シナリオ詳細
再現性千葉2010:HAHA! やぁボク三木! ヨロシクね!
オープニング
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夜妖とはいわゆる再現性東京におけるモンスターの総称である――
彼らは各地に潜み、時として人を襲う……
故にこそ対処出来る者――例えばイレギュラーズ――などに事態解決の為の話が持ち込まれる事もあるのだ、が。
「……ここだよな? 今回の依頼の場所は?」
まさかそんな夜妖案件で再現性東京……否。再現性『千葉』と呼ばれる場所に存在する大型テーマパーク『マウ・スー・ランド』に呼ばれる事になろうとは一体誰が予測していたか――!!
眼前。多くの入場客が並んでいる様子の正面ゲートを眺めながら赤羽・大地 (p3p004151)は小さく呟くものだ。えっ、ここで……なに? ホントにここで夜妖退治なのか?
「おお! 皆さんがお話にあった方々ですね……! さぁこちらの方へどうぞ!」
「ええと――依頼主、かな? という事は間違いとかではない……?」
と、そうしていればドゥー・ウーヤー (p3p007913)達の目の前に現れたのは――ランドのスタッフだろうか。イレギュラーズ達を別方向へと導き、案内していく。どうやらそこは一般客の入り口とは異なるスタッフ専用の出入り口の様だ。
そして歩きながら語るは、どうにも施設の内部に夜妖が侵入したらしいとの事。
「しかも侵入した個所はお化け屋敷……つまり一般客の目にも触れる所なのです……! 一度は点検作業中という名目で施設封鎖も検討したのですが、人の出入りが無いとどうやら逃げようとする様でして……」
「成程。折角捕捉出来ているのに逃げられては困る、か」
「それにお化け屋敷ならアトラクションの一環という事で誤魔化せるけど……もしも外に出たりなんかしたら、ね」
だから一見すると通常営業していた訳かと、アーマデル・アル・アマル (p3p008599)と逢華 (p3p008367)は一応納得もするものだ。この依頼の性質も見えてきた――客として潜入して、秘密裏に始末しろという訳か……!
「ええ。ただ、些か困った事が二つありまして――実はその夜妖は……いわゆる『幽霊』と申しますか、つまり普通の人には見えづらいと言いますか……」
「霊感か、それに属するものが必要って事かな?」
グリム・クロウ・ルインズ (p3p008578)がスタッフの言葉に反応すれば、どうにも夜妖は『見える』者と『見えない・見え辛い』者がいるらしい――霊魂と意志疎通が出来る様なモノでなければ捉えるのも難しい、と。
まぁその辺りはここに集まったイレギュラーズの面々ならなんとかなるか――
んっ、待てよ? 今『二つ』って言った?
「はい。もう一つありまして、実はそっちの方がヤバいです」
「――ヤバい?」
「元々その夜妖を発見したのは、当ランドに働く霊感のあるスタッフでして……彼が言うには、見るだけでも恐怖を抱いてしまうほど、恐ろしい姿をしているのだとか……!!
思わず聞き返してしまった閠 (p3p006838)だったが――なんだろうかソレは。
まぁ夜妖なんていうのは基本的に化け物と同じだ。
それ故に恐れる姿をしていても特になんら不思議はなく――
「――んっ? 今、何か声が聞こえませんでしたか?」
「……声?」
瞬間。
シャーラッシュ=ホー (p3p009832)がどこか彼方を見据える様をノア・マクレシア (p3p000713)は見た。彼が言うには何か『声』が聞こえたという事だが。
耳を澄ませてみる。
この先は件のお化け屋敷に繋がっている場所で、夜妖の情報に繋がらないかと――
――HAHA.
んっ? 確かに何か聞こえたし、影が見えたような気がするぞ……?
なんだろうか。薄暗くてよく分からないが。
目を凝らしてもう一度――
「HAHA!! やぁボク三木! キミは新しいお客さんかな?」
瞬間。その影がいきなり背後へと。
耳の傍で囁くは――特徴的な笑い声と『存在感』――
「なっ……!?」
「みんな、たのしく遊ぼうね~!!」
そう言ってイレギュラーズの首筋を優しく撫ぜる様にしてからお化け屋敷施設――『アパートメント・ファントム』の奥へと駆け抜けていく謎の影。
…………ヤバい! これはヤバい!
何がとは言えないけれど絶対ヤバい!!
アレが外に出て多くの人に目撃される前に、早く退治してくれイレギュラーズ――!!
- 再現性千葉2010:HAHA! やぁボク三木! ヨロシクね!完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年07月27日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「三木殿のことは存じ上げませんが……不思議と初めて会ったような気がしませんね」
「三木の住むマウ・スー・ランド……三木のマウ・スー……三木マ、ウス……
なぜだ……名前を聞いてから悪寒が止まらない。これはまずい相手かもしれないな」
されど『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)は『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)と共に歩を進める。そうだ何故か背筋が寒くなる気配がグリムは感じているがしかし、臆している場合ではない。
遊園地に紛れ込んだ三木を成仏させるのだ――ッ!
それには霊魂と意志を交わす事の出来る技能や祝福を宿す彼らしかいないのだから。
……ただ、それはそれとして。
「私、お化け屋敷とやらに入るのは初めてなのですよ。一体どのような施設なのでしょう? いえ、お化けを主題とした施設であるというのはなんとなく察する事が出来るのですが。しかし具体的にはどういう意図であるのか」
「あー……なんて言えばいいんでしょう、ね。幽霊とか見えない人も多いからなぁ」
ホーの疑問に対して言を紡ぐのは『未来を、この手で』赤羽・大地(p3p004151)だ。混沌の世界では幽霊がいるのはそう珍しい事ではないが――しかし、外の世界では『そう』とは限らない。そして外より至る者が多い練達では特に、背筋が寒くなる様なホラーを楽しむ目的を持つ者もいるものだ。
幽霊に馴染みが無い故にこそ。
されどいざ説明となるとこれは感覚的な事なのでどうにも難しい――そしてホーはどうにも、そういう感覚的な事が『薄い』様な気が大地はしていて。
「お仕事です、けれど……恥ずかしながら、遊園地、というものには、心躍ります、ね。
だから、じゃないですけど、マウ・スー・ランドの幽霊、三木……探さないと、ですね」
「ああ――この仕事が順調に終わったら少し遊んでみたいという気はある」
一方で声がした方に視線を向けてみれば『真白き咎鴉』閠(p3p006838)とグリムはお化け屋敷の事を理解している様であった。というより、正確にはテーマパークの意味自体をだろうか。
初めて来たグリムなどは、心のどこかに些か高揚感も湧いているものである――事が片付いた暁にはゆっくりと他の施設を回ってみてもいいかもしれない。
故に彼らは歩む。三木が消えた方角へと。
イレギュラーズ達は二手に分かれ奴めを探さんとしていた。グリムは周囲の温度の違いを見据える目をもってして三木を。幽霊ならば正常なる体温はあるまい……人と間違えぬ様に注意しながら、同時。閠は周囲に『耳』を澄ます――
それは音の反響がないかと。三木に足音があるのであれば捉える事が出来る筈だ。
「迷惑をかけないよう、他のお客様との、距離にも注意して、おきましょう……んん?」
前方付近。窺うように顔を黒布越しに動かしながら進んでいれ、ば。
首を傾げる閠。
ふと『何か』がいる様な。そんな気配をすぐそこから感じて――
『ギシャアアアアア!! グルルッ、ゥオンォン!!』
「っ、わ、わ? えと、これは逃げたら、いいです? み、三木、ではないです、よね?」
「ぉお。こいつは狼――の絵が動いてるな。随分リアルな迫力のある仕掛けだ」
「ふむ……この肖像画、どういった仕組みで動いているのでしょうか。不思議ですね。練達であればこそ、そういった技術もまた盛んなのでしょうが」
直後に生じるは狼の唸り声――と共に肖像画が動いている。
まるでこちらの喉笛を嚙み砕かんとする勢いだ、が。驚けばいいのか慣れずにいる閠の背後より大地と、一般客の様子に変じるホーが肖像画を覗き込むもの。ホーがまじまじと見据えるのは新鮮味のある光景に興味を抱くが故か――更には少し離れた所には突如として動き出す骸骨もあって。
「おやこれは……笑う骸骨。
……何がおかしくてここまで笑うのでしょう。
もしや私が知らぬ内に、至らぬ事でも仕出かしましたか?」
「いや、きっと人が動くのに反応して自動的に笑う動作をしているだけだろう――しかし学園の化学室? にも置いてあったな。こういう骨は、お化け屋敷にも置くものか……」
なまじ気配を感じない分、急に動き出す無機質なる物には困るものだと。
あまり表情には出なかったものの心の臓の鼓動が早くなるグリム。もう少し間近で生じていたら――んっ。ちょっと待てよ? 狼の肖像画はともかく、骸骨とは距離があったのに何故こんなにも早く動き出した?
「まさか」
「HAHA! ――楽しんでるかい?」
瞬間。グリムと大地の背筋側の服が引っ張られ。
転がされるは急速なる冷気――小さな氷が背の肌を撫ぜて腰まで転がった。
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「――あれ? 今どこかで声がしたような」
どこか別所で大声が響いた気がすると感じたのは『海を越えて』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)だ。分かれて行動している班の方からの響きか――それとも一般客が驚いた声でも出したか――
優れし聴覚を有する彼の耳は周辺各地の音を逃さず捉え、目は隅の影すら見逃さぬ。
敵は幽霊。意思を交わす事の出来る力が三木めの姿を見据えるのだ――けれど。
「ところで……三木ってどんな夜妖なんだろうね。なんだかすっごく気になるんだけど、正体を探ること自体がすごく冒涜的な予感がするし、なんだったら探ったら探っただけこっちが危険な事になる様な、変な予感があるんだよね」
「俺は少しばかり聞いたことがあるな……時には大魔法使いであったりもするそうだが、迂闊に正体を探ったりその姿を絵にしようとすると黒服がすっ飛んできて監禁され恐ろしい要求を行うとかいう……」
「えっと、つまりは、みときのあいだにちっちゃい〘つ〙を入れたり、カメラで取らない方がいい夜妖って事かな……?」
そしてドゥーと同じく行動するは『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)と『Felicia』逢華(p3p008367)だ。だめだよ二人とも。それ以上三木の正体に踏み込んではいけない……! パンドラを消し飛ばされるっ!
ともあれ何故か『三木』以外の発音が許されないアーマデルは『みっ●●……み●き?』と呟きながら霊の存在を感知すべく周囲に注意を巡らせる。
「三木……三体……つまり一体なら一木……
禾……いや、本……? 本……パンフレットとか、土産物の冊子とか……?
そういうのが原型だったりするのか……?」
「……なんかの、そういう概念みたいな幽霊、なのかな? わかんないけど」
更にそのアーマデルと同じく三木に対する疑問を口ずさむのは『墓場の黒兎』ノア・マクレシア(p3p000713)だ。お化け屋敷の幽霊退治と聞いてはいたが――しかし聞くに謎の存在と言えよう……三木は。
ともあれノアもまた三木を探すべく視線を巡らせていた。
――幽霊は別に怖くはない。けれど、暗くおどろおどろしく、どことなく不穏を感じるさせるこの周囲の気配――少し、苦手かもしれない。張り詰める緊張が体を僅かながら強張らせ、ほんの微かな音でも敏感に反応してしまいそうで。
「……大きな音とか、鳴らないといいな――」
「――そんな君にハッピープレゼントッ! ご来場ホントにありがとうネ――!」
HAHA!! 瞬間。ノアの近くで『奴』めの声がしたと思えば、同時に鳴り響くは強烈な音――クラッカーだ!! ある意味銃撃にも似た破裂音は皆を驚かせるもの――
「わっ、わっ、わ。三木さん、でもそうはいかないよ……!」
が! その奇襲的炸裂音はノアには通じなかった。
獣種としての超絶的反射神経が奴めの姿を捉える方が先――!
「ワオ! カワイイお嬢さん、スゴイね! でも捕まる訳にはいかないのサ!」
「待て、逃がさないぞッ……! くぅ、よくもクラッカーを!」
直後に三木は失敗を悟って飛ぶ――のを引き付けんと追うのはドゥーだ。
彼のハイセンスたる耳に奴の動く音が捉えられなかったのは、奴が動かずに潜んでいたからか? おかげでクラッカー音にちょっとびっくりしちゃったじゃないか!! 別にホラーはそこまで怖くないのだが、ドッキリに慣れてるとは限らないんだよ!
高鳴る心臓の鼓動。押さえながら追うドゥーに沿って、ノアの雷撃が三木へと。
――この空間で奴を逃がす訳にはいかない。一度見つけたなら見失わない事が重要だ!
「ええい待てそこのみっ●ぃーまう・すー……くっ。やはり何故か発音できない……! なんだこの力は。これも三木の能力か? それとも何かもっと別の大いなる力の干渉か……!?」
故にアーマデルも往く――どうしても他の名で呼べぬ意味を思考しながら。
名を呼ぶ、或いは名付けるのは、不安定な存在を固定化する儀式でもある。名は体を表すと言うが、実際それは魔術や呪術などといった観点において重大な要素だ――故に似て異なる名を付けて存在を薄められるかと思ったのだが。
何度呟いても『三木』に強制的に引き戻されてしまう発音に……! くっ!
「まぁいい……! とにかく、恨みはないが放置する訳にはいかない。
――その身を粉々に砕かせてもらうとしよう」
やっぱりどうしてか絶対に排除しなければならない焦燥感も彼は感じていた。とにかく、HAHA! と笑う奴めの背後を狙い撃つ! であれば。
「HAHA! 今日の皆はボクが見えるんだね、嬉しいヨ!」
「視える、よ」
そして逢華もまた追う。笑い声を挙げながらどこぞへと往く三木を。
――視える。確かに奴めの姿が。
まさか『視える』事が。この事が嬉しいと思えるなんて――
「久々かも」
口端が微かに和らぐ逢華。と、同時に放つは邪悪を払う力を宿した光か。
三木の、何故か上手く見えぬその影を捉える様に。これで倒す、と言うよりも周囲の皆の動きをサポートする為の動きだ――三木を見続け、そして戦況に応じて彼女は手段を変えよう。
皆が疲労すればその身を癒す。或いは活力を満たすのだ。
「よし、足が鈍ったのか追いついてきた……スタッフさんに攻撃とかはしないように気を付けながらこのまま――ッ!」
さすれば度重なる攻撃に三木が揺らいでいる事を感じたドゥーは更に速度を上げる。
この先にたしか行き止まりがあったような――上手くすればそこへ追い詰めて仕留める事が出来よう。そう結論付け皆で急いだ、その時。
「おいテメェ! 待ちやがれ、よくもこの『赤羽』を愚弄してくれたなァ!
待てや三ッ!! 木ィィィィ!!! 止まれってんだろうが――!!」
前方から凄まじい怒気が聞こえてきたかと思えば。
大地、否。『赤羽』たる別箇所にいた筈の彼の姿が――そこにあった。
●
大地達は背中に氷を入れられた襲撃からずっと三木を追い続けていた。
道中見失ったかと思えば背後に回られ柔らかい素材のバットで腰を叩かれる。大してダメージもないのだがおちょくる様な仕草と逃亡、そして仕草とまた逃亡と続けられ――
そしたら大地の中にいる赤羽がキレた!
「鼬ごっこはしゃらくせェんだよおおおおお幽霊とか知るか成仏しろやァ――!!」
「やれやれ。可能であれば穏便に……
そう。あまり手荒な真似はしたくないのですが、致し方ありませんね」
「ははは。安心してほしい気配もしないのに急に動いたり笑ったりと脅かしてくるのと違って君は気配があるだけましだうん何一つ怖くなんてはないがとりあえず頭が混乱してるから消し飛ばさせろ」
苛烈な言動へと変じている赤羽に続いてホーとグリムも追いついてきた。常に薄く微笑み携えるホーは未だ『驚いて』はいないのだろうか――故にこそ彼は穏便に三木を制圧したい理由があったのだが、しかし。赤羽が撃を放ち、グリムが敵の動きを縛らんとする。
それは死霊の力を借り受ける降霊呪術。
霊をもって霊を制す攻勢を――突然クラッカー鳴らして驚かせた三木に今の己の純粋樽気持ちと共にグリムは叩き込んでいた。オラ! もう逃げるな! 消し飛ばさせろ! 大丈夫大丈夫サクッと殺、終わるから!
これほど壮絶に三木を追い詰め始めている今そんな暇はないだろうか? 更に奥には別の班もいるではないか――故にやむを得ず、吐息一つ共に光を放たんとすれ、ば。
「HAHA! どうしたんだい君? もっと柔らかく笑って笑ってヨ!」
瞬間。最後の三体目の三木が此処へとやってきた――!
ホーの背後に回りてその首筋を撫ぜんとし。
「ストップ」
直後。掌を相手に見せながら。
「失礼。三木殿、差し支えなければ教えていただきたいのですが……何故私にそのようなことをなさったのでしょう。そのような事をする目的は一体?」
「HAHA! 首とかはね、突然撫ぜられると皆驚くのサ! だからだよ!」
質問を投げかければ――はたしてそれは質問の回答になっているのかいないのか。
しかしホーにとっては十分だった。
「成程、今のは驚くのが正解だったのですね。申し訳ありません、以後気をつけます」
『目的』が分かったのだから。
『次』があるならば活かそうと――心の底から満足しながら聖なる光をぶち込んだ。さすれば死霊に対する特攻性能もあった光は三木の身を素早く削り飛ばしていく――だからこそ三木は跳躍した。まだだ。最後の最後まで人を驚かせるのだと!
往く先にいたのは閠だ。
「すみません。もし、ボクの布が、狙われたら……その、殴って、袋をかけてでも、止めていただけると……って、わ、わ、わ。なんです? もしかして、三木さん、三木さんです?」
大事にずっと身に着けている黒布を取らんと回り込んだのだ。
最後の足掻きとばかりに。だがダメだ。それはダメなのだ。
――人には踏み越えてはならぬラインが存在する。
「悪戯を、するのはいいけれど、限度ってものは、あるんだ」
黒布が取れんとした刹那――閠の声色が微かに変わって。
「悪戯の限度。これは、死んでも忘れちゃ、いけないことだ……三ぃ木ぃ君?」
直後。三木の腹部に穿つは一つの魂。
それは黒き狼。魂まで黒く染まったかろやかな風が三木を捉え。
笑い声ごと呑み込んで往き――ズレた黒布を再び握り締めて位置を直すものだ。
「あくりょう、たいさん。あくりょーたいさーん。君のこの世に残る生命力、貰うね」
そして残った者らも段々と追い詰めていく――ノアが三木の活力を奪い取らんとし、三木は笑いながら抗うものだ、が。
「いやぁ外に出す訳にはいかないからね……三木は期間限定演出のホラーだったっていう事で」
ここで終わってもらうよと、動き鈍りし三木にドゥーが死霊の矢を一閃する。
集まった霊の雄たけびがまるでホラーの演出かの様だ。
これならば例え一般人やスタッフに見られても演出として強引に誤魔化せる……
「かもしれないし、ね。やれやれ幽霊を倒すために幽霊の真似事とはね……!」
吐息一つ。あと一歩だと皆で三木達を追い詰めよう。
突如として様々な干渉をされたのは、些かビックリもしたものだが……
「イタズラ好きの幽霊、かぁ。でもこれぐらいなら全然だよ」
されど逢華は思うものだ。『機関』にいた頃はこの程度では済まなかった、と。
三木は精々首を撫でたり氷を肌に付けたりする程度。
しかしかつては出会い頭にナイフを投げつけられ、ある日は抜き打ちの殺し合いもあったか。あの頃は――
「って、ここで思う事でもないよね」
頭を振って彼女は過去を振り払い。同時に再び光で周囲を満たす。
三木だけを払う光を。彼らが纏っている影の様な闇を祓いて……
「HAHA――今日はここまでみたいだね。グッナイ、皆」
であれば同時、三木が親指を立てる様な姿勢を見せながら消え失せていく。
最後の最後まで不穏な、しかしどこか楽し気な――笑い声と共に。
――HAHA!
「はぁ、はぁ……あれ? 三木は、今ので最後か?」
「みたいだな――だが、奴の言動……もしかすれば『たのしいなかまたち』が潜んでいないとも限らない。もう少し探索する必要がありそうだな……?」
ふと意識が戻る大地。更にアーマデルが三木の消失を確認する――
ものだが、はたしてこれで終わりか? 奴の仲間がいそうな気もするのだが……
「……そうだね、それに、このお化け屋敷……今みたいなのじゃなくて、きちんと楽しんだらどうなるのか。とても、気になる」
「あっ……ぼ、僕もこういう遊園地とかテーマパークは来たことがないから……
その、えっと。終わったら皆で普通に巡って遊んでみたいんだけど――」
ダメ、かな?
ノアの言に続き逢華もまた絞り出すように。
かつて、思っても成せなかったことを――今この瞬間に。
出来ないだろうかと。
「はは、そうだね――マウ・スー・ランドの中を歩いてみたいし。
他にも三木みたいなのが残ってないか確認の為にも皆で遊、探索に行こうか」
さすればドゥーも快く了承するものだ。遊園地など、そうそう来る機会もないのだから。
折角なので楽しもう。
「……しかしこれ、倒したあとそのまま出口まで行かないとなんだな。
んっいや……こわくないからへいきだ。ああへいきだ。うん、へいきだ」
だから、うん。まずはこの施設を真っ当に抜け出すとしよう。
グリムは視線を動かす。近くにあった肖像画がまた動かないかと警戒すれ、ば。
どこかで微かに笑い声が――聞こえたような気がした。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
『HAHA! 三木は不滅さ、またどこかで会おうね皆!!』
――かはともかく、依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!
GMコメント
リクエストありがとうございます! 以下詳細です!!
HAHA!!
●依頼達成条件
一般客として紛れながら、夜妖を退治せよ!
●フィールド
マウ・スー・ランドという巨大テーマパークの中の一角。
お化け屋敷『アパートメント・ファントム』の中が舞台です。
この中はまるで洋館の様になっており、結構広い空間です。図書室や大広間、客室に寝室などなど……そしてそれらの部屋にそれぞれ幽霊、動く肖像画、笑うガイコツなどいわゆるホラー要素が無数に詰まっています。
――が! この中に本物の幽霊たる夜妖が紛れ込んでしまいました!
皆さんは施設のホラー要素の中に紛れている夜妖を、一般客を装い――見つけ出し撃破してください!
……ちなみにそれはそれとして、結構本格的なホラー施設らしく結構怖いです。
皆さん、ホラーに耐性はありますか?
駄目ですよ。三木と間違えて施設に攻撃とかをしかけちゃ。駄目ですよ。絶対だめですからね!
●夜妖『三木』×3
アパートメント・ファントムの中に出てくる夜妖です。なぜか三体も出てきます。
元々が一体なんの存在かは不明ですが『本物の幽霊』であり、この施設に最近出没している様です……全員己を『三木』と名乗っています。初めて気づいたのは偶々霊感の様な要素を持っていたスタッフの一人なのだとか。
三木は通常の人間には見えづらい存在ですが、霊魂疎通などの死者と通じる能力をもっていると夜妖を視認できやすくなります。またアンデッドや死体などと通じ合ったり、或いは探知する様なギフトがあっても同様に効果があるでしょう。
あっ。その外見はうすらぼんやりとしていて分かり辛いです。
なんだか特徴的な笑い声と特徴的な耳がある様に見えますが気のせいです。
気のせいですがコイツが外に出ると非常にまずい事になる気がするので必ず撃破or除霊してください。いいですね!!
あ、それはそうと三木は皆さんを驚かせようと突如現れる節があります。
急に背後に回って首筋を撫でたりとかします。
あと、いきなり背中に氷とか入れてきたりします。
三木の目的は皆さんの悲鳴なのです!
戦闘能力自体はあんまりないみたいですので、上手い事発見出来て捕捉し続ける事が出来れば、そう大した敵ではないでしょう。奴の持つ最大級の攻撃はケツバット(柔らか素材のポリエステル)らしいです。グッドラック!
……三木の姿をカメラとかに取ろうとしちゃダメだよ? HAHA!
●情報精度
このシナリオの情報精度はMIKIです。
想定外の事態は絶対に起こらないよ、HAHA!
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