PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ワイルドハント

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 その世界の暦にして、星歴2368年。極東の島国、首都、凍京。
『それ』は、『嵐の王』と呼ばれている。

 型式は古い。2200年代に造られたものだ。2368年の科学力を以てすれば制圧できないものではないだろう。
 しかし、それは最大の火力を尽くした場合の話だ。
 まさか、それ一機を破壊するために、暴れている区画ごと爆弾で破壊するわけにもいくまい。
 ――その『嵐の王』は、町中に突如として現れたのだ。何でもないガレージから、突然、日常のワンシーンのようなそぶりで車道に乗りだし――そして、周囲を無差別に銃撃、砲撃し始めた。
 周囲には骸が野ざらしになり、少し先の通りでは逃げようとごった返す人の群。
 それを殺すために、鋼鉄の要塞が音を立てて歩む。一人でも多く殺してやりたいと、挙動から怨念が感じ取れた。

 敵の話をしよう。
 嵐の王――ニックネーム、ワイルドハント。旧時代の遺物にして、『要塞』と評された戦車だ。
 全高十メートル、全幅にして二十メートルほどの多脚戦車である。合計で八本の脚があり、ちょうど蜘蛛のようなフォルムをしている。重心は低く、万が一にも転倒のしようのないデザインだ。その全体に、ムラなく機関砲が配されている。セワード・アーセナル社、“アナイアレイター”.50口径機関砲。人間など、ただの一発で半身を千切り飛ばし殺すことが可能な出力を備えた機銃である。それが、全方位に向けて発砲できるように、至る所に配されている。
 武装はそれに留まらない。まるでサソリの針のようにボディ上部に配された砲は、電磁加速投射砲――レールガンだ。それこそ自身と同種の兵器を、跡形もなく粉砕するための砲。加えて、そのレールガンの弾道を妨げないように、赤外線感知式ミサイルポッドが背面に所狭しと配置されている。
 ――それに乗っている者達には、それなりの大義があった。
 がなり立てるスピーカーの声を聴いてみれば、彼らは軍人で、つい十年ほど前に終戦した戦争に、この国の兵として挑んだ者達だったという。
 しかし、使い捨てられた。PTSDを負い、或いは四肢が欠損し、或いは光を失い……そうして必死に戦った彼らを、国の役人はないがしろにした。たいした手当もなく、あとは勝手に生きて行けと、投げ出した。それが、命を懸けて戦った軍人に対する仕打ちだろうか?
 こんな国は壊れて仕舞えばいいと、彼らは吼えて、かつて自分たちが乗りこなした、狂気じみた要塞を起動させた。
 これはただそれだけの、救いようのない話だ。

 四人の特異運命座標が、場に降り立った。
 双子の星に導かれ、異世界に立った彼らは、何を思うのだろう。
 きらめく刀を、銃を、その手に握り、引き結んだ唇で要塞を睨む。

 機械音。
 マシンガンの銃口が君達を睨んだ。
 戦争の怨念が、君達を狙っている。

NMコメント

●ご挨拶
 改めまして、煙と申します。
 シナリオのリクエストを頂戴し、恐縮です。
 最善を尽くしますのでよろしくお願い致します。


●世界説明
 西暦2368年の架空の東京だと思ってください。カジュアルに、或いは性能の向上を求めて、躰の一部を人工物に置き換える事が常態化した、退廃的なサイバーパンク調の日本です。


●シナリオコンセプト
 剣林弾雨を駆け抜ける、四人の修羅の物語です。


●達成目標
 ワイルドハントの撃破


●敵対象
・ワイルドハント
 嵐の王。
 星歴2234年に極東の島国で開発された多脚戦車です。
 その総身に大口径の機関銃を装備しているほか、背中の主砲たるレールガン、マルチプルミサイルなどを装備しています。近距離、遠距離を問わずマルチパーパスに戦えることから、一世紀以上にわたり、同国の前線主力兵器として活用されてきました。
 
・攻撃
機関銃掃射:アナイアレイターを乱射します。密度がただただ脅威です。適当に連射しているだけで近づけない程の、瀑布のごとき弾幕を形成します。これをまず止めないことには、接近できないでしょう。誘導方式は半自動・人力のため、敵のカメラの視界を一時的に無効化できれば、射撃が遅れるはずです。

レールガン射撃:サソリの尻尾めいた形で搭載されたレールガンで射撃を行います。高質量・超音速の弾体による衝撃波を伴う圧倒的な射撃攻撃です。前方直線範囲攻撃となり、散開しなければ全員が射程に収まる危険性があります。

赤外線感知式ミサイルポッド:人間を破壊することに特化したミサイルです。その実体はドローン技術を応用した自律機動榴弾。三六度前後の熱を発し、動体反応のある熱源を精密に追尾して爆裂、破片と爆圧で破壊します。熱源を追尾するため、温度を欺瞞することで回避可能と思われます。


●シナリオ開始時の状況
 一本道、両サイドにビルが建ち並んだ状態で、ワイルドハントと正対した状態から戦闘が開始されます。


 それでは、どうぞ、よろしくお願い致します。

  • ワイルドハント完了
  • NM名
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月30日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談10日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
すずな(p3p005307)
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)
永夜

リプレイ

 白昼、突如として血塗られたビル街のど真ん中。降り立った特異運命座標四名と、巨大な甲殻類めいた歩行戦車の距離は三〇メートル強。いくつか搭載されたカメラアイがキュイ、キュイとノイズをあげて、四名の修羅にピントを絞る。
『なんだ、背も向けずわざわざ死にに来たか! 逃げても背中を撃ってやるだけだがなァ! 俺達が守った平和にあぐらを掻いて、安全圏で食う飯はさぞかし旨かったことだろうよ!!』
 喚き散らすスピーカーからの声は、怨嗟に満ちながらどこか高揚しているようだった。素面ではないのだろう。向精神薬を服用した上で、圧倒的な威力の兵器に搭乗し、薙ぎ倒すこの状況に酔っている。絶望と、自暴自棄と、征服感から、燃え尽きる前の火のような声が作られている。
「――守ったはずのモノを自ら壊して、己自身を否定してしまったのね。元は誰かを守りたかったのでしょうに、その心を忘れて」
 哀れむように呟いたのは、年の頃十代半ば、ぬばたまの黒髪をした少女。『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)。刀を仕込んだ白杖を鎌首擡げるように構えれば、「ああ、全く」と言葉を継ぐ影があった。
 こちらは銀糸の髪に猫耳、赤い編紐で髪を飾る、切れ長の目をした小柄な少女だ。こちらも得物は刀。『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)というのが、彼女の名だ。
「放り捨てられて周りを見れば、自分たちの戦いなどなかったように民が平和を謳歌している……とくれば、恨み節の一つも出よう。この国は相当に腐っているようだな。――まぁ、私達がそれを問うても致し方なし」
 ドライに呟く。感情は理解出来る。だが、それに雷同することはない。
「やる事はただ一つ――"戦車殺し"。それが、今の役目だからな」
「その通り! ――あれを斬るのは相応に骨が折れそうですが……逆にその方が燃えるというもの! その巨体、見事切り伏せて魅せましょう!」
 意気軒昂に言うのは『一人前』すずな(p3p005307)。これまた刀を携えた栗毛の少女だ。狼耳を跳ねさせ、歩行戦車の威容を前に怖じけた様子も見られない。
「勇ましい事で助かります。近接戦闘に於いては無類の強さを誇るメンバーですからね。私はせいぜい、援護射撃に徹しましょう」
 涼しげに言うのは『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)。四名中唯一、有射程武器を有するのが彼だ。
 地形に目を走らせる。両端の雑多なビル街の狭間の通路は、戦車には狭い。潜り込めば遮蔽になるか。そこかしこの車両は盾に出来るだろう。誘導をするには周辺の一般人の出方がネックになる。……この場で制圧するのが妥当と判断。
「バックアップはお任せを。――要は、貴女達に砲火を届かせねばよいのでしょう?」
「私は刀を使った対人専門、本来間合いに入れない相手は対象外よ。――けれど、新田さんが道を拓いて刃の間合いまで私を送ってくださるのなら――それが何であれ斬ってみせるわ」
 小夜が、白く濁った瞳を寛治の方へ向け、薄く微笑む。
「応さ。信じているぞ」
「頼みますからね、新田さん!」
 汰磨羈とすずなが口々に応じる。落ち着き払った彼らの所作が癇に障ったのか、スピーカーからの声がワントーン上がる。
『何をゴチャゴチャと――命乞いもまともに出来ん衆愚が! もういい、死ね!!』
 歩行戦車の背面のミサイルポッドが白煙を上げた。宙に射出されたミサイルが即座に寛治らを認識、追尾を開始! 雨霰と降り注ぐ弾道弾の尾煙が、白く無数の軌跡を描く!
 動いたのは寛治。最低限の動きで身を翻し、近くの車両を盾に。眼鏡が陽光を照り返し、瞳を隠す。
「火力と誘導性能がミサイルの売りですが、歩兵に射つには大盤振る舞いが過ぎる――最初に使うべきは機関砲でしたね」
 言い終わる前の連射、連射、連射! 弾雨、『プラチナムインベルタ』!! 手にしたステッキ傘が火を噴いて、機関銃の如く熱く焼けたフルメタル・ジャケット弾を吐出する。
 加速し終わる前のミサイル、しかも垂直射出後に誘導開始など、寛治にとっては体のいい的が多数POPしたに過ぎない。超音速のFMJ弾が次々とミサイルを貫き、爆裂、爆裂、爆裂ッ!!
『なんだと……!?』
 スピーカーの声が揺れる。彼らの致命的な慢心は、特異運命座標らをただの人間と誤認した事にあった。
「火力と誘導性能がミサイルの売りですが、歩兵に射つには大盤振る舞いが過ぎる。ロケット弾の方が、まだ目がありましたね」
 寛治の呟きが次々と咲く爆炎に紛れる。その砲炎を斬り裂いて、鋭利なる華が三輪翔けた。まるで各々が咲き誇る如く、三方に散っての接敵!
『――っ、迎撃弾幕!!』
 怒鳴り声と同時に、歩行戦車の総身に配された機関砲が回頭。搭乗したサイボーグ砲手によるマルチロックオン。精密な照準で汰磨羈、すずな、小夜を狙う機関砲群。しかし、それをすらも寛治が見越している。
 瞬刻、寛治は拳銃を抜いた。それは〇・四五インチ口径の死神。ステッキと同時の最大火力連射! 最大密度での連続狙撃。ラフィング・ピリオド・アンド・デッドエンドワン! 弾丸は過たず銃身を、或いは銃口を撃ち抜き――回頭する途中の機関砲のいくつかが火を噴き自壊! ワイルドハントの巨体が揺らぐ!
『莫迦な!!』
 その一瞬の動揺を、三者が衝く。汰磨羈が、すずなが、小夜が、それこそ稲妻の如くに駆け抜けた。一瞬遅れて炸裂する弾幕の瀑布激流を、剣華が流々舞って游ぎ抜ける!!
 すずなが提案した狙いが奏功した。寛治の援護を当てにしていたこともあるが、彼女たちはあらかじめ三方より散開し、主砲たるレールガンの狙いを定めさせず、不用意に発砲できぬように仕向けたのだ。ワイルドハントは主砲を撃てず、機関砲での迎撃防御を強いられる。
 中でも汰磨羈の動きが冴えた。彼女は『AKA』を発動、主砲に狙いを定めさせぬ超高速で先駆けしたのだ。駆ける軌跡はまさに紫電のそれ、いかに初速二km/sを誇る電磁加速砲とて、照準を定めなければ撃てず、奏功せぬ!!
「爆ぜ裂けろ!!」
 回避動作を交えながらの、斬撃衝破『彼岸赫葬』! 宙に連続して浮かぶ殺意の霊気弾が嵐の如き突きの連打により射出され、機関砲を次々と破壊する!
 小夜が、その瞬間、ぐんと身を屈めた。ヒュ、と、鋭い吸気を発して。
 声もない。地を蹴れば縮地。彼女の一歩は常人の何歩か? 数えることさえ阿呆らしい。
 汰磨羈により薄らいだ弾幕の間を縫い通す針めいて、彼女は駆けた。抜刀。仕込み杖の描く軌跡は、嗚呼――あまりにも鋭く、狂気的に美しい。
 剣舞、『惜春』。『梅』『桃』『桜』、連続する型が百花繚乱と咲き誇り、敵機の脚を瞬く間に二本奪う。大きくバランスを崩し、ぐらりと傾きながら平衡を保とうとするワイルドハント!
 そこに、金色の風が割り入る!
「――弾幕甘いですね、その程度じゃ止められませんよ!」
 凜々しく、銃火砲声すら掻き分けて響く凜とした声! 咆哮とともに斬り込み発するは、友たるサクラとの戦いにて開眼した奥義。
 その名も、無窮・『旋風』。
 抜刀するなり一閃。天を征するが如き斬撃は、その一閃から無数に分化する。只一撃が、無窮無数の斬撃となる、因果掌握の魔剣である!
 斬、ざざ、ざざざざ、斬ッ!!
 すずなが発した斬閃はまるで檻のようだ。これもまたワイルドハントの脚の二本を奪う。しかも、すずなは小夜の狙いとはズラし、別の脚を狙い打った。
 小夜が右半身から二本、すずなが右半身から一本、左半身から一本……! こうなれば右に残る脚が一、左に残る脚が三! バランスを取りきれず、ぐらりと崩れて歩行戦車が擱座する!
「今ですよ、たまちゃん……!」
 呼びかけに応え、仙狸が吼えた。
「応さ!!」
 汰磨羈だ。生まれる弾幕の穴に最速で身体をねじ込み、つむじ風の如き吸気ッ、
「好機は逃がさんよ――決してな!!」
 地を蹴る!! ワイルドハントの足を蹴り登り、通り道の装甲と機関砲を行き掛けの駄賃とばかりに斬り裂き刈り取る! そうしながらもなお加速、
「御自慢の尻尾、頂いていくぞ!」

 ――斬ッ!!!!

『フルルーンブラスター』、神秘の極撃――一閃!! レールガンが弾丸を吐き出すことも出来ず、ずれ落ちて轟音と共に自壊する!
 その重い金属の拉げる音に、無表情のままに小夜が呼びかけた。
「――利き手を落とされたようなもの。一応訊くわ。降伏するつもりは?」
『ふざけるな――この無念を! この絶望を!! 諦めてしまえば俺達に何が残る!? 一生、使い捨てられた負け犬として牢の中で過ごせと?!』
「……」
 説得は無意味。解ってはいた。
 一瞬小夜は僅かばかり表情を歪めるが、目を閉じ、そっと刀を構え直す。
 ――なれば、やることは一つだけ。

「いかに諦めなかろうと、"中の兵を殺せばいい"。対戦車戦に共通する話だ。そうだろう?」
「――はあ。斬り応えはありましたが、対人の方がやり易いですね」
 ミサイルポッドが火を噴く前に、汰磨羈が、すずなが、その全力を以て背面装甲を斬り裂く。賽の目になって吹き散る背面装甲。露出する四名の砲手と、一名の車長。
「――!」

 筋肉の緊張、張り詰めた気配。
 最期の声は聞き取れなかった。スピーカーを通さない声は、いかにもか細く。
 けれどその響きを、及ばずながらも覚えていようと、小夜は心に決めたのだ。

「――貴方達はよく戦った、だからもういいのよ」

 おやすみなさい。

 小夜は今一度地を蹴る。
 瞬天三段・驟雨。狙いを散らした絶技の剣が、五名の人間の首を、心臓を、眼窩を、怜悧なる斬光と共に貫いた。
 血振り一振り、人の臥す音が五つ。
 そうして、白昼の凶行は幕を閉じたのであった。

成否

成功

状態異常

なし

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