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シナリオ詳細

<フルメタルバトルロア>夢見シスターズのがっぽり大作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夏を待つ、君の頬に触れたもう。瞳の色を知らぬから。
 石畳を通り過ぎる馬車の、はねる小石が足下へと。
 ふと立ち止まったブーツの女が、『ねえ』と振り返る。
「ナーシャ、ビニールプール! ビニールプールですわ!」
 胸に抱えた紙袋。指さしたのは大通りのショーウィンドウだった。
 レジャーを意識した服装のマネキンがキャンプをし、隣にはビニールプール。
 そんな風景を横目に、聖女と名高いクラースナヤズヴェズダーの司祭アナスタシアもまた立ち止まる。
「ヴァリューシャ……この歳になってまでビニールプールはどうだろう」
 ヴァリューシャ、もとい同クラースナヤズヴェズダーの司祭ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤの倍ほどの荷物を両脇にかかえていたアナスタシアが肩をすくめた。
 対して、頬を膨らませてもう一度ショーウィンドウを指さすヴァレーリヤ。
「もうっ、違いますわ! 私じゃなくて、子供達に! 今年は内乱騒ぎで太陽祭ができそうにありませんもの」
 顎をあげ、『ああ』と得心の声をあげるアナスタシア。
 太陽祭。平たく言えば夏祭りである。古くは太陽の恵みへの感謝をこめた祭事であったが、主に水をあびたり冷たいものや甘い物をたべて涼むという形に変化したものである。
「せめてギアバジリカの孤児院にプールを作ってあげたいのですわ」
「それは悪くない考えだ……が。孤児院の子供達をすべて詰め込めるサイズには見えないな。隣のあれならあるいは……」
 アナスタシアが顎で示したプレートには、どこでも大型プールを展開できる折りたたみ式魔道プールなる商品が展示されていた。が、その下に書かれた暴力的な値段に……。
「あんまりですわぁ」
 顔をしおぉっとさせるヴァレーリヤ。

 今年は風にあたるでもしてすごすことにしよう、と言って立ち去るアナスタシアたち。
 そんな様子を、店の向かいの屋根の上。腕組みをして眺める夢見・ヴァレ家(p3x001837)の姿があった。
「…………」
 あったかもしれない平和。あったかもしれない未来。あったかもしれない、当たり前のようなやりとり。
 軍と深い協力関係を結べたクラースナヤズヴェズダーは、無気力ながら政治力のあるヴェルスのもとで平和を維持しているのだろう。革命派と帝政派の分裂もおさまり、彼らはかの移動要塞ギアバジリカの中で今日も平和に暮らしているという。
 混沌世界の自分たちだって、もし、少しでも違えば……。
「ヴァリューシャ」
 後ろで聞こえた声に、振り返る。
 夢見・マリ家(p3x006685)がハッとした顔で自分の口に手を当てていた。
「あ、いや……ヴァレ家! 次の目標は決まりましたか!?」
 コホンと咳払いし、ニッとイタズラっぽい顔をするヴァレ家。
「もちろん! これから夏も暑くなりますから……豪快にプールでも奪ってやるのです!」
「さすがヴァレ家、プールに行くどころか奪ってくるとは!」
「もっと褒めなさい!」
 どーやー! って口でいいながら胸を張るヴァレ家。
 マリ家は両手とアーマーサブアームの両方でぱちぱち拍手した。
「幸い次の攻撃ポイントはこのあたり。依頼のついでにアイテムゲットなのです! さあ行きますよマリ家! ライドモード!」
「イエスヴァレ家ー!」
 マリ家はぴょーんとジャンプするとスーツを完全装着。とらモードになると、その背にヴァレ家がライドオンした。屋根から屋根へとぴょんぴょんとびながら向かうは……近くに停泊中のギアバジリカであった。

●高機動略奪、からの太陽祭
「よく来てくれた、同志ヴァレ家! 同志マリ家!」
 ギアバジリカ格納庫内。並んだ魔道バイクを背景に、ショッケン・ハイドリヒは振り返った。手にしたボードには大量のチェックリストが並び、そのひとつひとつに丁寧な丸印が書かれている。随分と短くなった鉛筆を右手に持っているところからして、チェックしているのは彼なのだろう。
 それをみてうぇぇって顔をしたヴァレ家に、ショッケンは苦笑する。
「フッ、気にするな。裏方作業は昔から得意なのだ。ブラックハンズという部隊が昔あったのを知っているか? 私はその部隊で雑用係として活躍していてな。懐かしい……私の整備した魔道バイクを駆る同志アナスタシア。整備買い出し掃除に炊事。珈琲を淹れる腕は一級品。あの戦果の裏に私の数々の活躍があったのだ……仮拠点が襲われた際フラッシュライトを使って一瞬の隙を作り出した私についた二つ名は『目くらましのショッケン』……」
 うっとりと目を閉じるショッケン。ハッとしてイレギュラーズたちへと向き直る。
「おっと、すまない。思い出話をしている時間ではないな。
 ここヴァールハーヴ地区にギアバジリカを停泊したのは他でもない。この土地から卸されるマシンが敵対軍閥に渡ることが分かったのだ。
 こういうやり方は本意では無いが、敵に渡るくらいなら壊してしまったほうが。……できれば、頂いてしまったほうがこちらのためになる。
 何、心配するな。あとで業者の方には軍から相応の金を支払うつもりだ。ヴェルス殿を狙う敵と戦う金なら、惜しくはない」
 どうやらこの町の工場で製作されているパワードスーツ。これを破壊ないしは奪うことが、今回の依頼であるらしい。
「既にこの町に入り込んでいる敵対軍閥の連中がスーツを使って応戦するかもしれないが、諸君らならば問題なく勝利できるだろう。それと……」
 ショッケンはボードに裏にはさんでいたチケットを人数分取り外して差し出してきた。
 子供がクレヨンで書いたらしい字で『たいようさい』とある。
「ギアバジリカの中に孤児院があってな、太陽祭のイベントを開くそうだ。同志アナスタシアがブラックハンズを引退したのちに開いた施設のひとつだが、良い場所だ。折角こうして招待されているのだから、行ってみるといい」
 笑顔で差し出されたチケットを、ヴァレ家たちは受け取った。今回の依頼資料と一緒に。

GMコメント

●オーダー
 敵対軍閥に与する工場へ突入し、納品予定のパワードスーツを破壊ないしは奪いましょう。

 この町には既に敵対軍閥の人間が入り込んでおり、襲撃を予感して工場へとパワードスーツを前倒しで引き取りに来ているかもしれません。調査によればパワードスーツのうち殆どは未完成なのですが、一体か二体はロールアウト可能な所まで完成している可能性があるとのこと。

●突入からの戦闘パート
 工場のセキュリティガードと戦い、工場へ突入しましょう。
 ガードたちは敵対軍閥のメンバーですが、別に過剰に殺したり傷つけたりする必要はありません。倒してドンでOKです。

 パワードスーツが一体くらい敵の手にわたり、乗り込んだ敵がそのまま逃走するおそれがあります。
 ここはひとつタイガーライドオンしたマリ家&ヴァレ家を中心とした高機動チームでおっかけて追撃、撃破しましょう。
 このための魔道バイクはショッケンが貸してくれるので、自由に使ってぶおんぶおんいわせてください。

●太陽祭のパート
 通称『ギアバジリカようちえん』で開かれる太陽祭に参加しましょう。
 太陽祭とはOPでも説明したように、夕涼み会です。冷たいものを食べたり涼しいことをしたりします。
 ですが……今回は物資不足でかき氷を作って食べるだけになりそうです。
 皆さんで何かしら持ち寄ってイベントを盛り上げると、より楽しくなれるかも知れません。
(特に制限とかないので、思いついたものをビニール袋いっぱいに買ってきて持ち込んでOKです。ゴールド報酬とかに影響しないものとします)
 今回サブオプション要素として、町から撤退するついでに折りたたみプールをパクっていくとこの会で使うことが出来ます。偶然にも(ほんと偶然にも)折りたたみプールを製造してる工場が今回襲撃する工場だったので、倉庫にフツーに置いてあります。

※エクスギアとかWISHとかについて
 今回の依頼は敵対軍閥への妨害作戦にあたり、ギアバジリカも町にもうついているためエクスギアは使いません。敵もシャドーレギオンではないのでDARK†WISHとかもあまり関係ありません。
 ガッといってドカンとこなしてパーッとやりましょう!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <フルメタルバトルロア>夢見シスターズのがっぽり大作戦完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

那由他(p3x000375)
nayunayu
ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
叫ぶ流星
夢見・ヴァレ家(p3x001837)
航空海賊忍者
レニー(p3x005709)
ブッ壊し屋
ソール・ヴィングトール(p3x006270)
雷帝
夢見・マリ家(p3x006685)
虎帝
焔迅(p3x007500)
ころころわんこ
ひめにゃこ(p3x008456)
勧善懲悪超絶美少女姫天使

リプレイ

●がっぽり大作戦
 空煙るギアバジリカ。大砲のひとつにマントをなびかせ二人の夢見が立っていた。
「誰が夢見と聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
 ババッとシンメトリーなポーズをとると、二人はカッと振り向いた。
「『航空海賊忍者』夢見・ヴァレ家(p3x001837)!」
「『航空海賊虎』夢見・マリ家(p3x006685)!」
「ふふふ、拙者達といえば略奪、略奪といえば拙者達! 夢見の名を歴史に刻む時がやって来ましたよ!」
「ふふふ、流石です! ヴァレ家!」
「実際我々は悪くない!! 安心してください! 悪名は全て串ボルグで擦り付けますとも!」
「そうですリアル悪名は夢見にお願いします! 悪いのはキャラクターの拙者ではなく、プレイヤーの夢見(プレイヤーの夢見!)ですので!」
 画面の前のみんな(だれだろう)に呼びかけると、マリ家はジャンプし虎ンスフォーム。タイガーモードにチェンジするとヴァレ家をタイガーライドオンさせた。
「目指すはパワードスーツの製造工場! スーツも物資もあとなんか四角くて水張れて折りたためる便利そうな機械もいただきです!」
「いただきなのでーす!」
 がおーって言いながら走り出すトライダーヴァレ家。
 一方でギアバジリカのシャッターが開き、ラグビーボール状の物体が巨大アームによってかぽーんと投擲される。
 空中で展開し着地したそれは、キャラピラ式のバギーであった。
「ルル家……さんしまい……?」
 バギーの座席から走るトライダーを眺める『雷神の槌』ソール・ヴィングトール(p3x006270)。
 なんかMMOゲーム始めたての無課金アバターみたいな鎧と棍棒を装備していたが、顔は洋画にでてくるソルジャーみたいな髭おっさんだった。初期アバターかなんかだろうか。
 『勧善懲悪超絶美少女姫天使』ひめにゃこ(p3x008456)がハンドル握ってアクセルを踏み込む。郊外の悪路でも難なく突っ走るバギーが舗装された道路に乗り込み、夜の大通りを爆走し始める。
「ルル家さんって3姉妹だったんですね? しかも今回の責任は全てルル家さんが取ってくれるって、こんなにも心の広い人だったんですね!」
「違うと思うけど……」
 突っ込み入れるのもリスクかなと思って黙るソール。
 その横を魔道バイクで併走する『ブッ壊し屋』レニー(p3x005709)。
「ショッケンは裏仕事が得意だったのか。。鉄帝……じゃないな、鋼鉄には珍しいんじゃねぇか? 意外な一面ってとこだな」
「ところで……」
 猫耳ヘルメットをかぶった『nayunayu』那由他(p3x000375)が同じく小首をかしげる。
「これは強盗というやつなのでは?」
「大丈夫でしょう。後でお金をはらうそうですし」
 その真上を飛んでいく『ケモ竜』焔迅(p3x007500)。
 ドラゴンウィングを羽ばたかせているが、よーく見ると結晶状の魔力スラスターが装着されている。
「それなら大丈夫ですね! そのぱわーど、すーつ? というのをゲットしちゃいましょう!」
「困るのは相手軍閥だけ。いやあそれにしてもパワードスーツとは、浪漫ですねえ!」
 焔迅は安定状態に移行するため密接して並ぶ赤い屋根の列へと飛び乗ると、スラスターを起動したまま自分の脚で走り出す。
 猫耳ヘルメットのバイザーをスッとなでると、『星の魔法少年☆ナハトスター』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)が目を大きく開いた。
 引いて見てみれば、ずんぐりした猫のようなフォルムのパワードスーツに搭乗していた。魔道無線接続された大きな右腕と逆関節スタイルの脚。左腕はなく、人間でいえば腰と下腹部までしかないようなシルエットをしていた。
「そろそろ工場に到着するよ。ボクらは右側から回り込むから……レニーさん、一緒によろしくね!」
「ん、りょーかい」
「さぁ、お祭りと鋼鉄の未来の為に頑張るよー☆」
 ナハトスターはスーツのスラスターから魔力を噴射して加速すると、大きくカーブを描いて工場脇へと走り込んでいった。

●略・奪・DA!
 工場警備員。という肩書きをもっただけの軍人が、アサルトライフルやヒートアックスを手に工場の前に集まっていた。
 といっても、ドラム缶をテーブル代わりにしてポーカーゲームをしたり座り込んで煙草をふかしたりと、あまりやる気のある様子ではない。
「なんだって俺らがこんな場末の工場の警備なんて。南方戦線で伝承軍に波状攻撃ってハナシはどうなったんだよ」
「そうぼやくな」
 トランプカードをオープンにして見せるサングラスにケツ顎の男。エリート兵なのか銀色の星型ピンバッジをいくつも胸につけていた。
「軍閥を作ったヴェルスを放っておいたら、好き放題やられかねん。
 あいつが皇帝を殺したんだろう? ザーバさんの知らない所で勝手に殺して勝手に覇権を取られたんじゃたまらん。
 ……で、どうする?」
 カードの横につまれたコイン。カードはストレートフラッシュを現していた。
 向かいの兵士はカードとエリート兵を交互にみたあと、すぅっと目を細め――た瞬間彼らのすぐ脇にあったトタン製の壁が崩壊。向こう側からバイクとパワードスーツの二人組が突っ込んできた。
 兵士はトランプカード(2ペアができていた)を放り投げ、その場から飛び退いた。
「敵襲ーーーーーー!!」

「星猫魔法その1 星よ、猫よ、踊れー☆」
 巨大な右腕パーツ(猫の肉球つき)をぶおんと振り込むナハトスター。
 肉球型の魔方陣が生まれ、星型のボードにのった猫の群れが次々に召喚された。
 皮肉にも、この猫ラッシュを受けたのは壁際にいた兵士でもエリート兵でもなく、座り込んで煙草をふかしていた別の兵士だった。
 そこへバイクを唸らせたレニーが突進。立ち上がって距離をとろうとした兵士を思いきり撥ねていく。
「修理費はツケといてくれよな! 夢見に!」
「おらおらー、怪我したくなかったらスーツを出すんですよー」
 そこへ猛烈なドリフトをかけながら突っ込んでいく那由他。
 バイクを乗り捨てると己の血を刀に変え、すぐ近くでヒートアックスをかざした兵とぶつけ合った。
 真っ赤な火花が走り、直後刀の形を鎌にかえた那由他によって兵士の肩が切り裂かれる。
「狙いはスーツだ! くそっ、マジで奪いにきやがった! どこの派閥だテメェ、ガイウス派か!?」
「おしえてやりませんよー!」
 口調が荒くなりきれない那由他。兵士を蹴りつけて距離を取ると、跪いた姿勢でヤードに置かれたスーツへと走る。
 奪われてたまるかとばかりにスーツへと走る兵士たち。
「ド派手に行こうぜぶらざー!!」
 もはやビーチフラッグのごとき競争だが、ひめにゃこがジープをものすごい勢いで滑らせながらブレーキ。コンクリートの地面に激しいタイヤ痕を刻みながらターンすると、ぴょんとはねてボンネットへ飛び乗った。
「今日も~超絶カワイイー☆」
 ひめにゃこひっさつニャコニウムビーム。カワイイポーズから放たれるこのなにエットニャコニウムをびゃーって浴びせかけることで兵士は目をハート型にしてぶっ倒れた。
 が、そんな妨害をくぐり抜けて二人の兵士がパワードスーツへと到着。
 素早く操縦席へ駆け上がると、キーをまわして魔道エンジンをふかした。
「逃がしませんよ!」
 焔迅が魔力スラスターを全開にしてダッシュ。
 同じくスラスターから魔力を噴射してローラーダッシュで走り出すパワードスーツへギリギリ追いつくと、巨大なおおかみハンドと巨大な腕でもってぼこぼこ殴り合いを始めた。
 丁度そんな焔迅の背に乗っていたソール。素早く相手のパワードスーツへと飛び乗ると操縦者を直接棍棒で殴りつけた。激しい炎が吹き出し、兵士のヘルメットを跳ね飛ばす。
 そこへ、加速し先回りした別のパワードスーツ。ちょうどとめてあった機体をパクったレニーが乗り込んだものだ。両腕でがしりと押さえ込み、そのまま押し倒してしまった。
「持ち出されたのはこの一体だけか? 班分けするまでもなかったな」
 ふう、と息をつくソール。
 だがそのすぐ横にあった外壁を破壊し、一機のパワードスーツが飛び出していった。
 サングラスにケツ顎。エリート兵だ。
「せめてこの一台だけでも――」
「マリ家! 追いましょう! はいチュルール!」
 猫用のごはんをマリ家の口にずぼって突っ込むヴァレ家。
「おかしいですよ猫の餌で拙者の速度はあがら――」
「頼りにしていますよ、マリ家」
「あああああああ速度が!」
 マリ家メーターがぎゅーんと上昇。とんでもねー速さで走り出すと、その背にのったヴァレ家は宇宙酒瓶を取り出した。
「とまりなさい! そのスーツとあと金目の物をわたすのです!
 お金は天下の回り物。拙者がもらっても問題ないはずです!」
 おりゃあといってぶん投げた瓶。エリート兵は前後反転するとローラーバック走しながら機関銃を乱射した。
「踏み込みが足り――ぐはあ!?」
 と思ったら脳天直撃。
 ぱりーんと砕け散る宇宙酒瓶。
 それで操作を誤ったエリート兵は思い切りスーツで転倒し、放り出された末に近くの電柱(電柱?)に頭をぶつけた。
 ぎゅぎゅーっとおすわりのポーズでブレーキをかけるマリ家。
「やりましたねヴァレ家! ……ヴァレ家?」
 その背に跨がったままのヴァレ家は、遠くにそびえるギアバジリカを見つめていた。
 表情は、見えない。

 この後、パワードスーツの回収が始まった。
 あわをくって事務所からでてきた工場のスタッフにはとりまお金を握らせ、ゼシュテリオンが接収すると伝え迎えにきたトラックへ積み込んでいく。
 その様子を眺めながらうーんと唸るソール。
「しかしこのパワードスーツ。破壊力といい機動力といい、敵陣を無理矢理突破するのに向いてそうですね……」
「…………」
 伏せてくつろいでいた焔迅がぴくりと耳をたてる。
「それをゼシュテリオンが接収したということは……もしや今後そういう依頼が?」
「さあ」
 ソールは肩をすくめた

●太陽祭
 マリーという少女がいた。
 幼くして戦火に両親を奪われた彼女にとって、この世界は広すぎる。
 そしてただひとりで生きていくには、この世界は寒すぎた。
 そんな彼女を理解し、暖かい暖炉と、ベッドと、毎日のパンと、そして家族というものをくれた人達がいた。
「おはよう、ヴァレーリヤ先生。アナスタシア先生。きょうも早起きができたよ!」
 すごいでしょう! と胸を張ってみせるマリー。虎を摸した着ぐるみ型パジャマのままやってきた彼女の頭を、アナスタシアは微笑みを賭けながら撫でてやった。
「ああ、おはようマリー。今日は太陽祭の日だったな。皆をホールに呼んできてくれるか」
 対して、マリーは二度ほど瞬きをしてから口元に手を当てた。
「それが……」

 アナスタシアと寝癖だらけのヴァレーリヤがホールへやってくると、そこには既に孤児院の子供達が集まっていた。
 子供達だけではない。
「青ピンク白でひめにゃこカラーのかき氷です!
 ゆっくりと鑑賞してから食べてくださいね!? あぁ、そんな一気に……!」
 かき氷マシン(手回し)でがりごりかき氷を作っては自前のシロップを芸術的な手際でふりかけていくひめにゃこ。
 ここぞとばかりの白ビキニ。幟旗には『水着コンに清き一票』と書いてあった。ちゃっかりものである。
「ひめにゃこは?」
「「世界一位!」」
「よしんば二位だったとして?」
「「世界一位!」」
 教育も徹底していた。
 その横では、那由他が折りたたみ式プールにスイカやらジュースやらを氷と一緒に浮かべてくーるくーるやっていた。
「未来の美少女の皆さんのためならこの程度の労力惜しみませんよ。うふふふ」
 なんていいつつ、那由他はきゃっきゃする子供達の笑顔に癒やされていた。
「これは、一体……」
「朝起きたらここに広げてあったんだよ。季節外れのサンタクロースかな?」
 ナハトスターがわざとらしく肩をすくめ、カップ型のアイスクリームに木の板状スプーンをさした。
 バニラアイスがほどよく溶け、すっとさしこまれたスプーンに一口サイズでのる。
 口に含めば、なめらかな食感とともに甘さと冷たさが広がった。
 ふとみれば、子供達が水着すがたでファミリープールでばしゃばしゃと遊んでいた。
「すごく、すごく楽しそう……! お願い、ボクも混ぜてー☆」
 わーいと言いながら自分も水着姿になって混ざっていくナハトスター。
 レニーはレニーで男の子たち相手にスチパンメカな玩具で遊んでいた。
「男の子ならわかるだろ、ずっしりとした重厚感の良さがさ!」
「最近はすっかり暑くなってきましたが……一緒に遊んでくれるなら全力でもふもふ致します!!」
 そのまた一方で焔迅がおなかを出してごろーんとした所に女子達が飛び込んでめっちゃ両手でさわさわしまくっていた。
「まさかイレギュラーズの皆さんにこんなによくして頂けるなんて……なんとお礼を言っていいか」
 ヴァレーリヤが頬に手を当ててほう、っと息をつくが、レニーは手をかざして首を振った。
「なあに、オレたちは好きでやってるだけだぜ。な?」
「そういうことです!」
 焔迅がめっちゃおなか撫でられながらハッハしていた。狼っていうか炎狼竜なのに扱いがもはや大型犬だった。
 そんな風景をみながら、ちびちびと缶飲料を飲むソール。
 ヴァレーリヤとアナスタシアは笑い合い、『今年はいい太陽祭になったな』と語り合っていた。
 ここは仮想世界なのだろうけれど。
 二人は確かに、この世界に生きているように見える。
 そして幸せになったように、見える。
「ありえたかもしれない平和、か……」
 缶をテーブルに置いて、ふと振り返る。
「そういえばあの二人の姿が見えないな」

 風吹くギアバジリカの上。もくもくと絶え間なくあがる白い煙に紛れるように、ヴァレ家は眼下の風景を見つめていた。
 野外ホールに並んだプールと、大はしゃぎで遊ぶ子供達。
「一緒に行かなくてよかったのですか、ヴァレ家?」
 隣でマリ家が問いかけるが、ヴァレ家はフフンといって顎を上げた。
「ご冗談! 泣く子も黙る略奪王が子供用プールを運んできただなんて、恥ずかしいではありませんか!」
「そうやって恥ずかしがるヴァレ家も可愛いですけどね!」
 グッと握りこぶしをかざすマリ家。
 二人は遊ぶ子供達とそのわきで仲睦まじく話すヴァレーリヤとアナスタシアを見た。
 きっといろんなことがあったんだろう。
 辛いこととか、悲しいこととか、それらが差し引きで一緒になるくらいの嬉しいこととか……。
 それが人生ってやつで、それが可能性ってやつだ。もしかしたら、幸せってやつかもしれない。
「参加しなくても、見ているだけで構いません。それだけで十分なのです」
 そうつぶやくヴァレ家に、マリ家はあえて何も言わなかった。

(――これは夢。いつか届かなかった救いと引き換えに、神様が見せてくれた優しい夢
 でも、それでも司教様。どうかお幸せに。貴女の道行きに、主のご加護がありますように)

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――クエスト完了!
 ――ギアバジリカに新戦力のパワードスーツが導入されました!

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