PandoraPartyProject

シナリオ詳細

突撃イレギュラーズ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 君達の事を知りたがってるヒトは結構いるんだよね。
 そう、そう。例えば、普段は何してるんだろうって。
 イレギュラーズだって、俺達と同じように生きてるじゃないか。
 同じように仕事して、同じように食事して、同じように眠りについて。
 ……え? 食事をとらなくても大丈夫?
 ま、まあ、そういうヒトもいるだろうね。
 それは今は置いといて。俺達とは生業を別としてる君達に興味を持つヒトはそれなりにいる訳さ。
 まあ、芸能人の私生活に興味を持つみたいなもんだね。
 名前が売れれば、一般の認知度も高くなる。
 で、何が言いたいかと言うと、そんな君達に取材したいと申し出るヒトがいてね。
 どうだろう。一日密着取材……みたいなもんなんだけど。
 ここの出版社が数人お願い出来ないかと俺に尋ねて来てさ。
 良かったらどうかなあ、って。
 きちんと報酬も出るし、雑誌が発売されたら名も売れるし、君達にとっても美味しい話だと思うんだけど。
 考えてみてよ。折角の休日に記者が付きまとう事になるから、そこも考慮の内に入れといてね。
 それじゃ、良い返事を待ってるよ。じゃね。


 耳カバー付きのフードを被った『勿忘草』雨(p3n000030)が一枚の名刺を差し出した。
 そこには、連絡先として携帯端末の番号と、今回の話を持ち掛けたらしい出版社の代表の名前が載っている。
 連絡を入れ、イレギュラーズであることを伝えれば応募は完了だ。
 今回はお試しとの事で、応募人数が多い場合は抽選となる。
 イレギュラーズの日常を伝える。これも立派なお仕事ではあるだろう。

GMコメント

こんにちは、祈雨と書きましてキウと申します。
今回は日常系依頼です。戦闘描写もプレイング次第では可能ですが、さっくり終わる可能性が高いです。

●依頼内容
「イレギュラーズって仕事が無い日は何をしてるの?」という疑問にお答えして、休日にスポットを当ててイレギュラーズに取材します。
この依頼では、一日密着取材した日のとある時間をピックアップして描写します。
プレイングでは、一日の全体スケジュールを連ねるよりも、一か所に焦点を当てて情報を詰め込むとおいしいかもしれません。広く浅くではなく、狭く深くという感じです。
休日などないタイプのイレギュラーズ様に関しましては、とある依頼を受けて打ち合わせをしているところ等の対応になります。
また、参加者内で一緒に過ごす事も可能です。その場合は、プレイングに互いの名前とIDをご記載ください。一方通行の場合は別々となります。

プレイング例
例:休日はいつも読書日和。好きな本はミステリーです。
例:今日はショッピング! お気に入りのお店でたくさん服を購入します。
例:休日とて休まぬ。筋トレランニング食事制限。これぞイレギュラーズの資本よ!

●取材班について
基本的には「同性の記者」が一人につき一人同伴しますが、取材というシチュエーションに影響しない範囲であれば、「見た目」「性格」「性別」を選ぶことが可能です。
こういう人が良いという希望があればプレイングにご記載ください。
また、参加者内でグループとなって休日を過ごすという場合には、取材班は一組につき一人という形での対応になります。
例:優し気なナイスバディのお姉さん
例:超イケメンなイイ感じに渋いおじさん

●お願い
ギルド内部の掲示板等の情報の参照は致しません。出来るだけプレイング内で完結するように構成して頂ければ幸いです。
ギルド名やアイテム名をあげる、特定の人物(感情欄に限ります)の名前をあげる程度であれば大丈夫です。

  • 突撃イレギュラーズ!完了
  • GM名祈雨
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年07月06日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ディエ=ディディエル=カルペ(p3p000162)
夢は現に
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
佐山・勇司(p3p001514)
赤の憧憬
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ヴァレット=クレッセント(p3p004087)
第二の月のアサシン
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー

リプレイ


 それじゃあ、よろしくおねがいしまーす!
 そんな声を電話越しに聞き、対象者となったイレギュラーズは当日、各々の記者と合流した。


「良いか、記者よ」
 目的地へ向かう道すがら『夢は現に』ディエ=ディディエル=カルペ(p3p000162)が幸薄そうな記者の女を振り返る。
 生徒に講釈する教師さながら、堂々たる振る舞いで話し始めた。
「錬金術は石ころを金に変える技術だが、錬成術とは素材同士の組み合わせで」
 ここまでで記者は一つの結論に思い至る。この説明は、長い。
「……つまり、素材の収集が必要だ。記事にしたいのであろう。ならば手伝うが良い」
「はい!」
 語り終えたディアは記者への呼びかけで話を締め、森の入り口を指差した。
 ディエへはとても元気な声が返る。内容をどこまで理解しているかは定かではないが、その声に反比例しているような気もした。
 ディエらが収集するものは、薬草や木の実を始め、小動物にまで至る。また、敵となるモンスターですらその対象だ。
 素材をごったに入れる革袋を記者に渡すと、女はうっと声をあげた。
「クク、重いであろう? それが、普段ボクが背負う重みだ」
 錬成術師としてか、イレギュラーズとしてか。
 きっと都合のいい方へと解釈されることだろう。やってみせますと気合を入れる女は、見た目に反して終始袋を担いで動き回っていた。
 日が暮れるまで素材収集の旅は続く。途中遭遇したモンスターはディエが華麗に遠距離から仕留めた。
「特別にボクの錬成術を見せてやる」
 ディエは素材袋の中からいくつか摘まみ思考を巡らす。どんなものを想像し、創造するかはディエの自由だ。
 近場に落ちていた木の枝を拾い上げ、持った感触を確かめる。なんてことのない、小枝。目を閉じ、夢に見たとある物を思い描く。
 ギフト、カルペ=ディエム。
 小枝の表面に薄らと紋様が浮かびあがる。元はバラバラだった素材群は、沸々と泡を立たせると交じり合い、不可思議に溶けあっていく。
 組成式を組み替え、結合し、強固たる繋がりを以て形と為す。
 細く頼りない小枝は今、木製の小刀へと姿を変えた。
「ここまで良くぞやり遂げたな。褒めて遣わそう」
 ディエは生み出した小刀を記者へと差し出すと、得意げな笑みで労った。

 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は傭兵である。
 仲介のない依頼群からカネになる仕事を探してやれ草刈りだのやれ迷子犬探しだのを切り捨てた。
 見つけた張り紙には『山賊退治』の文字が並ぶ。壁から手荒に引きはがせば、同伴の記者に見せつけた。
「ああ――全く、許せねえなあ。山賊なんざ、この世に居ちゃあいけねえのさ」
 貴方も、山賊では。
 グドルフの言いようにそう返そうとした記者がハッと息を呑む。濁った双眸を見れば、それが失言であろうことは予測がついた。
 明日の酒代が見つかり上機嫌なグドルフは、青ざめる記者を気にもせず、豪快に笑って肩を叩く。
 出発は明日の朝。
 その前に向かうは裏路地だ。どこへと問いかけられるが、グドルフは勿体ぶってニヤニヤと下卑て笑うばかり。
 着いたのは、依頼人の元――ではない。揺れる看板には『Bernstein』の文字がある。
 控えめなベルを揺らせば、そこが酒場であることは一目瞭然だった。無秩序に並べられたボトル、油で汚れたシンク、散ばった椅子にテーブル。
 店主らしきカオスシードの男が一度視線を寄越すがそれだけだ。
「さあて、今日は飲むぜ。おめえさんもどうだい」
「いえ、仕事ですから」
「一杯くれえいいじゃねえか。仕事なんか忘れてよ。ホラ」
 困った様子の記者だが、グドルフはお構いなしだ。ウォッカを押し付ければ、割れては困ると手を添えた記者にそのまま渡す。
 折れた記者がせめてロックでと泣き言を言うが、グラス同士を当てる乾杯の音が聞こえれば溜息を吐いた。
 さて酒が入ればグドルフの舌も回る回る。饒舌にある事ない事宣えば、度数の高いアルコールで喉を焼く。
 亡国の姫君との逃避行では追手に謎のドラゴンが混じっていたり、魔竜討伐では数多の竜を片手で屠っていたり、記事にするにはホラ話過ぎていかんともしがたい。
「凄腕の傭兵グドルフ・ボイデル、涙なしでは語れぬ知られざる過去! タイトルはこれっきゃねえ」
 ――なお、この男、受けた依頼は二日酔いによりすっぽかしたのであった。

「――って事で、今日は一日頼むぜ」
 喫茶店で担当の記者と合流した『GEED』佐山・勇司(p3p001514)は今日の予定を確認する。
 一対一の取材形式。記者の質問に勇司が返す。
 休日は何をして過ごしますか?
 その問いかけは予め聞いていたものであり、勇司は滞りなく答えていく。凡そはトレーニングに。時には個人で依頼を受けたり、日頃世話をしている孤児院で面倒を見たり。
「こう考えると、こっちに来てからホント働きっぱなしだな」
 振り返ればいつも予定があって忙しない。
「ソレで、トレーニングの話だったか」
「はい」
 休日にしていることが大体トレーニングなのであれば、記事にはそのように書かれる事となるだろう。勇司はトレーニングを始めた理由や方法を語り、記者は勇司の語りを逐一書きこむ。
 ウォーカーたる勇司は混沌肯定を受け幻想で生きている。騒乱の世を生き抜いた者や一心に自身の武を磨いた者など、ウォーカーとは様々だ。
 だが、勇司は戦いとは無縁だった。実力面では同等だとしても、習熟度――いわゆる『慣れ』という面では劣りかねない。
「未熟だから、強くなりたい。自信に繋がる何かが欲しい」
 強い口調で述べた勇司は僅か目を伏せる。それに、と続けた言葉は静かに凪いでいた。
 世界は、優しく出来ていない。
 弱者は強者に搾取され、力ある者が正義を名乗り敗者はただ汚名を被るのみ。どこの世界にいたとしても、これは真実なのだと勇司は知っていた。
「優しい誰かが勝たないと、優しさ無き者が正義になってしまう」
 だからと顔をあげた勇司は真っ直ぐに記者を見つめた。
「俺が欲しいのはいつだってグッドエンドのエンディングだけだから」
 悲哀か、羨望か、嘆願か――その時に見せた瞳に籠る感情は、たったひとり、勇司しか知り得ない。
「……なんてな」
 冗談だと誤魔化す訳でもなく、格好つけであるとお道化て笑う訳でもなく、ただ、追及を許さぬ為の言葉を。
 場の流れを断ち切るように、勇司は運ばれてきた飲み物を口にし、一言記者に礼を述べた。

 『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が過ごす休日は、よくある武人とそう変わらない。
「『イレギュラーズは皆とそう変わらない』という事を知って貰う、いい機会か」
「お願いします」
 ぺこりとお辞儀をする記者にうむと返せば、汰磨羈は約束を取り付けて一度解散した。
 汰磨羈らは朝にまた合流する事となる。一日密着取材の名の通り、朝起きてから夜眠るまで。
「私のモットーはな。良く食べ、良く鍛錬し、良く寝るの三つだ」
 記者と合流した汰磨羈は定食屋への道すがら、記者にそう話した。モットーと掲げるからには全てこなす。
 慣れた様子で定食屋の店主へと注文を済ませば、記者へも食事を勧めてメニューを開いた。
 良く食べを実践した二人は、次の良く鍛錬しを実践する。実際に動くのは汰磨羈ではあるが、共に動ける範囲であれば記者も同伴した。
「激しくはするが、無茶はしない。身体をいじめ過ぎるのは逆効果だからな」
 鍛錬の基礎部分を説明しながら、汰磨羈は己に課している日々の鍛錬をこなしていく。腹ごなしの準備運動から始まり、筋トレ、木人への打ち込みなど様々だ。
 正午を迎えれば、また食事へと戻った。この後また鍛錬へと戻るのだろうかと推測していた記者に反して、汰磨羈は和室へと案内する。
「昼寝も欠かさないぞ。しっかりと寝て、午後に備えるわけだな」
 なるほど。
 記者が失礼しますと触ってみれば、通気性の良いふかふか布団がしっかりと掌を押し返してくる。
「という訳で、一緒に寝るぞ」
「えっ」
 そう言っている間にも汰磨羈はゴロンと布団に転がった。すぐさまゆるゆると背を丸めて円を描く。まるで猫だ。
 むにゃむにゃと寝言を呟く汰磨羈を見ながら途方に暮れた記者はとりあえず横になってみた。
 その後、再び鍛錬に戻った汰磨羈は風呂に、飯に、寝準備にと、よくある時間を過ごした。
「とまぁ、こんな感じだが。何が特別って訳でもない。少なくとも、私はこんなものさ」
 灯りを絞った部屋の中で、汰磨羈はそう語り目を閉じる。
 良く食べ、良く鍛錬し、良く寝る。終始そのメリハリのついた生活だった。


 アサシンと言えば、どんな想像をするだろう?
 重要人物の暗殺、潜入先で誰かに扮して毒を混ぜる、色々思い付く事はある。
「『罪なき人々の刃たれ』」
 二人の間に落ちる静寂を破り『第二の月のアサシン』ヴァレット=クレッセント(p3p004087) はそう口にした。
「私がアサシンとして守ってる信条だよ」
 街を散策していたヴァレットはくるりと一度記者へと振り返ると、真っ直ぐな眼差しで見やる。
 混沌に導かれた彼女は、世界が違えど罪のない人々が虐げられる様子を目にして困惑を吹っ切った。元の世界に戻る方法を探しながらも、信条を果たすために日々動いている。
「ただの『仕事』……日々の糧を得る為だけにしてるわけじゃない……という事だね」
 何かの命を奪う事に、理由などない人間はごまんといる。そんな人とは違うのだ。
 さて、そんな彼女ではあるが、依頼のない日はこうして気儘に散策しているようで。
「屋根の上を歩いたり、高い所に登ってみたりもするよ」
 あそこ、と指差したのは電波塔だ。普通ならば近付けない場所ではあるが、この電波塔は随分と前に廃棄されているようだった。
 下で待っててと言われた記者は素直に頷き、軽業師のように器用に登っていくヴァレットを見守る。持ち込んだカメラのレンズを覗きこめば、聳え立つ塔の頂上から街を見回すヴァレットの姿が見えた。
 頂上からの景色は、身近にあったものを遠ざける。その分、歩いているだけでは気付けなかった道や人々の流れがはっきりと見えた。
 雑踏に紛れて聞こえなかった風の微かな音や鳥たちの営み、日常では忘れがちな音がここでは聞こえてくる。
 どのくらいの間そうしていただろうか。
 天辺から地上へは結構な距離がある。落下の衝撃を吸収して、ダメージを軽減できそうなところへダイブ――とはいかない。
「いずれは出来るようになりたいんだ……」
 少し照れたように見えたのは気のせいだろうか。
 ヴァレットは登ってきた道を下ると、最後の段からぴょんと跳ねる。衝撃ダメージの少ない高さから地面に降りると、記者に頭を下げた。

 街を散策しながら道行く子供に手を振って、お腹が空いたら食事して、『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)はいつも通りの日を過ごす。
 腹の内に抱えるものはまだ内緒に。
「ときをすぎた ろじうらのねこ」
 そうして見つけた綺麗なものをカタラァナは歌にする。
 古くなって崩れ落ちそうなレンガ塀のかっこよさを。路地裏の猫の亡骸の可愛さを。
 記者はカタラァナが心動かすものを見て怪訝そうな顔をした。
「まあるいおめめが かわいいこ」
 道端の空き缶は投げ銭を待ってはいるが、どこか理解の及ばないカタラァナの歌に、足を止める者はあれど財布の紐を緩める者は出てこない。
 何かを言おうとした記者が、視線を泳がせ口を閉じる。
「いきをとめて きがつくの」
 カタラァナに伝える言葉はなかった。ばれないようにと小さく溜息を吐くと、あった事を手帳に記す。即興で歌われた歌詞を書き止め、その場を後にした。
 歌を歌い、次へ向かい、また歌う。
 日が暮れる頃にカタラァナは酒場へと向かった。演奏をお願いすればカタラァナは仄暗い酒場の中でスゥを息を吸い込む。
「あなたのかおが しりたくて
 こちらをのぞく かわいいおめめを
 じぃっとみつめて かえしてみたの
 あなたがわたしを みるときは
 わたしもあなたを みているよ♪」
 ラララと歌い上げたカタラァナをきょとりと見つめる記者は、次の瞬間には背筋に悪寒を奔らせて青褪めた。
 視線が合って、カタラァナはにこりと可愛らしい笑みで微笑む。
 それまでなら、きっと見たままの感想を得ただろう。
 しかし、全てを悟った今、記者はぴたりと硬直していた。
「同伴する"あなた"の観察が、今日の僕のやること」
 どんな人だったか。
 カタラァナの感性に戸惑っただろうか。
 それとも、内心で嘲笑っていただろうか。
 見ているつもりが見られていたと知った時はどんな気持ちになっただろうか。
 こうして歌うカタラァナをどういう目で見ているのか。
「ねえ」
 カタラァナはなおも響く声で記者を呼ぶ。
「おしえて?」
 無垢なまま、純たるままで、他者を理解したいと声をあげた。

「浮かれて応募しちゃったけど、顔割れちょっと困るかな」
「ふふっ、宜しくお願いしますね!」
 『寄り添う風』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)に付き添う記者は、ミルヴィの言いようにくすくすと楽し気に笑った。照れ隠し、なのだろう。
 ミルヴィの住み込み先でウェイトレスをする姿を眺めながら、記者はその様子を手帳にメモする。ここが盗賊ギルドであるという事実は知らぬまま。
 夜になると、今度は酒場の盛り場で出番だ。
 弾き語りでお客さんをうっとりとさせ、艶やかなダンスで魅了させ、時には鋭い剣舞で心を掴む。全身で魅せる様はまさしく芸人だ。
 ふとミルヴィが演舞を終えて戻ってくれば、女性記者に絡む酔っ払いの姿がひとりふたり。
「あー、やっぱり絡まれたか」
 イイトコ出のようにも見える恰好は酒場では浮いていて、確かに物珍しいものに見えるだろう。酒場に行くことを想定していない服装は目立つ。
「こーいうトコだと、酔っ払いとかナンパ来るから用心してね?」
 こくこくと必死に頷く記者を諫める一方で、ミルヴィは笑顔のまま足をあげた。
「オウッ!?」
 コーン、と良い音が聞こえそうなぐらい綺麗に金的がキマる。
 見事酔っ払いの大事な所へクリーンヒットすれば、男はつんのめって床に崩れ落ちた。声にならない声を出して悶えているが、ミルヴィは一瞥するだけで放置。
「心強いです……お酒、どうですか?」
「アタシ、未成年だからジュースでお願いね」
 未成年と聞いた記者が固まる。ようやくここで、自分は年下のインタビューをしていたのだと気付いたし、なんなら年下に守られたのだと気付いた。
 大人びて見える、といえば聞こえはいいのかもしれないが。
「……結構傷付くんですけどそれ」
「ごめんなさいいい」
 しっかり者であるからこそ、こうして荒くれの多い酒場でもミルヴィに声がかかるのだろう。
「イレギュラーズになって良かった事? そうね、辛い事もきつい事も沢山あったけど、この国を変えられたのが一番かな」
 取材の終わり、尋ねられたミルヴィがそう笑って答え、ありがとうと感謝を述べた。

「今日は見て聞いて感じてもらうぜロックンロール!」
 一言目にそんな言葉を聞いた記者は唾を呑みこんだが、いざ取材が始まると基本はただの散策である事が判明した。
 がくりと肩を落としかけるが、ここで新しい情報を得る。
「今回は、突発で仕事はいっちゃっててさ」
 ライフワーク的な副業だから勘弁してねと語る『スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)に対し、記者はそうこなくてはと目を輝かせた。
 ヴィマラは袋と花束を持ちふらりと歩く。
 足取りこそ軽いものの、訪れる場所は登山道から離れたあたりで危なっかしい。進んでみれば景色の良い開けた場所に繋がった。
「まずは穴ほり……あ、記者ちゃんもやる?」
「わ、私ですか?!」
 これも経験とやってみるものの、結構な作業だ。その横で、ヴィマラは作法に則って十字架を作っていた。
「私たちの間では、人が死んだらその命は魂と肉体に分かれて、魂は風になって世界を巡り、肉体は大地に帰り、花になるって信じられてるの」
 ごそりと袋の中から取り出したものに記者は目を瞠る。誰がどう見ても、首から下のない人間の顔だ。事前の知識として、ネクロマンサーであることは知っていたが、いざ目にすると腰が引けるもの。
 驚かせたかなと軽く肩を竦めるヴィマラは首を埋め、花を添えて十字架を立てた。
「死んだ人を思い出す度、風になった魂がここに戻ってきて、会いに行けるようになるんだって」
 ただ猟奇的にしていることではない。ヴィマラは立派にそのお役目を果たしている。
「実は今回申し込んだのはさ、私が生きてるってことを伝えたい人達がいたからなんだ」
 ヴィマラは記者をじっと見やる。その為にも、良い記事にして貰わねば困るのだ。こうしてヴィマラ達の生き方を見せられたら、いつかきっと誰かが気付くはずだから。
 良い話だなあと頷きかけた記者がふと、些細な疑問を胸に抱く。ちらりと見たヴィマラの表情が明るく、していることと齟齬があって、あまり深く聞くのはやめようと口を閉ざした。


 取材、どうだった?
 なかなかない経験だったと思うけれど、楽しんでもらえたなら幸い。
 また機会があったら宜しくね。
 数日後、そんな電話と共に一冊の雑誌が手元に届いたのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

プレイングお疲れさまでした!
イレギュラーズの日常を覗き見る事が出来て楽しかったです。
またこういった、イレギュラーズの日常系依頼をしたいなあと思わせて頂きました。
同じ世界なのに十人十色に存在する世界観は、いつ見ても楽しいものですね。
ご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM