PandoraPartyProject

シナリオ詳細

殴り合いの確かめ合い!

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●再び集まりし者達

 Tower of Shupell。
 ローレットの皆で上り詰めようという、神の塔。
 クレマァダ=コン=モスカ (p3p008547)とフェルディン・T・レオンハート (p3p000215)は以前、九重市のコミュニティセンターで決意を固めるために決起会を開いて絆を深めた。

 だが、フェルディンの言葉を少し思い出してしまったクレマァダ。
 彼は塔の頂上に登り詰めた後、『混沌世界と元の世界を行き来できるようにしてほしい』という願いを叶えてもらうつもりでいる。
 それはクレマァダもしっかりと把握している。行き来できることは何よりも喜ばしいことだろう。

 ……しかし、フェルディンはその願いを告げようとする前にこう言った。
 『元居た世界に帰ること』が本来の願いだった、と。

「……ふむ……」

 願いだった、つまり過去形。
 これでは『帰りたくない』と言っているのも同義だ。
 どういうことなのかと考えるクレマァダが出した、フェルディンへの問いかけは――。


●殴り合いで芽生える友情もあるよね!

「というわけでやってきました、境界のめっちゃ戦いやすそうなところ」
「なんで……???」

 今回の舞台は境界図書館から行ける『異能力世界』、エルグランデ。
 境界案内人にバトれるなら何処がいい? と聞いたところ、戦争も起きてて異能力者達同志がバトルしあっている都合の良い世界だとおすすめされたので、人目のつかない荒野にフェルディンを連れてやってきていた。

 当然ながらフェルディン、頭にクエスチョンマークがいっぱい。
 なんでこんなところに、といった疑問しか浮かんでいない。

「いやなに、以前聞いた願いの話があったろう? アレ、もうちょっと詳しく知りたいと思ってのう」
「えーと……詳しくと言っても、僕の願いは自由に行き来する、だよ?」
「うむ、確かにそうじゃな。じゃが、やっぱり気がかりなもんは気がかりでのー」
「は、はあ……?」

 ええと、と少し困った様子のフェルディン。ボクは以前言ったとおりなんだけどなぁ? と首を傾げているのだが、そんな様子を物ともせずにクレマァダが拳を構えた。

「もう面倒くさいし、一発ドツき合ってスッキリするのじゃ!」
「乱暴すぎないかい?!」

 ――こうして、チーム結成前の模擬戦が始まるのである!!

NMコメント

リクエストありがとうございます、御影イズミです。
今作はリクエストシナリオとなっており、参加できるのは今回リクエストをしていただいた方のみとなっております。予めご了承ください。

また、非常に相談日数が少ないですので、プレイングの投入をお忘れなきよう!

◆背景
境界世界「エルグランデ」の人気のない荒野にて、二人で殴り合いします。
本音を言い合ってください。

◆最終目標
願いを拳に乗せ、相手にぶつける。

◆その他
何故その願いを語るのか、何故その願いを叶えたいのか。
詳しい情報をいただけるとより深く描写出来ますので、出来るだけプレイングに書いていただけると助かります。

それでは、良い殴り合いを!

  • 殴り合いの確かめ合い!完了
  • NM名御影イズミ
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月19日 22時05分
  • 参加人数2/2人
  • 相談1日
  • 参加費---RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司

リプレイ

●闘いの真意
「良いか、フェルディン。武人には2種類いる。信念や心情、能力の話ではなく……闘うことが、好きか、そうでないかじゃ!」

 突然の呼び出しに対して疑問を上げていたフェルディン・T・レオンハート(p3p000215)に対し、クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)は武人とはなんたるかを語る。
 当然、クレマァダは闘い大好き。命を天秤にかけて闘うことに対しては、とにかく心が躍って仕方がない!

「して、お主はどちらじゃろうな、フェルディンよ」
「闘うことが好きか、そうでないかで言うなら……ボクは、どうでしょうね」

 闘いとは常に、誰かを傷つけ、誰かに傷つけられるもの。身体的にも精神的にも削り合いが発生し、どちらかが倒れるまで続くものだ。
 立っていた者が勝利、倒れていたものが敗北といった上下が決まる行為なんてものは……正直、フェルディンにとっては『どうでもいい』。
 ただ彼は、傷つけること、傷つけられることだけはあまり好きではないといった表情を見せていた。

 クレマァダはその闘いが好きだという。
 彼女にとって闘いとは命の削り合い、上下の決定だけではなく、拳に自分の本音を乗せて相手に伝えるという手法にも使えるからと笑った。

「だからな、フェルディン。今日は――武器を持って、遠慮なく来い」

 輝く黄金の瞳は鋭く、フェルディンを射抜く。その目つきは普段の柔らかで和みのある目ではなく、まさしく武人の瞳。彼の本音を必ず聞き届けようという、仲間の意思を持っていた。
 対してフェルディンは海のような青い瞳でその視線を受け止めている。黄金の瞳に込められた彼女の意思をしっかりと知って……この闘いは"必要なものだ"と判断した。

「……それなら、逃げる自分ではいたくないね。全力で闘わせてもらう」
「うむ、その意気じゃ。では……」

 そうして、2人の闘いが幕を開ける。


●意思と意思のぶつかり合い

 クレマァダは拳を構え、フェルディンは剣を抜く。傍目から見れば素手で闘うクレマァダの方が不利に見えるかもしれない。
 だが彼女のその目はどうだろう。剣を前にしても物怖じせず、逆にこの手でその剣を掴んでみせようという強気の目を見せていた。

「こちらから行かせてもらう!!」

 クレマァダは一歩前に踏み出して、その勢いをつけて拳を振るう。だがこれは、形式上は組手であるので怪我をさせるのが目的ではない。
 拳の勢いはギリギリ寸止めに留め、怪我をさせないようにフェルディンの腹に突き立てる。
 しかしその風圧は拳を止めても止まらないものだ。あまりにも凄まじいためにフェルディンの身体がぐらりと揺れて体勢が崩れる。

 倒れそうになったフェルディンは剣の切っ先を床に突き刺し、完全に倒れないように支えを作って上手く体勢を立て直して再びクレマァダと向き直る。
 隣で見たことのある拳の威力ではあるが、いざ自分が受けてみると流石に想像以上なもので。

 クレマァダの連続攻撃に対してフェルディンは防戦一方が続いていた。
 彼女の攻撃は隙が見当たらず、剣を差し込むような余裕が何処にもない。
 フェルディンという人物に対してどのように動けばいいのか、どのように攻撃を当てれば彼が動きを止めるかといった、行動に対する行動の挟み方が上手いのだ。

 おかげで、フェルディンは彼女に反撃を行う事が出来なかった。
 だからこそ、今、ここで言おうと決めた。

「……ボクは、キミにいつも魅せられるばかりだったね」

 フェルディンは攻撃の嵐が続く中、思い出していた。彼女との出会いから、今までのことを。
 クレマァダ=コン=モスカという女性の、その在り方を。

 言葉でも、武芸でも、様々なことに対してクレマァダという女性には魅せられてばかり。
 それを高嶺の花を見上げるが如く、手を伸ばしても届かないものの輝きを眺めるだけで良かった。
 彼女の隣には、自分ではまだ到達できない。だからこそ、遠くからでもいいから見える場所からずっと眺めておくだけでいいと。

 ――それだけで、良かったはずだったのに。
 いつの間にかフェルディンの気持ちは変わっていた。

「別の気持ちに変わったのは、いつからだったのかはわからないけど――」
「言うな! それ以上は……それ以上は!!」

 聞きたくないと、声を荒げる。決して答えることはないと答えを示して。

 クレマァダは言う。人外跋扈する混沌で、それでもなお……自分は"手加減をする"側の生き物だと。
 確かに慢心や傲慢の類でもある。だが陸の生き物達の理解の及ばない海という1つの異世界において、なおそれに足る捕食者としての拭いきれない蛮性であり、またそれを理性と知性ある『ヒト』として扱うための知恵でもあるのだと。

 連続する攻撃はフェルディンの身体を確実に掠め、ダメージのない一撃を与え続けていた。

「ここまでしても、まだお前はついてくるつもりなのか?」

 その問いかけに対してフェルディンは軽く首を縦に振った。
 ちゃんとした理由があるからこそ、ボクはここにいると。

「――ならば、その覚悟。この技を前にしても見せられるかっ!?」

 コン=モスカの武術、絶海拳のうちの1つ『消波』。それを思いっきり、ぶつける勢いでフェルディンに放った。
 消波とは即ち、無。相手の防御を逆位相の波で打ち消した上で放たれる技術であり、絶対的な一撃だ。

 今までの連続攻撃は全て手加減が加わっていた。だからこそ避けることに精一杯でも、ダメージは1つも与えられなかった。
 だがこれは、これだけは確実の一手を決めるという覚悟が込められていた。


 クレマァダの拳は大ぶりではあるが、威力はもともと天秤の片割れを喪った今では……実践的ではない。
 フェルディンにとっては挫けそうになるような痛みが、全身を駆け巡る。脳がこれ以上受ければ限界だと警鐘を鳴らす。
 それでも、フェルディンは歯を食いしばった。痛いという感覚を耐えた。これこそが彼女の意思なのだと、受け止めた。
 覚悟を覚悟で受け止めた両者の間の時が、一瞬だけ止まり――……。

「――食らいつくッ!!」

 大技を放った直後、フェルディンは思いっきり突進してクレマァダを地に倒す。
 彼女が起き上がれないように、自分の両の掌を床に叩きつけるようにして覆いかぶさって。
 そして……荒れる息を、少しずつ整えた。

「な、なんじゃあ……お主、やるではないか……」

 驚いたクレマァダは、逃げなかった。
 というよりも、大技の後だった故に身体が硬直してしまい、その隙にフェルディンが突進してきて覆いかぶさったため、逃げるに逃げれない状況が出来上がってしまったのだ。

 大きく呼吸を整えるフェルディンは、自分の心の内に眠る言葉を選びぬいて……クレマァダに言った。

「ボクはどうしても、……どうしてもっ、キミと離れたくないんだ!!」
「な、んーっ!?」

 何故、彼が混沌と元の世界を行き来したいか。
 何故、彼が『帰るよりも自由に行き来したい』と願ったか。

 クレマァダはそれを聞くために、こうして殴り合いの試合を始めた。
 それがまさか、覆いかぶさった状態でそんなことを聞かされることになろうとは、試合開始前には想像もつかなかった。
 おかげでクレマァダの顔は赤く、体温はほんの僅かに上がってゆく。

「いや、えっ……我と離れたくない!?」
「そうだよ! そうやって、ボクは心の底から思ってしまっているんだ!!」
「ほあぁーー!!」

 確かにパーティメンバーが他にもいたあの決起会では言いたくても言えないな! と理解ってしまったクレマァダ。
 こうして2人きりにならなければ、本音は伝えてもらえなかったことだろう。

 一方のフェルディンは……熱い。アツい。身体が、両眼が、心が熱くてたまらない!
 伝えるだけだと言うのに、言葉にするだけだと言うのに、こんなにも近くで伝えることは誰が考えていただろうか!
 先程の拳で当てられた胃から登ってくる液体が、口から少しだけ漏れているのが自覚できるほどに!
 やっと言えた。やっと伝えることが出来た。高嶺の花として見ていた、魅力的な彼女に!

「お、おぉ……ええと、とりあえずじゃな……どいてくれぬか?」
「えっ! あ、ああ、ごめんよ!」

 突然の告白に両者、熱くて近づいているのもままならない状態なので、一度少し離れる。
 呼吸を整え落ち着いたところで、クレマァダは先程の言葉に少し寂しさが浮かんでしまった。

 ……そう、自由に行き来できる理由がそうだとしても……"いざ"があれば、彼は還ってしまう。
 もし還った場合、再び出会う事が出来るかどうかなんてクレマァダにはわからない。
 まだ、彼女自身は天秤の上でゆらゆらと揺れ続けるだけの存在なのだ。

「……ばか者め」
「それでも、これがボクの本音だ」

 ポツリと呟いたクレマァダの黄金の瞳から、雫がぽたりと落ちる。
 大声をあげるわけでもなく、子供のように泣くわけでもなく、ただただ静かにはらはらと涙を流す。
 彼がくれた言葉に、嬉しいという感情と少しだけの哀しいという感情を乗せて。

 涙を静かに流すクレマァダに向けて、フェルディンは離れたくない理由を耳元で囁いた。
 荒野の風が彼の言葉を遮るせいか、2人だけにしか聞こえない。

「……なんと」
「――だから、ボクの願いは『自由に行き来出来る』こと。これだけだよ」

 柔らかに微笑むフェルディンに、よりいっそう涙を流すクレマァダ。
 何が語られたのかは、2人の胸の内に秘められた。

 本音と本音のぶつかり合いは、これにて決着。
 残るは塔を上り詰めるのみ。

成否

成功

状態異常

なし

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