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シナリオ詳細

ペッパーバイソンとグルメダンジョン

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●冒険者(グルメ)たちのダンジョン
 山河天空みなひとつ。生命サイクルの一環でしかないはずの食。
 だがその食ひとつに深く深く業を持ち続ける冒険者たちがいる。
 彼らの名は、『グルメ』。
 浅くくぼんだ鉄板の上で油をはねる厚切り肉。
 立ち上る香りに目を細め、ちょび髭の貴族ヒューゲル氏は箸を伸ばした。
 片面がまだ赤いままつまみ上げ、口へと運ぶ。
 噛む瞬間にしみ出す肉汁と、新鮮な油の味。鼻に抜けるはコショウとガーリックをふったかのような独特な香り。
 感極まったようにんんと高く唸った後に、ヒューゲルは肉を飲み下した。
「青空の下で食べるペッパーバイソンの肉。美味にござる……」
「まこと……ヒューゲル様は未だお若いようで……」
 今まさに狩ってきたペッパーバイソンの肉をスライスしながら、茶人リキュールは頷いた。
「『本場』を未だ、知らぬと見えますな」
「なんと」
 ヒューゲルの箸を持つ手が震えた。取り落とさんばかりに。
「リキュール殿。もしや……判明したのですかな……?」
「然様にございます」
 両手を揃え、頭を垂れるリキュール。
「『幻樹迷宮第三層丙区』――原生のペッパーバイソンの生息を確認し申した」
 今度こそ、箸が手から転げ落ちた。
 食器が地面で跳ねる無礼が気にならぬほどに、ヒューゲルは両目を大きく大きく開いた。
「……喰うてみたい」
「同感にございます」

●食材討伐依頼
「そんなわけで、ペッパーバイソンの肉を5体分以上狩る依頼がはいっているのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は涎をハンカチでぬぐいながら、そこまでの説明をした。人によってはちょっとしたデジャビューである。
 要約するに、『幻樹の迷宮』というダンジョンを探索し特定のモンスターを5体以上倒し、その肉を獲得してくるというグルメ貴族からの依頼なのだ。
「幻樹の迷宮は深い山の中に昔からある大樹の洞――それが入り口になっているひっろーいダンジョンなのです!」
 ひっろーいの所で大きく両腕を広げたように、山中の大樹がただの門に思えるほど広大な空間がダンジョン化しており、多重構造となった各階層はどういうわけか太陽と青空と新鮮な雨風がさすという。
「依頼内容はペッパーバイソンの肉を5体分。それ以上手に入れたら自分で食べてもよいそうなのです。けど、外にいたずらに持ち出すとよくないそうなので、その場で食べていって欲しいそうなのです。よろしくお願いします! です!」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:『ペッパーバイソンの肉』5体分以上を確保すること

 以上は最低成功条件です。「そんなにウマいなら食べてみたいなあ」と思うところでしょうし、少し多めに倒してお料理タイムとしゃれ込みましょう。
 探索メンバーは5~3組程度に分散させるのをお勧めします。
 全員一塊になってダンジョンを探索していると時間がかかりすぎてしまって最低成功条件を満たしたっきりで(お料理タイムはおあずけのまま)帰るはめになりかねないのです。
 素早く広く探索して、しっかり楽しんで、楽しく帰りましょう!

【ダンジョン解説】
 『幻樹迷宮第三層丙区』。
 ここまでの道のりは先人たちが安全なルートを開拓しているので、必要なエリアまでは直通だと思ってください。
 当エリアは浅い木々と背の低い牧草。細い川のようなものが通った沢。
 ダンジョン内だというのに大自然っぽい風景がひろがっています。
 なんとなく広い草原と森を想像してもらえれば大丈夫です。
 ペッパーバイソンはそのエリアに生息しています。
 基本的には1頭で行動し、人を見れば猛烈な突進で襲いかかってくるでしょう。
 突進には『【飛】【体勢不利】高CT高物攻』という特徴がついており、初撃でドカンといくタイプです。回避で対抗したり防御で対抗したり反応で対抗したりと、自分の得意分野で戦ってみてください。
 戦い安いエリアもあると思いますので『水辺』『森』『平野』あたりから好きに選んでみてください。

 他にもこのエリアには『フライングレタス』『シャイニング豆腐』『スパゲッティモンスター』『ポテト男爵』というモンスターが出現します。これらはペッパーバイソンと比べて戦闘力は低く、数種同時に出てくることが多いようです。最近の研究ではペッパーバイソンはこいつらを食べて生きているとか。

●お料理
 ある程度引き返すと安全なエリアがあるので、狩りが済んだら余分に獲得した素材でお料理を楽しみましょう。
 そのまま焼いてくってもバリ美味いんですが、獲得した食材でどんなことが出来るか考えてみるのも、楽しそうですね。

●おまけ解説
 実は原生ペッパーバイソンは可食部がとても少なく、100グラム程度しかないとか。
 他は魔術的な毒があって食べられません。
 可食部や必要な処理については依頼時にしっかり説明がなされているので、倒したら食べられる部位をざっくり切り取って持って行きましょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • ペッパーバイソンとグルメダンジョン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月01日 21時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
祈祷 琴音(p3p001363)
特異運命座標
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
シエラ・クリスフォード(p3p004649)
守護者の末裔
ゼレディウス=アルマ=エンカルナシオン(p3p005923)
プラネットダンサー

リプレイ

●幻樹迷宮迷宮第三層丙区
 盾を壁のように構え、剣の刀身を裏に忍ばせるようにして歩む。
 森の葉が、背の高い草が、『驟猫』ヨハン=レーム(p3p001117)の耳やしっぽにふれる。そのたび、各部位がマニピュレートされたようにぴくりと動いた。
「ちゃんと後ろについていてくださいね」
「わかった」
 ヨハンの後ろに隠れるように身を低くする『プラネットダンサー』ゼレディウス=アルマ=エンカルナシオン(p3p005923)。
 頭上に乗っかったよくわからない宇宙的なにかを静かにするように押さえた。
「頑張った後の食べ物はより美味しく感じるって──は、言ってたから。だから」
 『だから頑張ろう』と気持ちを入れ直すアルマ。頭上の何かが気持ちに連動するように可愛らしく静かに鳴いた。
 遠くにペッパーバイソンが単独で移動しているのがわかるが、その途中にフライングレタスの集団が見えた。数体が空中を旋回するようにして飛んでいる。
 ヨハンはサッと手を上げて茂みで止まるように、そして身を更に低く屈めるようにサインを出した。それに応じてぺたんと身を伏せるアルマ。
「ペッパーバイソンは遠くてこちらに気づいていません。下手に迂回すると同時に遭遇することになるかも。……先に手前の敵を倒しましょう」
 ヨハンの提案に、アルマはこっくりと頷いた。
「先陣をきってターゲットを集めます。一拍遅れてから援護を」
 ヨハンは目をぱっちりと見開くと、茂みから飛び出してフライングレタスの群れへと突撃。こちらに気づいたが行動が間に合っていない個体に対して跳躍すると、青い微光を放つ剣で切りつけた。
 空中で斬撃をくらい、地面に落ちて割れるフライングレタス。仲間の撃滅に怒りを覚えたか、逃げることなく他の集団がヨハンめがけて襲いかかってきた。
 盾をかざして防御。一発二発はともかく幾度も連打されると流石に防御もキツいもの。
 だが意味は大いにある。茂みの向こうから身を伏せて狙っていたアルマが魔力銃を発砲。空中で炸裂した魔術弾がオーラの縄を形成し、フライングレタスの一体をとらえて地面へと落とした。
「その調子です!」
「――」
 アルマはヨハンに熱中するフライングレタスへ向け、サイトごしに狙いを定める。
 そして、引き金を幾度も連続で引いた。

 空飛ぶスパゲッティモンスターが『魔剣使い』琴葉・結(p3p001166)の腕や腰に長く伸びたスパゲッティを巻き付けてくる。
「離しなさいっ、このっ!」
 結が掴んで引っ張っても、なんというコシの強さかまるで千切れる様子は無い。だが所詮はスパゲッティ。ペッパーバイソンの餌である。
 結は剣を握ると、巻き付いたパスタ部分を切り裂いた。
 剣がまばたきでもしたように光を放ち、声をかけてくる。
「あのまま締め付けて貰えば少しはやせたかもしれねェぜ。ケケケ」
「黙ってなさいズィーガー。変なシールくっつけるわよ!」
「リアルにやめろよ」
「離れるのである! まとめて焼きパスタにしてやるのである!」
 『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)が火炎瓶を取り出すと、フッと小さく火炎の息を吹き付けて点火。スパゲッティモンスターがぐねぐねまとまっているエリアに放り投げた。
 一秒ほどの間を置いて爆発炎上する火炎瓶。
 ぱらぱらと落ちていくスパゲッティモンスターだが、何でか知らないけど白いお皿みたいな臓器があってその上にほこほこのスパゲッティナポリタンがのっかるという形で草の上に落ちた。
「なんか……モンスターを倒したらスパゲッティがドロップしたみたいに見えるわね……」
「みたいっていうか、そのものだけどな」
「それにして美味しそうである……美味しいのである!」
 一口食べてみて、わーいみたいにキラキラした効果線を出しながら振り返るボルカノ。なんか動作がアメリカの子供向けシリアル食品コマーシャルみたいだった。
「へー、いいじゃねェか。オレにも一口」
「真面目に戦いなさいよ。全身にオリーブオイルかけるわよ!」
「それはお前も困るやつだろ」

 高速でホバリング移動する白い立方体。シャイニング豆腐。別名白い閃光。
 あまりの速度の速さから倒すのも難しいとして冒険者からスルーされることも多いこのモンスターが……。
「このように罠にはめることで簡単にとらえることが出来る」
 『観光客』アト・サイン(p3p001394)が網に入ってぴちぴち動くシャイニング豆腐を持ち上げて言った。
「本格的な罠が仕掛けられればもっと沢山とれたんだけど、まあ一匹が限度かな。ほんとなら『一晩待って一匹』だからむしろすぐつかまってラッキーだよ」
 なんか淡々と語るアトだが、ピーピー鳴きながらぴちぴちする豆腐を持ってる状態なのでいまいち話が頭に入ってこなかった。誰の頭にかって、『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)の頭にである。けど猫耳には入っているようで。
「けど、狩猟は得意……なの。一匹、狙ってみる、にゃ」
 語尾に音符でもつきそうな具合にレールガンを取り出すと、そいつを肩に担ぐようにどっしりと持った。手元のボタンを押して折りたたみスコープサイトを出し、40メートル先を拡大する。
 視界の先ではすやすや眠るシャイニング豆腐。こちらにはまだ気づいていないようすだ。
「戦闘可能距離で気づけなかったら、命取り……なの」
 ミアはスコープでよく狙いをつけてレールガンの発射スイッチを押し込んだ。
 爆音と共に発射された金属塊が一直線にシャイニング豆腐へ突っ込み、そして爆発のような土煙がおこった。
「やったか……!」
 やってない時の声を出すアトだが、スコープ越しにみていたミアはフッと口の端で笑った。
「やったの」
 40メートル先ではシャイニング豆腐が目(?)を回して気絶していた。

「新しいおつまみ追加ぁ」
 スパゲッティモンスターの頭(?)に『とにかく酒が飲みたい』祈祷 琴音(p3p001363)の酒瓶が叩き付けられた。
「タバスコかけたら美味しそうねぇ~」
 スパゲッティモンスターの顔(?)に『酔興』アーリア・スピリッツ(p3p004400)の辞書がめり込んだ。ほこほこのスパゲッティナポリタンになった所を手でお皿ごとキャッチすると琴音は酒瓶のコルクを歯で開けた。
 中身は米から作られた酒だ。ほんのりと黄色みがかった液体から香るどこか甘みを帯びた空気。琴音はそれをひとあおりすると、その場にすとんと正座した。
 投げた辞書(本来の使い方じゃない)を拾い上げたアーリアが、向かいに座ってフォークを取り出した。
「それじゃあ、ペッパーバイソンを狩る前にぃ」
「景気づけと来ましょ~」
 スパゲッティをちゅるちゅるしてから、米酒を同時にぐいっとやる。
 アーリアが『ん~』と言って喉をふるわせ、長い髪の毛先を絹のように白くしていく。
「お肉! お野菜! その他諸々! つまりおつまみだらけのダンジョン酒! なんて素敵な依頼なのかしらぁ……」
「これでお金ももらえるなんて、いい仕事よねぇ」
 戦力を必要とする希少食材の採取は大変で、裏庭で草を抜いてくるのとはかかるコストがまるで違うらしい。お仕事の上とはいえ、高級食材にありつけるのは滅多に無い機会なのだ。
「ペッパーバイソンはこんなのを食べて暮らしてるのよねぇ。きっと美味しい肉に違いないわぁ」
「気合い入っちゃうわねぇ」
 二人はカチンとグラスを打ち合って、再びグラスの中身を飲み干した。

 草むらを走る。
 葉っぱが丸鋸刃のように回転しながら飛来し、ついさっきまで足のあった場所を抜けて地面にささっていく。葉っぱのラインが刻まれるその先、『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)は刀を一本だけ抜いて、挑発するように相手の目(?)へ向け刀身で光をチラチラと反射させていく。
 顔面へ先読みして放たれた葉っぱを刀で防御。衝撃で身体が流れそうになるが、もう一本の刀を逆手に握って鋭く抜刀した。
 斬撃が飛び、こちらを狙っていたフライングレタスが真っ二つに切り裂かれる。
「野菜ゲット。折角のグルメ依頼だもの、堪能出来るなら確り堪能しないとね」
「心強いです」
 『守護者の末裔』シエラ・クリスフォード(p3p004649)はほんわか笑って魔術を展開。別のフライングレタスから己を隠すように死骸盾の術を行使した。
 スパゲッティのできそこないみたいなのが生まれ、葉っぱの刃が代わりに受けて崩壊していく。
 対抗して魔力放出を放ち、フライングレタスを撃破。
 衝撃にやられたフライングレタスがくるくると回って墜落。地面を跳ねて転がった。
 普通のレタスであればダメになっちゃいそうな扱いだが、フライングレタスくらいになると死語しばらくは新鮮で形の良い状態が保たれるらしい。
「混沌って一体……」
「私も似たようなこと思ったけど、深く考えたらだめなのよきっと」
 竜胆はフライングレタスを持ち上げると、布袋へと詰めていく。
「さてと、この調子でペッパーバイソンもやっちゃいましょうか」

●ペッパーバイソン
 幻想北部の高山地帯で飼育されているペッパーバイソンは人より身長があり横幅がでかく、毛皮の荒っぽさや頭の大きさ、どこか力強い角という戦ってもそこそこ強そうな見た目をしている。
 その原生種とはいかなるものかといえば。
「思った以上にヤバい」
 自分に向かって突進してくるダンプカーみたいな物体に、ヨハンはさすがに青ざめた。
「そ、それでも冒険に出たてのアルマさんをえすこーとせね――ッ」
 『ば!?』と言いながら吹っ飛ぶヨハン。
 視聴者諸兄の中にダンプカーにはねられた経験者はおられようか? 大体その感じだと思って頂きたい。
 ……いらっしゃらない? それはそうだ。撥ねられたらほぼ死ぬもの。
「あ、しぬ?」
 防御自慢のヨハンといえど、直撃をうければ盾も鎧もあったものではない。空をくーるくーるとスローモーションで回転しながら走馬燈が見えていた。走馬燈っていうか、ここ一ヶ月くらいのしょっぱい失敗経験が妙によみがえった。
「あっこれ走馬燈じゃない!」
 はみゃっとかいいながら地面をはねるヨハン。
 その間に側面に回っていたアルマがしっかりと両手で構えたマジックガンを連射。
 全弾打ち尽くした所で魔術シェルを排出、予備を装填少し荒っぽく叩いて押し込むと、アルマへと注意の移ったペッパーバイソンの顔面めがけてマジックロープの魔術を連打した。
 突撃をしかけ――た途中でがくりと横に倒れるペッパーバイソン。
 突っ込んでくるときの迫力……なかなかだ。

 突っ込んでくる迫力を今まさに体感しているのが結である。
「牛さんこちらっ、手の鳴るほ――!?」
 ペッパーバイソンに挑発をしかけ、ダッシュでその場を離れようとしたその瞬間に背後から追突された。
 こう、追突っていうと背中を誰かの手で押された感じを想像するが、結が受けたのは超高速でソファが突っ込んできて自分を跳ね上げた感覚だった。最初はペッパーバイソンの柔らかいオデコ肉で痛みはないが、角でがっちりと左右をはさまれ、そのまま首の力で盛大に跳ね上げられる。地面から足が離れればもう相手の思うままで、天高く飛んだかと思うとぐるんぐるん縦回転し、木々の枝をいくども折りながら落下した。
 息ができない。が、枝がクッションになってダメージが随分和らいだらしい。
「ず……ズィーガー……」
 なんとか手元に落ちている魔剣をひっつかみ、ターンしてくるペッパーバイソンに構え――る寸前、ペッパーバイソンに横から何かの液体がぶっかけられた。
 破れやすい布袋を叩き付ける形でべしゃーっといったのは、臭いからして油だ。それも可燃性がきわめて高いものだ。
「丸焼きにするのである!」
 ボルカノは勢いよく火炎ブレスをふくとペッパーバイソンの身体じゅうに点火し、ペッパーバイソンはたちまち炎に包まれた。
 暫く暴れた後、ふらふらと倒れれるペッパーバイソン。

 こんな相手なので、一人きりで攻撃を引き受けようとするとすぐに限界が来てしまう。
 竜胆とシエラのコンビはそこをよく理解していた。
 シエラはシエラで防御を高めペッパーバイソンの突撃を引き受ける。かなりすぐに防御は崩されるが、その間に竜胆が攻撃に集中した。
「まだ耐えられる?」
「もう一発二発は……」
 吹き飛んでいったシエラに声をかけ、刀を握り直す竜胆。
 集中攻撃をするつもりがないのか、ペッパーバイソンはターンして竜胆の方へと突撃をかけてきた。
 それならそれで構わない。片方がつらくなったら防御を交代する作戦だ。
 竜胆は刀を防御姿勢に構え、かかってこいとばかりに足を踏ん張った。
 ドフンという想像とはちょっと違う音がして急速に宙に浮かび、視界が縦向きにロールしていく。
 その間にシエラが魔力放出をしかけた。
「ひき肉になるのです!」
 魔術の衝撃がペッパーバイソンを襲い、バランスの崩れたまま転倒、すべっていく。
 顔を起こそうとしたが、すぐにぐったりと力尽きた。

「さあ、かかってこ――」
 剣を構えて立ったアトがものすごい勢いで撥ねられた。斜めにねじれ、横向きにくるくるスピンしながらペッパーバイソンの背を転がり、そのまま地面をバウンドしながら転がっていく。
「――来すぎ!」
 がばっと顔をあげるアト。
 そんな彼にターンして再び襲いかかってくるペッパーバイソン。今度は踏んでいく気だ。撥ねられるのではなく轢かれる。
「ミア早くミア! ミアー!」
 背の高い雑草に伏せていたミアがレールガンを発射。
 金属塊がペッパーバイソンに直撃。
 その巨体がずどんと倒れた。
 起き上がろうともがく。
 が、そうはさせるかとのしかかるアト。
 剣を差し込む。
 暫くびくびくと暴れた後。
 ペッパーバイソンは力を抜いた。
 そうして、アトはいただきますとでも言うように手を合わせた。

 さて、そろそろこのパートも仕上げ時。
「そぉれ!」
 琴音がぶん投げたテーブルがペッパーバイソンの額にぶつかって跳ね上げられる。
 回転しながら飛んでいくテーブルをよそに、アーリアが辞書を高く振りかぶる。
「琴音ちゃん伏せててぇ」
 せいっと言って投げた辞書に謎の力と回転が加わりペッパーバイソンに直撃。
 なんでかしらんけどペッパーバイソンはブモーって言いながら数メートル吹っ飛んだ。
「今よぉ!」
「焼き肉ぅ!」
 酒瓶を振り上げて群がり、瓶で只管ぶん殴り続ける美女二人。
 こちらパンドラパーティープロジェクト。世界の崩壊を避けるべく生きるイレギュラーズたちの冒険浪漫奇譚である。

 と、いうことで。
「「かんぱーい!」」
 採取してきたペッパーバイソンを必要な分だけ袋に分けて、琴音とアーリアは赤ワインのグラスをカチンってやった。
 唇をしめらせるようにして一口。目を瞑って堪能する二人。アーリアの毛先がワインレッドに染まってゆく。
 そこに運ばれてきたのは竜胆の作った中華料理っぽい何かである。ペッパーバイソンの他に採取してきたグルメモンスターたちを適当に料理しまくったものだ。
 調理器具や補助食材はアーリア、調味料はシエラの持ち寄りだ。
「即席で考えた物にしては上出来かしらね? さっ、召し上がれ」
「いただきます」
 シエラはフォークでペッパーバイソンの肉を取り上げてみた。
 肉汁が吹き出るかというほど詰まったジューシーな肉。赤身を帯びてはいるが、それがどこまでも食欲をそそる。
 アルマも同じくお肉を取り上げて、じっと見つめていた。
 一度顔を見合わせて、頷きあい。
 食べてみれば……宇宙。

 手の込んだ料理もいいが、豪快なのもアリだろう。
「やめろォ! 俺を串にするなァ! 臭いが! 臭いがつくだろうが!」
「じっとしてなさい」
「くるくる回すのである。焼き加減を調節するである」
 結が魔剣にさしたペッパーバイソンの肉をボルカノがブレスで焼くという変な光景が広がっていた。便利なブレスである。
「串焼き……いいですねえ」
 ヨハンが『本来の味!』と言いながら焼けた肉を噛みしめて頬に手を当てている。
 一方で、ミアは用意した油に豆腐なりスパゲッティなり肉なりをぶっ込んで片っ端から揚げていた。
「がんばってくれた、アトおにーちゃんへの、ご褒美……なの。……あーん」
「えっそう? なんか悪いなァァァあっつうううう!」
 口の端に揚げた豆腐がくっついて悶絶するアト。
 そんなこんなで、イレギュラーズたちはめいっぱい高級食材を堪能してから帰ったという。
 めでたしめでたし!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

めでたしめでたし!

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