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シナリオ詳細

敬意もなく割られ続けたスイカ、これ以上割られてたまるかと変形合体して無双する(詠み人知らず)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●スイカ割り? いいえ、スイカ割られです!

 夏と言えばスイカ割り。
 誰もが楽しむイベント……かは分からないが、それなりに盛り上がる鉄板イベントだ。
 海の家ではスイカが並び、そのうちの何割かはスイカ割りに使われる。
 そして今も……スイカ割りを楽しむカップルの姿があった。

「右! 右だって!」
「左に5歩! そうそう!」
「通り過ぎちゃったぞー!」

 目隠しをした青年を、仲間達が誘導する声が響く。
 砂浜に置かれたスイカ。
 棒を持った目隠しの青年。
 ウロウロするその姿は、疑いようもなくスイカ割りの正式な姿である。
 鉄帝で出版している「スイカ割り大全第5版」にも書いてあるから間違いない。
 スイカ割りに臨む者は水着を纏ったうえで聴覚以外の全てを遮断し、自身の身長を超えることなき長さの武器を持つこと。
 自身の位置からあらかじめスイカまでの位置と距離を算出することなく、自身の感覚を失うまでその場にて回転すべし。
 なお、挑むにあたっては自己の意思を限界まで捨て本当に信じるべき仲間を見つけること。
 こう書かれた内容は鉄帝のスイカ割りに青春をかける者達に強い影響を与え続けている。
 これはすなわちスイカへの敬意をも示しているのだが……悲しいかな、これらを軽んじる「カジュアルスイカ割り」なるものも現れ始めている。
 この青年もそう、たった5回しか回転していないのだ。
 しかも最初にスイカの位置を視認している。
 こんなスイカに何の敬意もないスイカ割りが行われれば……こういった事態が起こるのも当然であっただろう。

「へっ?」

 ゴンッ、と。何かに殴られた青年が砂浜に沈む。
 それが幾つものスイカが合体変形したかのような姿を持つモンスターであったと、誰が理解できただろうか?

「う、うわあああ!」
「スイカが! スイカが襲ってくる!」

 砂浜を超高速移動するスイカモンスターに人々は逃げ惑い……浜辺からは、すっかり人が居なくなる。
 静寂が支配した砂浜を見回すと……スイカモンスターは、放置されたスイカを取り込み何処かへ消えていった。

●やっぱりスイカ割りでしょ

「別に私は食べ物に関する珍依頼担当ってわけではねーんですが」

 あまりにも今更な事を言いながら 『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201)は咳払いをする。

「とある海岸で、人を襲うスイカが出るという話が広まってるです」

 依頼人は海の家の店主たち。
 人を襲い空を舞うスイカ、そしてその首魁と思わしき合体スイカとしか言いようがない姿のモンスター。
 夏真っ盛りのこの時期に、そんなものが出てしまっては海の家は商売あがったりだ。

「しかも面倒な事に、首魁と思わしきモンスターはスイカ割りをすることでしかおびき寄せられないみてーです」

 言いながらチーサは「スイカ割り大全第5版」をペラペラと捲る。
 要は参加者全員が水着になること。
 長すぎず短すぎない武器をもつこと。
 聴覚以外の感覚を遮断すること。
 平衡感覚を確実に失う程度に回ること。
 信じるのは自分ではなく仲間。
 応援する仲間はちゃんと妨害役も混ざり、事前にそれを挑戦者に教えないこと。
 戦いに挑む者の食事はトウモロコシ、あるいはかき氷である。挑む前に心残りを残してもならない。

「……正直わけわかんねーですが、この作法に反するとモンスターが強化されるという法則が分かってるです」

 作法に反する度にモンスターの能力は2倍になっていく。
 それが本当なら、最大で128倍にまでモンスターの能力が上がってしまう計算になるが……とにかく、そう思えてしまうくらいに強くなるのは事実ということらしい。

「ま、そうだとすると普通に作法に則れば問題ねーということでもあるです」

 海の家の主人たちは避難しているのでトウモロコシもかき氷も出せはしないが、幸いな事にコックは此処にチーサがいる。

「必要なものは依頼の経費で全部出るです。しっかり作戦を整えて挑むといいのです」

GMコメント

タイトルに特に意味はありません。事実でもないです。なんてこったい。
合体スイカモンスターを倒せば依頼は終了です。
スイカ割りが白熱した頃にまずは手下のスイカモンスターが現れると思われるので、ガッツリ食べてガッツリスイカ割りを楽しむのが重要です。
海で遊びたいなら事前に遊んでも大丈夫です。本にも書かれてるから間違いない。

ザコスイカは嚙みつきと体当たり、合体スイカ怪人はスイカパンチとスイカキック、スイカ関節技にスイカ汁発射とスイカ蔓触手を使います。なんだこいつ。はい、ネタモンスターですね。がっつり遊びを含んだ戦闘プレイングで大丈夫です。

なお、チーサは特に指定が無ければ特に何の変哲もない水着で調理役として参加しています。
配置換えなどはプレイングにてご指定ください。戦闘に混ぜても役には一切立ちませんし足手纏いですが死にもしません。
そういうシナリオだとご理解いただけると楽しいことになると思われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 敬意もなく割られ続けたスイカ、これ以上割られてたまるかと変形合体して無双する(詠み人知らず)完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
彼女(ほし)を掴めば
チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)
優しくて不確かなすべて
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
シュロット(p3p009930)
青眼の灰狼

リプレイ

●ビーチの決意

「俺は過去の記憶がなくて恐らく鉄帝出身だと思ってるんだが、この国はスイカの怨念がモンスターになったり「スイカ割り大全第5版」なんてモノが出てるのか?」

ビーチに響く『青眼の灰狼』シュロット(p3p009930)の独白にも似た言葉は、まともな人間であればきっと誰もが思うことであるに違いない。
 しかし、しかしだ。

「なぁプレーティ、この国はそういうふざけたような事が当たり前に起きるのか?」

 シュロットに問われたプレーティは黙って……しかもちょっと目を逸らしながらも頷く。
 
「……そうか、起きるのか」
「鉄帝じゃあ普通でありますよ」
「普通なのか……」

『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)にまで肯定され、シュロットは納得せざるを得ない。
 そう、鉄帝とは結構そういうことが起こる。
 むしろ、変なスイカが暴れてるくらいは普通の日常の範疇に入るかもしれない。

「とにかく!」

 まだ微妙に納得できてない風のシュロットをそのままに、エッダは叫ぶ。

「何事もやるからには全力。騎士(メイド)として吐くまで回って見せるでありますとも!! このおニューの水着で!!」
「吐いたらトウモロコシを喉奥にねじ込んでやるです」
「あ、焼きもろこしなら私も作れるのよ」

 トウモロコシを焼きながら『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201)がそんな事を呟くが……そう、水着である。
 一緒にトウモロコシを焼き始める『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)も水着。全員が水着である。
 そんな中にはいつもの服とは違う、何処か可愛らしい色合いのワンピースタイプの水着を着ているプレーティの姿もあった。
 その視線はチラチラとシュロットへと向けられているが……トランクスタイプの黒い水着を着たシュロットは、その視線に気付いてもいない。

 そしてエッダは……ビキニタイプの水着であるのは間違いないが、メイド……もとい騎士(メイド)としてのこだわりなのかエプロンがくっついている。

「……おい誰だ今メイドって言ったの。メイドじゃねえってんだろ、騎士(メイド)だっつってんだろコラァ」

 誰も言ってない。空耳である。
 それはさておいて。

「鉄帝の人の考える事ってよくわからないこともあるけれども、やり方はちゃんと守ってみようと思うの」
「楽しみ方は人それぞれだとは思うのだが、手抜きも余りに過ぎれば白けてしまうというのは……理解できないわけでは無いな」

 胡桃は白いスクール水着、『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は何やら幸運を呼びそうな感じの水着だ。
 具体的にはゲオルグは紫ラメのビキニパンツだ。微妙にカッコ悪いが不思議なことに似合ってはいる。
 そして胡桃の白スクール水着にいたっては去年のものだ。
 そう、去年のもので全く問題がない。それが良いか悪いかは本人のみぞ知る。
 ただ、恐らく黒の競泳水着っぽいチーサと取り換えても然程問題はないと思われた。

「割られ方に拘りがあるなんて、スイカにはスイカの死生観があるのかしらねぇ」
「夏だもの。スイカだってそういう気分にもなるわ」

「それより海よ、遊ぶわ!」と叫んでいる『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)にチュチュ・あなたのねこ(p3p009231)は「そうねぇ」とちょっとばかり適当な返しをする。
 そんなチュチュの水着はスカート付きの黒のワンピース型水着。頭には鍔の大きな麦わら帽子を被っており、帽子と水着にはそれぞれイミテーションの猫耳と猫尻尾があしらわれている……そんなチュチュのこだわりが見える装いだ。
 対するヴィリスは白を基調とした特徴的な水着に、どことなくペンギンをも思わせる夏らしい色合いの上着。更にはシュノーケルまで装備している。

「夏といえば海!海といえばスイカ割り! いやぁ、懐かしいなぁ。スイカ割りなんて小さい頃家族で海に行った時以来だよ」
「食べ物ノ思イ出カ……美シイナ!」
「あの時はまだ棒を振り下ろしても割れなかったからね。今日はそのリベンジだー!」

『正義の味方(自称)』皿倉 咲良(p3p009816)の水着は青のグラデーションカラーの実可愛らしい水着で……『甘い筋肉』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)の水着はなんだろう。よく分からない。たぶんフンドシであると思われる。違うかもしれない。

「さて、と。幸い、作法などはわかっているのだしここは私達が全身全霊のスイカ割りをするしかあるまい」

 ゲオルグの言葉に全員が頷き、マッチョがピクリと反応する。
 そう、実に楽しげな装いの一団ではあるが……此処にはただ単に遊びに来たのではない。
 全力かつ全身全霊でスイカ割りを楽しみ、結果としてスイカモンスターを撃破する為にやってきたのだ。

「ウオオオ……! 許サン、絶対二許サンゾ……!」

 怒りが再燃したのか、マッチョが低い唸り声のようなものをあげる。
 そう、マッチョには許せないのだ。
 食べ物を愛するが故の怒り。故にマッチョは激怒した。故にマッチョは決意した。
 このスイカ割りに挑み、必ずかの輩を引きずり出してやるのだと。
 怒るマッチョの視界の外で……チュチュのスカートの下に、微妙に何かしらの疑惑がチラ見えした気がしたが……今のところ、誰も気づいてはいない。

●スイカ割るべし

「プリマの腕の見せ所ね! いつもより多く回っておくわ‼ 慣れてるせいで目が回りづらい私だけれどいつかは目も回るでしょう!」

 シュノーケルの上から目隠しをしたヴィリスがクルクルと回る。
 腕の見せ所というだけあって実に見事な回転だが……流石に数分も回ればフラフラになるようだった。

「目が回ったわ! こんなにふらふらするのは踊り始めた時以来ね!」

 足元がちょっとおぼつかなくなっている様子だが、数分も回っていただけで相当なものではある。

「スイカはどこかしら? 割るわよ!」
「右ダ! 右ニイクノダ!」
「そうそう! そのまま三歩進んで四歩さがって!」
「ン……ダメ、そっちじゃないの」

 マッチョや咲良の元気な掛け声やチュチュのなんだか艶っぽい応援もはかなく、ヴィリスはスイカ割り失敗。
 具体的にはパワーが足りなかっただけなので実質成功であると言えるが……。
 
「ルールにある「自身の位置からあらかじめスイカまでの位置と距離を算出することなく」ってのが地味にギフトが活用できなくて面倒だな」
「算出したら目隠ししても辿り着く輩が出るからじゃないの……?」
「もっとカジュアルスタイルな方が大衆受けすると思うぞ」
「そこは鉄帝だし……」

 カジュアルスタイル? それってどんな戦闘スタイル? ジャブで繋いでローキックで追い詰めてく感じ? みたいな返答が帰ってくるのが鉄帝クオリティだ。
 シュロットはプレーティに頷きながら、かき氷をシャクリと食べる。
 失われた記憶が蘇ってくることはなかったが……これはこれで楽しいものだと、そんな事を思う。
 そんなシュロット達の視線の先では、エッダがスイカに挑んでいる。

「自分の武器は、この自慢の拳。当てにくい不利は承知でありますが、同時にこの重量……半端な木の棒など比較にならぬ質量。
即ち触れれば砕ける一撃必殺。リーチを補ってあまりあるこの有利……勝ちは見えたでありますね」
「そうかしら……」

 エッダに目隠しをしていた胡桃がそう呟くが、エッダはもう聞いていない。

「行くぞオオォォォォァァァ‼」
「ああっ、誘導も聞かずに突っ込んでいくの!」
「楽しんでるなあ。お、そこ右だぞ」
「右でありますねうぼあああああ!」

 ゲオルグの嘘誘導に見事に引っかかり海に飛び込んでいくエッダを見て、ゲオルグは満足そうに頷く。

「こういうことか。相手によってちゃんとナビゲートしたり、わざと嘘を教えるようにすれば面白みが増すというわけだな」

 頷くゲオルグを、頭にワカメを……さながら酔っ払いのお父さんを思わせる形でくっつけているエッダがジト目で見ていたが、これもまたスイカ割りの面白さであるのは間違いない。

「よし、次は私だな」

 そうしてゲオルグも平衡感覚を失くすまで回り、仲間の声を聴くが……これが中々に恐ろしい。

「そこであります、右いってー、左いってー、ひざまずいてー、あの日犯した過ちを思い出して頭を抱えてー」
「大宇宙ノプリンヲ信ジロ!」
「あんっ。焦らないで、そう、もう少し右ぃ……」
「そうそう! そのまま三歩進んで四歩さがって!」
「おい、これ本当に仲間の声を信じていいんだな!? ちゃんと妨害役以外に仲間の声が混じってるんだな!?」

 そもそも「あの日犯した過ちを思い出して」はスイカ割りの指示ではない。
 そして三歩進んで四歩下がったら一歩後退している。
 フラフラと色んな方向へ導かれながらも全力で振り下ろしたゲオルグの棒は見事に流れ着いていたヤシの実を叩いたが……これがヤシの実割りであれば見事成功だっただろう。

「ン……目隠しされて命令されるのって、ゾクゾクするわね?」
「女同士でもそういうのって有効なのかしら……ていうか、わざとよね? それ」

 チュチュに目隠しをしていたヴィリスがそんな事を呟くが、チュチュは目隠しをされたまま微笑む。

「うん? ええ、わざとやってるわ。だって遊びだもの。ふふふっ」

 そう、楽しみ方はひとぞれぞれ。
 たとえチュチュのスカートの下に疑惑があろうとも、それもまたそれ。
 少し翻るスカートによって疑惑が深まろうとも、それはそれなのだ。
 

●登場、スイカ怪人

「おお、意外と分からない……! スイカどこー!?」
「もう少し右だな」
「南南東でありますよー! そう、そこから空中三段ジャンプ!」
「ヌオ!? 離レテイルゾ!? ソッチハ左ダ!」
「分からない! もっと分からないよ⁉」

 咲良がフラフラと棒を持って歩き回るが、なんとかスイカの近くへ行ったり、離れたりと実に楽しいことになっている。
 途中でシュロットがプリンに見事なスイカ割りならぬプリン割りを決めそうになるといったこともあったが……スイカ割りは実に盛り上がっている。ちなみにチーサは回転し終わった時点でその場に倒れている。

「うーん……よし! ここだ!」

 咲良の棒が振り下ろされ、スイカを叩き割った、その瞬間。砂の中から空飛ぶスイカが現れ咲良の頭をガブッと噛む。

「あいったああああ!?」

 その悲鳴を合図にというわけではないだろうが、次々と現れるスイカモンスターに仲間達が一気に纏う雰囲気を真剣なものへと変える。

「いくわよ、シュロット!」
「ああ!」

 プレーティとシュロットも自分たちの周囲に現れたスイカモンスターに攻撃を開始するが……ちゃんと作法を守っていたせいか、強さはそれほどでもない。

「プレーティの奴上手く敵を蹴り飛ばしてるな。伊達にラド・バウでそれなりに人気のある闘士をやってる訳じゃないって事か……」

 そんな感想を漏らす余裕すらあるほどだ。

「アントレでザコスイカを蹴り……っていつもの剣靴じゃなくて海用だったわ!?」

 叫ぶヴィリスの、それでもあきらめない蹴りがスイカモンスターを砕き、ゲオルグの光翼乱破がスイカモンスターを切り刻んでいく。
 ザコ。そんな言葉が全員の脳裏に浮かぶが……勿論、それでは終わらない。
 砂の中から巨大な合体スイカ怪人がその姿を現し、四方八方へと蔓触手を伸ばしていく。

「フフ。もしかして、いただかれちゃう?」
「強ぇと余裕があって羨ましいのです」
「ちょ、やっ、離せぇぇぇっ!」
「ええっ!?」
「コャー!?」

 かなりの範囲へ伸びた蔓触手がチュチュやチーサ、咲良やプレーティ、ついでとばかりに胡桃をも捕らえる。
 意外に力強い蔓触手はしっかりとチュチュ達に巻き付き……しかし、それ以上は許されない。

「お前もさ……本当は、殴られたかったんだろ……?」

 エッダと、こやんぱんちを装備していた胡桃の攻撃がスイカ怪人へと突き刺さる。
 スイカ汁をまき散らしながらよろめくスイカ怪人の触手は緩み、ここぞとばかりにマッチョが突撃していく。
 そう、マッチョは怒っていた。
 
「人ヲ無差別二襲ウダト!?」

 しっかりとした手順を踏まぬものを襲うならまだしも、そうでない者達にまで手を出す、それがマッチョには許せなかった。
 道を誤った復讐は、それこそ敬意無き食べ物クラッシャーと同類である!
 だからこそ、大いなるプリンの導きをこの間違ったスイカにプリンは示さねばならなかったのだ。

「オレガ、ソノ道ヲ正シテヤル!」

 放つのは気持ち悪い軌道を描く、白銀に輝く野球ボール。
 その名も【白銀のプリン☆ピッチャー】!
 ズタズタにされたスイカ怪人はそのスイカ汁をまき散らし……次々と突き刺さっていく攻撃に、苦悶の声をあげる。
 もはや、これ以上勝ちの目はない。それを悟ったのだろうか、しかしそれでも暴れることをやめずに目の前にいたエッダへと怒りの声をあげる。

「来いよ。お前の無念、自分が優しく受け止めてやるで痛ってぇなコラ!」

 無念を優しく受け止められなかったエッダの雷神拳がスイカ怪人を打ち砕くが……特に誰も何も言わず、そっとエッダを放っておく。
 ビーチを騒がしたスイカ怪人へのフィニッシュブローは……そんな、ちょっと切ない一撃だった。

●そして、平和なビーチにて

「ははは、楽しいな!」

 ふわもこ羊のジークや5匹のにゃんたま達と波打ち際で遊んでいるゲオルグの姿をそのままに、胡桃はビーチに散らばったスイカモンスター達の死骸を眺める。

「これって燃やしてしまっていいのかしら? スイカモンスターも食べられたりしない? もしくは焼いても食べられるとか」
「そのまま食べるのも何でありますし、ジュースとかにできないでありますかね」
「手伝ウゾ!」

 胡桃とエッダのアイデアにマッチョが楽しそうにスイカモンスターの死骸を拾い集め始める。
 まあ、割った中身もスイカそのものだから食べられはするのだろう。

「スイカにしてみれば、正しく割られるのも大事かもしれないけれど。当然、美味しく食べてもらうのも、きっと大事よね……割ったらきちんと、いただきますしないと」
「その辺り、ちゃんとしてるんだな」
「当然でしょ?」

 チュチュとシュロットが頷きあい、プレーティがちょっとムスッとした表情になる。
 ともかく、この場に集められたスイカはかなりの量で。しかも、結構美味であった。

「いやぁ、なかなか疲れるスイカ割りだったけど楽しかった! それとさ、スイカといえば塩じゃん! と言うことで……何種類か塩持ってきましたー!」

 言いながら咲良が取り出すのは、本人の申告通りに何種類かの塩だ。

「塩ってさ、ものによってめちゃくちゃしょっぱかったり、逆に甘みや丸みを帯びてるものがあってすごくいいんだよ! いろんな角度から食べるのを楽しむのも、スイカ割りの醍醐味、だからね!!」

 スイカに塩は実によく合う。
 咲良の持ってきた塩は、この大量のスイカを食べ尽くす役に立ってくれることだろう。

 そう、今は夏真っ盛り。
 青い海と、白い砂浜と、波打ち際でふわもこな生き物たちと戯れる53歳男性。
 そして、それらを照らす真っ赤な太陽。

「これぞ夏って感じね」

 ヴィリスの言葉が、夏の空に吸い込まれていく。
 シャクッ、と。誰かがスイカを齧る軽快な音が、響いていた。
 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
見事な大勝利です!
スイカはスタッフならぬ参加者の皆様が美味しく頂きました!

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