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シナリオ詳細

解からせてマイ・リトル・レディ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●コボルドの慟哭
「小悪魔リトルレディに『解らされたい』なぁ~~~~~~~~~~~」
 そのコボルドは言った。
 天義は、辺境の森の中である。
 コボルド。一般的に下級モンスターに分類される半獣の怪物である。獣種とは違う。彼らは変化は出来ないし、崩れないバベルを持ってしても意思疎通のできない怪物である。
 だが――このコボルドは、この時、言葉をしゃべった。
 コボルドとして生を受けて、初めての言葉であった。
 突如として発生した異常進化――そう、滅びのアークの影響によって生まれる歪んだ怪物、怪王種(アロンゲノム)として変化したこのコボルドは、アロンゲノムとなり果てた瞬間、この様に産声を上げた。
「おお、俺ってなんか、すごい事を思いついたぞ! この思想を他の仲間達にも布教してやらにゃ」
 と、コボルドは言った。そう、アロンゲノムには、自身の変異を他の生命へと伝播させる――さながら原罪の呼び声の様な特性も持つ。
 かくして、コボルドは、如何に小悪魔リトルレディが素晴らしいかを、他のコボルドたちに語り続けた。当然、通常のコボルドは知性がないので何を言ってるのか分からないはずだが、なにかは知らないがこの時、彼の語る小悪魔リトルレディのすばらしさが、コボルドたちの小さい脳へと染み渡り、その身体を震えさせた。多分呼び声みたいなもんなんだろう。
「わかる」
「小さいながら、大人顔負けの妖艶さを持った瞳」
「こちらをからかう、プライドをくすぐる発言」
「いい」
「いいよね」
 いつしか、コボルドたちは次々とアロンゲノムへと変貌を遂げていった。やがて、最初の一匹は『キング』と呼ばれ、彼らによって崇拝される存在となった。コボルドたちは、小悪魔リトルレディを崇める一派を作り上げると、やがてその知能を肥大化させ、魔術を学んだ。その魔術は、ついに人類へと牙をむくことになる――。

「M・コボルドだ!」
「M・コボルドの群れが来たぞ!」
 天義の辺境、その小さな村にて、人々の悲鳴が上がる。ちなみに、MとはMythology(みそろじー)のMであって、つまりそれは神話の怪物のように強いコボルド、と言う意味を持って人々がつけた名である。Mにそれ以外の意味はない。
「妖術師! やれ!」
 キングがそう告げるのへ、妖術師がむにゃむにゃと呪文を唱える。途端、暗雲が立ち込め、ごろごろと雷が鳴る。不穏な風があたりを包む中、水晶の塊を乗せた大八車を引いたコボルドが、妖術師の前にやってきた。
「おねがいします!」
「はい」
 妖術師が頷くと、水晶に魔術を打ち込む。とたん、辺りに光が満ちて、刹那、村人たちの姿が、おお、なんという事だろう! 皆素敵な小悪魔リトルレディへと変貌を遂げているではないか!
「そんな! 隣のおっさんが小悪魔リトルレディに!」
「三軒隣の爺さんも小悪魔リトルレディになっちゃった!」
 もちろん、元から小悪魔リトルレディだった子は特に変化はしないぞ! そう、この妖術師が使う妖術とは、人の見た目を小悪魔リトルレディに変えてしまうものなのだ! もちろん、実際に変わっているわけではない。視覚神経の混乱……つまり、幻術の類であろう。
「くくく……これで貴様らは、みな小悪魔リトルレディだ……!」
 キングが笑う。妖術師も笑ってる。部下たちも笑った。
「さぁ……俺達を煽れ……っ!」
 そう言って、コボルドたちはめっちゃ足取り軽く村々を蹂躙するのであった――!

●戦え! 小悪魔リトルレディ!
「こあくまりとるれでぃ、ですか。つまりボク達の出番と言うわけですね!」
 むふー、とどや顔を晒すのは『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)であったが、しかしすぐに頭を振ると、
「僕は小悪魔でもあってもリトルではないのです! 大人の女なのです!」
「まぁ、それはいいんですけれど」
 と、適当にあしらうように言うヨハン=レーム (p3p001117)が、ジンジャーエールの入ったグラスに刺さったストローをガジガジしながら言った。
「とんでもない変態ですね。その、M・コボルドの群れ?」
 ユリーカのもたらした情報によると、最近天義の辺境に、M・コボルドと名付けられたアロンゲノムの群れが現れたのだという。
 アロンゲノム、勿論世界の敵であり、強力な相手であるのだが、話に聞いてみれば、なんというか。
「……小悪魔リトルレディに、罵られたい……ってことなの?」
 フラーゴラ・トラモント (p3p008825)が、流石に困惑の表情を浮かべる。
「その、小悪魔リトルレディ……って言うのが、よくわからないのだけれど……」
「つまり、ボクのような大人のレディなのです!」
 ユリーカが胸を張るのへ、アリスが小首をかしげた。
「つまり……ユリーカっぽい子……って事……?」
「そうなのです! でもボクは大人の女なのです!」
 何やら矛盾したようなことを言うユリーカ。それはさておき、ヨハンは資料に目を通す。
「……小悪魔リトルレディに煽られたり罵られたりしたいらしく、そうされると戦力が低下することが確認されている……い、いい年した大人が……いや、コボルドだから年齢はよくわからないですけれど」
「つまり……罵りながら……戦う……?」
 アリスが小首をかしげる。
「……かわいくない……けど……かわいいのために……がんばる……」
「そうだね。実際に、天義の人は困ってるものね」
 フラーゴラは言った。まぁ、確かにこんなのが国内で暴れているとなれば、天義としたら迷惑極まりないだろう。
「と言う訳なのです! ボクは当然現地にはいきませんが、皆さんの小悪魔リトルレディぱわーで何とかしてほしいのです!」
 そう言うユリーカに、イレギュラーズ達はあいまいな笑顔で頷いた。
 詰まる所。
 いつもの、ユリーカが持ってくる変な依頼、と言う事なのだ。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 此方のシナリオは、M・コボルドたちから小悪魔リトルレディへのお願い(リクエスト)により発生したお仕事です……?

●成功条件
 M・コボルドの群れをやっつける。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●怪王種(アロンゲノム)とは
 進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
 生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
 いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●状況
 天義の辺境を脅かす、アロンゲノムの群れ。M・コボルドと名付けられたそのアロンゲノムの目的は、小悪魔リトルレディに煽られたり罵られたりすること――!
 そんな不正義極まりない事態を天義が見逃すわけがなく、ローレットに依頼が飛び込んできました。
 皆さんは、M・コボルドの潜伏する廃村を襲撃して、M・コボルドたちをまとめて撃退してください。
 作戦決行タイミングは昼。周囲は廃村となっており、辺りには廃屋が点在しています。
 なお、以下の通り特殊ルールがありますので、ご確認ください。

●妖術・みんな小悪魔リトルレディになーれ
 戦闘開始時に、ゴブリンの妖術師が妖術を使います。これは回避したり、止めることはできません。
 この妖術はいわゆる幻術の類であり、その効果は、「効果を受けたものは皆小悪魔リトルレディになる(ように見える)」と言うものです。
 実際に身体が変化しているわけではないですが、とにかく見た目から声まで小悪魔リトルレディになります。
 理想の小悪魔リトルレディになって、コボルドを煽り散らかしましょう!
 なお、そのままでも小悪魔リトルレディとして充分通じるよ、って言う人は、幻術を受けてもそのままの姿のままです。
 たとえば、ヨハンさんとか、フラーゴラさんとか、アリスさんとか。
 自分がどんな小悪魔リトルレディになりたいか、プレイングに記入すると楽しいでしょう。
 なお、「自分はこのままでも小悪魔リトルレディだ!」と言う方は、その旨ご記載ください。そのままのお姿で小悪魔リトルレディです。

●エネミーデータ
 M・コボルドキング ×1
  アロンゲノム化したコボルドです。MとはMythology(みそろじー)のMであって、つまりそれは神話の怪物のように強いコボルド、と言う意味です。それ以外の意味がMの文字にあるの?
  通常のコボルドよりもはるかに肥大化した筋肉、残虐的な牙、爪、すべてが強敵が持ちうるに充分な威力を持っています。
  『出血系統』のBSを多用してくるでしょう。

 M・コボルド妖術師 ×1
  アロンゲノム化したコボルドです。非常に強力な術師です。『火炎系統』のBSや『氷結系統』のBSを付与する各種神秘遠距離攻撃を行ってきます。
  妖術・みんな小悪魔リトルレディになーれの発動者ですが、妖術師を倒しても術は解けません、術を解くためには、『水晶の塊』を破壊する必要があります。

 M・コボルド ×10
  アロンゲノム化したコボルドです。キングや妖術師よりは弱い一般兵ですが、それでもイレギュラーズの脅威となるには充分な戦闘能力を持ちます。高いEXAと機動力により、素早く動き回り、皆さんを翻弄するように戦うでしょう。

  なお、キング、妖術師、M・コボルドは、以下の特殊能力を持ちます。
 パッシブスキル:Mの衝動
  このスキルを持つものは、『小悪魔リトルレディにからかわれたり、煽られたり、罵られたりすると、HPとAPが毎ターン少量回復し、すべてのパラメータが低下する』状態を持つ。このスキルは消去・解除はできない。

 水晶の塊 ×1
  魔力を帯びた水晶の塊です。特に攻撃手段などは持ちませんが、これがある限り、『妖術・みんな小悪魔リトルレディになーれ』は発動し続けます。
  ……まぁ、それで不利になる事は無いので、敵を全滅させた後、最後にていやーって壊すと良いと思います。持ち帰っても特にお金にもならなければ加工もできないので。


 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングと罵倒と煽りとからかいを楽しみにしてますね。

  • 解からせてマイ・リトル・レディ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
※参加確定済み※
Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)
シュレーディンガーの男の娘
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
※参加確定済み※
エクレア(p3p009016)
影の女
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
アリス・アド・アイトエム(p3p009742)
泡沫の胸
※参加確定済み※

リプレイ

●いざ、コボルドの巣へ
「なんですかねこれ……」
 と、困惑したような、しかし諦めたような色も載せつつ、『閃電の勇者』ヨハン=レーム(p3p001117)が言うので、『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)はすこしきょとん、とした表情を見せながら、答えた。
「お仕事……?」
「いや、それは分かるんですが……」
「わかる。わかるぞ、その気持ち」
 はじまる前から疲れたような様子で、『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)が言った。
「確かに怪王種は、原生生物版の反転のようなもの……と考えれば、何でもありかもしれない。
 でも! これは! どう考えても希望ヶ浜の夜妖案件だろ!」
 頭を抱える紫電。
「不正義も正義もクソもねえじゃんかよ! 天義がこんなのでいいのか!?」
「まぁ、ユリーカさんが持ってきた仕事ですしね……そう考えれば、なんかこう、諦めもつくって言うか。
 いえ、ごめん、嘘です。これ、千の軍を率いて戦うよりも頭痛くなりますよ。
 僕、これでも少し前は、幻想で勇者だって評されてね……それが小悪魔リトルレディかぁ、そうかぁ……」
 なんか諦めが強く出てきたヨハン。紫電も思い切り肩を落とす。
「でも、ほんとに変な敵だよね。罵られると嬉しいって」
 『宿主になってね』Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)が、口元に人差し指をやりつつ、考えるようなそぶりをして言う。
「まぁ、エナジーヴァンパイアとしましては? 人の快楽などは千差万別って事は解りますけれど。
 でも、いくらなんでも戦闘中にまでそうなって、あまつさえ弱体化までしちゃうって言うのは極まり過ぎているって言うか」
「しかも、小悪魔リトルレディだっけ? 子供の女の子にだなんて、とんだ変態の集まりだよ!」
 くすくすとあざ笑う『二律背反』カナメ(p3p007960)。その様子はまさに小悪魔ではあったが、カナメは攻めるより守るタイプである。
「まぁでも? そうして欲しいって言うならするしかないよね♪
 カナも人をからかうのは好きだしね♥」
 さて、そんな風に和やかな会話などをしつつ、油断はせず、しかし緩い雰囲気で――なにせ与太依頼なので――一行は草原を行く。街道から外れたその先には、果たして小さな廃村があって、ここがコボルドたちの拠点と化しているらしい。姿を隠してみてみれば、確かに、報告書通りに大きな水晶があって、それが怪しい輝きを放っている。
「あれが噂の魔法の水晶とやらか。何と危険なアイテムだろう。許しがたい」
 『影の女』エクレア(p3p009016)がむむ、と唸りながら言うのへ、フラーゴラが小首をかしげた。
「そうなの? えっちゃん。……話に聞く限り、あんまり害のない……すごく趣味的な、魔法みたいだけれど……」
「いや、ゴラくん。あれは実に危険なものだ。
 なんてったって、僕の大人の魅力を打ち消すこの世の悪意を煮詰めた魔法だ、心して掛かった方がいい……そうしないと泣かされるぜ。主に僕が」
「う、うん……」
 謎の迫力と実感を込めつつ言うエクレアに、フラーゴラが頷く。
「あー、今日も小悪魔リトルレディにわからされたいな~」
 ふと、村の方から声があがる。身をひそめてみてみれば、コボルドたちがなんかだらしない顔をしながら出てきた。
「そろそろ新しい村襲ってわからせてもらうか~」
「いいよね、わからせてもらうのいいよね」
 次々と広場に集まってくるコボルドたち。それを見ながら、『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)は些かげんなりした様子で言った。
「あ~、居るね。沢山出てきた……」
「ふむ? マリカ君はそう言うの好きそうなタイプでは?」
 と、エクレアが尋ねるのへ、マリカは頭を振った。
「……嫌がる子にイタズラするのは好きだけどぉ、イタズラしてほしい子にイタズラするのってなんか違くない……?」
「なんとなくわかるかも」
 Aliceが嘆息するのへ、ふむん、とエクレアが頷いた。
「それより……敵のあの目付き…………女の子が危ない……かも…………」
 『ツルペタ解放者』アリス・アド・アイトエム(p3p009742)が物陰から指をさす。コボルドたちはなんかとろんとした目をしていて、おそらく小悪魔リトルレディにわからせられる妄想をしているのだろう。確かに、あまりお外に出て良い顔はしていない。妄想は他人の迷惑にならない所でね。
「……あれと戦うのか……」
 紫電が本当に、嫌そうな顔をした。
「お父さん……僕は幻想で勇者として巨人たちと戦った後、なんか変なコボルドと戦ってますが元気です……」
 ヨハンが遠い目をしながら、呟いた。ヨハンの耳に、父上からの「心と体の健康には気を付けるんだよ~」と言う声が聞こえた気がした。
 正直いって戦いたくないが、戦わざるを得ない。一行は意を決して、物陰から広場へと飛び出す!
「神妙にしてください!」
 と、とりあえずはきりっ、とした表情でヨハンが叫ぶ。
「な、なんだ!? 小悪魔リトルレディか!?」
「いるわけないだろ、こんな所に!」
 紫電が叫んだ。
「ぬぅ、貴様らイレギュラーズだな!?」
 コボルドが叫び、武器を取り出した。ぎり、と間合いを取るその気迫は、なるほど、確かに怪王種……ただのコボルドではないという気迫を覚えさせる。
「……確かに、つよい、ね」
 フラーゴラが言った。イレギュラーズ達も、皆相手の実力を見誤るほど未熟ではない。
「妖術師殿! お願いします!」
 コボルドキングが叫んだ。水晶の近くにいた妖術師が何かをもごもごと唱えると、途端に空は曇りだし、水晶が怪しい光を放つ。
「やつら――使う気だ、悪魔の術を!」
 エクレアが身構える。やがて、妖術師が水晶に魔術を打ち込むと、それを反射したようにあたりに光が満ちる――。
「盟友諸君気を付けたまえよ、妖術で小悪魔リトルレディに――」
 エクレアがそう言った刹那、光が収束していく。そして、その場に現れたのは、これまでと変わりない、エクレアの姿だった!
「なんだ……不発か!?」
 エクレアが驚くのへ、しかし声をあげたのはカナメだった。
「わ、ほんとだ! 小さくなってる!
 カナのままでも良かったんだけど、せっかくだから変身してみたよ☆」
 と、その姿は確かに、普段より幼くなっている。普段より、釣り目気味の生意気そうな顔に変わっている他、服装は、エナメルの、露出は高いが腕にはロングの手袋をつけているという、実にSっ気あふれる姿だ。
「あれ?」
 エクレアが首をかしげる。見てみれば、例えばフラーゴラなどは黒い大きなリボンで結んだツインテールに、黒い皮のジャケットとへそチラするトップスと、黒いホットパンツに浅黒い肌の小悪魔リトルレディへと変貌している。
「こ、こういうの、あの人も好きかな……?」
 と、想い人の事を思い浮かべるのへ、
「いや、多分フラーゴラの想い人にこういう趣味は……どうなんだろうな……?」
 と言う紫電。その格好は、紫電を幼くして、チャイナ服を着せた姿となっている。
「あれ?」
 エクレアがもっと首をかしげた。
「くっ……褐色Sっ気少女とは! 絶対どこかの洗井落雲の趣味ですねこれは……!」
 そう言うヨハンは、言葉通り、褐色釣り目の小悪魔リトルレディへと変貌を遂げている。
 もちろん、そのままの姿の者もいたが、それは元から小悪魔リトルレディだったという事なのだろう。
「ふふ、まぁ、私は元から可愛いものねー?」
 と、得意げに笑うAliceに姿の変化はない。
「まるでアリスが元々小悪魔リトルレディみたい……ゆるせない……!」
 姿のかわらないアリスがむっとした表情を見せるのへ、ふと横を見てみれば、何も変わっていないエクレアの姿がうつる。
「ん……エクレアも……なの…………?」
「は?」
 エクレアがキレた。
「おい、どういうことだね。僕の容姿変わってないぞ。ふざけるなよ変態コボルド共、グラマラスで大人なお姉さんの僕を怒らせたことを後悔させてやる」
「えぇ……」
 コボルドもちょっと困惑した様子を見せたが、それはさておき、エクレアの言葉を合図に、一行は戦闘に突入した!

●わからせあい・夏
 コボルドたちが唸りをあげる。振るわれる斬撃は、確かに重い。
「なるほどね、確かに、これは強力……っ☆」
 マリカはにぃ、と笑いながら、コボルドからの斬撃を振り払い、後方へと跳躍して間合いを取る。コボルドたちは怪王種化により、運命の申し子たちと切り結べるほどの力を得ているのだ。
「……なら、やるしかない…………よね?」
 アリスが言うのへ、フラーゴラは頷く。フラーゴラは意を決したように、息を吸い込んだ。そのまま、コボルドへ向けて疾走! 交差する視線、振り上げられる、武器。フラーゴラは、一息に声をあげた。
「ざぁこ♡」
「ウオアアアアアア!!!」
 ずべしゃぁ、とコボルドが転(ファンブ)った。そのままひっくり返ったコボルドへ、フラーゴラはとてとてと近づくと、困ったように眉をハの字にしながら、上目遣いでこう続けた。


「よわよわ♡
 どうして欲しいか言ってごらん?
 本当はこうして欲しかったんでしょ……♡
 なじって欲しいなんて、どうしようもないコボルド……♡
 残念だねえアナタのママ、きっと呆れてるよ……?」
「ウオアアアア! ウオアアアア!!」
 コボルドが、涎をたらしながら喜びでもだえ苦しむ! そのまま、フラーゴラが、てい、と盾の角で殴ると、コボルドはすごくいい笑顔をしながら光となって消えていった。
「こ……」
 コボルドたちはうろたえたように叫ぶ。
「小悪魔リトルレディ! 実在したんだ!」
 それは感激に、喜びに、むせび泣くように!
「うっわ、ほんとに効くんですね、あれ……」
 ヨハンがドン引きしたような視線を向けるのも、もはやコボルドたちにとってはありがたいご褒美でしかない。
「ああっ、ヨハンちゃん! もっと視線ください!」
「何で名前知ってるの? きもい」
 素ででた言葉に、コボルドたちがもだえるので、なおの事ヨハンは嫌そうな顔をした。
「ま、まぁ、これで反撃の糸はつかめたわけだ」
 紫電がこほん、と咳払い。
「行くぞ、皆――!」
 叫び、走り出し――ずざぁ、とコボルドに接近して、紫電の一言。
「ただのリトルレディの前でこのザマなんて、恥ずかしくないんですかぁ?」
「んきゃああああ!」
 ばたん、とコボルドが腹を出して倒れる。服従のポーズだったので、紫電はその腹をぐりぐり踏みつけながら、嗜虐的な笑みを浮かべて続けた!
「へんたい♡ ざこいぬ♡ マゾわんこ♡
 脳みそ罵られることにしか興味ないんですかぁ♡」
「あああああああああ!!!」
 喜びの雄たけび! そのまま光となって消えていくマゾわんこ!!!!!
 そう、コボルドたちは、小悪魔リトルレディに罵られるのが大好きで、つい負けちゃうんだ! 大人の男の人は小悪魔リトルレディには負けちゃうものだからね。しょうがないね。かくして、あちこちで小悪魔リトルレディたちによる反撃が始まる!
「あれー? 全然痛くないよ? まだアリさんの方が強いよ? ざーこ♥ 虫以下♥ 存在価値なし♥」
 カナメがコボルドの攻撃を受け止めながら挑発するのへ、コボルドはだらしない顔をしつつ、一丁前の発言をする!
「くそっ、大人を舐めやがって! 大人はお前達に絶対負けない!」
「踏んで欲しいならぁ、情けなーく土下座して媚びて見せて♪
 大したことないざこコボルド♥ 情けない声だしてイっちゃえ♥」
 カナメが猫なで声でそう言った途端、コボルドはずざぁ、と土下座して懇願した。
「ぶ゛ん゛で゛く゛だ゛さ゛い゛!」
「あっははホントにした♪ それじゃぁ、ごほう……びっ!」
 カナメが笑顔でコボルドを蹴り上げるのへ、コボルドは歓喜の悲鳴を上げながら消滅!
「くそっ、大人の意地を見せてやれ! 小悪魔リトルレディに絶対に負けない!」
「ねぇ……なんでこっち見てるの……? 気持ち悪いから……こっち見ないで……本当に不愉快……喋るのもやめて欲しい……」
 と、フラーゴラの陰に隠れてアリスが言うのへ、コボルドたちは歓喜に土下座した!
「ありがとうございます!」
 土下座して滑りながら光となって消えていく。
「この程度で膝つくの……? 本当に……ざこなんだね……わ、また悦んでる……こんな状況でもコーフン……してるの……?
 救いようがない気持ち悪さ……」
 範囲攻撃めいて放たれるアリスの言葉が、次々とコボルドたちを光に変化させて昇天させていった。
「君たちは立派なコボルドだろう?
 そんな君達が小悪魔リトルレディに唆されて負ける筈ないじゃないか」
 エクレアがそう言うのへ、コボルドたちが立ち直る。
「そうだ! 大人は絶対リトルレディに負けない!」
 と、武器を振るうが、もはや骨抜きになったコボルドたちの攻撃などは、イレギュラーズ達には通用しない。そのよわよわ♡ な攻撃を受けたエクレアは、
「うわぁ……」
 と心底軽蔑したような瞳を向ける。それだけでちょっとビクンってなった。
「君たち恥って言葉を知らないのかい?
 煽られて悦に浸るとは最低の極みだね……本当に、へ・ん・た・い、なのだね?」
 くすり、と嘲るように笑うエクレア! コボルドたちが悲鳴を上げながら昇天!!!!!
「くそ、俺達は絶対に小悪魔リトルディには負けないぞ!」
「へー、解らされたいんだー♪
 上手におねだりできたらやってあげないこともないわ」
「お願いしますAlice様ぁ!」
 ずざぁ、とスライディング土下座するコボルド! Aliceはくすくすと笑った!
「うっわ、本当にやるなんて、なっさけなーい♡
 ねぇ、恥ずかしくないの? こんな小娘にそんなに必死になっちゃってぇ?
 ざーこ♡ ざこコボルド♡」
「くそう、大人を舐めやがって!(棒読み」
 と、Aliceはコボルドを踏みつけようとして……足を止めた!
「でーも、まだだーめ♪
 こんなの簡単に回避出来るのにあえて受けるなんて、本当に変態さんなのね。
 ほら、お・ね・だ・り、してみなさいよぉ?」
「踏んでくださいませAlice様!」
 大人の尊厳とか色々捨てさるコボルド! Aliceは嘲笑するように耳元に息を吹きかけ、
「ええ、いいわ。ご褒美をあ・げ・る♡
 精一杯弄んであげるから覚悟してね♪ いい声で哭いてね♡」
「んあーーーーっ!!」
 コボルドたちの嬌声がこだました! 見ればあちこちから、コボルドたちの悲鳴が上がる!
「妖術師殿……これはもしかしてヤバいのでは?」
 少し正気に戻ったコボルドキングが妖術師に目をやると、妖術師はマリカに弄ばれている!
「くすくす……❤ マリカちゃん知ってるんだから♪
 お兄ちゃんってこういうのが好きなんでしょ?
 やっぱり~♪ 欲しくて欲しくてたまらないんだぁ~❤
 我慢できない? できないんだぁ~♪ ざぁ~こ❤❤
 ほぉ~ら、ざこざこお兄ちゃんお望みの……、
 メ ・ ス ・ ガ ・ ニ ❤ だよっ❤❤」
「ああっ、カニ、カニを!?」
「ぷりっぷりでねっとりしててすっごくえっち(HはHungryのH)だね♪
 とってもおいしい、ちん、ちんみ……珍味なのぉっ❤❤❤」
「あああああああああああ!!」
 隣でエッチそうにカニを食べてるだけなのだが、もはやマリカの言動一つ一つに身体を震わせる妖術師! やがてドキドキが限界にきて光となって昇天!!!
「妖術師殿ーーっ!!」
「え~♡ コボルドさんたちアタシと戦ったら人生終わっちゃうよぉ~~♡♡
 無理キモ~イ♡♡ 魔刻開放しちゃったらお兄さんたちの短小神攻とかぶっちぎっちゃうし~~♡♡」
「かわいい子に遊んでもらわないと死んじゃうんでしょ……♡
 とんだかまってちゃんだね……♡」
 ヨハンとフラーゴラが迫る!
「氷結とか出血とかアブない趣味もってるしぃ♡
 ネチョネチョ搦め手つかってくる男の人マジありえないっていうか♡♡
 いやぁん♡ コーパス・C・キャロルで全部打ち消したときの情けない顔さいっこぉ~~♡♡
 好き♡ 泣け♡ 悔しい顔もっと見せろ♡ はい1からやりなおし~~♡ ご苦労様でぇす♡」
 ヨハンに翻弄されるキング! だが顔はもう完全に天国にいるがごとくだった!
「情けないコボルド……♡
 どっちが主人か教えてあげる……♡
 わん、って鳴いてごらん?
 しつけの時間だよ……♡」
 フラーゴラの攻撃が、キングの体力を削っていく! これにはキングも悶絶! そして最後の時! ヨハンとフラーゴラは、キングの両耳に息をふぅ、と吹きかけ、
『ざぁこ♡』
「ンンンンアアアアアアアアアッ!!!」
 キングが咆哮! そして光に包まれる! やがて最上の笑顔を浮かべながら、光に包まれて消えていく――。

 戦いは終わった。後に残ったのは、小悪魔リトルレディだけだった。
 イレギュラーズ達は、戦いに勝利したのだ……しかし、胸に残ったものは、むなしさのようなものだけだった。
「んー、カナは結構楽しかったよ? 攻められなかったら物足りなかったけど」
 楽しかった人もいるがそれはそれ。戦いは空しい。そして悲しい。
 イレギュラーズ達は取り合えず、やり場のない怒りを水晶にぶつけて破壊しつつ、もう二度とこんな悲劇が起こらないように祈ってやまないのであった。
 おわり。

成否

成功

MVP

カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し

状態異常

なし

あとがき

 洗井落雲は大人なので、小悪魔リトルレディには絶対に負けないです。

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