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シナリオ詳細

<フルメタルバトルロア>正義の男

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「バチェラー卿! どうされたのです!!」
 聖騎士の声は彼へ聞こえていないようだった。
 ゴッドフリート・バチェラーという男は正義の聖騎士であった。妻子を国に残し、鋼鉄の動乱から国を守るために彼を含めた聖騎士は国境へと進軍していたのだ。
 表立って武力をちらつかせれば問題になる――などと、正義の人々は考えない。ここで派兵せねば、国境付近では略奪が起こり、難民も隣接する正義へと流れてくるだろう。
 故に、ゴッドフリートもまた正義感を燃やしてやってきたのである。弱き者へ手を差し伸べ、強き者と肩を並べて戦わんとする――そんな男だ。
 しかし、今の彼にその面影はない。残忍な笑みを浮かべ、その拳を鋼鉄の民へと振るう。仲間である聖騎士が拘束しようと立ちむかうが、その剛腕によって振り払われた。
「これが『神々の猟犬グレイハウンド』……!」
 ゴッドフリートの二つ名を呟き、自身らに勝ち目がないと判断した聖騎士は伝令を飛ばす。
 勝ち目のある者を――特異運命座標を、と。



 練達が開発した擬似世界『Rapid Origin Online』。原因不明のエラーとバグを吐き出し、ログインしていたプレイヤーを閉じ込めたゲームを解決すべく、イレギュラーズたちが在籍するローレットに白羽の矢が立ったのは少しばかり前のことだ。
 ゲームクリアが囚われのプレイヤーを救出することに繋がると気づいた一同は、R.O.Oに作り出された第二の混沌『ネクスト』でのイベントをクリア。ゲームは2.0へアップデートされ、新たな地域についても解放されたのである。

「……その一方で、鋼鉄(スチーラー)における内乱が発生してるんだ。……もう知ってるかな?」
 ネクスト各地を周り、クエスト情報を集めてプレイヤーへ流す――いわゆる情報屋のようなことをしている『踊り子』ローズマリー(p3y000032)は一同へ、新イベントのひとつを告げた。
 鋼鉄は混沌における鉄帝国である。しかし皇帝は暗殺され、内情は不安定だろうと言ったところだ。
 しかしその不安定は不安からではない。皇帝は誰も見てこそいなかったものの、侵入者と真正面からぶつかって敗北したのだと、遺体の傷が示していた。

 ――皇帝を殺した者が次の皇帝。ならば侵入者を殺した者が次の皇帝になれる。

 国の名を変えれども、そのデータは混沌から吸収されたもの。まあ、気質というのは似通うのである。
「しかも面倒なのは、そこに正義(ジャスティス)が突っ込んでるってこと。混沌でいう天義国だよ」
 問題はそれだけに止まらない。内乱の中、どうも人々の様子がおかしいのだ。
 名のある戦士が凶暴化していたり、ラド・バウの闘士がやり過ぎなほどに相手を痛めつけたり。それはまるで悪いものに取り憑かれてしまったかのようだ。
 故に、正義はこの不穏なる影を『シャドーレギオン』と称した。
「ボクが聞いた情報によれば、今から受けられるクエストは……『正義の男』だね」
 シャドーレギオンとなったのは鋼鉄民ではなく、正義の聖騎士ゴッドフリート・バチェラー。混沌世界にも同名の神父がいるが、こちらでは妻子が生存しており、聖騎士としての生活も安定しているようだ。
 彼は被害を抑えるため鋼鉄へ向かったが、そこで正体不明のバグに取り憑かれてしまったらしい。今の彼は鋼鉄民を全員抹殺せんとする危険人物だ。
「倒せば元に戻るみたいだけれど、なかなかに強敵みたいだ。良かったらアンタたちも手伝ってよ。
 あそこの聖騎士に話しかければクエスト受注できるから」
 それじゃあ、また後で。ローズマリーはそう告げると足早に去っていった。

GMコメント

●成功条件
 ゴッドフリート・バチェラーの撃破

●情報精度
 このシナリオの情報制度はBです。不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●エネミー
・ゴッドフリート・バチェラー
 『神々の猟犬グレイハウンド』の二つ名を持つブルーブラッドの聖騎士。アーリアさんの関係者ですが、R.O.Oにもデータが存在していたようです。
 彼は国の隔たりを問わず、弱い者を守りたいという意思を持つ男です。しかし今回のバグによりその願いは歪められ、守るために強い者を殺すという思想となっています。
 魔法剣を所持していますが、彼が得意とするのは拳での肉弾戦。その攻撃力は鋼鉄民にも劣りません。
 また、その図体に反して俊敏であり、手数も多いです。

『WISH』
 弱い者を守りたい

『DARK†WISH』
 強い者を抹殺する

※WISH&DARK†WISHに関して
 オープニングに記載された『WISH』および『DARK†WISH』へ、プレイングにて心情的アプローチを加えた場合、判定が有利になることがあります。


・触発された鋼鉄民×5
 戦うことが好きな者たちです。軍派の中では比較的穏健ですが、聖騎士たちを含む『ヨソ者』に対し非常に敵対心を抱いています。倒せば実力を認めてくれるので倒しましょう。
 難しく考えることは苦手で、近接〜中距離のファイターです。瞬発力こそないものの、鈍重な攻撃を向けてきます。

●友軍
・ローズマリー(p3y000032)
 踊り子の姿をしたプレイヤー。物理ファイターです。そこそこ戦えます。
 指示があれば従います。特になければ後述する倒れた鋼鉄民の守りに入ります。

・倒れた鋼鉄民×5
 ゴッドフリートに倒された者たちです。息はありますが、これ以上戦うことはできません。また、これ以上の傷を負えば死ぬ可能性があります。
 なお、彼らの生死はクエストクリアに関わりません。

●フィールド
 鋼鉄市街地。すでに周辺の住民は避難しており、人の気配はありません。
 障害物が多いです。

●ご挨拶
 愁と申します。
 不可避のバグにやって聖騎士ゴッドフリートが暴れ出しました。どうか助けてあげてください。
 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <フルメタルバトルロア>正義の男完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア(p3x001034)
天真爛漫
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
吹雪(p3x004727)
氷神
タント(p3x006204)
きらめくおねえさん
カイト(p3x007128)
結界師のひとりしばい
WYA7371(p3x007371)
人型戦車
入江・星(p3x008000)
根性、見せたれや

リプレイ


 サクラメント(ログイン・ポイント)。これはログイン時の目印にもなる他、受注クエストを進める為に近くまで転移するための場所でもある。
 これによって件の市街へあっという間に近づいた冒険者一同は、そこに立っている時間も惜しいと次々駆け出した。クエスト詳細に書かれていた通り、既に住民の避難は完了されているようで人気はない。
 つい先ほどまで人の営みがあった廃墟――そんな雰囲気だ。ここまで静かならば、諍いの声はすぐに聞こえよう。
(望みを歪められて、本来の望みとかけ離れたことをさせられちゃうなんて……!)
「このままにはしておけない!」
 強く言い切った『氷神』吹雪(p3x004727)ははっと口元を押さえ、それからこほんと咳払い。その様子を『踊り子』ローズマリー(p3y000032)は何とも言えない表情で見ていたが、まあうっかりなんてよくある事。気にしてはいけない。
「……ひとまず倒せば元に戻せるのよね? これ以上望まぬ事をしてしまう前に止めてあげましょう」
 吹雪というロールプレイをやり直す彼女であるが、そこに込められた想いはロールプレイをしていなくとも変わらない。バグなのか、ゲームマスターなる者が意図的に起こしているのか定かでないが、『このままにはしておけない』のである。
「悪趣味やけど、とりあえず全員張り倒せばいいっつうのはシンプルで良し。殴り飛ばしたるわ」
 ぱしりと掌に拳を打ち付けるのは『31勝44敗11分』入江・星(p3x008000)だ。ウィッシュだかウォッシュだか知らないが、願いを歪めようなどとどこの誰が考え付いたのか。高潔な聖騎士様であってもバグの前には形無しというところだが、放っておくのも寝覚めが悪い。
「音声認識。北に50メートルです」
 『人型戦車』WYA7371(p3x007371)のアシストを受けながらイレギュラーズたちは駆けていく。今のところ奇襲を受ける可能性は低いと見て良さそうだ。
「――見えた。若干……聖騎士の方が優勢みたいだ」
 暫しして目を凝らしていたローズマリーが仲間たちへ告げる。一同にも複数の影が戦う姿が見えてきていた。聖騎士と鋼鉄民が争っているようだが、数の差があるというのに聖騎士の方がやや優勢である。近くに転がっているのは敗れた者たちか。
「Step on it. さっさと終わらせましょう」
 WYA7371の背に浮かぶ砲装群からエネルギーバレットが放たれる。掃射されたそれは真っすぐにまだ立っている者たちの元へ飛んでいった。追いかけるようにアレクシア(p3x004630)が魔力を矢と成す。
「私たちの相手をしてもらうよ! 退屈はさせないから!」
「あ? 細っこいのに中々肝が据わってんじゃねえか」
 アレクシアの挑発に数人が振り向き、にぃと笑みを浮かべる。若干釣れ過ぎだが、全く振り向かれないよりはずっと良い。
「そう簡単にやらせないさ」
 その言葉と同時に楔状の結界が複数撃ち込まれる。『結界師のひとりしばい』カイト(p3x007128)は相手の動きを阻害しながら横目に小さく口端を上げた。
「ええ。さっさと大人しくなってもらいたいものね」
 その結界内を雪と氷が吹き荒れる。氷神の力を疑似再現――現実程の威力には、ゲーム内ではならないのか――した吹雪によって、鉄帝人の顔色が若干悪くなるのを見てとれた。
「殺すつもりはないわ。けれど、邪魔をしてほしくないの」
 彼らは悪事を働いたわけではなく、その気性に従っているただの狂戦士(バーサーカー)だ。命をとるまでのこともないだろう。星もまた、そこから漏れた1人を相手取り拳を構える。
「アッチでもこっちでも考え方的には正義より鋼鉄の方が肌に合うんよな」
「アッチ? 何言ってやがる」
「気にせえへんで! さ、殴り合い楽しもうや――オラァ!!」
 星の光を纏った一撃が相手へ入る。小さく息を詰めた相手は好敵手だと感じ取ったか、笑みを浮かべるとこちらもまた強烈なパンチを繰り出した。
 互いに防御を捨て、手が動く限り、体が動く限り殴り合う。ああ、怪我が増えどもこんなに楽しいことがあるだろうか!
 仲間たちが鋼鉄民を押さえる間を『天真爛漫』スティア(p3x001034)が通り抜け、聖騎士ゴッドフリートの元へと突撃する。同時にどこからともなく桜の花弁が舞い上がった。視界の中を舞い散る桜吹雪から、流れるような連撃がゴッドフリートへ飛び込む。
「新手か!」
「いきなりだけど私の相手をして貰うよ」
 スティアの姿を目にしたゴッドフリートは、しかし女だからと侮る事はない。今の一太刀を見れば只者でないとは知れる。
「危険は排除せねば……貴様も生かしては帰さん!」
 スティアの視界に映るステータス『DARK†WISH』。確かに強い者を排除するという強い意志に従って動いているようだ。
(けれどそれは捻じ曲げられた意志。正気に戻った時、絶対に後悔するはずだから……)
 これ以上暴れさせない。ここで止めるのだとスティアは刀を強く握りしめた。
「……まったく、かわいい奥さん子供も生きててハッピーなんだから……」
「エイル様? 今、何か……?」
「あー、なんでもない。一発殴って目ぇ覚ましてやろ!」
 『???のアバター』エイル・サカヅキ(p3x004400)の呟きを聞き取れなかった『きらめくおねえさん』タント(p3x006204)が視線を向けるが、エイルは小さく首を振る。こっちの話だ、聞いてほしかったわけではない。
 それよりもまず、優先すべきは倒れた鋼鉄民の救助だ。
「タンタン、ロズっぴ行くよ!」
「ロズっぴ……って、ボクか」
 渾名に首を傾げながらローズマリーも2人へついていく。倒れている鋼鉄民の傷をタントが癒す傍ら、軽症者をエイルが素早く担いでいきローズマリーがそれに続いた。目指すは戦闘区域よりやや離れた建物の中。鋼鉄の気候を考えれば寒さをしのげる場所が良い。
「ここなら大丈夫そうねぇ」
 タントは連れてきた鋼鉄民を寝かせ、ぐるりと軽く見渡してから外を見た。程よく離れている場所だ、さすがにここまで被害が及ぶことはあるまい。
(クリアには関係ないけれど)
 これで最後、とエイルは鋼鉄民を寝かせる。いずれも重軽傷であったが死者はいない。しかしあの場にいれば少なからず死人が出ていたはずだ。ゴッドフリートが正気に戻った時、悲しむ姿は見たくない。
「ロズっぴ、ここお願いしていい?」
「任せて。……あっちは頼んだよ」
「モチ!」
「それじゃあ、行きましょう」
 頷くローズマリーにサムズアップしたエイルとタントは戦場へ戻り始める。さあ、加勢せねば。

 ひゅん、と風を切るそれは天を穿つが如く、大きく弧を描いて真下へと落ちていく。至近距離での射撃に、しかし揺らがぬ魔力の矢じりは敵を正しく定める。
(でも、強い……!)
 流石は鋼鉄民と言うべきか。強靭な肉体はお国柄と気候によって鍛えられたものだろう。
「もうっ、あなた達と争ってる余裕は無いのよぉ!」
 そこへ戦場へ舞い戻ってきたタントの声。彼女が親指の節を食めば、林檎をしゃくりと響かせるような音が相手を惑わす。
「待った~? こっちはおけまる水産!」
 エイルもまた前線へと躍り出る。必殺の痛いやつをくれてやろうではないか。(M)マジで(K)蹴り飛ばす5秒前――。
「ってもう蹴ってたわ、てへぺろ~」
 ゴスッと痛そうな音を響かせ男が仰向きになる。しかしそこで立て直させるエイルではない。何処からともなく取り出したジョッキ生をイッキして頭ゴンよ!
「おっと、もうちょい? もう1杯いっとく?」
 初っ端から酔ったエイルの一撃に容赦は欠片ほどもなかったが、想定より石頭だったらしい。辛うじて立ち上がった相手に向けてカイトが封殺狙いに攻撃を放つ。
(バグでNPCたちの思考回路を歪ませる、ってやつなんかねー。『意図的』なもん感じるあたり、GM? の性格の良さを感じるが)
 かといってその所業を許すかと言ったら別である。この人物は混沌世界でもネクスト内でもマトモな人物であったはずなのだから。
 タントとエイルの加勢によりようやく1人。鋼鉄民が倒れたタイミングで、WYA7371がその照準をゴッドフリートへ定める。
「当機、速やかにゴッドフリート対応へ移行します」
「私も行きましょう」
 吹雪がさらに続き、その道を開けるべく星の拳が鋼鉄民を殴り飛ばした。
 一方、スティアはゴッドフリートを引きつけながらその瞳を見つめていた。
(意思を歪められたなんて思えないくらい、真っ直ぐな目)
 ひたむきに『意思』を貫く。彼の強さの秘訣でもあるのだろう。意思自体が歪んでいるなど、彼自身思ってもいないのだろうが。
「貴方は何のために騎士になったの?」
「私か? 貴様らのような者たちを倒し、弱い者を守るためだ!」
 手数だけではない、重たい拳。スティアはそれを防具で受けながらなお口を開く。
「――なら、こんな風に暴力を振るう為に騎士になったっていうの?」
 彼女の言葉にゴッドフリートが顔を顰める。そこには小さな動揺と、迷いが見えた。
 暴力を振るうなど、と。私は、守りたくて、と。
「思い出して! 貴方が持っていたはずの想いを!」
 桜花弁が舞い散る。同時に、そこへ機体が飛び込んだ。
「お待たせ致しました、スティア」
 花弁に混じった圧倒的物量の弾幕。次いで氷の槍がゴッドフリート目掛けて飛ぶも、咄嗟に抜いた剣で弾かれた。
「くっ……私は……守るために、貴様らを倒す!!」
「やはりこちらも倒すしか方法はなさそうね」
 次の氷槍を魔術で生成し始める吹雪。WYA7371は制圧モードへと展開し、再びの弾幕を張った。
 容赦がないと言われれば否定はできないが、相手は名の知れた強敵だ。ここまでしても確実に封殺できるとは限らない。
「決して油断は致しません、ゴッドフリート。これが当機のやり方です」
 WYA7371が応戦する傍ら、一気に攻勢へと持ち込んだ仲間達が合流する。タントは咄嗟にスティアへ回復スキルをおくった。
「勝利のために、全ては守るために……皆様のアシストがわたくしの役目よぉ」
「おまたせ、大丈夫?」
 アレクシアもスティアへ声をかけながら弓を構える。狙う先に向かって、アレクシアは矢とともに声を飛ばした。
「あなたは何のために戦っているの!? 人の生命を殺めるため!? 違うでしょう!」
 それは絶対に忘れてはいけない――何者にだって踏み躙られてはいけない理由。
 何のために力を手にしたのか。
 何故聖騎士たる彼が鋼鉄の地を踏んでいるのか。
「思い出して!!」
「そうだよ、目を覚まして!」
 満身創痍になりながらも、タントの支援を受けながら多種多様な技を繰り出すスティア。吹雪の氷槍がそれに続く。
「強い者を殺したって終わりじゃねぇ。強い者を殺せば『別のが現れる』。そんだけの話だ」
 先の見えない戦いだとカイトは告げる。一時は弱い者を守れたとしても、強者は世界中で生まれ続けるだろう。それを一掃しようなど不可能な領域だ。
「あんたは『正義』のお人なんだろう? 清廉な御心が血生臭い意思に汚されちゃあ、濯ぐものも濯げねぇ、よな?」
 『片割れ』であれば言わないようなセリフを告げて、カイトは結界を張り巡らせる。
「私は……違う……殺さねば……!」
「守るための拳で人を傷つけるのが、そんなに気持ちええのん?」
 星は瞳をすがめ、拳を握る。自分にできることは至ってシンプルだ。
「ラッシュ比べといこうやないか! オラオラオラオラオラオラオラァ!」
 星は1人じゃない。たとえ倒れたとしても、仲間たちがいるから躊躇いはない。
(拳が、重い)
 歪めども、そこに乗せられているのは真摯な想い。なればこそ尚更負けるわけにはいかない。
 そこへ乱入したエイルもまた手数で彼を責め立てる。
「アタシ、キミに似た人知ってるんだけどさ。こんな強いの知らなかったけど、鬼悲しい顔してるじゃん」
 思い浮かぶ、混沌世界のゴッドフリート。妻子を失ったあの姿からしか、彼女は知らない。
(きっとこれが、私が知らなかった頃の彼なのね)
 あちらのゴッドフリートもまた、聖騎士として活躍していたというから。重ねて見てしまうのはある意味必然とも言えた。
「綺麗事だけどさ、キミが倒した相手にも家族はいる。残された家族の気持ち、キミなら解るっしょ!?」
「……かぞ、く」
 ゴッドフリートの目が見開かれる。そうだよ、と叫んだエイルはゴッドフリートへ――大分怪しい足取りであったが――急接近し。
「そのグーは殺す為にじゃなく、守る為に振るうんだろこのおたんこなす!!!」
 酔いに勢い任せ、思い切り拳骨を食らわせた。



「……お家で奥様とお子さんが待っているのでしょう?」
 意識を失い倒れたとゴッドフリートの元に吹雪が膝をつき、出来る限りの治療を施す。本職ではないから応急処置にはなるが、それでもやらないよりマシなはずだ。
「ヤベェ、流石にやりすぎたかな」
「大丈夫じゃないかな? ゲームの中だし」
 暫くして酔いが覚めてきたエイルが困ったように視線を彷徨わせるが、アレクシアは励ましの声をかける。NPCは死んだら戻らないものの、体に異常が見られない以上はいつか目を覚ますはず。
 ほどなくしてアレクシアの想定通り、彼は意識を取り戻す。覗き込む面々の顔を見て、それからはっと起き上がった。
「無理すんなし」
「私は……なんてことを」
「取り返しのつかないところまではいってないわよぉ。皆無事だもの」
 タントの言葉に視線を上げるゴッドフリート。それから歯を食いしばり、小さく首を振った。
 聖騎士たるものが正体不明の影に取りつかれるなど、精神の弱さを現していると言っても過言ではない。まだまだ『足りない』のだ。
 そんな彼に、エイルは手を差し出した。
「……ほら、家帰ろーよ。肩くらい、美少女エイルちゃんが貸したげる」
 『彼』にはまだ、守るべきものがある。ならばこれからもっともっと強くなるだろう。そのためにすべきはここで悔やむことではなく、守るべき者たちの元へ――家族の元へ戻ることだ。

成否

成功

MVP

スティア(p3x001034)
天真爛漫

状態異常

スティア(p3x001034)[死亡]
天真爛漫
入江・星(p3x008000)[死亡]
根性、見せたれや

あとがき

 お疲れ様でした。
 ゴッドフリートは無事に消化を取り戻し、正義にいる家族の元へ戻ったようです。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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