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シナリオ詳細

夏だ! ユーノ・ハマランダー!!

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夏の温泉観光地
 「ユーノ・ハマー」という小さな温泉街をご存知だろうか。
 立ち上る湯気、レトロな外観の宿、道沿いに並ぶ土産物屋の数々……決して都会的ではないが、自然に囲まれた長閑な風景の中で湯に浸かるそのひとときは格別なものだろう。
 だが、それはあくまで「温泉を堪能できる季節」だからこそのもの。
 夏場のクソ暑い中ではどうしても冬場ほど客足は伸びない。

 ユーノ・ハマーを仕切る「会長」は、この状況を打開すべく、温泉街の近くにある広大な丘とイレギュラーズの存在に目を付けた。
 この会長、別にイレギュラーズと大した縁があるわけでもないのだが、とにかくローレット愛が半端ない。
 過去にも「ローレット特別感謝キャンペーン」と称してローレットのイレギュラーズたちを一泊二日の温泉旅行に無料で招待したことがある。
 そこで会長は、丘にちょっと手を加えてとある施設を建設し、そこにローレットのイレギュラーズたちを無料で招待することにした。
 名付けて、「ローレット特別感謝キャンペーン第二弾」である。

●新施設「ユーノ・ハマランダー」
 暫くして、広大な丘に会長肝いりの施設が誕生した。
 名付けて「ユーノ・ハマランダー」である。
 はっきり言ってしまえば「かなり小規模な田舎の遊園地」ではあるのだが、そう馬鹿にもできない。
 トロッコを繋ぎ合わせたようなジェットコースターは小さいながらも360度回転をコース1周につき2回披露する。
 観覧車は1周僅か3分だが、全室冷房完備で涼みながら絶景を堪能できる。
 他にも小さなメリーゴーランドや超高速回転が可能なコーヒーカップ、上空を旋回する気球が設置された。
 更に、丘の頂上にははっきり言ってちゃちぃお化け屋敷……と思わせておいて垂直落下と急上昇を繰り返すスリル満点のホラーハウスが用意されている。
 ホラーハウスの隣には、ウサギやモルモット、子ヤギなどの小動物と戯れ餌やり体験が出来るコーナーもある。

 だが、会長が真の「ウリ」として用意したのは、丘の隣の窪地に建設した「流れるプール」だ。
 田舎の温泉街だけあって土地だけは潤沢なのだろう、新たに作られたプールもいやはや広い。
 大都会のプールのような、縁日のゴムボールのような、密集してただ流されるだけになる懸念は一切不要だ。
 他人にぶつかったり迷惑をかけたりする心配を殆どしなくていいのだから、ゆったりと流れに身を任せるも良し、遡上する魚のように流れに逆らい己を鍛錬するも良し。
 プールの一角には急降下スライダーやボートで激流にもまれるコースも併設、更に海がないユーノ・ハマーの弱点を克服すべく人工の砂浜まで用意され、楽しみ方は人それぞれ。
 そして何より、手ぶらで来ても楽しめるように水着までレンタルしてくれるという。
 ユーノ・ハマランダー内の通路には露店も立ち並び、縁日気分も味わえる。
 事前に希望を出せば夜に打ち上げ花火も披露してくれるとか。

 無論、ベーシックに温泉を楽しむのもアリだ。
 ユーノ・ハマーは様々な不思議な効能を持つ幾つかの「秘湯」を有している。
 温泉街唯一の宿は多種多様の宿泊室を用意しており、ベッドを並べた洋風の部屋はもちろん、畳敷きの和室もある。
 宿の中にはプレイルームもあり、定番の卓球台が数台設置されている。
 街道沿いの土産物屋の中には、独特なデザインの衣装を貸し出してくれる「レンタルコスプレショップ」的な店まである。
 しかもこの店、今回は特別にユーノ・ハマランダー内に出張所を設け、浴衣をレンタルしてくれるとか。
 ユーノ・ハマランダー内の露店で軽食を買い、好みの柄の浴衣に身を包み、観覧車から花火を眺める……これもまた一興。

「おいらの自慢・ユーノ・ハマー! 今夏はユーノ・ハマランダーもオープン! さあさあ皆さん、おいでなさいな!」
 会長は、今回も街を挙げてイレギュラーズたちを誠心誠意おもてなしする気満々だ。

 さあ、思い思いのひとときを楽しんではみないか?

GMコメント

マスターの北織です。
この度はオープニングをご覧になって頂き、ありがとうございます。
まずは当ラリーシナリオの進行に関しまして次のとおりお知らせさせて頂きます。

【シナリオ進行などに関して】
●シナリオ目的
 温泉街と隣接する遊園地でのひとときを楽しむこととなっており、楽しみ方は様々ございます。
●プレイング作成時のお願い
 皆様おひとりおひとりを可能な範囲でなるべく濃く描写したいので、行き先や行動は一つに絞って頂ければと思います。どうしても絞りきれない方は複数の場所で行動して頂いても構いませんが、その場合は各場所での描写が薄くなってしまいますことどうかご了承下さい。
 皆様のプレイングを誤読しないよう北織も十分注意しますが、プレイング冒頭には必ず
・行き先(ハマランダー、宿、温泉街、など)
・同行者名(いる場合)
・目的(ホラーハウスに入る、花火を見る、小動物をもふもふする、温泉でまったりする、など)
を明記願います。
●章構成とリプレイ納品及び完結予定について
 1章構成の予定です。
 プレイングが採用された場合、リプレイは可能な限り早めにお返しできるよう頑張りますが、スケジュールや北織の体調などの理由で数日お待ち頂く可能性もございます。ラリーの醍醐味を損なわないようにしたいとは思いますが、少々気長にお待ち頂けますと幸いです。
 完結予定につきましては、そろそろ完結の頃合いかなと思ったところでゲームマスタープロフィールとTwitterの双方にて告知させて頂く予定です。
 告知後およそ1週間程度で完結したいと考えています。
 

以下、ユーノ・ハマー及びユーノ・ハマランダーの名所やお楽しみポイントを列挙いたしますので、プレイングの参考になさって下さい。

【主にユーノ・ハマランダーで過ごしたい方向けのお楽しみポイント】
※プレイング記載の際はユーノ・ハマランダーを「ハマラン」と省略可能です。
●「ハマー・トロッコ」(略称:ハマトロ)
 トロッコを繋ぎ合わせたようなジェットコースターです。
 小さいですが、360度回転をコース1周につき2回披露します。
●観覧車
 1周僅か3分のちっちゃな観覧車です。
 全室冷房完備です。
●メリーゴーランド
 レトロな馬車やお馬さんが上下しながら回るスタンダードなものです。
●コーヒーカップ
 基本的にどこの遊園地にもありそうなコーヒーカップですが、あえて安全装置を解除しています。
 各カップのセンターテーブルをガンガン回せばどこまでも高速回転にすることが可能です。
 ただし、調子に乗りすぎてうっかりパンドラを失わないようご注意下さい。
●小気球
 支柱にぶら下がる6つの気球が上空でくるくる回るだけのアトラクションですが、遠心力が働いてそこそこのスリルは味わえます。
 ひとつの気球には最大大人4人まで乗れます。
●ホラーハウス
 垂直落下と急上昇を繰り返すスリル満点のお化け屋敷です。
 喋るネズミさんがいるどこかのテーマパークに似たようなものがありますよね……。
●ぷち牧場
 ウサギやモルモット、子ヤギなどの小動物と戯れたり、餌やり体験を楽しんだりすることが出来ます。
●流れるプール
 とにかく広いです。そしてまあまあの勢いで流れています。
 深さもそこそこありますが、不安な方には浮き輪をレンタルしますのでご安心を。
 流れに逆らうのを禁止しているプールも世の中にはあるようですが、ここのプールは大丈夫です。
●急降下スライダー
 プールに併設されている滑り台です。
 「くねくね」と「真っ直ぐ」の2本があります。
●激流コース
 専用のボートで激流下りを体験できます。
●人工砂浜
 プールに接するようにして人工の砂浜が作られています。
 砂遊びはもちろん、優雅に日光浴を楽しんでもいいでしょう。
●縁日
 ハマランダー内の通路には様々な露店が並んでいます。
 定番のたこ焼きやりんご飴といった軽食から、射的や数字合わせといった遊びまで様々ございます。
 縁日にありそうな一般的な露店であれば大抵リプレイ描写可能です。
●レンコス(こちらはレンタルコスプレショップのハマランダー出張所となります)
 ハマランダー内で浴衣限定でレンタルします。
●打ち上げ花火
 花火をバックに縁日を歩きたい、観覧車から花火を眺めたいなどご希望があれば応じます。

【主にユーノ・ハマーで過ごしたい方向けのお楽しみポイント】
●秘湯
 ユーノ・ハマーには以下の「秘湯」がございます。
 秘湯はどれも混浴です。
 水着着用、コレ、ゼッタイ!
 どのような水着を着るかもプレイングに明記して下さい。
 「水着なんて持ってない!」という方もご安心を。ハマランダー以外に宿にもレンタル水着がございます。ご希望の方は、どのような水着を借りたいか教えて下さい。
 秘湯とはいえ、混浴で公衆浴場ですので、他の方と鉢合わせる事はございます。恥ずかしいとか独りでゆっくり入りたいとか思われる方はプレイングにその旨を明記して下さい。なるべく他の方と被らない方向でリプレイを作成いたします。
 なお、秘湯の効果はお湯から上がってから小一時間程度で切れてしまいますので、その点ご了承下さい。
・転換の湯
 入ると性別が逆になってしまう不思議な湯です。
 声色は変わりますが、口調や性格は変わりません。
 性別が「unknown」の方はお好きな性別を選べます。
 ※unknownのままでいる事は出来ません。
・もっふもふの湯
 入るとケモ耳や尻尾が生える湯です。
 本人が思い描く毛並みや色、形となります。
 強く望めば、耳や尻尾に留まらず完全に動物の姿にもなれますし、体の大きさもその動物の一般的な大きさくらいに変える事が出来ます。(例:犬であれば、ラグビーボール大の仔犬からセントバーナードの成犬クラス辺りまで可能です)
 ※ただし、もっふもふな哺乳動物限定です。
・バッサバサの湯
 入ると翼が生えます。
 本人が思い描く形状となりますが、基本「鳥類」やコウモリなど「一部の哺乳類」となります。
 小一時間程度ではありますが、空も飛べます。
 ※ただし、スピードはあまり出ず、慣れて安定して飛べるようになるまでは多少時間がかかるでしょう。
・憧憬の湯
 入ると子供になったり年を取ったりする湯です。
 年齢が「unknown」の方は、子供っぽく小さくなるか年を重ねた風貌に変わるか、とお考え下さい。
 中身の知能や性格は変わらず、純粋に見た目だけが変化します。
 声も変わりません。
 どれくらい子供に戻るか或いはどれくらい年を取るかは本人の望み次第で、思い描いた年齢像に姿が変わります。
 ちなみに、本来未成年の方がこの湯で成人に変わっても、飲酒喫煙などはダメ、ゼッタイ!
●温泉宿
 秘湯ではない普通の温泉を楽しみ、宿でまったり過ごしたい方向けです。
 こちらは秘湯と異なり男湯と女湯に別れています。性別がunknownの方は自己申告でどちらかを選んで下さい。
 通常の洋室から畳敷きの和室、フローリングの部屋など各種用意しております。
 希望すれば、軽食と飲料のルームサービスを無料で利用出来ます。
 夕食及び朝食は宿の食堂でお召し上がり下さい。
 夕食及び朝食はビュッフェ形式となっており、皆様が食べたいと思うものは大抵揃います。
 浴衣は無料レンタルです。
 色も柄も様々ございますので、ご希望をお申し付け下さい。
 なお、帰りの際にきちんと返却するという条件で、浴衣での外出も許可しております。
 小規模ですがプレイルームがあり、卓球台が完備されています。
 客室から花火を眺めたいという方は、打ち上げ花火を希望することも可能です。
●街道沿い
 小さな土産物屋が並んでいます。
 名産は「秘湯饅頭」で、中の餡が様々な色と味で好評です。
 ちょっとした工芸品や民芸品もよく売れます。
 揚げ物など、食べ歩き出来る軽食もところどころに売られています。
●レンタルコスプレショップ(プレイング記載の際は「レンコス」と省略可能です)
 大正時代の袴や学ラン、戦国時代の甲冑、中世のドレス、西洋の甲冑、中華系の衣装、ゴスロリ系など、そこそこ揃っています。
 レンタル自体は会長の厚意で無料ですが、お持ち帰りは当然厳禁です。
 専属画家がおりますので、コスプレした姿を描いてもらっても良いでしょう。
 ※メタな話になりますが、イラスト無料プレゼントでは断じてございません。現実にイラストとして手元に残したい方はご本人様負担でイラスト発注をお願いします。

【禁止事項】
・未成年PC様の飲酒及び喫煙
・温泉街や遊園地での破壊行為及び商業活動を妨害する行為
・他の方に迷惑をかけたり不快な思いをさせたりする行為(双方で了解した上でのことであればこの限りではありませんが、その場合は必ず双方のプレイングにその旨を明記して下さい)
・その他公序良俗に著しく反する行為

【情報精度】
 このシナリオの情報精度はBです。
 基本的に想定外の事態は殆ど起こりませんが、場合によっては「モブNPCから話しかけられる」「なぜか通りすがりの露天商が売れ残りの唐揚げをタダでくれた」などプレイングにない出来事も発生するかもしれません。
 また、故意に禁止行為に及んだ場合は会長から容赦ない正義の鉄槌が下りますので、くれぐれもご注意下さい。

それでは、皆様のご参加心よりお待ち申し上げております。

  • 夏だ! ユーノ・ハマランダー!!完了
  • GM名北織 翼
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年07月30日 19時30分
  • 章数1章
  • 総採用数10人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼

「運がいいぜ、貸切状態だ」
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃p3(p001103)は悪戯っ子のようにニヤリとしながらマリンバッグを開けた。
 子象のジョウロ、黄色いアヒル……玩具たちはジェイクの手によって次々にバッグから露天風呂へとダイブする。
 仕上げに彼はブリキの小船を取り出すと、嬉しそうに船内の蝋燭に灯を点け、湯に浮かべた。
 
 やがてポンポンと軽快な音を立てながら進むブリキの船。
 湯に浸かりながらそれを眺めるジェイクはいつの間にか玩具の似合う少年の姿になっていた。
(たまには童心に帰るのもいいな)
 「大人」とは自由なようで存外窮屈なものだ。付き纏う「責任」が何かと悪さをして、時に息苦しくもなる。
 そんなしがらみがなかった子供時代に一度やってみたかったことを、ジェイクは今スクール水着を履いて屈託ない笑顔で満喫していた。

 ふと、小気味良い音で進む船を追うジェイクの脳裏に愛妻の顔が浮かぶ。
 家庭も円満で日々幸せではあるが、妻と共にする湯船で玩具を浮かべるわけにもいかず、彼にとってこれは妻の居ぬ間の道楽。
 だが、もしも一緒に湯に浸かりながらブリキの小船を浮かべて戯れたとしたら、愛しい妻はどんな顔を見せてくれるだろうか……揺らめく小さな蝋燭の灯を見ながら、ジェイクは静かに思いを巡らせた。

成否

成功


第1章 第2節

トリーネ=セイントバード(p3p000957)
飛んだにわとり
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞

 湯煙の中、水色の何かが宙を舞った。
 直後、舞い上がる水飛沫。
「うおーーー尻尾を生やすわーーー!!」
 これは雄叫びか、嘶きか……いや、そこは愛らしい囀りということで。
 水色の縞々ワンピース型の水着で『飛んだにわとり』トリーネ=セイントバード(p3p000957)が飛び込んだのは秘湯「もっふもふの湯」。
「お耳、尻尾、早く生えないかしら! 早く早く!」
 逸る気持ちそのままに白い羽でパチャパチャと水面を叩くトリーネに、湯を掻き分けながら『舞蝶刃』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が近寄る。
「あんまり騒いじゃダメよ」
 仄かな色香を漂わせる黒ビキニ姿でアンナはトリーネを胸に抱いた。
「……ていうか、ここ鶏も入れるの?」
「入れるわよ! さっき、『イレギュラーズならオールオッケー』って言われたわ!」
 嬉しそうに答えるトリーネに、アンナは
(ほんとに大丈夫? 出禁とかにされない? 鶏にもふもふって……合体事故というか、キメラのようになるような気が……)
と一抹の不安を拭えない様子だが、それでもトリーネは上機嫌に羽を動かす。
(ただでさえこんなに可愛いのに尻尾まで生えたら、私、最強な生き物になってしまうわね!)

 やがて、アンナの頭にぴんと一対の耳が生え、尻尾の先が水面から顔を出した。
「アンナちゃんにお耳と尻尾が生えたわ!」 
 トリーネは驚きつつも大人しくなる。
(私はできる鶏。ここはアンナちゃんみたいに落ち着いて、マナーを守って瞑想しましょう。そうね……可愛い猫耳と尻尾がいいわね。ふふ、色はやっぱり白かしら。でも、どこから生えるの? とさかの横から生えるのかしら!? どうなるのかしら!!)

(乾かしたら、誰にも気兼ねせず部屋で思う存分もふもふしようっと)
 太長で豊かでありながらもたおやかな柔らかさを持つ黄金色の見事な狐尾に満足したアンナは、もう暫く温泉を堪能しようとした……が。
「生えた! アンナちゃん、生えたわー!」
 トリーネがぴょんぴょんと湯から飛び跳ねる。
 とさかを挟んで左右対称に生えた白い耳は毛艶が良く、跳ねる度に露出する尻尾は耳とお揃いで、長くぴんと天に向かって伸びていた。
「ねえねえどんな感じ!? 教えて教えて!」
「……」
(事故ってる気がするのは、私だけ……?)
 アンナは絶句しつつも己に言い聞かせる。
(いいえ、気を確かに持つのよ、私。大丈夫、私は関係ない、私は関係ない、私は……)
「……やっぱり無理」
 我関せずを貫くつもりだったが、ぼそっと一言零すや否やアンナは湯から上がってしまった。
「……あれ! もう上がるのアンナちゃん! ゆっくり浸かるって言ってなかった!?」
 猫耳と尻尾を振り振りしながら、トリーネは慌ててアンナの後を追うのだった。

成否

成功


第1章 第3節

津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏

「ハマラン、たーのしーいでーす!」
 ポップなドット柄の浮き輪に身を通し流れるプールで戯れる『銀月の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)。
(こんな楽しい所があるなんて! めいっぱい満喫させてもらって夏の思い出の1ページにしなくちゃ!)
 ぷかぷかと流されながらふと気付いたのは二本の急降下スライダー。
 弥恵は早速スライダーのスタート地点に向かう。

 スタッフに簡単な説明を受け、まずは真っ直ぐに下るスライダーに挑戦。
 ただ水流に乗って滑り落ちているだけだというのに速度は想像以上で、降下中に感じた風といいスピードといい、弥恵を興奮させるには十分だった。
 調子づいた弥恵は、
「見てて下さいねっ! 今度は華麗にジャンプしてプールサイドに着地しちゃいますよっ♪」
 とスタッフにウインクしてくねくねしたスライダーに身を任せる。
 左右にカーブする度に腰の辺りでビリッ、プチッと不穏な音がするものの、弥恵は気付かずスライダーに熱狂、すぐに訪れた終点で跳ね上がり見事着地を決めた……が。
「へぁぁ……!?」
 やけにスースーする下半身を一瞥した弥恵は、変な声を上げながら浮き輪を腰の辺りまで下げた。
「あっ、い、いぇ……なっ、何でもないです、何でもないですよっっ」
 誰も何も訊いていないというのに、弥恵はそう口走りながら不自然な動きで更衣室にダッシュした。

成否

成功


第1章 第4節

ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星


「ウィズィお姉ちゃん、どうぞ」
 湯煙漂う露天風呂の水面には徳利とお猪口を乗せた盆が浮かび、『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)がそっと運んで『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)に酌をする。
「ふふ、ありがと」
 唇で妖艶な弧を描き、ウィズィは喉に冷酒を流し込んだ。
 誰にも邪魔されない宿の和風個室で、二人はバルコニーにある小さな露天風呂を堪能している。
「ステラちゃんはまだお酒が飲めないから……後で瓶牛乳を買ってあげるね」
「ありがとうございますっ」
 チラチラとウィズィを窺う割にはあと数センチのもどかしい距離を詰めないステラに、ウィズィは
「苦しゅうない、近うよれ。ふふふ」
 と少しおどけた調子で手招き。
 はにかみながらすり寄ってくるステラに鍛え上げた堂々たる自慢の体を惜しげもなくくっつけ、ウィズィは微笑んだ。


「夏の温泉なんて初めてだけど、さっきは背中も流しっこしたし、ベタつきも気にせずくっつくことが出来て……ふふ、こういうのもありだね。乙なもの、ってやつ?」
「はいっ、夏の温泉もいいものですね。湯船なら、暑さを気にせずにくっついてしまっても大丈夫ですものね。それに……」
 ステラは先程背中を流したウィズィの体をほうっと見つめる。
「ウィズィお姉ちゃんの体は本当に格好いいです……拙も一応鍛えてはいるのですが、なかなかお姉ちゃんみたくはならないです」
「格好いいって思ってもらえるのは嬉しいな。でも、ステラちゃんだって十分素敵だよ。それから……」
 ウィズィの笑みが深まった。
「理想の体を目指すにはたっぷり時間をかけていいの。ああ、たっぷりと言えば……今回の一泊旅行も、時間はまだまだたっぷりあるね。さあ、これから何をしようか……?」
「そうですね、この後はゆっくりお昼寝もしたいです。それから、沢山お喋りもしましょうね! だって、お泊まりですもの。ウィズィお姉ちゃんの言うとおり時間もたっぷりありますから」
人懐っこい笑顔を浮かべて答えるステラの頬を、温泉でしっとりしたウィズィの指が愛おしげに撫でる。
「ふふふ……そうね、沢山お話しようね……この距離感のままで」

 二人の温泉旅行は、まだ始まったばかり……。

成否

成功


第1章 第5節

トゥリトス(p3p008152)
元気な商人

 プールで流れに逆らい体力の限界に挑む『元気な商人』トゥリトス(p3p008152)。
 川を遡上する魚の如く水流に切り込むが、思いの外強い流れに押されあれよあれよと出発地点より更に奥まで戻される。
「なにこれっ、もう海じゃん!」

 ツッコミを入れ存分に笑った後は、かき氷の露店を求めてひと歩き。
 水中はあんなに涼しかったのに……と、暑さに耐えつつ辿り着いた店頭で、
「どれにしよっかなー♪」
 とトゥリトスが目を瞑り指さしたのは緑色のシロップ。
 何味だろうかとひと口食べると、上品な甘さと香りが鼻を抜けた。
「これ、洋梨でしょ!」
「洋梨は洋梨でもラ・フランスだよ」
 洋梨で正解なのに、店主にとって品種は重要ポイントなのだろうか。

 ともあれ美味しいかき氷に舌鼓を打ち暑さを紛らわしながら、トゥリトスは懐かしげな眼差しでレンコスのある方角を見つめる。
 レンコスでコスプレに興じた時のことを思い出すと再び行きたい衝動に駆られてしまうが、夏ならではの楽しみと言えばやはりプールにかき氷だ。
(次はスライダーでも滑ってみよっかなー!)
 かき氷を味わうトゥリトスの視線は、二本のスライダーに向けられるのだった。

成否

成功


第1章 第6節

津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏

(もうっ……なんでこうイイところで水着があんなことに……)
 プールでのひと騒動から逃れた『銀月の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)は、レンコスの試着室に「避難」していた。
(でも、せっかくなのでコスプレを楽しんで外を巡りましょう!)
 選んだのはノースリーブの涼しげなチャイナドレスだが、スリットが際どいのはいわゆる「弥恵補正」。

 満足げに試着室を出て装飾品を合わせていると、店主が山のように衣装を抱えてやってきた。
 フリル鬼盛りの天使衣装にコスプレ定番のメイド服、人気アニメを彷彿とさせる黒の繋ぎに奇抜な柄の羽織、極めつけはスカートが足首丈まであるセーラー服にヨーヨー付き……。
 専属画家をスタンバイさせた店主にこれらを押し付けられ、圧に負けた弥恵は試着室と画家の前を何度も往復するが、店内の客でちょっとしたギャラリーが出来始めると楽しくなってすっかりショー気分だ。
「許さんぜよ! ……なーんて♪」
 セーラー服姿でヨーヨーを構えて決め台詞っぽいことを言えばギャラリーからもちょっとした歓声。
 最終的に再びチャイナドレスに落ち着いた弥恵は、姿絵の仕上がりにも満足して上機嫌でレンコスを出るのだった。

成否

成功


第1章 第7節

ロロン・ラプス(p3p007992)
見守る

 それは一見不時着した空飛ぶ円盤のようでもあり、流されるままのビニール製の帽子のようでもあり……。
 しかし、見誤ってはならない。誰が何と言おうと「水着」を着た者が浮き輪を使って流れるプールを堪能しているのだ。ヒトじゃないけど無人じゃない。

 ビーチボール型の「水着」に入った『無垢なるプリエール』ロロン・ラプス(p3p007992)は、借りた浮き輪の真ん中にぽっちり嵌まった状態でプールの流れに身を任せていた。
 正直なところ、あまり泳ぎは得意ではないとロロンは自覚している。
 この体とこの水着では、手足で水を掻くことも魚のように水流に切り込むことも出来ない。
 だが、ゆらゆら、ぷかぷかと水流の主張を受け入れているこの状況をロロンはロロンなりに楽しんでいた。
 時折ふるふるっと身を震わせて「通して~」とアピール。
 ああ、泳いでるのね。どうぞお先に。
 ふるふるバイブする球体に呆気に取られつつもすっと泳いで退いた利用客は、やがて状況を理解すると波に揺れるロロンを微笑ましげに見送った。 

成否

成功


第1章 第8節

津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏

 レンタルしたチャイナドレスを着て上機嫌の『銀月の舞姫』津久見・弥恵(p3p005208)はハマラン内を歩いていた。
 道沿いには縁日の露店が並び、大道芸人の祭り囃子が耳に心地良い。
 お囃子に合わせて踊りたくなる気持ちを抑えつつ、弥恵は鼻歌交じりにぺたりぺたりと足音を添えてゆっくりと歩を進める。
 右側の露店から漂うソースの匂いにつられ、弥恵はたこ焼きをひとパック買った。
 だが、このたこ焼き、店主が言うには一個だけ「ハズレ」のたこ焼きが混ざっているとか。
(さて、ハズレとは何でしょ……!?)
 試しに一つ口に入れた直後、弥恵の目が潤んだ。
(んっ、くうぅ……中にワサビが!)
 弥恵はたまらず甘い物を求める。
 すぐ近くにりんご飴の露店があって助かった……。

 りんご飴で落ち着いた弥恵は、続いて射的の屋台に入る。
 的に並ぶ簪が屋台の灯りを反射し美しく煌めく様に誘われ、早速弾を込めて狙いを定めた。
 一発、二発……なかなか落ちない。
(ん~、もう少し……)
 無意識に身を乗り出しついつい膝を台に乗せた瞬間、太腿の辺りでプチッと不穏な音。
 ただでさえ深いスリットが更に際どくなり、弥恵は慌てて台から膝を下ろす。
 決してわざとじゃない、決して……!

成否

成功


第1章 第9節

 夏のひとときを楽しんだイレギュラーズたちがユーノ・ハマーを出てそれぞれの帰路に就く。
 夏でも温泉街を満喫してもらうべく用意したハマランダーも、イレギュラーズたちの夏の思い出作りに一役買ったことだろう。
「おいらの自慢、ユーノ・ハマー! おもてなし精神でこれからもイレギュラーズ激推しで行くのさ!」
 会長は、去りゆくイレギュラーズたちの背中を満足げに見送るのだった。

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