陽の方を向くという事を知った。エルドはとっても物知りで、今までもいろんな事を教えてくれた。
 植物が喜ぶ肥料の作り方に、森でさえずる小鳥の声の聞き分け方。特異運命座標っていう、異世界から来たお友達――

「本当に博識なんだね。まるで、何でも知ってる神様みたいだ!」
「そうでもないよ。吸血鬼はコリンが思っているほど万能じゃない。君達が知っていて、私が一生知り得ない事もある」
「うっそだー! そんなの絶対ないって!」

 ゆっくりと首を振り、どこか寂しげに笑うエルド。

「吸血鬼は陽の光に見放された生き物。だから見たことがないんです……空にかかると言われている七色の橋を」

●危険な輝き
「行方不明になった子供を探して欲しい。コリン=エバンズという田舎村の村人だ」

『境界案内人』神郷 黄沙羅(しんごう きさら)は常々疑問に思っている事がある。境界案内人と特異運命座標の活躍によって救われた世界が、
 果たしてそのまま綻ばず、ハッピーエンドでいられるのだろうか。
 好奇心から手にした本は、かつて同僚の赤斗が特異運命座標と共に、完結させたはずの物だった。
 まさか偵察に行ってすぐ、雀の涙ほどしか魔力のない貧弱吸血鬼に助けを求められるとは思わなかったが。

「どうやらコリンは、虹を探しに出かけたらしい。彼の家を調べさせてもらった時に、大量の虹にまつわる本が出てきた。
 特に熱心に調べていたのは『虹鉱石』という、この異世界ならではの珍しい鉱石だ。砕いた瞬間、鉱石の粒が乱反射してその場に大きな虹を現すらしい」

 虹鉱石の採掘場は村からそれほど遠く離れていない廃止された炭鉱の奥にある。使われなくなったのは魔物が炭鉱に住み着いたせいで、今も危険区域として立ち入りを禁じられているようだ。

「なぜ危険をおかしてまでコリンが石を求めているのかは知らないけれど、乗りかかった船だからね。頼まれてくれるかい?」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 向日葵の咲く季節になると、この吸血鬼を思い出します。

●目標
 コリン=エバンズの保護

●場所
 異世界『グラン=ヴァンペール』
  混沌の幻想によく似た景観の平凡な世界。吸血鬼や狼男、おとぎ話の怪物が人間に混じって暮らしています。
  捜索・戦闘中のロケーションは廃止となった炭鉱です。洞窟の中は薄暗く、何かしらの対策があった方がよいでしょう。
  通路自体はそこまで狭くはないため、ペナルティはありません。

  コリンを探すにあたり、スキルやギフトなどで工夫を行えば、捜索が有利になります。

●エネミー
 輝き蝙蝠
  硝子のような蝙蝠の羽をもつモンスター。洞窟のあちこちに生息し、誰かが近づくとバサバサ大きく羽音を立てて威嚇しながら、不吉を伴う音波攻撃をしてきます。

 クリアクラゲ
  採掘場に住み着いてしまった大型のクラゲ。【飛行】ほどの高さではありませんが、ふよふよと空を浮遊しています。
  職種に絡まれると痺れてしまうかも……?


●登場人物
 コリン=エバンズ
  村生まれ村育ち、典型的な村人の少年。大きな麦わら帽子がトレードマークの赤髪の少年です。
  外の世界に興味があり、いろんな事を知っているエルドになついています。鉱石を掘るためにピッケルを持っていますが、戦闘力はほぼありません。

 吸血鬼エルド
  黒髪の外見年齢20代半ばくらいの線の細い男性。土いじりと読書が趣味。
  争いも人を傷つける事も好まず、村のはずれのお屋敷でひっそりと暮らしています。長い間血を摂取しておらず、魔力は雀の涙。非戦闘員です。
  今回は特異運命座標に救出を任せ、自分の屋敷でコリンの帰りをまっています。

『境界案内人』神郷 黄沙羅(しんごう きさら)
  今回の依頼をもってきた、男装の境界案内人。炭鉱にも足手まといにならないように同行し、呼び出されれば備品の用意など、戦闘以外でのサポートを行います。
  

●その他
 この物語はLN『吸血鬼、日向に咲く』の後日談となりますが、以前参加した方でなくても問題なく楽しめます。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3182

 説明は以上となります。それでは、よい旅路を!

  • <Lost page's>七色かけるほ【し】ぞらは完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月20日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
ヒナゲシ・リッチモンド(p3p008245)
嗤う陽気な殺戮デュラハン
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

リプレイ


「廃坑には死者の霊がつきものだ。死者が『昇天する』『天に召される』世界でも、大抵は地下深くは死者の領域なんだ。面白いだろう?」
『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)の説明に一同は深く納得した。というのも、同行者の一人と一頭のテンションがハチャメチャに高くなったからだ。
「HAHAHAHA! エルド君の頼みとあらば即惨状!デュラハン勇者のヒナゲシ・リッチモンドだZE!
 タントちゃんと睦月ちゃんはお久ぁ~! アーマデル君は夜露死苦ゥ!」
『嗤う陽気な殺戮デュラハン』ヒナゲシ・リッチモンド(p3p008245)の声に呼応し、愛馬のセキトも高く嘶く。ただでさえ目立つパーティーだが、更に目立つ点がもうひとつ。

「コリン様! その場を動かないでくださいましーー!
 この!わたくし!」
 パチンと軽やかに鳴る指先。派手に翻るスカート。

  \きらめけ!/
  \ぼくらの!/
\\\タント様!///
「‪──‬が!助けに参りますわよーー!!」

 渾身のブラボーガンホーレインボーポーズをビシィッ!! とキメて『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)は満足げに肩にかかった髪をはらう。
「ふむっ、これで聞こえましたかしら!」
 こうして派手に目立つのもパーティーの作戦だ。
「廃坑の魔物達が集まって来ています。これだけ騒ぎ立てれば、コリンさんに迫る魔の手をこちらに引きつけられそうですね」
 感情探知で辺りを探る『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は真剣だ。コリンがこのまま行方不明になってしまえば、エルドも責任を問われかねない。きっかけは小さな事だが、放っておけば以前の様に、人と吸血鬼の溝が深まる危険もあるのだ。
 もっと目立つ策はないかと考え込んだアーマデルが、思い出した様に目元の布を指で押さえる。
「灯りが見えた方が捜索対象も気付き易いかもしれない。俺は目隠し布の暗視で補えるが、光源を用意したらどうだろう」
「余裕でしてよ。坑道の暗さなどこのわたくしの手にかかれば……ちょあっ!」

 カッ!!

 自信あり気に仁王立ちしたタントの額が突然ぺかーっと輝き出す!

「これが私流の発光でしてよ。さあ! ゆきまーー」
「GYAAA! 目が!目がっなんだZE!!」
「あぁっ、ヒナゲシ様ー!?」
 暗闇に目が慣れていたせいだろう。ヒナゲシが悶絶する。その声に呼応するかの様に魔物達が四人へ襲いかかって来た!
「『輝き蝙蝠』が複数、といったところですね。とても怒っている様です」
「まあ、こんなに眩しくされたら……」
 バサバサと羽音を立てて威嚇しだした蝙蝠に身構える睦月とアーマデル。するとその身に不思議な力が注ぎ込まれる。温かな金色の輝きと心地の良い甘やかな香りは陽の光と共に在る様な。
「それはあまねく地上を照らす希望――太陽の系譜。回復は任せてくださいまし!」
 蝙蝠の音波でうけた傷がみるみるうちに塞がっていく。タントの助力を受けていつも以上に勢いを増したヒナゲシは、魔剣アースエンドを振りかざして蝙蝠へと切りかかった。
「先手必勝!」
 たかが通常攻撃と侮るなかれ。この剣の一振りは呪殺や喪失、あらゆる負の力を帯びている。斬り払われた蝙蝠が断末魔と共に鮮血を散らして墜落すると、彼女はきゃらきゃら無邪気に笑った。
「あはっ☆ 前回みたく不殺の必要がないから必殺だZE!」
 あまりの迫力に恐怖を感じ、キィキィ弱気な声で鳴きはじめる蝙蝠達。
(あたり一面、恐怖の感情でいっぱいになりましたね。これ全部、蝙蝠さんかな……あれ?)
 戦闘の合間に『感情探知』を繰り返していた睦月が、目を見開いた。
「遠くにひとつだけ、別の反応があります!」

――倒さなきゃ、でもどうやって?

「本当ですの睦月様! きっとコリン様に違いありませんわ!」
「んでもってピンチに違いないんだZE!」
「彼女に先行させながら向かおう」
 アーマデルの声に応じ、辺りを警戒していた酒蔵の聖女が降りて来る。
「この気配、ご同類なんだZE?」
「ヒナゲシ殿には分かるか。彼女は霊魂だが、訳あって俺の手伝いをしている」
「宜しくっすわァ。先行するのは構いませんが、随分とこの先、道の分岐が多くて複雑っすわよ?」
「僕の『感情探知』はある程度、対象の方角が分かりますが、道までは……」
 俯きかけた睦月に、手を差し伸べるアーマデル。
「構わない。俺も『神威六神通』で聞き耳が立てられる」
 行こう、助けを求める声の方へ。
 情報を寄り合わせ、導き出された答えが新たな道を切り開き――

「コリン様ーー!」
「ッ!?」

 やがて、一行がたどり着いたのは坑道の奥深く。採掘現場であろうその場所は剥き出しの鉱石が煌めく広い空間になっていた。
 その中央で座り込んだ少年を囲む様に、ふわふわと悪戯に揺蕩うクリアクラゲ。まずは包囲を崩そうとヒナゲシが愛馬と突っ込んで行く。

「うなれ必殺・セキトアタッーーク!」
 巻き起こる暴風、斬撃。ヒナゲシの一撃にタントがまぁと口元へ手を当てる。
「あれがヒナゲシ様のアクセスファンタズム!?」
「いや、どう見てもソニックエッジだったぞ今のは」
 アーマデルの冷静な分析にヒナゲシはてへぺろ☆ しつつもガンガン攻めていく。
「ひゃー、いくらスキル使ってもバテない! 超きもちイイんだZEー!」
「わたくしの支援にかかれば、体力も気力も! 痺れだって治りますのよ!
 ダメージは気にせずガンッガンぶちかましてくださいましー!」
 暗き地にも光あれ。タントの輝きがあまねく地上を照らし、癒しと共に奮い立たせる。
 攻め込まれ慌てるクラゲの一匹がコリンへと触手を伸ばし――その魔の手から睦月が庇いの姿勢をとった。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
「はい。こう見えて僕達、結構つよいんですよ」
 睦月の手に指輪が煌めく。刹那、ヒュキィン! と甲高い音が響くと共に、迫っていたクラゲが動きを止めた。ピューピルシールで封じられた魔物は、その場にへなりと落下する。
「包囲は抜けましたわ、このまま逃げますわよ!」
「待ってお姉ちゃん達! あのクラゲ……僕の大切な物をとっちゃったんだ!」
 コリンが指差した最後の一匹。ふわふわ揺れるクラゲの触手の束の中に、キラリと光る石のような物が覗いている。
「俺もお姉ちゃんカウントなのは解ぜないが、倒すなら徹底的だ。造円を引き連れてくると困るからな」
 冷静なアーマデルの声に反応し、迫り来る触手。しかし魔手が届く前に空間へヒビが入り鏡のように砕けて割れる。ナイトメアミラージューー暗き悪夢が敵を包む。
「終わりだ」
 クラゲの死角に現れたアーマデルが蛇銃剣を構え、放たれる一撃。それは特異運命座標の勝利を決定づける事となった。


「俺、エルドに虹を見せてあげたいと思ったんだ。それで調べたら、この洞窟に虹を見せられる鉱石があるって聞いて……」
「だからって心配を掛けてはいけないZE! 少年!エルド君も本当に心配してたからね!」
「ごめんなさい」
 心配をかけた自覚があるのか、コリンは素直に謝った。睦月はクラゲが落とした虹鉱石を拾い上げ、しゅんと俯く彼の手に虹鉱石を握らせる。
「後でエルドさん達にもごめんなさいを言った方がいいですよ。それにしても、貴方が無事でよかったです」
「そうそう! それに……虹を見せようと。その勇気は認めるよ、君はいい男になるね!デュラハン勇者のボクが保証しよう!」
 ヒナゲシがニッと笑えば、涙目のままコリンもつられて笑う。彼が元気を取り戻した事を確認すると、アーマデルは身を翻した。
「『これだ』と思う石と『縁を繋ぐ』事が出来たんだ。後の警備は任せろ。……危険を冒しても何かを為したい誰かの事を大事にするがいい」

 それから一行は黄沙羅の助言を受けエルドの家へと向かった。コリンの父親が心配し、彼の家に合流していると聞いたのだ。
 辺りはすっかり日が落ち、屋敷の玄関の前では男2人が待っていた。
「エルド様ーー! 久方ぶりですわ!無事に保護致しまし……なぜ身構えてますの?」
「ごめん、前回すごい光量だったからつい」
 タントにきょとんとされて、エルドは穏やかに笑った。相変わらず虫も殺さなそうな優男の吸血鬼だ。
「また助けに来てくれたんだね。君の笑顔は向日葵みたいで、とっても頼もしいよ」
「お困りでしたらばいつでもお呼び下さいまし!
 この陽光(わたくし)は決してエルド様を見放しませんわー!」

「息子を助けて戴きありがとうございます。本当に――げぇっ!」
 胸を張るタントにお礼を言いかけて、コリンの父親が硬直する。その顔をヒナゲシはよーく知っていた。
「吸血鬼ハンターのウルド君じゃないか! 君が父親なんて意外だZE!」
「あ、あれから更生したんだよ。お前が怖かったからな!」

 懐かしさに話の花が咲く中、睦月にそっと背中を押されてコリンがおずおずとエルドの前に出る。
「心配かけてごめんなさい。実はエルドにどうしても見せたい物があって……」
 取り出したのは一見、何の変哲もない石ころ。それをコリンがピッケルで叩いて割ると、コーンと不思議な音が響いて辺りに光が広がった。
「……ほわぁ!これはこれは……!」
「プリズムに白色光を当てれば七色の光になるが……求めているのはそういう物ではなかったんだな」
 タントが息をのみ、アーマデルの口元が緩む。夜の空に煌めく七色の虹は時を忘れるほど美しく、その場にいる人々を祝福する様だった。

 仲間が帰路につく中、ヒナゲシが黄沙羅に呼び止められる。振り向いた彼女の手元に、握らされる一輪の向日葵。
「ここに来てから、時々ひまわり畑を気にしていただろう? エルドに頼んで一輪貰っ……何だ?」
 馬上にぐいと引き上げられ、戸惑う黄沙羅。その身体をぎゅっとハグして、ヒナゲシは向日葵のように微笑んだ。
「これで家族にも見せられるZE! ありがとう!」

成否

成功

状態異常

なし

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