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シナリオ詳細

<Spooly Land>プリーズ・プライズ・ミー!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 終わらない夜の遊園地『Spooky Land』。
 カボチャ頭の支配人『キング』は、今日もゲストに恭しく首を垂れる。
 ゴーストにモンスター、キャストは皆ゲストの笑顔と悲鳴が大好物で――時々アトラクションに悪戯をしてしまうのは御愛嬌。
 その日も、そんな彼らがにっこりと笑ってしまう極上の悲鳴が園内に響く。

「きゃあああ!? 何! 何なのよおこれはああああ!」
「ちょいタンマ、流石に僕もこれは想定してなかったっていうか――死ぬ?」
「ま、待ってください止め、誰か止め――ひいい!」
「すずな、何処を掴んで、そこは首で息が――ッ!」

「し、死ぬかと思った……っ?」
 ベンチでがっくりとうなだれる『優光紡ぐ』タイムの頬に、ぴたりと冷たいカップが当てられる。
「いや~まさか観覧車が逆回りに高速回転するなんてねぇ、うんうんまさかだ。でも死ななかっただけ優しさがあるっていうのかな」
 二度と乗りたかないけどね――と嘆く『八百屋の息子』コラバポス 夏子からカップを受け取り、小さく「ありがとう」と零すと、タイムの隣へと夏子が腰を下ろす。
(ほんと、夏子さんってばこういうところは――)
「いやぁしかしすずな嬢も小夜嬢も、普段はこうほら近寄ったらズンバラリンみたいな感じなのにさっきの声は可愛いもので。うんうん」
(――嫌いだわ!)
 前言撤回。この男はいつだって調子が良くて、褒めた事を後悔してしまいそうになる。
「……少しくらい、わたしのことも」
 褒めたっていいじゃないか――そんな言葉は、受け取った冷たいソーダで流し込む。
 ぱちぱちと口の中で弾ける泡は、ほんの少し痛かった。

「……すずな、大丈夫?」
「ええ、なんとか……っぷ」
 隣のベンチには、真っ青な顔をした『一人前』すずな(p3p005307)と、その背中をさする『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)の姿。
 斬り合いとなれば右も左も、上下すら不覚になる中でも相手を捉える剣豪の女子二人とてゴーストの悪戯には勝てず――こうして目を回していた。もっとも小夜はといえば、元より『見えない』故にすずな程の苦しさはなく、こうして介抱をすることになったのだが。
「もう少し休憩しましょうか? まだ本調子ではないでしょう?」
「……いえ、大丈夫です。折角こうして遊びに来られたんです」
 立ち上がるすずなは、その手を小夜に引かれてベンチへと再び戻ることとなる。
 大丈夫――と言おうとした言葉は、白く濁った小夜の目に捕らわれ遮られる。
「嘘よ。もう少し休みましょう」
(……どうして、また)
 こうやって、いつも小夜は自分のことを『解る』のだ。
 それが歯痒いから――
「あら、どうしたの?」
 変わらないその顔を崩そうと、頬を抓った。


「ヘイヘイそこのお客サマー! このアトラクションに入っていかない!?」
 ひとしきり休息をとってしばらくの後、歩き出した四人に声をかけたのは一匹のゴーストであった。
「なんだろ~? ここってどんなアトラクションなんです?」
 タイムが首を傾げるのに、ゴーストは一言「ビックリハウスだね!」と笑って返す。
 見たところそう大きくない館であり、何より――
「もぉ、ジョンったらぁ」
「キャサリンは本当にかわいいなぁ」
 ――出口から出てくるゲストが、皆どこか距離が近い。
「お化け屋敷的なやつなのかぁね? まぁそれならタイムちゃんがしがみついてくれてオールオッケーですけどね?」
 夏子の伸びる鼻の下に、すずなも溜息をひとつついて。
(――タイムさんの好みはこの際まぁ置いておいて)
「少し休憩するのもいいかもしれませんね」
「ええ、行きましょうか。すずな、案内をよろしくね」
 あれよあれよと二人ずつ並んで館に入った途端――がしゃん、と二組の間に壁が降りてきて。
 タイム・夏子と小夜・すずなで分けられたその空間に――楽しげな声が響く。

「チキチキ! 相手を褒めないと出られないルーム~~~!」

 かち、と音がして迫りくる壁。
 つまり――とにかく隣の相手を褒めないと、ぺしゃんこになるのでは!?

NMコメント

 リクエストありがとうございます、飯酒盃おさけです。
 褒めて褒めて褒め殺して下さいね。

●目標
 相手を褒めまくって、この館から脱出する。

●舞台
 明けない夜の、ポップで不気味な遊園地『Spooky Land』。
 その一角にあるビックリハウスが今回の舞台です。
 本来は、リビングらしきソファに座ったら光景がぐるぐるで目が回る――くらいなかわいいアトラクションだったのですが、本日このアトラクションを担当するゴーストは人の照れ顔や本音、が好物なようでちょっと悪戯をしたようです。

●やること
 タイムさん・夏子さんとすずなさん・小夜さんで完全に分断をされてしまいました。
 二組それぞれ、とにかく相手の事を褒めまくりましょう。
 褒めて褒めて褒めまくって、自分も満更ではなくなれば――ゴーストもむふふ、と喜んで出口の扉を開けるでしょう。
 その代わり、嘘や喧嘩、適当な事を言うのは御法度です。
 ゴーストはその辺り敏感なようで、ゴーストチェックにNOが出ると――壁が迫ってきます。
 ぺしゃんこにならないように、お気を付け下さいね。

●PL情報
 ゴーストは気まぐれなので、どれだけ真面目に褒めようと途中で一度壁を迫らせます。
 思い切り距離が近くなって体もくっついてしまうでしょう。
 その時の反応なんかもプレイングに書くと楽しいかもしれませんね。

●その他
 プレイングでは、相手を褒めたり、褒められた時の反応だったり。
 ハプニングでくっついてしまった時のリアクションも書いてみるとよいでしょう。
 その他、ありそうなものはあるし、例えば天井が迫って来る! 電流が流れる! などあればあるでしょう。
 なんでもありがこの遊園地です。
 どうしても相手に伝えたくない事は、()で括る等でお伝えくださいね。

 それでは、楽しい褒めハウスへ。
 行ってらっしゃいませ!

  • <Spooly Land>プリーズ・プライズ・ミー!完了
  • NM名飯酒盃おさけ
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月18日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
すずな(p3p005307)
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
タイム(p3p007854)
女の子は強いから

リプレイ


 拝啓、タルサニ村の両親へ。
 僕は女性三人に挟まれ極楽気分夢見心地でした。
 なのに、今は壁に挟まれ死にそうです。
 次に帰る時は、骨の僕です。

『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)がそっと目を開ければ――壁。
「何故? どうしてこんなことに?」
「夏子さん遠い目してないでってばぁ!」
 夏子の手を引く『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)の脳内はゴーストの言葉で一杯で。
(急に褒めろって言われても……わたし変なこと言わないかな)
「な、夏子さん先にお願い!」
 故にはい、と手をぴんと差し出し褒めを促せば、夏子は「はいはい」と軽く返す。
「んじゃま、立ち話もアレだしね」
 動かない壁沿いに置かれたソファに座る夏子がぽん、と隣を叩く。タイムがおずおずと座ると、夏子は間延びした口調で話し出す。
「身体つきは~うん……そう、スレンダーかな。うん」
 女体は神秘、全て平等に美しく賛美するものだ。中でも俺の好みで言っちゃうと――
「あっいやっそうお尻素敵だね! こうっクリっとさ!」
「……全部口から出てたわ! もう、好みの話じゃなく、ほらぁ壁が……ひゃっ」
 ゴーストの判断はさもありなん。勢いを増す壁に、タイムは慌てて立ち上がり――部屋の揺れにバランスを崩すと、頭上から「ぐぇ」と小さな呻き声。ソファーではないこの柔らかくて、でも硬い感触は。
「えーとそうだな、身長低いの気にしてたらゴメンだけど可愛いよね。丁度ほら、胸元に頭が来る感」
「夏子さん!? わわ、ちょ、近っ」
 すぐ耳元からする声。すっぽりと夏子の足の間に収まったこれは――ものすごい状況では。しかもこう、手つきが。
「変なトコ触ってない!?」
「えぇ~、タイムちゃんの身体に変なとこなんてないからなぁ」
 真面目にね――そんな叱りの言葉は、速度を上げる壁への悲鳴に変わる。


「あ、あの!? お化け屋敷要素全くないんですが!」
『一人前』すずな(p3p005307)すずなの叫びに、『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)は「あらあら」と静かに笑っている。
「思ってたのとなんだか違ったけれど、まあ面白そうね」
「うぅ、なんでそんなに冷静なんですかぁ!?」
「別にすずなとなら閉じ込められるのも嫌じゃないんだけれど。それでもぺしゃんこになるのはちょっと嫌ね」
「――っ! もうほら小夜さん、褒めますよ!」
 嫌じゃない――その言葉にへたれた耳がぴんと立ち上がってしまうのは癪だけれど!

「え、えぇと……!」
 自然と二人床に正座して向かい合う。
 ひとしきり「あー」「うぅ」と発した後、口を開いたのはすずなからだった。
「いつもいつも、私の我儘を聞いてくれて有難うございます! その、面倒くさい女でごめんなさい……!」
 言葉はうまく口を出ず、その代わりに揺れる尻尾とへたれていく耳が雄弁にすずなの思いとなる。
「笑って受け止めてくれる優しい小夜さんに、何時も、その……感謝してます!」
 ぐ、と膝に置いた拳を握りしめ前のめりになるすずなの勢いに小夜はふ、と微笑んで――ありがとう、と返し「今度は私の番」と続ける。
「まずは性格が素直で可愛らしいところが魅力よね。それに剣も性格と同じように素直で真っ直ぐで綺麗でしょう?」
「う、うぐ」
 頬に人差し指を当てすらすらと繰り出される誉め言葉に、すずなは既にお手上げ。漏れた声に気付いてなお、小夜は言葉を続ける。
「明るくて元気ですぐに人と仲良くなれるところもいいわよね。それと悪く捉えないで欲しいんだけれど、私は目が見えないから態度がわかりやすい子はとても助かるわ」
「……ちょっとしたことですぐに膨れてしまう自分を、どうにかしたいのですけれども」
 わかりやすい自覚はある。けれどどうしたって自分の中で整理ができていない所はまだまだ『一人前』には程遠く。
「それにこの前、私が斬られて動けなくなった時に何だかんだお世話してくれる優しいところも素敵よ」
「……っ」
 あの春の日のことを言うなんてずるい。何も言えなくなってしまうから。
(――いつも素直になれなくて、ごめんなさい)
 すずなの気持ちを弄ぶように――壁が、かちりと鳴る。


「んー、頑張ってるけどもう一押し! ドキドキタイム、行ってみよ~!」
 ゴーストの無慈悲な一言に――四人の叫びが響き渡る。


 (アレこれなんか密着していいのでは……?)
 迫る壁に思わずタイムごと身体をソファーの上へと雪崩込ませた夏子は、結果としてタイムに押し倒される形になり邪な考えを巡らせる。これはもう一押し嘘で密着を――
「ぎぃャオアアア!」
「んひゃんっ!? どうして嘘つこうとしたの!? ……大丈夫? 回復する?」
 天罰として落とされた電撃も、何故かタイムは無傷。文句を言いながらも、こうしていつだってこの子はすごい顔で回復をしてくれるから――
(趣旨に合うかは謎だけど、言う機会ないし言っちゃお)
 タイムの背中をぽんと叩き、夏子が話し出す。
「依頼じゃ手厚い援護に、怪我すりゃ看病とかもだし? イベントごと誘ってくれたりあっちこっち連れ出してくれてさ。
 そういう誰にでも優しいの、素敵だなって凄い思うよ。
いつも本当ありがとね……ってなんでそっぽを向くんですかね」
「違うの。違くないけどそれ以上言わないで!」
 密着しているからでもない、別の理由で頬が熱い。どんな顔をして言ったのか見たいはずなのに見られなくて――
「言わされてるみたいで癪だし、平時こういう事も言うし。もういいなら止めるけど」
「……嘘。やっぱりもっと聞きたい」
 それに、これは誰にでもという訳ではなくて。夏子さんだから、の言葉はもごもごと消える。
「そーいやこないだ……んん、いやコレは」
「こないだ?」
「なんでもな~いよっ。日を改めて。ほら壁が!」
 この空気はもう十分ではと願えど壁は止まらない。腹を括ってひとつ息を吸い、指折り話し出す。
「普段から明るく盛り上げてくれて、大抵の事には付き合ってくれるし。黒狼隊のみんなからの信頼も厚いし」
「いやぁそれ程でも?」
 聞いて、と胸をソファへ小突く。女の決心を邪魔するなんて悪い男なんだから!
「いざという時は真っ直ぐに物事に向き合うし、優しくて、恰好良くて、頼りになって……。
 あとあと! ちょっと長い下睫毛はキュートだし、話しかけてくれる声は心地がいいし、笑った顔もおどけた顔も真剣な顔も……ぜーんぶステキよ」
 どう、ちゃんと言えたでしょ。ふふん、と胸を張るタイムに、夏子はくしゃくしゃと頭を掻く。その顔はタイムですら初めて見るもので――
「なあに、その顔~」
「まあその。オラ褒められることあんまり……全然褒められた覚えないなぁ」
 記憶の中のそれは、然程気にすることでもなかったけれど。むず痒いもので、けれど嫌でもなく――頑張ろうか、と溜息一つ。
「夏子さんはピンとこないかもしれないけど。自分で思ってるより、純粋で人の心に寄り添える人なのよ」
(……なのにわたしの気持ちにはすっごく鈍感なんだから)
 ぼすりともう一度、不満をぶつけるように胸元を殴る。そのタイムが肩で息をしているものだから――夏子が吹き出し、もう一度殴られた。
 内緒にしておいてね。そんなタイムの願いは――守られるといいのだけれど!


「あら? 壁が……」
「あっあっ、嘘言ってないのにどうして、どうしよう、どうすれば!?」
 慌てて立ち上がり小夜の手を引いたすずなは、背中に壁を感じる。手を伸ばし切ることも出来ない幅に、手を引いたままの小夜を見れば――目の前は、小夜の艶やかな黒髪。思わず手に取り、その光沢に息を吐く。
「この綺麗な黒髪、憧れなんですよね……今度梳いても良いです?」
「じゃあ今度梳いて貰おうかしら。でもすずな?」
「はい」
 腕の中、自然と上目遣いになる小夜を見下ろしたすずなは気付く。
(ってあれ、此処まで近いのってシャイネン――ああああ!?)
「続けましょう?」
「さっ、おさよさま!?」
 一瞬で真っ赤に染まったすずなは目をぐるぐると回す。その上「折角こうして密着してる訳だし」と謎の理論を立てて、小夜はぺたぺたとその頬に手を伸ばしてくるのだからもう。
「スキンシップ、好きですよね小夜さん!?」
「えぇ。肌もずっと触れていたいくらいすべすべで、頬もぷにぷにしてるけれど。手の平はちゃあんと剣士らしいところも可愛らしいわ」
 繋いだままの手を取ると、小夜は手の平の硬くなった箇所を一つ一つなぞっていく。
「へぁ、おさよさま……お返しです!」
 自分ばかりされるのは不公平だと、すずなも空いた手で小夜の頬をぐに、と伸ばす。柔らかく、そうこれは姉様と食べた大福に似て――なるほどこれがむにむに。
「ひゃあ!? 私は別にいいんですけど!?」
「髪も尻尾も柔らかくてふわふわで、気持ちいいのよねぇ」
 いつの間にか小夜の手は尻尾に伸びていて。情けない声を上げたすずなに、小夜は心底楽しげに笑うのだ。
(こうやってちょっとやりすぎたら可愛らしい声で反応してくれるところや、それでも何だかんだ言って許してくれる優しいところも、ね)
「話聞いてくださいってば、そこは――あーっ!」
 ごん、と鈍い音を立てるすずなに目をやれば――後頭部を壁に打ち付けたすずなが、きゅう、と伸びていた。
「……すずな? 大丈夫……?」
 満足したゴーストが解放した部屋からは、小夜がすずなを担ぎ上げて出て来ていた――

「ごめんなさいね、すずな」
 可愛らしくていつもやりすぎちゃうと微笑む小夜に、復活したすずなは口を尖らせる。今回は許すものか――そんな決意をしたのに。
「私はこの世界ですずなに会えたことを嬉しく思ってるわ」
「そんなの……私だってそう思ってますよ」
 言葉にも、袖を掴む指にも想いを籠めて。
(……これは、黙っていてあげましょうか)
 ぴんと立った耳とゆらゆらと揺れる尻尾は――小夜だけが知っていた。

成否

成功

状態異常

なし

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