PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海賊をボコって分からせよう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 澄み渡る青空と白い砂浜。
 晴れ渡る夏の日差しが照りつける。
「海水浴には、もってこいだね」
 目の前の綺麗な海を見ながら、秋宮・史之(p3p002233)は呟いた。
 いま彼が居るのは、海洋にある、とある島。
 一年中、なんらかの魔法の影響で凍り付いている氷結洞窟がある島だ。
 その特性を生かして、夏でもひんやり涼しさが楽しめる観光名所として盛り上げようとしていた。
 史之は何度か協力したことがあったのだが、今回も依頼を受け訪れている。
「これだけ整備されてるなら、お客さんが来てくれそうだね」
「ええ。これも協力してくれた皆さんのお蔭です」
 史之に声を掛けて来たのは、依頼人の1人であるヴァン。
「宣伝も始めていますし、これから夏にかけて、お客さんが来てくれると思います」
「うん。俺も、そう思うよ」
 綺麗な海を見ながら、史之は評価した。
 景色が良く、多くの観光客が楽しめるだけの広さもある。
 それだけでなく、今まで協力してくれたイレギュラーズ達のアイデアにより、氷結洞窟では落ち着いた雰囲気のバーや、水風呂やサウナが設置されている。
 他にも、日除けをされた状態で砂風呂を楽しめるスペースや、泳いだ後の休憩が出来る海の家も作られていた。そして――
「タコのから揚げできたから、味見してくれる?」
 依頼人のもう1人、リリスが、海の家で作ったタコの唐揚げを持って来る。
 少し前、浜辺を荒らす大蛸を退治して皆で食べたのだが、量が多すぎて食べ切れなかったものを凍らせて保管し、名物のひとつとして売り出そうとしていた。
「――うん、美味しい。良いと思うよ」
 料理上手な史之のお墨付きを貰い、リリスは満足げな笑顔を浮かべる。
「名物のひとつは、これで決まりね。氷結洞窟のバーで、作り方を教えて貰ったタコのアヒージョも出すつもりだし、料理も売りのひとつにしていくわよ」
「良いんじゃない。少しずつ、メニューを増やしていけば飽きられることもないだろうし」
「そこも試行錯誤をしている所で。定番のかき氷の他に、ここらだとエビや貝の類も良く採れるそうですから、それをバーベーキュー方式で焼くのも良いかと――」
 ヴァンが、これからの展望を説明している時だった。
「待って。あの船、この島の物かな?」
 海を見ていた史之が、島に近付く船に気付く。
 それは短距離での速さを想定して作られた小船だ。
(あの形は――)
 海洋に慣れている史之は、それが海賊がよく使う小型艇だと気付く。
「海賊かしら?」
 警戒するように尋ねるリリスに、史之は返す。
「島の人達は危ないから、離れるように言って――」
「むしろ集まって来てますね」
 海賊船に気付いた島民がまとまってやってくる。
 気のせいか、慣れた気配がしていた。
(……んん?)
 史之が疑問に思っていると、リリスとヴァンが説明した。
「この島の人達も、食べれない時期は海賊してたみたいだから。といっても商売がメインで、略奪は襲われて逆襲した時に、迷惑料代わりにぶんどってたぐらいらしいけど」
「とはいえ島の人達も本意ではないらしくて。海賊しないで食べていけるならそれが一番ということで、今回の観光地の話に乗ってくれたんです」
「そうなんだ。でも相手によっては危ないから、ここは俺が前に出るよ」
 史之が海賊たちを迎え撃つように前に出ると、小型艇が砂浜の近くまで到着。
 操縦士の1人を残し、残りの4人が船から降り上陸してきた。
「おいおい、わざわざ出迎えてくれるたぁ、行儀が良いじゃねぇか」
 銅鑼声で海賊の1人が言った。
「俺達はマティス海賊団だ! 今日からこの島は俺達のもん、ぐあっ!」
 何か言っていた海賊の頭にヤシの実が投げつけられる。
「テメェ! 何すんだ!」
「割と頑丈ね」
「石頭ですね」
「えーと、どうしようか?」
 島民たちが次々物を投げて海賊たちをボコろうとしているので、史之は一応訊いてみる。
「こいつら本隊じゃないから、多分あとで援軍が来ると思うんだけど」
「ボコりましょう」
「どのみち言うこと聞いても良いこと何も無いもの」
「分かったよ。じゃ、ちょっと分からせて来るね」

 というわけで、島民と一緒になって分からせてあげた。

「テメエら! こんなことしてタダで済むと思うなよ!」
「兄貴たちがすぐ来てくれるからな!」

 ボコられて縛られ海賊たちは、割と元気に悪態をつく。が――

「ん?」
「ひぃっ!」
 一番強く分からせてあげた史之が微笑むと、海賊達はとりあえず大人しくなった。
「さて、これからどうする? 船には逃げられちゃったけど」
 仲間がボコられてるのを見て、小型艇に残っていた海賊は逃げ出している。
 恐らく近い内に、本隊がやって来るだろう。それを聞いて――
「それはつまり」
「労働力のおかわりってことね」
「あ、働かせるんだ」
 史之はボコった海賊たちを見詰めながらヴァンとリリスに言った。
「使い物になるかな?」
「そこは何度か同じようなことをしたので、そのノウハウも使ってやっていきます」
「島が本格的に観光地になったら人手が足らなくなるのは確実だし、ちょうど良いわ。でもそのためには、最初に反抗心をへし折っとかないとダメだから、協力してくれる?」
「都合が合えば、良いよ。でも俺1人だと戦力が足らないから――」
「そこはこちらで手配します」
「ローレットに行って、頼んでくるわ」

 ということで、ローレットに依頼が出されました。
 内容は、とある島を襲撃するとみられる海賊の撃退。
 可能なら労働力として海賊は使いたいので、反抗心をへし折るぐらいボコって、分からせて欲しいとの事でした。
 依頼内容を聞き引き受けたイレギュラーズ達は、早速島に向かうことにした。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
26本目のシナリオは、アフターアクションでいただいた内容を元に作った物になります。

そして、以下詳細になります。

●成功条件

海賊を討伐する。

●戦場

砂浜と、島の密林部分での戦闘になります。

砂浜は、多少足が取られる程度で戦闘に支障はありません。

密林部分は、島民が協力してくれますので、罠を張ったり待ちかまえたり、アイデア次第で有利になます。

●敵

海賊×40人

強さは、それなりのが大半です。
船長1名と腹心×5名は、それなりに強いです。

近距離と中距離の攻撃を使い分けてきます。

連携を取ってくる可能性があります。

海賊の動きとしては、

1 本船から小型艇に乗り込んで砂浜にやってくる。
2 仲間がやられたお礼参りを兼ねて、島を乗っ取るために襲い掛かってくる。
3 明らかに相手が強いと見ると、本船に残った海賊は逃げる可能性あり。
4 全員を上陸させるには、ある程度互角に戦っているように見せる必要があり。

ということになります。

●作戦

今回は、海賊団を全員誘い出し島に上陸させた後、密林に誘き寄せて討伐する作戦が出されています。

作戦内容としては、

1 砂浜で海賊団を迎え撃つ。
2 海賊団全員を上陸させるために、互角であるように見せる。
3 海賊がしびれを切らして全員で上陸して来たら、島の密林に誘い出すために一時撤退。
4 誘い出した密林で一網打尽。

という内容になります。

●依頼人

リリス&ヴァン&島民の人達

島のリゾート地開発が実行できそうな時に海賊が襲ってきたので、労働力が来たとか思っている。
物腰は丁寧ですが、割と荒くれメンタルしてます。

海賊たちは労働力として使いたいので、出来れば殺さず、その上で分からせてやって欲しいと要望されています。

要約すると、言うこと聞くようにとりあえずボコってくれ、とのことです。

●その他

舞台となる砂浜は、海水浴に適した綺麗な場所です。
隣りに氷で覆われた洞窟があり、落ち着いた雰囲気のバーや休憩所などがあります。
また、海の家や砂風呂なども出来ています。
すぐにでもバカンスが出来る状態です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 説明は以上になります。

 それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • 海賊をボコって分からせよう完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
城火 綾花(p3p007140)
Joker
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔

リプレイ

 依頼人達から詳細を聞いた『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は軽くため息をつくように言った。

「まったく……これからリゾート地として売り出そうとしているのに、また厄介事か」
 以前の依頼で協力したモカとしては放置する気にはなれない。それに――
「まぁ海賊を更生させるチャンスでもあるが」
 飲食店やレジャー施設を経営しているので、そういう面でも気に掛けている。
「海賊を真っ当に働かせて島も労働力を手に入れる。一挙両得といきたいな」
「人的資源は必須だね」
 モカに賛同する様に、『若木』秋宮・史之(p3p002233)が言った。
「今後人手が足りなくなるだろうから、島の未来のためにも頑張ろう」
 史之の言葉に島民達が感謝する。
(食うか食われるかだなあ)
 ノリノリな島民に、ちょっと驚いている。
(意外とアクティブだよね)
 などと思ったのは秘密だ。
 一方島民達は、新たな労働力確保に盛り上がる。
 その様子に『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は思わず呟く。
「海賊をとらえて、労働力にするだなんて……」
 呟きつつ、よくよく考えると――
「……って、そういえば、わたしの領地でも、何度も、やっていましたの」
 領地経営に人的資源は必須なのだ。
「領地での経験をいかして……わたしもひと肌、脱がせてもらいますの」
 ノリアの言葉に島民達は感謝しつつ盛り上がる。
 それを見ていた『Joker』城火 綾花(p3p007140)は、さらに盛り上げるように続けた。
「向こうがオールインするなら好都合よね、あたし達で全部いただいちゃおっか♪」
 幻想のカジノでディラーとしても働いている彼女としては困った客は慣れたもの。
(いるのよねー、一回追い払っても何度もしつこく来るお客さん)
 思い出し、少しばかり辟易する。
(カジノよろしく出禁にでも出来れば多少は解決するんだけど、海賊だとそうもいかないわよね)
「向こうが勝負を仕掛けて来るなら、それに見合った対価を払って貰わないとね」
 綾花の言葉に応じる島民達は、海賊達を捕えたあとは、バカンスを楽しんで欲しいと言った。
(バカンス……これは早く終わらせないと)
 島民達の歓迎に、やる気が増す綾花。
 盛り上がっている島民と仲間の様子に、『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は胸中で呟く。
(心をへし折られた挙句、真面目に労働させられるとは……聞いただけでゾッとする話だ)
 少しばかり海賊達に同情する。
(今ほど自分が海賊じゃなくてよかったと思ったことはねぇな)
 とはいえ海賊に手心を加えてやるつもりはない。
(さて、どうしたものか?)
「俺らが海賊を誘い出す餌になるとして、名が知られてると逃げられかもしれねぇ。対策はしておいた方が良いだろうな」
 そう言うとアノニマスを使ってみせる。
 同じように海洋で名が知られている史之も賛同する様に言った。
「変装とかは、しておいた方が良いだろうね」
 史之の言う通り、事前対策は意味がある。
 だから、『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)も同意する。
「バレないように見た目に手を加えるのは良いな」
 カイトは海洋王国が認める正規海賊として、『風読禽』の名義を持ち、『鳥種勇者』で名が知られている。
 ただし普段は鷹獣人の姿でいるので、存在変質で人形態をとれば、すぐに気付かれることは無いだろう。
 誘き出す算段を付けていき、あとは密林での立ち回りを考えていく。
「罠ね……どんな罠がいいかしら……」
 森での立ち回りを、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が考える。
「パンジ・スティックをバレないように痕跡を消して仕掛けて――」
 木々を尖らせて地面に刺した罠など、割と殺意の高い物を提案。
 とはいえ島民に、手心を加えて貰えないか頼まれる。
「え、労働力にするから殺しは駄目? 即死系や罠に毒物とか人糞塗りつけて毒死や病死させるのはNG?」
 気のせいか、残念そうに応えた。
「……仕方ないわね、死なない程度に手加減するわ……枝は細くしときましょう。返しは付けるけど」
 死なないけど、死ぬほど痛い罠が設置されることが確定した。
 話はまとまっていき、『テント設営師』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が、最後に確認を取る様に言った。
「密林に誘って連携取りにくくして、数の多い相手を各個撃破すればほぼ勝ちだね」
 島民が持って来た地図を確認しながら続ける。
「互角であるように見せつつ、相手の援軍が来てもある程度は持ちこたえて、痺れを切らした相手の最後の援軍が来たら素早く撤退することが鍵だね。あとは――」
 回復担当として立ち回りを考えながら言った。
「撤退戦はダメージ負いやすくて難しいから自然と密林の傍まで追い込まれて、隠れてた道から撤退。これが理想かな。遅滞戦闘は私がヒーラーだしそこまで考えなくても良いね」
 ヴェルーリアの言葉に皆は頷く。
 罠を張った後、シミュレーションもキッチリ行い、皆は海賊を誘き出す餌になるため、浜辺でバカンスをしているように見せかける。
 そこに海賊達はやって来た。

●海賊をボコろう
「こっちに来い!」
「やめて下さいの」
 悲鳴を上げながらノリアは逃げようとする。
 今の彼女は第二存在で、可憐なお嬢さまの姿になっているので、海洋で名が知られている人物だとは気づかれていない。
 海賊からは、パラソルの下で休んでいた隙だらけの少女に見えていた。
 捕えようと手を伸ばした所に、人形態を取ったカイトが庇うように間に入る。
「姫、逃げて下さい。ここは俺が」
「ダメですの。置いて逃げるなんて出来ませんの」
「イチャイチャすんな!」
 カイトとノリアの2人は単純に、この場から離れられない演技をしているだけだが、海賊達は勘違い。
 リア充は滅べ!
 と言わんばかりに、結構な人数が集まって来た。
 複数が襲い掛かって来るがカイトは捌く。
 あしらわれていると気付かれないよう適度に攻撃を受けながら、肘や頭部の骨が硬い所を狙わせる。

 カイトのように、巧く捌いているのは他にも。

「キャー! 何なのこの人たち!?」
 白いワンピースに帽子をかぶった令嬢に変装したモカは、海賊に捕まらないよう逃げ回る。
 追いかける海賊。
「おい待て!」
「挟み込め!」
「触らないでよエッチ!」
 腕を掴もうとしたので、か弱い女性が細腕を振り回しているようにして反撃。
 気功を込めているのでそれなりの威力はある。
「痛ぇっ!」
「暴れんな!」
 なんとか取り押さえようとする海賊だが出来ない。

 あしらわれるのに気付かない海賊。
 海賊達は捕えようと躍起になるが、縁は漂々と捌いていく。

「やれやれ、物騒だねぇ」
 殴り掛かって来た海賊の拳を、わざとギリギリで避ける。
「テメェ、ちょこまかと」
 攻撃が当たらず頭に血が昇る海賊。
(多少は受けた方が良いかねぇ?)
 避けすぎると警戒されると見た縁は、海賊の拳を腕で受ける。
 受けると同時に打点をズラしているのでダメージは大したことは無いが、気付かれないよう痛がっている振りをする。
「見ての通り丸腰のか弱いおっさんなんだ、見逃しちゃくれねぇかい?」
 警戒されないよう武器は密林に隠している。
 そうとは知らない海賊達は調子に乗った。
「逃がす訳ねぇだろ!」
「痛い目見たくなけりゃ大人く捕まれ!」
 言いながら素手で襲い掛かってくる。
(商品を傷付けたくないってことかね? それなら助かるが)
 海賊達の思惑を見極めながら、縁は攻撃を捌いていった。

 観光客役をしていたイレギュラーズ達が襲われた所で、島民役の仲間が駆けつける。

「あんたら何してんだ! 止めろ!」
 いかにも島の好青年といった見た目に変装した史之が、海賊達から観光客を護ろうとするかのように動く。
「何だテメェ!」
「邪魔だ!」
 怒声を上げる海賊の攻撃を、わざとギリギリで避けると、注意を引くように声を上げた。
「ひいい、来るな来るな! 誰か! 誰か助けてくれぇ!」
「待てコラ!」
 悲鳴を上げる史之に加虐心がそそられたのか、複数の海賊達が追い駆けて来るが、捕まらないよう逃げる。
「止めろ! 来るなぁ!」
「逃げんなあぁぁっ!」
 偶に全力疾走で逃げ回るので、海賊達の方がバテそうになっていた。

 島民役として動いているのは他にも。

「ちょっと何してんの! やめなさいってば!」
 海賊に襲われている観光客を助ける島民を装って、綾花が浜辺を駆けまわる。
「こっち来ないで!」
 可能な限り誰かに海賊が集中しないよう、注意を引き付けて走り回る。
「この、待てや!」
 追い駆けて来る海賊を、引き離し過ぎると他所に向かいそうなので、適度に速度を落とす。
 当然捕まりそうになるが、気付かれないよう巧く捌く。
 右手で捕まえようとする手を叩き落とし、左手の掌底で肘関節に打撃を与える。
「痛ぇ!」
「囲んで捕まえろ!」
 綾花の一撃をラッキーパンチだと思ったのか、数を集めようとする海賊。
(巧くいってる? ……いや、実際あたし本当に大したことないただのバニーガールだけどね!?)
 仲間の動きも考慮に入れラインを下げながら、撤退時期を探っていた。

 あしらわれている海賊達は、数で押そうと増援がやってくる。
 それ自体は予定通りだが、数が増えれば傷を受ける者も。
 それを癒すべく、ヴェルーリアが動く。

「大丈夫!? 助けに来たよ!」
 ヴェルーリアは、一番海賊にたかられているカイトを癒す。
 癒しの言霊と共に傷を癒し、海賊の注意を自分に向けようとする。
「止めてよ! なんでこんなことするの!」
 海賊の何人かを引き付けようとするが――
「くそ! 女に庇われやがって!」
「悔しくねぇぞコンチクショー!」
 余計にカイトを敵視する海賊達。
 ヴェルーリアは単純に、ダメージコントロールのため集中攻撃を受けているカイトの回復に動いただけだが、女っ気のない海賊達が勝手にひがんだ。
 予想外の状況だったが、結果として海賊達の引き付けが巧く行く。
 それを加速させる様に、ヴェルーリアは弱音を口にする。
「これ以上来ると保たないかも……」
 焦っている演技をすると、調子に乗っていた海賊は仲間を呼ぶ。
「おい! 残ってる奴ら呼べ!」
 呼びかけに応じ本船から追加でやって来る。

 それを広域俯瞰で状況確認したカイトは仲間に合図をするため声を上げる。

「姫! これ以上は保ちません! 森に逃げましょう!」
「はいですの!」
 ノリアを守っていることを印象付けるよう手を引きながら走る。すると――
「テメェ見せつけてんじゃねぇぞ!」
 イケメンは殺す! と言わんばかりに追い駆けて来る海賊。
(……この姫、俺よりタフなんだけどなあ)
 微妙に釈然としないものを感じつつも予定通り密林に逃げ込む。
 一連の動きを超聴力で確認した史之は、仲間に連絡するように声を上げる。
「これはたまらん、ひけっ! ひけっ!」
「逃がすか!」
 調子に乗って密林に入る海賊達。

 そこに待ち構えていたイナリが容赦なく牙をむいた。

(初手が大事よね)
 敵の動揺を誘うため、リーダー格らしい相手を強襲。
 ファミリアーを使い敵の動きを確認しているので動きは速かった。
 気配を殺し間合いを一気に詰めると、神木を加工した大剣で脇腹に強烈な一打。
「げふっ!」
 肋骨が折れそうな一撃を受け、堪らず体勢を崩した所に、両肩に連続で振り降ろし。
(殺しちゃ駄目なのよね?)
 仕方ないので半殺しにするつもりで木剣を何度も叩きつける。
 真正面から戦うと手間取ったかもしれないが、不意打ちで死角から奇襲をしたので、海賊のリーダー格は割とあっさり戦闘不能に陥った。
「親分!」
「テメェ!」
 リーダー格がやられ手下が襲い掛かってこようとするが、イナリは冷静に対応。
 木々を盾代わりに敵を罠に誘導。
「ぎゃあ!」
「ひぃ!」
 落とし穴に嵌り木の枝が足に刺さり、しなった枝が鞭のように打ち据える。
「わ、罠だ!」
 嵌められたことに気づき敵は逃げようとするが、イナリが塞ぐ。
「逃がさない」
「ひぃぃっ!」
 魔力障壁で身を護ったイナリを突破できず、敵は恐慌状態になる。

 そこに襲撃の準備を整えたイレギュラーズ達が一斉に襲い掛かった。

「ここで仕留めさせて貰うよ!」
 変装を解き、布を巻いて偽装していた不知火を史之は振るう。
 木々を縫うような巧みな剣術で、敵を打ち据える。
 振るわれる剣閃には雷撃の瞬きが走り、敵から反撃する気力を奪う。
 堪らず敵は逃げようとするが、罠に掛かり悲鳴を上げる。
 そこに斥力場を叩き込み意識を狩り獲っていった。
「逃げられると思った? 転職するいいチャンスだよ」
 敵は自分達が嵌められたのに気付き必死になって暴れるが、皆で逃さず狩り獲っていく。
「正直このまま適当に撒いて酒でも飲んでいたいんだがねぇ……そうもいかねぇのが辛い所だ」
 縁はバラけて逃げようとする敵を確実に追い詰める。
 相手の隙を見つけ迷いのない一撃を叩き込み、次々倒していく。
「な、何だお前ら!」
 悲鳴を上げる敵に、縁はアノニマスを解除。
「げぇっ! お前――」
 対峙しているのが名の知れた相手だと気づき、敵の戦意がゴリゴリに減る。
 それはカイトも変わらない。
「『風読禽』のカイト、ここに見参ってな!」
「ひいっ! な、なんでアンタが!」
 正体に気付き敵は悲鳴を上げるが、それで容赦はしない。
「さーて、おいたをする海賊はわからせねぇとなぁ!?」
「ぎゃあ!」
 木々の間を素早く駆け回り、残像が残るほどの速さで攻撃を加えていった。
 敵は総崩れ。
 逃げ出そうとするが、そこにノリアが立ち塞がる。
(ここで、一気に、叩きつぶしますの!)
 敵の勢いが強いことも想定して動いていたノリアだが、イレギュラーズ達の策が巧く嵌ったお蔭で敵は総崩れ。
 ノリアは大いなる海の力を纏い守りを固めながら、手にした熱水噴出杖から熱水を噴射。
「熱ぃっ!」
 熱さで悶える敵に、ノリアは降伏を促すように言った。
「ここまでですの! 心を入れ替えて下さいですの!」
「ひぃぃっ!」
 逃げ回る海賊。
 そこに令嬢の演技をしたままのモカが襲い掛かる。
「やったわ! 罠が巧くいったわ!」
 罠に掛かった敵に無邪気にはしゃいでみせると、怒った敵が襲い掛かってくる。
 しかしモカは素早く動き、手痛い一撃を加えていった。
 海賊達と立ち回る仲間に、綾花が援護に動く。
 モカやイナリに幸運の加護を付与しながら、神聖なる光で敵を撃つ。
 明らかにイレギュラーズが優勢な状況に笑みを浮かべる。
「上手くいって良かったわー……ルーレットをボールが転がってる時みたいな、このスリルがたまらないのよね!」
 綾花の言葉通り、もはや勝負の目は見えている。
 それを悟った敵は逃げの一手を打とうとするが、イナリは許さない。
「逃がさない」
「ぎやあ!」
 罠に掛かり逃げ出そうとする敵の背後に回ると、速さを威力に変えた一撃を叩き込む。
 まともに食らいピクリとも動かなくなる敵を、念のため確認。
「生きてる。なら大丈夫」
 確認良し、とばかりに、次の獲物に襲い掛かった。
 逃げ道を抑えられ、それでも逃げようとする敵をヴェルーリアが抑える。
「ここは通さないよ」
 罠を作る際、メカ子ロリババアを使い撤退用通路を目立たない形で作っていたので、それを使って先回りする。
「くそっ、どけ!」
「ダメだよ」
 剣を振り回す敵の攻撃を危なげなく避け距離を取ると、神聖なる光を叩きつける。
 まともに食らった敵は、そのまま地面に倒れ伏し無力化された。

 終始優勢なまま戦いは進み、全ての海賊達は倒された。
 その後――

「遊ぶぞー!」
 水着を持参していたヴェルーリアが海にダイブ。
 同じように、ノリアや綾花も海に入る。
「冷たくて、気持ちいいですの」
「こっちに小魚いますよー」
 浅瀬で遊んでいた綾花が声を掛けると、ヴェルーリアとノリアが近付き、そのままはしゃいでいく。
 一方、氷結洞窟のバーで勝利の杯を上げる者も。
「涼しいのは助かるぜ」
 カイトは羽毛もこもこな姿に戻り、キンキンに冷えたエールを飲み干す。
 彼の隣では、縁が静かにカクテルを楽しんでいる。
 その横で、捕えた海賊達に言い聞かせていた。
「海賊のままでいると今回みたいな目に遭うから、ここで転職した方が良いよ」
 史之が冷たいドリンクを振る舞いながら諭すように言う。
「でないと俺よりもっと怖い島の人達が相手をすることになるよ」
「うぅ……」
 回復して貰い怪我の治療も受けた海賊達は、史之の言葉に、ちらりと視線を島民達に向ける。
 すると、島民達と一緒に居たイナリが笑顔で言った。
「罠の掛け方とか、教えておいたから」
「ひぃ……」
 怯える海賊達。
 そこに宥めるように、モカが続ける。
「慣れるまでは大変だろうけど、ちゃんと働けば見返りは払うと島の人達も言っているわ。必要な技術は教えるから、頑張りましょう」
 令嬢モードで演技しながら、優しく言い含める。
 飴と鞭の両方を向けられ、項垂れるように海賊達は観念した。
「……へい」

 かくして依頼は完遂された。
 海賊達の船は没収し、お客さんの送迎に使われるとのこと。
 万事解決したイレギュラーズ達であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

皆さま、お疲れ様でした!
海賊達はキッチリと分からせられて、以後は島で働くことになります。
乗っていた船は、観光客の送迎に使われ、多くのお客さんを呼び込み賑やかになるでしょう。

それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

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