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シナリオ詳細

嵐に巻き込まれた一人影

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●嵐に巻き込まれた一人影
 R.O.Oの世界に広がる様々なネクスト。
 そんなネクストが一つ……サンドストームと呼ばれるこの世界に広がるのは一面の砂漠であり、夏の日射しが照りつける中においては……人々は暑さに耐えながら生活している。
 勿論そんな砂漠地帯故に、娯楽など殆ど無い。
 でも人々は楽しめるものを求めており……時折まことしやかに囁かれるのは、近くの遺跡に秘宝が眠っている……という話。
「あの地下遺跡にはよ、地下に秘宝が眠っているって話しだぜ? でもよ、今迄に何人もその宝を求めて遺跡に向かったんだが、誰一人として帰ってきてねえんだ……恐ろしいよなぁ!」
 と笑いながら、酒を浴びる。
 勿論、そんな話……話半分程度で聞いている村人達が多い。
 しかし……ここに訪れた冒険者然の格好をした男が。
『ほぅ……それは面白そうだな。なぁ、ちょっとその話し、詳しく聞かせて貰っても良いか?』
 と身を乗り出して、その遺跡の場所を聞き出していく。
 ……勿論その遺跡が本当かどうかは分からない。
 でも……彼はこのR.O.Oの世界に舞い降りた、テストプレイヤー。
 希望ヶ浜学園でも友人と共にMMORPGをやっているから、その延長線上だし、新しく始まるゲームだからこそ、先に体験しておきたい……という事もあったからこそ、そんな村の人の話も真面目に聞いていく。
 ……でも、しかし……その噂話が真実であったとしたら……。
『……うわぁあ、マジかよ! こんなの……死ぬ、死んじまう……!』
 と……遺跡に潜り込んだ彼は……その苦難に巻き込まれてしまうのであった。


「……あ、イレギュラーズの皆さん、ちょとお話……聞いて頂けないでしょうか?」
 と『深森の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)は、ローレットを訪れる君達におずおずと声を掛けてくる。
 ……そんな彼女の言葉に頷いてくれた人達へ、君達が声を掛けてくれると、嬉しそうに微笑みながら。
「本当、いつもありがとうございます……その、また皆さんに、『R.O.O』に閉じ込められた方の救出を御願いしたいのです……」
 ぺこりと頭を下げる彼女……続けて彼女から。
「今回なのですが……希望ヶ浜の学生さんなのですが、こういったゲームにとても興味を持った高校生の方みたいです……興味があるからこそ、色んなクエストに積極的に参加しているようで、かなりアクティブなテストプレイヤー……と言った感じだと思います」
「ですが……そんなクエストも、全部が全部安全な訳がありません……どうも、胸騒ぎがするのです……」
「彼がログインしたのは『砂嵐』と呼ばれるネクスト……色んな地下遺跡があり、その地下遺跡の中には秘宝が眠る……と言われて居る様です。ですが……そんな秘宝が眠る遺跡が安全、な訳もありません……」
「この胸騒ぎが正しいとすれば……彼は砂嵐の遺跡で困難に巻き込まれてしまうかもしれません……詳細は良く分からないのですが、皆さんで砂嵐にログインして、彼を追いかけて欲しいのです」
 そこまで言うと、最後にルリアは。
「……本当、私あらはいつも御願いばかりで……本当に申し訳ありません。でも……皆さんに御願いするしかないのです……宜しくお願いします……」
 本当に申し訳なさそうに、ルリアは頭を下げるのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
 今回のR.O.Oの救出対象は、R.O.Oの世界の様なゲームが大好きなゲーマーな高校生の救出依頼です。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
  特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●成功条件
 希望が浜の男子高校生『翔』さんを救出する事です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●周りの状況
 今回舞台となるのは、大量の罠が張り巡らされた地下迷宮です。
 お宝がある、と噂されてますが、実際にはお宝などありません。
 ですが、噂話を完全に信じ込んでいる彼は、遺跡の最奥地に行くまで諦めない事でしょう。
 
 張り巡らされた罠は、前から大きな岩が転がってくる(轢かれれば当然ぺちゃんこ)、
 猛毒が塗り込まれた弓矢が前後左右から飛び出してくる、の二つ。
 又、最後の『まことしやかに』あしらわれた部屋の入口には、20匹のガーゴイルの石像が並んでおり、
 ドアを開けると一斉にそのガーゴイルの石像が具体化し、襲い掛かってきます。

 ガーゴイルの詳細については『討伐目標』を確認為て下さい。
 
 又今回ログイン位置は遠くになるので、一度死ぬと戦闘中に復帰は出来ませんので、ご注意下さい。

●討伐目標
・扉を守る『意思持つガーゴイル』 x 20匹
  ガーゴイルは扉に手を触れた瞬間具現化し、次々と襲い掛かってきます。
  お互いに声もなく意思を疎通出来る能力を持っており、具現化しなければダメージを一切与える事は出来ません。
  当然翼を持ち、辺りを飛び回りながら中距離から炎のブレスと、鋭い爪で攻撃をしてきます。
  この攻撃の直撃を受ければ、『翔』は数発で死ぬでしょうから、彼の防衛も御願いします。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 嵐に巻き込まれた一人影完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

梨尾(p3x000561)
不転の境界
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
アレキサンドライト(p3x004247)
リア充ボマー
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
きうりん(p3x008356)
雑草魂
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
星芒玉兎(p3x009838)
月光

リプレイ

●遺跡探索
 多種多様に広がるR.O.Oのネクスト。
 そのネクストの一つ、サンドストームと呼ばれし、広大な砂漠が広がりし世界……。
 そのような地域においては、娯楽とも呼べる物は殆ど無い。
 だが、血気盛んな者達が楽しむのは……この地に点在する遺跡探索と、その中に眠ると言われる財宝集め。
 ……しかし、今回そんな遺跡探索の話を聞いたのは希望ヶ浜よりR.O.Oのテストプレイヤーとしてログインしている、ただの学生である『翔』。
 前々からMMORPGという物に興味を持って居た彼は、新しいゲームのテストプレイヤーを募集していると聞いて、すぐさま応募……そしてガッツリ真剣にテストプレイを進めていた。
「……まぁ確かにMMORPG、しかもVRで遺跡探索と言われればワクワクしますよね」
 と、『ただの』梨尾(p3x000561)が呟くと、それに『爆弾魔』アレキサンドライト(p3x004247)と『開墾魂!』きうりん(p3x008356)と、いつもと違う雰囲気な『8月中は公約たぬき期間』Teth=Steiner(p3x002831)が。
「ええ。地下に眠る秘宝……聞いただけでもワクワクしますね! 滅茶苦茶強い装備とかあるんでしょうか?」
「どうだろーね! でも地下迷宮はあれだよね! ロマンだよね! よくわかんないけど!!」
「……うーん、既に何人も立ち入っているのなら、ここにもうお宝は無いと思います……」
「そうだぽん。誰一人として帰ってこない、秘宝が眠る遺跡。そんな所にロマンを感じる気持ち、自分も良く分かるぽん。勿論死んだら元も子もないが、ぽん」
 そんな梨尾、アレキサンドライト、きうりん、Tethの会話に、『殉教者』九重ツルギ(p3x007105)は。
「確かに、噂の渦中にあるダンジョン等というものは、たいていの場合は攻略された後になっているものです。翔さんにとっても、現実の厳しさを学ぶいい機会になるでしょう」
 ばっさり切り捨てる彼。
 ……とは言え、そんなテストプレイヤーである彼を襲うは、容赦無く死を与える罠やら、牙を剥く魔物達。
 イレギュラーズ達は死して、死の痛みを覚えはするものの、再ログインし、この世界にリポップする事は出来る。
 ……だが、現状希望ヶ浜の学生や、R.O.Oの技術者達がこの世界に囚われ、死亡した場合どうなるかは……良く分かっていない部分もある。
「わたくし達にとっては、R.O.Oでの死は現実に何の影響もおよぼさない……というのが原則ですけれど、胸騒ぎがする……という事ですし。そういった直感は大切にした方が良いですわね。外れていたら、その時は『なんでもなかった』と笑えば良いのですから」
 と『月光』星芒玉兎(p3x009838)が頷くと、それに『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)と『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)が。
「そうだね。彼にとってこれはゲームだから、という気持ちは分からなくもないが……私たちと翔さんでは事情が違うのだよね……」
「ええ。彼にとってこれは、ただの遊びかもしれませんが、私たちにとってはこれは仕事……掛ける思いも、覚悟も違いますから」
「……確かにそう言えるかもね。彼は命の危険が迫っているだなんて知らないだろうし、一刻も早く見つけ出して、その身を守ってあげないとね」
 と言うと、ツルギは。
「兎に角、命まで取られぬよう、救い出して差し上げなければ……ですね」
 表層にある、希望ヶ浜学園で教鞭を執っているという経験からか、希望ヶ浜の学生である彼に向ける厳しい面もあれば、優しい面を垣間見せる。
 そして、梨尾ときうりんも。
「そうだね。子供の夢が壊れるのは悲しいですし……万が一、最深部に隠し扉があったりするかもしれませんし、ね……駄目元で探索してみつつ、彼を救出するとしましょう」
「うんうん! まぁ、とにかく早く助けてあげよう!」
 イレギュラーズ達、各々の思いはありつつも、彼を助けるべきという仕事は理解。
「それじゃ皆、急ぐぽんよ。遅れたらもう死んでたなんて羽目にもなりかねないぽん」
 とTethが仲間達を先導し、そしてイレギュラーズ達は指定された遺跡へと急ぐのであった。

●遺跡の奥に
 そして遺跡へと辿り着いたイレギュラーズ。
 周りは砂漠、人気もなく、ぽつんと地下へと下がる入口だけが、ぽっかりと口を開けている。
「……さて、と……この中たぬね」
 とTethが、その入口に足跡が無いかを確認。
 かなり真新しい足跡が、くっきりと残っており……恐らくテストプレイヤーの『翔』は、少し前に潜入した、という所だろう。
「既に足を踏み入れてしまっている様ですね……皆さん、急ぎましょう」
 と梨尾が仲間達を促すと共に、イレギュラーズ達は足を踏み入れる。
 ……少しだけ侵入した所で、既にもう暗い。
「やっぱり暗かったね。でもきうりの栄養素は目にいいんだよ! 多分!」
 きうりんはニカッと笑いつつ、ぐるりと周りを見渡す彼女の視界には、うっすらと見える。
 ……見渡す限りにおいては、灯りを灯しているような場所は無い。
「うーん……近くには居なさそうだね」
「分かりました。では、分かれ道で足跡を追いかけていきましょう」
 梨尾の提案に頷きつつ、イレギュラーズ達は更に遺跡の中を進む。
 翔は足跡を消すような真似はしていない模様……更にこの洞窟、暫くの間は探索されていなかったのか、埃が溜まっており、足跡を探知するのはさほど難しくは無い。
 幾つかの分かれ道を足跡を元に辿っていき……何度か分かれ道を進んで行くと……イレギュラーズ達の視界に、灯りを灯しながら進んでいる人影を発見。
「あ、あれかな?」
 とアレキサンドライトが指を差し、彼の元へと駆けて行くイレギュラーズ。
『……ん?』
 後方から響く足音に気づき振り返った翔……見知らぬ人が追いかけてきた、とでも勘違いしたのか。
『ひ、ひぃっ!?』
 大声を出して驚き、その場に座り込んでしまう。
 そして彼の下までやって来ると、早速ツルギが。
「大丈夫ですか、『翔』さん?」
 と、彼の名を呼びかける。
 突然自分の名前を呼ばれ、えっ……ときょとんとしてしまう彼。
『な、何で僕の名前を……!?』
「貴方……希望ヶ浜の学生さん、ですよね?」
 R.O.Oの世界にログインして、今迄聞かなかった故郷の名。
『え、えと……は、はい、そうですけど!?』
「良かった。貴方がログインしてから帰って来ないと、親御さんから話を受けまして……取りあえず無事の様で良かったです」
 優しく微笑むツルギ、そしてイズルと黒子も。
「そうだね。君、このワールドにログインしてもうどれ位立っていると思う? もう数週間は経過しているんだぞ?」
「捜索届も出されていて、親御さんは心配しています。早く帰らないといけませんよ」
 と彼を帰る様に促す。
 ……とは言え彼も、彼。
『……でも、このクエストは完遂しないと。クエストを途中で投げ出すなんて、心残りだよ!』
 真摯にテストプレイに向き合ってるから、そこは折れない。
「まぁ……そう言うと想っておりましたわ。でもここのクエストは、一人ではとっても危険なクエスト……わたくし達も手伝いますわ。同じ世界にログインした仲ですもの」
 玉兎が提案し、梨尾、Tethも。
「そうです。一人より二人、二人より三人……でしょう? 『MMO』、なんですから」
「そうたぬ! 大人数でクエストをこなすことこそ醍醐味たぬよ!」
 そんなイレギュラーズ達の言葉に、確かに言葉の意味を噛みしめる。
『……わ、分かった。うん、一緒に頑張ろう!』
 とその提案を素直に受け入れた彼。
 そんな彼と共に、イレギュラーズ達は更に地下遺跡の探索を開始。
 暗視効果を持つ梨尾、アレキサンドライト、Tethが前衛として前衛を張り、翔を他の仲間達が守備を固める。
 ……そして、更に洞窟の地下深くへと進んで行く……すると、今迄下る方向ばかりだった道が、真っ直ぐ、そして登りの道へと変わる。
「……これは、見るも明らかな感じだな……」
 とイズルがぽつり零すと、それにきうりんが。
「そうだねぇー……でもここを進んで行かないと、奥には辿り着けない構造って感じかな?」
 と想定。
 ……勿論今迄の道、違う方向に曲がればここを通らないというルートはあるかもしれない。
 でも、これは想定済みの罠……だからこそ、そのまま進み始めるイレギュラーズ。
 坂を登っていくと、人一人くらいなら、なんとか身を潜り込められそうな隙間がある。
「えっと……翔さん。もし何かが転がってきたら、手分けしてここに隠れるようにして下さいね」
 と、玉兎が翔に指示。
『ん、分かった!』
 と頷いた……その瞬間。
 カチッ、と機械的な音が聞こえたかと思うと、次の瞬間……前方からゴロゴロと転がってくる、大きな岩。
 通路の縦横幅から一回り小さいくらいで、飛んだりして躱すのは難しそう。
「来ました……頼みます」
 と黒子が咄嗟に翔の手を引き、隙間へと移動させる。
 その一方で梨尾、きうりんの二人はあえて前方へと進んで行き、転がってくる大岩へ対峙。
「きうりんさん、行きますよ!」
「うん! せーの、よいしょー!! キャーッチ!!」
 と盾を立て掛け、更に全力で岩を受け止めようとする。
 ……勿論かなりの勢いで転がってくる大岩、盾と共に破片が散らばる。
「い、いったいなぁ! まぁ再生するから問題ないけど!」
 とかなりのダメージを喰らいつつも……岩をどうにか堰き止める。
 そして、勢いが止まった岩を攻撃して細かく砕いて、通路を確保。
「ん……これでよさそうですね。では、進みましょう」
 と黒子は再度翔を促し、更に進む。
 上がりきったところで、ほっと一息……つこうとしたら、その左右の土壁に、不自然な穴を発見。
「これは、間違い無さそうだな。安心した所をどくやで仕留める、って寸法の様だな」
「ええ、その様ですわね……中々この罠を設置した主は意地悪の様ですわね」
 イズルと玉兎の言葉。
「では、その辺りをぶち壊せば解決、たぬね!」
 そしてTethが、吹き出し口の岩を破壊……出来る限り射出出来ないようにした上で、きうりんが先行して通過。
 ……潰しきれなかった毒矢をその身に受けるも、自己回復で体力を維持した上で、その罠を乗り越えていった。

 その後も立ち塞がる様々な罠を、次々と乗り越えていったイレギュラーズが辿り着くのは、石の扉と……それを護るかのようにそびえ立つ、鳥の様な石像。
 何度となく冒険を重ねて来たイレギュラーズ達……更に、MMORPGの経験者である翔からすれば……あからさまな罠のシチュエーション。
『これは……扉を触った瞬間に、具現化する、という罠でしょうね……』
「ええ……そうでしょう。となれば、扉を触る前に、位置取りをある程度決めておけば、有利に進めることが出来そうですわね」
 翔の言葉に玉兎が頷き……まずは皆の隊列を確認。
 勿論翔は後方……ちょっと思う所はありそうだが、今迄の言えrギュラーズ達の熟練な動きには敵わないと感じ、頷くしか無い。
 ……そしていざ、扉に手を触れ……る前に。
「あ、ちょっといいですか?」
 と梨尾が止める
 そして……彼がし始めたのは、周りの石像にペンを使っての、落書き。
 だが、何故かは分からないけれど……インクは上手く乗らないし、描けない。
「むぅ……せっかく気の利かなそうなその堅物が尾を、ゲジマユでかっこよくしようと思ったのに……」
 とても残念そうだが……ともあれ準備を一通り整ったので、いざ梨尾が扉に手を掛ける。
 その瞬間、周りの石像達からポロポロと何かがこぼれ落ち、まるで殻を割るかの如く、姿を表すガーゴイル達。
『ガァァーー!!』
 と、奇っ怪な鳴き声を上げた所に。
「8月限定たぬきのヤケになったパワー、思い知るぽんっ!!」
 ちょっと自暴自棄気味にTethが、動き出した彼らを纏めて、高エネルギー化の励起電子砲をぶっ放す。
 それに続いて玉兎も、広範囲に及ぶ星辰術の蒼光を放ち、纏めて一網打尽。
 敵が姿を表した瞬間に叩きつけることで、敵を一網打尽にする。
 とは言えその二撃だけで倒れるような、やわなガーゴイルではない。
 そして様々な方角へと飛ぼうと、モーションを取るガーゴイル。
「させません」
「ああ、纏めて喰らいな」
 黒子の一閃に加え、イズルも扇状に広がる攻撃で迎撃。
 とイレギュラーズ達が攻撃為ている一方で、きうりんは。
「翔くん、後ろに下がって!」
 と、翔を自分の背後に隠す様にカバーリング。
 ガーゴイル達は、カバーした彼に何かある……と感じたのだろうか、優先的に狙おうとするので……きうりんに自然と、何発も攻撃が当たる。
「いったいなぁー! でも大丈夫大丈夫、私は丈夫だからね!」
 ときうりんは、翔を不安にさせないよう、笑いながら攻撃を受ける。
 そしてターゲットを意図せず惹きつけてくれた所へ、ツルギが。
「貴方達に非はありませんが、特別授業の見本となって頂きましょう!」
 と細剣を振り翳し、一匹に確実にトドメを刺し……まるで煙のように姿を消失。
 更にはアレキサンドライトと梨尾の二人も、手の届く範囲のガーゴイルへ攻撃。
 流石に20匹と数は多いが、イレギュラーズ達は慌てる事無く、事前に準備を万全に整えていた事により、一匹ずつ確実に仕留められていく。
 そして、ガーゴイルが姿を具現化してから数十分の後には……全ての仮初めの命達は、全てが煙の如く、姿を消すのであった。

●死に物狂い
 そして……。
『……凄いですね、皆さん……僕一人だったら、どうなってたか……』
 後方にいた翔は、率直に驚く。
 そんな彼に、Tethとツルギが。
「そうだぽん。今度から、こういうクエストはPTを組んで来るといいたぬ。ソロだと対処法が限られるからな、だぽん」
「ええ。好奇心があるのは良い事ですが、慎重でなければいけない事を決して忘れてはいけません……先生との約束ですよ」
 二人から寄せられるアドバイス。
 ……熟練の動きをしたイレギュラーズ達から発せられる言葉は、かなりの重みを持っている。
『……そ、そうですね……はい、わかりました……!』
 こくりこくり、と頷き、ツルギの差し出した手を握り帰す翔。
「……良かったです。物わかりの良い子で。では、クエストをしっかりと完遂して、心残りを無くして……元の世界に戻りましょうか」
『は、はい!』
「そうですわね、ここまで来たら、折角ですし深奥まで確認してから帰ると致しましょう。最後まで、警戒は緩めずに、ですわね」
「そうだね。お宝は狩り尽くされているかもしれないけど、万が一に残ってたら、その罠で死んでるかもしれないもんな!」
 玉兎の言葉に、アレキサンドライトが笑う。
 まぁ、扉が開いた先には、何一つとしてお宝は残されて居らず、狩り尽くされた後だったりするが……それにもまたクエスト。
 そして……イレギュラーズ達は彼と共に遺跡を脱出。
 彼のログインポイントを、記憶を頼りに探し出し……彼は無事に、現実世界へと帰って行くのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

梨尾(p3x000561)[死亡]
不転の境界
黒子(p3x008597)[死亡]
書類作業缶詰用

あとがき

R.O.O砂漠での行方不明者救助依頼に参加頂き、ありがとうございました!
物理的にMMORPGにのめり込んでて現実世界に戻ってこれない……という彼ではありましたが、戻れないことに全くの不安は無かった様ですね……。

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