PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夏が来た。アウトドアの季節だよ。或いは、孤島に転がるエモ・アンバー…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●アイテム回収依頼
 大海原のとある島。
 通称『航海』と呼ばれる国の小さな孤島に3人の男女が降り立った。
 島の海岸に停泊している大型船が、今回の【サクラメント】となる地点のようだ。
 先頭に立った傭兵然とした男、ベネディクト・ファブニル (p3x008160)は左目の眼帯に手を触れ吐息を零す。
「暑いな。それに、やはりこの島は不可思議だ」
 ベネディクトの周囲を飛び交う燐光が、彼の思考に介入し何事かを伝えたらしい。
 その燐光の名は“Fevnir”。
 ベネディクトを補助する電子妖精である。
「うん? どうかしたのかい? 浮かない顔だけど」
 砂浜の岩に腰をおろしたストレンジ・ジャーニー (p3x000858)は、咥えた煙草に火を着けながらそう問うた。
 ベネディクトは浮かない顔をしたまま、手にした地図へと視線を落とし、それをぐしゃりと丸めてみせる。
「あ、おい、それって島の地図じゃないの?」
「依頼主から預かったものだが……役にたたん」
「はぁ?」
「Fevnir曰く、島の形はまるっと変わっているそうだ。マッピング機能もイカれているらしいぞ」
 つまり、島の地図を取得したいのなら、紙にペンで手書きするしかないというわけだ。
「最近のゲームっぽくないね。面倒な手間が増えてしまうよ」
 ひらり、と。
 虚空より滲むように現れた蝶を指先に止めフィライト (p3x006523)は言う。
 島の熱気に辟易しているようで、眉間には僅かに皺が寄っていた。
「まぁ、その辺りも依頼主は言及していたからな。やはり……と言ったところだが」
「それもそうだけどね。しかし、俺たち3人だけじゃやっぱ人手が足りそうにないね」
「そもそも多人数推奨のクエストだったでしょ? 軽く付近を散策して、参加者を募りましょ」
 その方が早いよ。
 そう言ってフィライトは、視線を遥か頭上へ向ける。
 燦々と照り付ける太陽の光が、砂浜にたつ3人をじりじりと焼いた。
 視線を前方へと向ければ、そこには砂浜から続く平原がある。
 平原の向こうの景色は歪んでいて見えない。

●仮面の商人、カッサンドロ
 装飾過多な貨物船の一室で、1人の老人が優雅にチャイなど啜っていた。
 白い外套を纏った背の高い男だ。
 目元を覆う黒い仮面は、容貌を隠すためのものか。
 ふと、こちらに気づいた老人……カッサンドロは口元に意地の悪い笑みを浮かべて肩を震わす。
「おぉ、来てくれた。お初にお目にかかるな。私は商人、カッサンドロ。君たちの依頼人ということになる」
 そう言って老人、カッサンドロはテーブルの脇に転がっていた小さな箱へ手を伸ばす。
 部屋を訪れたベネディクトたち3人は、開かれた箱の中へ視線を落とした。
 そこに納められていたのは、琥珀色の結晶だ。
「これは、とある島で採取される“エモ・アンバー”と呼ばれる鉱物だ。持ち主の感情に応じて、多彩に色を変えるという代物でな」
 多くは顔料や化粧品、少し風変わりな使い道でいうのなら自白剤の素材などとして用いられる。
 本来は多くドロップするアイテムである。
 それでいて、それなりの額で売り買いされるそうなのだが、どういうわけか最近その供給量が減っているのだ。
 品薄な時にこそ商機はあると踏んだのか、カッサンドロは大量のエモ・アンバーを確保しようと考えたのだ。
 そうして、彼が目を付けたのが『航海』にある名も無き孤島だ。
「島には未回収のエモ・アンバーが大量に眠っているという。それを君たちに回収してきてもらいたいのだ」
 エモ・アンバーの取得手段は以下の通りだ。
【モンスター】を倒す。
 木の洞や岩陰、草むらを調べる。
 穴を掘る。
 そういったアクションを取ることで、エモ・アンバーは一定の確率でドロップする。
「最低でも50は欲しいな。それを持って依頼は成功としよう」
 そう言って、カッサンドロはにぃと口角を吊り上げる。
 嫌な笑みだ。
 身構えたベネディクトたち一行へ、カッサンドロは1枚の地図を手渡した。
「島の地図だが、ともすると役に立たないかもしれない。随分古いものだし、ここ最近で島の形状はすっかり変わってしまったと聞く」
 それに伴い、エモ・アンバーのドロップ率は低下。
 さらには、以前よりも強力なモンスターが出現するようになった。
 例えば【滂沱】の異常を付与するゴースト。
 例えば【無常】の異常を付与する骨騎士。
 例えば【退化】の異常を付与する泥人形。
 例えば、それらが1つに合わさった巨躯の戦士。
 それらは、夕方から夜の間に特に大量に発生するという。
「まったく、ままならないものだな。稼ぎ時に限って、障害が発生するのだから」
 なんて、言って。
 カッサンドロは呵々と笑った。
「あぁ、それとな。島には1人、君たちに先んじて奇妙な画家が潜り込んでいるらしい。名は“ベイクシー”と言ったかな? 何でもひどく退廃的な絵を描く画家らしいが……目的はエモ・アンバーだろう」
 行動次第では“ベイクシー”に遭遇する可能性もあるのだろう。
 こちらのアクションによって、エモ・アンバーを奪い合う競合相手にもなれば、情報を提供してくれる協力者にもなり得るということだ。
「見事、エモ・アンバーを持ち帰ってくれ。期待しているよ」

 ――QUEST:カッサンドロの依頼、発生――

GMコメント

※こちらのシナリオはリクエスト・シナリオとなります。

●ミッション
エモ・アンバー×50の回収


●ターゲット
・エモ・アンバー
 所持者の感情によって繊細に色を変える結晶。
 デフォルト状態では琥珀色をしているらしい。
 戦闘、探査、発掘など何らかのアクションを行うことで、一定の確率でドロップする。

・島に生息するモンスターたち
【滂沱】の異常を付与するゴースト。
【無常】の異常を付与する骨騎士。
【退化】の異常を付与する泥人形。
そして、それらが1つに合体した巨躯の戦士の4体が確認されている。
それらは夕方から夜にかけて出現率が上昇する。
それらは島内の特定地域に立ち入ることは出来ないようだ。

●NPC
・カッサンドロ
 依頼人。
 仮面を被った白い衣の老商人。
 エモ・アンバーを高く売り捌くことを目的としている。


・ベイクシー
 島に先んじて上陸している画家。
 絵具塗れの白い髪に白い衣。
 華奢な身体付きをしたひどく自分勝手な男。
 退廃的な絵を描くことで一部では名を知られている。
 絵具の材料としてエモ・アンバーを集めることが目的と予想される。


●フィールド
 『航海』にある孤島。
 島の広さはそれなり。
 外周をぐるりと一回りすると、約1時間ほどの時間がかかる。
 確認されているフィールドは、砂浜と平原の2つ。
 平原を抜けた先に何があるのかは未知数。
 島内には森や川、湖、遺跡などがある……かもしれない。
 少なくとも古い地図には、それらの存在が記されていたが、現在島の形状は変わってしまっている。
 ※ともすると、参加者の思い描く地形が形成される可能性もあるかもしれない。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

※重要な備考

 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
 

  • 夏が来た。アウトドアの季節だよ。或いは、孤島に転がるエモ・アンバー…。完了
  • GM名病み月
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ストレンジ・ジャーニー(p3x000858)

※参加確定済み※
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
フィライト(p3x006523)
あなたと踊る
※参加確定済み※
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
※参加確定済み※
きうりん(p3x008356)
雑草魂
三月うさぎてゃん(p3x008551)
友に捧げた護曲
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
リコリス・ジン・ローア(p3x009236)
自称送り狼

リプレイ

●孤島に来たんだよ
 エモ・アンバー
 それは所持者の感情によって繊細に色を変える結晶体。
 時には顔料や化粧品、或いは自白剤といった用途に使われる。

「こいつを集めてるってなると……後ろ暗ェ理由なんざ簡単に考えつくが」
 指先でつまんだそれを陽光に翳しストレンジ・ジャーニー(p3x000858)はそう言った。
 太陽の光に照らされた、小石サイズの結晶体。琥珀色の輝きが、水面のようにゆらりと揺れた。
 ところは『航海』にある孤島。
 エモ・アンバーの産出地として知れたその島では、現在幾つかの異常事態が発生している。
「単なる物集めかと思いきや、その実態はガチの探索クエでしたってか。あのじーさん、後でチョップくれてやろうか?」
 手にした紙片に現在位置を記しながら『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)はその場にいない依頼人へ向け悪態を吐いた。
 エモ・アンバー50個の回収という言葉にすれば単純なその任務が、長丁場になりそうだとそんな予感があったからだ。

 砂浜から平原へ。
 場所を移動した『蒼竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)は、周囲を見渡し言葉を零す。
「探索するにあたって、最初に敵が侵入して来ない場所を探したいところだな」
「だったらまずは探索だね! 植物疎通で島の植物くん達にいい感じにふわっと綺麗なところを教えてもらうよ!」
 そう言って『開墾魂!』きうりん(p3x008356)は突如としてその場にしゃがみこむと、野に咲く小さな白い花へと語り掛ける。
 植物との対話を試みるきうりんを見下ろし『ネクストアイドル』三月うさぎてゃん(p3x008551)は困ったような顔をした。地図もなく、また地形さえも不明な島で孤立するのは避けたいところだ。
 何しろ、この島には何種類かの適性体が存在しているのだから。
 地形の大幅な変化。
 それに伴う、マッピング機能の不具合。
 そして、出現率の増加した強力なモンスターたち。
 白い花と何を話しているのか分からないが、きうりん1人をこの場に残して先へ進むわけにもいかない。
「……ふむ」
 きうりんの横にしゃがんだ『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は、草原の土に手を突き刺して掬い上げる。
 エモ・アンバーのドロップを期待してのものだ。
 採掘や戦闘、探索といったアクションを行うことで、それは一定の確率でドロップする。
「採集は時間経過で回復するのかな? そうでない場合、討伐ドロップを意図的に狙う必要がありそうだが」
 生憎と今回のアクションでイズルはエモ・アンバーを入手することは出来なかった。
 しかし、見ればきうりんの横には小石サイズのそれが落ちているではないか。
「おう、こっちも出たぜ!」
 草原に穴を掘っていた『自称送り狼』リコリス・ジン・ローア(p3x009236)が声を上げる。彼の広げたボストンバッグにエモ・アンバーを投げ入れながら、イズルはさてと顎に手をあて思案した。
「今の内に交戦し、強さを確認しておきたいね。大群に絡まれてからお試しするのは油断が過ぎる気がするよ」
 そう告げたイズルは、草原の先へ視線を向ける。
 景色が揺らいでいるせいで、はっきりとしないが、どうやらそこには森や川があるらしい。

 鬱蒼と茂る木と木の間を、1匹の兎が駆け抜ける。
 長い耳を揺らしながら、周囲の僅かな音を拾って。
 水のせせらぎ、草木のざわめき、何かの足音。
 そして、誰かの怒鳴り声。
『あぁ、もう! また黒! 黒、黒、黒! こっちは赤黒いけど、もっと色んなカラーが欲しいのに!!!』
「こんな大声出してたら、狼さんにたべられちゃう。Umm……侭ならぬ世の中、なの」
『あなたと踊る』フィライト(p3x006523)は、長い耳をぴこぴこと揺らし、声の方へと駆けていく。

●エモ・アンバー
 きらりと7つの光が瞬く。
 空気を引き裂き、弧を描きながらそれは宙を疾駆した。
 森の木々より顔を覗かす半透明のゴーストへ、7つ光は同時に着弾。
「援護はするから、先にそいつから片しちまえよ。後がつっかえてるぜ」
 咥え煙草の煙を燻らせ、ストレンジはそう言った。
 草原を抜け、森へと近づく一行の前にゴーストや骸骨騎士の群れが姿を現したのは、今から数分前のこと。
 まるで森から滲み出るように、それらは次第に数を増しているようだ。
 ともすると、戦闘の気配を察知して集まって来ているのかもしれない。
「こうなってしまっては仕方がない、今を憂いるよりもこの状況を良くする為に行動するとしようか」
 1歩、強く地面を踏みしめながらベネディクトは刀を一閃。
 白い軌跡を描く斬撃が、ゴーストを2つに引き裂いた。
「だったらまずは数を減らさなきゃならねぇ。孤立してるヤツから叩くぞ」
 Teth=Steinerが腕を振るえば、視線の先で景色が歪む。
 骸骨騎士を囲むように、展開された小規模な結界。その内部で、極小規模な爆発が起きた。
 超新星爆発。
 ならば、骸骨騎士の腹を穿ったそれはクォークか。
 ほんの一時、結界が解ければ消え去るものだとしても、それはまごうことなき天体の一種である。骸骨騎士は体を焼かれ、重力に押しつぶされるようにして、その存在を消滅させた。
 けれど、敵の数は多い。
 次から次へと、森より出でる泥人形にTeth=Steinerは思わず舌打ちを零す。
 直後、戦場にどこか陽気な歌が響いた。
『それはお茶会のどこにもないワイン♪ それでもそれを食らってしまえば、毒に苦しめられ乱れて燃やされる♪』
 旋律とは裏腹に、仄暗さを感じさせる歌詞。
『さぁ! ワインはいかが?』
 うさぎてゃんの歌声が、泥人形の動きを縛る。
 身動きの取れない泥人形へ、ベネディクト、ストレンジ、Teth=Steinerの3名が同時に攻撃を仕掛け蹴散らした。
 胴を裂かれ、腹部を穿たれ、眉間に穴を空けられて、泥人形はどちゃりと地面に崩れ落ちる。
 だが、そんな泥人形の残骸を踏みつけ、骸骨騎士が現れた。
「またか……陽が落ちるとさらに数を増やすんだろう? なかなか面倒な手合いだね」
 7色に瞬く光刃を、骸骨騎士へと差し向けながらイズルは周囲を見回した。
 敵の数は最初期よりも減っているが、このまま対応し続けていてはキリが無い。ほんの少しの情勢の変化で、一気に不利な状況へ陥りかねないという危うさもある。
「その分エモ・アンバーも回収できるのだろうけど、大群に絡まれてからお試しするのは油断が過ぎる気がするよ」
「あぁ、ったくもう……どうして石ころとモンスターと画家を相手することになっちまったんだろうなぁ」
 光刃に抉られ、骸骨騎士が地に伏した。
 転がり落ちたエモ・アンバーを拾い上げたリコリスは、それをバッグの中へと納める。
 戦闘に巻き込まれないよう、姿勢を低くし素早く戦場を駆ける姿は、さながら野生の獣のようだ。
「なぁ、そろそろ休憩を挟んだ方がいいんじゃねぇの?」
 くたびれた様子でリコリスは言う。
 なるほど、彼の言うことはもっともだ。モンスターたちが現れてからこっち、戦い続けているせいで、ダメージも蓄積し始めている。
「もう少し東へ進んだところ……森と平原の境目付近に、ゴーストが近寄っていない場所がある」
 そこを目指してみるのはどうかな?
 なんて、イズルの提案に異を唱える者は誰もいなかった。

 川の畔に座り込み、リコリスはボストンバッグの中身を覗く。
 中身はすべてエモ・アンバーだ。モンスターの群れと遭遇したこともあり、既に20近くの石が集まっている。
「結構、赤めの色になってるのはあれか? 皆の戦意が高かったからか?」
 1つ手に取り、陽に透かしながらリコリスは言う。
 彼の言う通り、見ればエモ・アンバーは琥珀色よりわずかに赤みがかっていた。とはいえそれも、時間を置けば元の色に戻るのだろう。
「大丈夫か? あまり無理はしない様にな。休めるうちに休んでおくと良い」
 サイバーなテントを設営しながらベネディクトは仲間たちを見回した。
 ダメージを負っているものもいるが、そちらはきうりんが既に治療に当たっている。幾らか休憩を挟めば、また探索に出られるようになるだろうか。
「はーい、みんなー! きうり食べて! 美味しいから! 後、傷も治るよ!」
 地面より生えた緑の蔦に、翡翠色の青果が実る。
 凝縮された生命力の輝きが、それは僅かに光って見えた。
 1本、それを手に取りうさぎてゃんはひと口齧る。瑞々しく、滋味に溢れた味わいが、舌に広がり思わず頬がほころんだ。
「こっちも食べる?」
 そういってきうりんは、自分の腕を掲げて見せる。
「……お、お腹いっぱいだから、今はいいかなぁ、って」
「そっか! お腹が空いたら遠慮なく言ってね!」
「はぁい」
 上手く笑えていただろうか。頬が引き攣っていなかっただろうか。
 アイドルとしての在り方を、彼女は決して崩さない。

 一方、そのころ森の中。
「ね、ね。協力しよ?」
「協力ぅ? この状況で協力って何よ!?」
 こてんと小首を傾げて問うた兎に対し、絵具塗れの男が怒声を張り上げる。
 木と木の間を潜り抜け、走る2人は両手に幾つかのエモ・アンバーを抱えていた。
 2人合わせて、20に近いそれを落とさないように、しかし必死の形相で2人は何かから逃げる。
「この状況で協力って、どっちかが囮になるってことかしら!?」
「違うよ? 護る代わりに一緒に探すの。めーあんでしょ!」
「あんな化け物に追われてるんじゃなければねっ!!」
 2人を追うのは、ゴースト、骸骨騎士、泥人形が融合した異形の怪物であった。
 全体としては騎士のような姿をしているが、1歩進むごとに泥を零し、木々をなぎ倒し、時に背筋に寒気を覚える怨嗟の悲鳴をあげるそれに、フィライトとベイクシーは追いかけ回されているのである。
 異形の戦士が腕を振るう。
 泥塗れの大剣による斬撃。フィライトは、ベイクシーの腿を蹴飛ばし、斬撃の射線から彼を逃がした。
「や、あぶな……ねぇ、仲間がいるって言ってたわよね?」
「うん。兎はね、あんまり攻撃は好きじゃないよ。でも、フィーには頼れる仲間がいるの」
「だったらそこへ逃げ込みましょ! それなら協力してあげるのもやぶさかじゃないわ」
 ベイクシー個人で使うのなら、20前後のエモ・アンバーを確保できれば十分だ。けれど、このまま異形の戦士に追い回されては、1つも持ち帰れずに命を落としかねない。
 フィライトを信用したわけではないが、とはいえ背に腹は代えられないのである。
「ベイクシーは、フィーのおともだち。なら、護るのも、とーぜんだよね?」
 こっち、と。
 ベイクシーを先導するよう、フィライトは森を跳びはねる。

●孤島戦記
 助けを求める声がした。
 その声に誘われるように、きうりんは森の奥へと向かう。
 巨躯の騎士に追われていたのは、フィライトとベイクシーだった。
 2人を助けるべく、きうりんは地面を蹴って跳躍。騎士の眼前に跳びあがると、その顎に向け膝蹴りを叩き込んだ。
「はーい、エサですよー!!」
 騎士はビクリともしなかったが、ターゲットをきうりんへと変える。地

 拠点としてセーフエリアの周辺。
 エモ・アンバーの採取に励む一行は、尋常でない地面の揺れを察すると臨戦体制を整える。
「ベネディクトくん! 怒りの引き継ぎおねがい!」
 そう叫ぶなり、きうりんは地面を転がった。
 異形の騎士に斬られたのか、きうりんの両腕は斬り落とされて存在しない。
「あぁ、任された。ゆっくり休んでいるといい」
 剣を手にしたベネディクトが前に出る。
 きうりんを襲う異形騎士の側頭部へ向け、鋭い刺突を繰り出しながら、背にフィライトとベイクシーを庇える位置へと移動した。
「あ、アンタいつぞやの!?」
「おや、こんなところでお会いするとは」
 異形騎士へ向け光刃を放つイズルの元へ、ベイクシーが駆け寄った。
 その背へ身体を隠しながら、ついでとばかりにイズルがドロップさせたエモ・アンバーを回収。きうりん、フィライトと3人揃ってさらに後方、セーフエリアへと逃げていく。
 それを見送りTeth=Steinerとストレンジがベネディクトの援護へ回る。
 攻撃を叩き込みながら、Teth=Steinerは舌打ちを零した。
「硬いぞ、こいつ」
 身体の大部分を構成している泥が衝撃を緩和するのか。
 思ったようにダメージを与えられないでいる。
「まぁ、その分動きも大ぶりだから読みやすいがよ」
 剣を握る騎士の手を撃ち、ストレンジはそう言った。
 
 敵が異形の騎士1体とは限らない。
 森の各所から、ゴーストが、骸骨騎士が、泥人形が戦場へと集まって来た。
「雑草美味しい! 雑草美味しい!」
 うち1体をパンチで殴り倒しつつ、きうりん、フィライト、リコリスの3人はベイクシーと共にセーフエリアを目指した。
 次々と襲い来る敵に、体力は徐々に削られていく。
「さぁ! 進め! 私のボルケーノ♪」
 うさぎてゃんの歌声が響けば、業火の柱が地面を割って噴き上がる。
 その光景は、まるでそういうステージギミックのようでさえあった。
 だが、敵の数が多すぎる。
 時刻はそろそろ夕方に差し掛かっているため、エネミーの出現率もそれに伴い上昇しているのだろう。
「わわっ、何体か抜けて来たよっ!」
 きうりんが注意を喚起するが、ほんの一瞬間に合わない。
 きうりんたちを逃がすべく、駆けだしたのはリコリスだった。脳内で振ったダイスの目は【77】。スリ―セブンには1つ7が足りないが、数値としては上々だろう。
 自身が運に恵まれていると踏んでの特攻。
 ただし、脳内ダイスの出目は、行動判定の成否に何ら影響を与えるものではないのだ。
「くっ……オレもここまでか、あばよ…相棒」
 リコリスが泥人形に飲み込まれる。
 ボストンバックのチャックを閉めて、リコリスはそれをフィライトへ向け放った。
 弧を描き飛ぶボストンバックを、フィライトがキャッチしたのを見届けて、リコリスは満足そうに笑った。
「そいつのこと……頼んだぜ」
 無数の槍が、1体の泥人形を刺し貫く。
 それと同時に、【死亡】判定を受けたリコリスの体は空間に溶けるようにして消えていく。

「ベイクシーたちは安全な場所まで逃げ切ったかな?」
 そう問うたストレンジへ、Teth=Steinerは苦笑を返す。
「人の心配をしている場合か?」
 血に濡れた右腕を押さえ、呻くようにそう告げる。
 ベネディクトの援護に回るTeth=Steiner、ストレンジ、イズルの3名はそれなりに大きなダメージを負っていた。最前線で戦うベネディクトに至っては、既に【死亡】直前といった有様だ。
 だが、その甲斐あって異形の騎士の体力も、残り僅かまで減らすことが出来て居た。
「受けよ、竜爪の一撃を!」
 一閃。
 白光と共に放たれたその一撃が、異形騎士の右足を半ばほどから断ち切った。
 地面が震え、抉られた土砂が舞い散る中、異形の騎士は姿勢を崩しその場に倒れた。その際、ドロップしたエモ・アンバーを回収しベネディクトは踵を返す。
 目的は異形騎士の討伐ではない。
 必要数のエモ・アンバーを回収できればそれでいいのだ。

 必要数のエモ・アンバーは回収できた。
 けれど、一行は孤島での一拍を余儀なくされている。
 なぜか?
 簡単なことだ。セーフエリアの周辺に、適性体が多数出現したからだ。それらがセーフエリアに入って来ることは無いが、群れの最中を突っ切って帰還するのはあまりにもリスキーに過ぎるだろう。

 暗闇の中、蠢くモンスターの群れをベイクシーは絵に描いていた。
「私退廃的な絵とか好きだよ! どんなのだろ!」
「あ、こら、見るんじゃないわ!」
 背後から覗き込むきうりんを、ベイクシーは押しのける。
 けれど、きうりんは動かない。
 目を丸くして、ベイクシーの前に置かれたキャンバスへ熱い視線を注いでいるのだ。
「ったく、気楽なもんだ。俺は絵を描くより、かわい子ちゃんとアバンチュールを決めたいね」
 帰ったらそうするか、なんてリコリスは言う。
 1度【死亡】した彼だが、船に設置されていた【サクラメント】で蘇生し、合流を果たしていたのである。
「キミ……それは」
「……死亡フラグじゃねえぞ?」
 イズルの疑問を否定して、リコリスはエモ・アンバーを手に取った。
 暗闇に光る琥珀色。
 綺麗な色だ。
 持ち主の感情により色を変えるエモ・アンバー。
「……なるほどね」
 そのうち1つを手に取っているフィライトは、何だか楽しそうにも見える。
 その感情に呼応してか、エモ・アンバーはじわりと黄色く染まっていった。

「よぉ、お前さん、顔料が品薄だからってんで、この島にやって来たんだろ?」
 ベイクシーにそう問いかけたTeth=Steiner。
 その近くには、ベネディクトやストレンジャー、うさぎてゃんも集まっている。
「そうよ。ったく、普段は簡単に手に入る顔料が、ほんの一瞬で在庫切れでっすって」
「なるほどなぁ。自白剤の素にもなるモンが品薄ってのは、なんかきな臭さを感じねぇか?」
 ほんの一瞬、思案するようにベイクシーは口を閉じ……。
「知らないし、どうでもいいわね」
 それより石を寄越しなさいよ。
 なんて、不遜な態度で彼はそう言い放つのだった。

成否

成功

MVP

きうりん(p3x008356)
雑草魂

状態異常

リコリス・ジン・ローア(p3x009236)[死亡]
自称送り狼

あとがき

お疲れさまでした。
エモ・アンバー×50を無事に獲得。
依頼は成功となります。

この度はリスクエストありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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