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シナリオ詳細

<濃々淡々>煌めく雪にも似たそれは

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夏は暑いから
「はぁ……」
 夏は暑い。それは混沌のみならず、此処濃々淡々でも同様のようだ。
 じわじわと精神を追い込んできそうな熱気、蝉の声、此処は和の国であるからクーラーも無ければ扇風機もない。故に、うちわ等で涼むしかないのだ。
「なんでこんなに暑いんだろう、夏って」
 ぱたぱたとうちわを仰いだ絢は、炎天下とも言えそうなこの晴天を見上げた。憎々しいくらいの快晴に思わず笑みが零れる。いい天気だ。今日は洗濯物もよく乾きそうで。うん。そうだね。暑いね。
 がっくりと肩を落としながら歩く絢。流石にしばらく着物で居るのは暑いからと、何かいい服を探すことにしてみようか。
(何をするにも、夏は暑くて嫌だなあ)
 はぁ、と何度目かの肩を落とし。のんびり歩いていた絢の耳に響いたのは。

 ――ちりんちりん。

(これは……)
 風鈴だ。
 その音に惹かれるように、ゆっくりと足を、風鈴の鳴る方へと進める絢。
 その先から溢れ出した、ひんやりとした空気。絢は次第に、速足になって。どんどんどんどんその方へと進んでいく。

「よぉ、絢じゃないかい!」
「お雪! ってことは」
「ガハハ! まあ、俺もいるわな!」
「銀司! 二人共こんな夏にどうしたんだい?」
 絢の友人である雪女と雪男の夫妻、お雪と銀司が手を大きく振った。二人の手元にあったのは。
「氷……?」
「ああ! かき氷ってんだ、氷をこまかくして食うのさ! 身体の真から冷えてうまいよ!」
「絢、あんたまだひょろっこいのかい。氷じゃ足しになんないけど、これ食って涼しいところで肉食べな!」
「あはは、ありがとう」
 手渡されたかき氷に、絢は目を瞬かせた。
 涼しい夏を手に入れるのは、簡単かもしれない。

●避暑地
「かき氷って、混沌にもあるのかな?」
 かき氷をしゃくしゃくと食べながら、絢はのんびり尻尾を振った。
「今日はね、皆にも涼しくなって欲しくて。かき氷を食べながら、小川にいかないかい?」
 絢曰く、その川は山から湧き出た湧き水の川。ひんやりしていて、怪我があればその傷もたちまち癒えてしまうのだとか。
「せっかくおれも楽しめたから、みんなで楽しめたらいいなって思って。どう?」
 川以外にも海があるらしい。立地がいいのだろう、山も近ければ海もある、良い街だ。
 青い空の下、きんと冷えたかき氷を食べながら、ぼんやりと過ごす夏。きっと特別なものになるだろう。
「ね、ね。一緒に行ってみない?」
 絢はわくわくとした様子で微笑んだ。

NMコメント

 お祭りはたこ焼きが好きです。どうも、染です。
 またお祭りが出来る日を楽しみに生きています。

●依頼内容
 かき氷を食べながら、涼む

●かき氷
 雪女&雪男の妖怪の夫妻、お雪と銀司によって生み出された美味しいかき氷。
 常冬の森から切り出された永久氷を砕いて生み出された、特別な一品。
 シロップはお好みで。色んな味があるそうですよ。

●お出かけできるスポット
 かき氷を食べながら行ってみましょう。

・川
 廻青の山を流れる清流。日が差し込まないため、蛍が飛び交っています。

・海
 美しい海です。透き通った水からは、魚が泳いでいるのが見えるでしょう。

・森
 飴の森。きらきら陽光は落ちる中を散策してみるのもいいかもしれません。

・店
 付喪神が営む店や、絢が営む飴屋など、様々な店があります。食事処もありますから、店に入ってしまうのもいいですね。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいます。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 誘われればどちらへでもご一緒します。

 以上となります。良い夏をお過ごしください。

  • <濃々淡々>煌めく雪にも似たそれは完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月10日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
コユキア ボタン(p3p008105)
雪だるま

リプレイ

●燦々
(夏は草木が生い茂って、鮮やかで綺麗な花も咲いて、生き物も活発になって。一年のうちで一番活力に満ちた、素敵な季節だけれど、)
『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)は頬を伝う雫を拭いながら、溜息を吐いた。
(やっぱり、暑いよねえ……お天気の日はちょっと、暑さでぐったりしてしまうかも)
 煌めく陽光、じわじわと削られていく体力。そんな中でひんやりとしたかき氷が食べられるのは有難い事だ、なんて津々流は考えて。
 それに。食べて涼みながらお出かけなんてとても楽しそうだから、きっと楽しめるような気がしたのだ。
「いらっしゃい、お兄ちゃん。ちょっと待ってちょうだいな!」
 人込みは無く、じんわりとした熱気に押されるようにその列に加わった。一分もしないうちに二番目まで辿りつき、お雪から声を掛けられる。前のお客はみぞれを頼んだようで、その雪のふわふわ加減が良く見えた。
「うわあ……ふわふわ、雪みたいな、綺麗で美味しそうなかき氷。
 雪男さんと雪女さんが作るのなら、それはもう絶品だろうねえ」
「だろう? 俺達もこれの美味さに惹かれて今こうして立ってるってわけさ!」
「氷も特別なんだよ。ささ、注文を聞かせておくれ!」
「ふむ、氷も特別なもの……うーん、ますます楽しみになってきた。
 あ、味はどうしようかなあ、あっ……抹茶が掛かって小豆が乗ったものなんてあるのかい? お茶好きだからそれにしようかな」
「もちろん、注文には可能な限り応える性分でさ! お待ち、たんと味わっておくれよ!」
 きらきら光る、綺麗な氷のかき氷は、口の中であっという間に溶けてしまう魔法付き。口に冷感だけを残して消えていくひかりの粒なのである。
「津々流のは抹茶なんだ。美味しそうだね」
「うん。絢さんのは柘榴なんだねえ」
「美味しいけど、あげないよ? あとでもう一回別の味で買いに行くつもりなんだ!」
 ゆったりとした時が流れる川では、ちらほらと蛍の姿が。そっと足をつけてみれば、こんなにも気持ちいい。
「川の水も冷たくて気持ちがいいね。水がとても綺麗だから、蛍もこんなに」
「そうだね。ひんやりしてるや」
 その足で散歩ついでに飴の森へ。煌めく光に目を細め、しゃくり。相変わらず冷たくて、おいしい。
「飴の森は、太陽の光が万華鏡みたいにきらきら綺麗。その光がかき氷に当たって、かき氷もまたきらきらしているねえ」
 手中で、かき氷は煌めき続けて。

●朗々
「まぁ…聞いとった通り、見目涼しゅうて食べてしまうのが勿体ないわ」
『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)はつんと、赤紅添えた爪で黒猫の匙をつつく。
「お抹茶、苦手やないとええのやけど……どない?」
「さっぱりしてて、甘すぎなくて美味しいね。蜻蛉が好きそうだな、とも思った。きーんってするから、ゆっくりね?」
 なんて。絢は揃いでつけてもらった匙でしゃくしゃく、音を鳴らす。
 飴の森には馴染みがあるから、なんて語らずとも二人、向かう足先は同じ。仲睦まじい黒猫の兄妹に見えたかもね。嗚呼、うちがお姉さんやないの? ころころ、転がる鈴の如き笑い声は、森奥でも朗々と。
 涼しい場所を選んで座ったつもりではあるのだけれど、ひと口、ふた口と、氷が喉を通ればひんやりと。外で触れるのと内に取り込むのとでは大違いだ。
「急いで食べたら、こめかみに来るよって焦らんとね…でも、ゆっくりしとっても溶けてしまうし」
「時間との戦いだね。でも、溶けても美味しそうではあるんだけれど」
 夏は儚いものが多い。溶けてなくなってしまうかき氷、空に咲いて消える花火。川に流す燈篭、煌めく流星群。
(でも、やから綺麗なんやろうね)
 消え行くもの。散り行くもの。それら全ては、刹那であるからこそ美しいのだと。永遠に続くものではないと解っているからこそ、大切にしたいものがある。
「口当たりは甘いんやけど、あとから来る渋みと香りがちょうどええわ…ん、美味し♪」
「あっ……頭が、きーんって……」
「ほら、言わんこっちゃない…んふふ」
 なんて、頭を抑える姿ですら、尊くて、愛おしい。友との時間は、長いようで短いのだから。
 近くに咲いた苺飴。薄く頬張って、氷と一緒に。
「これで苺味……やってみたかったんよ。ちっちゃい子みたいやろか?」
「わぁ……それ、考えてもみなかったや」
 ぱちぱちと瞬いた絢も真似をする。蜜柑、苺、柿、沢山!
「ふう、沢山食べた……」
「ほんに、そやね。贅沢させてもらいました、有難うね」
「こちらこそ。のんびり食べ歩きは楽しくて、美味しいね」
「絢くんはかき氷、食べたことあるん?」
「おれは祭りのときだけ、かな。人間の祭りに飴屋として出店することがあるんだよ。その時に食べたりしたかな」
「へぇ、お祭りがあるんやね。うちも来れるやろか?」
「蜻蛉なら大丈夫さ」
 涼しさを味わった器を膝に置いて。二人、手を合わせて告げよう。
 ――「ご馳走様でした」。

●爛々
 絢の誘いを頷き快諾した『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)は、『絢様からの、お誘い! ええ、ええ!ぜひ、一緒に、行かせてくださいませ!』なんて弾むように笑って、濃々淡々へと足を踏み入れた。
「かき氷、ありがとうございます。お2人も、暑さに気をつけて!」
「お嬢ちゃんもな! ありがとう!」
 早速かき氷を受け取ったネーヴェ。銀司がひらひらと手を振って。準備は万端だ。
「わたくし、かき氷は、あまり食べたことがないのです。
 食べると、お腹を冷やしてしまって。それに頭もキーン、となるから、と。
 でも、こんな暑い日には、とてもよいです、ね!」
「ああ、そうだね。ネーヴェのは苺味、かな?」
「はい! 絢様のは、何味ですか?」
「おれのはね……あ、芒果みたいだ」
「芒果?」
「えーと……まんごー? って言うのかな?」
「なるほど!」
 なんて話していたら目的地の川もすぐそこで。浅瀬に腰を下ろして、のんびりしゃくしゃく、かき氷を食べる。
「っ……! とても、とても、頭が痛い、です!」
「ネーヴェ、それは、頭がきーんってするあれだ……!」
「こ、これが、キーンとする、なのですね!」
 薄ら涙を浮かべ。痛いものは痛いのだ。けれど、美味しいので手は止まらない小さな矛盾。食べなれたなら、ゆっくりしゃくしゃく、ペースも掴んできて。
「そういえば、川には、足をつけても、大丈夫なのかしら。つけたら、とても、とても、気持ちよさそう!
 こんなこともあるかもと、手拭いは用意してあるのです。絢様、一緒に足をつけて、みませんか?」
「うん? 勿論、構わないよ」
 一気につけるとびっくりしてしまうから、そぅっと、ゆっくり。
「ふわあ」
「ふふ。ネーヴェ、気持ちよさそう」
「ひんやりしていて、とても気持ちいいです!」
 かき氷を食べながら、夕涼み。たまらない贅沢だ。
 蛍が飛び交う。ネーヴェの手元にも、柔らかな光を灯す。
「わぁ……!」
「すごい、幻想的だね。綺麗だなぁ」
「はい! でも、驚かせてしまわないように、静かに、ですね」
 優しくて、ほんの少し儚い光を見ていたら、あっという間に時間は駆け足になって。
 だから、小さく指切りしよう。大切な友達と、この『次』があるように。
「絢様、また、来年。季節が巡ったら、来たいです」
「うん。おれも。また一緒に来よう、ネーヴェ」
 小さな約束は、大きな一歩。
 きみとおれのまた来年。ぜったいに、叶えなくては。

●悠々
「美味しいカキ氷が頂けるときいて!」
『雪だるま』コユキア ボタン(p3p008105)は白雪の肌に朱をのぞかせて。氷菓子は大好きなのだという彼女にとってかき氷は特別な一品だろう。
(その上お仲間の気配を察知しまして、ちょっとだけ親近感!)
 それはお雪と銀司にとっても例外ではなかったようで、雪だるまの姿で挨拶をしたボタンにも意気揚々と笑みを浮かべた。
「お嬢ちゃん、俺達とお揃いかい?」
「そりゃあいいね! だけどその姿で食べるのかしら」
 瞬いた夫婦にそんなことはないと告げるボタン。
「…もちろん元の姿で食べますよ? 雪だるまは仮の姿ですので!」
 くるり、回ればあら不思議。麗しい乙女の姿に早変わり。わあ、なんて感嘆の声が響く。
「暑さが苦手ならどうぞこちらへ。雪だるまの隣は涼しいですよ。
 …も、元の私は溶けませんので! なんて。よろしくおねがいしますね」
「ふふ、ありがとう、ボタン。それなら是非、お邪魔しようかな」
 ボタンの隣からメニューを覗き込んだ絢。もうどれにするかは決めていたようで、悩んでいるボタンを隣で待つ。
「れんにゅう、しらたまが美味しいとお伺いしたのですが、トッピングもあるでしょうか。うーん……では今回はまっちゃ味を」
 全部食べたい、なんて呟けば『よくばり』なんて揶揄われて。美味しいもの、気になるものは全部食べてみたいのだ。色とりどりのかき氷、心奪われぬほうがおかしいというもの。アイスなら、沢山食べられるのだけれど。
 漣を集めてカーテンにした海は、煌めく青と共に。
 こんなに美しい海なら少しくらい濡れてしまっても良いでしょう? なんて笑ったボタンは、絢と水に濡れる。
「いただきます」
 と、ぱくり。口の中に、ひんやりとした甘さが広がって。
「日差しの下のカキ氷、なんだかとても贅沢です」
「うん、そうだね。涼しくて気持ちいいや」
「それに、波の音をききながら食べると特別な感じがしますね」
 海も、夏もボタンには縁遠いものだった。けれど、今はもう遠くはない。夏はすぐ隣にある。それが、こんなにも嬉しい。
「夏のカキ氷のおかげ、でしょうか……夏の雪だるまもステキでしょう?」
「ふふ、うん。とっても素敵だよ」
 なんて笑った絢。二人のお皿はもう空っぽだ。
「…あのやっぱりおかわりしてきてもいいでしょうか。この海のような真っ青のカキ氷を!」
 氷がすべて融けてしまうように、素敵な思い出を、もう一杯。

成否

成功

状態異常

なし

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