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シナリオ詳細

その牙は何が為に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●それらしい森の中で
 人気のない深い、深い森。
 幻想の外れにある森の中、そんな深い森の中には伝説の英雄が残した遺物があるという。
「ここか……確かにそれらしい雰囲気だが」
 穏やかな雰囲気、木々の隙間から差し込む陽光。
 そしていて不可思議な雰囲気を醸し出すこの空間は、確かに宝のありそうな様子を醸し出している。
「ま、物好きもいるよな。これであればいいんだが」
 そんな森を進むのは、幻想の貴族から依頼を受けたとあるトレジャーハンター。
 森に眠る遺物を求める貴族から依頼を受け、物品の回収を行う。それが仕事だ。
「ん……?」
 雄たけび。
 獣、狼だろうか。とはいえ狼程度にやられるような腕前はしていない、トレジャーハンターは武器を構えて身構える。
「……嘘だろ」
 だが、その考えは即座に戦いから不可能だという思考に切り替わる。
 目の前には黒い毛皮を持つ巨大な狼が飛び出し、その牙と爪を自身に向けてふるって来た。
 その爪は彼の胴を深く抉る。

 ―――そして、狼の雄たけびが森に響いた。

●そしていつものローレット
「と、まぁ、そんなことがあったらしい。結果としてトレジャーハンター達は命からがら逃げだしたから命に別状はないみたいだけどね」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)はローレットに流れ込んできた依頼書を見ながら説明した。
 とある森に存在すると言われている伝説の英雄が残したという遺物。その情報の出所も確かではないものではあったが、それを回収してくるのが依頼である。
 しかし、前任のトレジャーハンターはその道中で巨大な狼と遭遇し、怪我を負って撤退。
 幸い命には別条はなかったが、並の相手ではないことから遺物の存在が確かにあるという話が少しばかり信憑性を見せ始めていた。
「というわけで依頼がこっちに回ってきたのさ。何が遺物かはわからないけど、狼が番人だっていうなら倒しさえすれば見に行けるんじゃないかな」
 なんかステータスが上がるようなアーティファクトだったらいいんだけど、と個人的な感想を付け加えながら、ショウは現地の地図を渡してくる。
「ま、結局貴族の懐入りだけどね。ともあれ遺物があるかないかを確認して、ちゃんと持って帰ってくれば報酬は出るよ」
 依頼の説明を終えた彼は、後の事は任せるとと君達に告げて、他の依頼の説明に回っていく。
 かくして、森の中の狼との戦いの為に、君達は行動することになる。

GMコメント

 今回の舞台は森、深い森の中になります。私は山の民でもあるので森は好きです、トビネコです。
 さて、今回は森の中にいる巨大狼を倒し、その先にある遺物の回収が目的になります。
 しかし、異物に関しての情報は定かではなく、実際にあるかどうかもわかりませんが、なければないで情報を正しく持ち帰れば依頼は問題なく成功となります。

●状況について
 深い森の探索ということですが、探索自体は既にトレジャーハンターが終えていて皆さまが探索を行う必要はございません。
 森の奥、やや開けた場所で黒い巨大な狼が襲撃してきたという話で、その先の調査が出来ていないために狼の対処を行う必要があります。
 戦闘環境としては、狼と遭遇する広場から離れれば、森の中ゆえに遮蔽物は多めで木々が邪魔をして飛行の類は非常に行いづらい環境である場所です。
 視界はそこまで悪くないので、目を話さなければ狼を見失う事もないでしょう。

●狼について
 深い森の中で姿を見せた全長5mはあるかという巨大な狼です。
 特徴的な黒い毛皮を持ち、特に群れは作らず一匹狼として行動しているようです。
 特筆した特殊な能力は持っていませんが、高い身体能力とその巨体から繰り出される物理的な攻撃と、鋭い牙の一撃は非常に脅威です。
 また、高い知能を持っているのか、かなり冷静に立ち回る様子が見られています。

 特定の地点から離れるつもりがないのか、相手が逃げの姿勢を取った場合狼は追撃を行ってこないという話も入っています。
 
●遺物について
 この情報に関しての情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

 森の中に存在するという伝説の英雄の遺物。
 出所も不明、誰が噂したかもわからないものであり、実際にあるかどうかは全くもって定かではありません。
 一体何をもって遺物とするかは皆さま次第ではありますが、こちらに関しては実際の確認と正確な情報提供を行えば依頼は問題なく解決します。

 以上が今回の依頼の説明となります。
 皆さまが無事に依頼を終えられることを祈っております。

  • その牙は何が為に完了
  • GM名トビネコ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月27日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
モニカ(p3p001903)
吸血鬼の残り滓
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered
凍李 ナキ(p3p005177)
生まれながらの亡霊
フォーガ・ブロッサム(p3p005334)
再咲の
エメト・イス・ファルガリィア(p3p005592)
ただの旅人

リプレイ


 柔らかい陽射しが差し込む広大な森。
 穏やかな雰囲気が包むこの空間は、依頼でやってきていなければ本当にのどかでハイキングに最適ともいえるような場所だっただろう。
「この先にある遺物って何かな、何だと思う?」
「え……そうですね。こればかりは見て見ないとわからないと言いますか」
 森を進む中、『駆け出し冒険者』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)はこの先に眠る遺物が気になり、近くを歩いていた『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)に問いかけた。
 とはいえ彼女も、この先にある物の見当はついておらず、困った笑みを返すだけが精一杯ではある。
「英雄の遺物かぁ……あるのかないのかも全然わからないけど、在った方が面白いだろうし、在るといいなー」
 がじがじと保存食を齧りながら、話を聞いていた『吸血鬼の残り滓』モニカ(p3p001903)が呟く。
「……むぅ」
「どうしました?」
 だが、そんな様子を見せていた彼女はがっくりと肩を落とす。
「霊魂にちょっとばかし話を聞けないかなって思ったんだけど、どうにもここそんなに大きな霊はいないみたいで」
 戦闘に使う技術に困るほどではないが、この空間は非常に澄んでいて穏やかであり、モニカの言葉に対応してくれる霊は見つからなかった。
「ふむ。では遺骸でしたというオチだいぶなくなったという事じゃろうかね」
 墓守の黒犬という伝承の事を思い出しながら、ルア=フォス=ニア(p3p004868)は霊と話が出来ないという事は、この近辺には最早遺骸は残っていないのではと推測した。
「霊魂さんがいればよかったんですが……残念です」
 初めての依頼という事もあって、緊張を隠せない『生まれながらの亡霊』凍李 ナキ(p3p005177)はモニカと同じように霊魂と話をしようとしていたが、それが出来ていないという事でがっくりと肩を落としてしまう。
「ちっちゃな霊が……迷わないで帰ってね……って言ってはいるんですが」
「大丈夫だよ。それだけここに縛られている子はいないって事だからね」
 そんな彼女を見て、『ただの旅人』エメト・イス・ファルガリィア(p3p005592)はにっこりと笑いかけた。
「でもまぁ、少し聞いてみようか」
 エメトは意識を集中し、植物へと問いかける。
 聞くべき内容は『森の外から持ち込まれた物』だ。
「……狼と……剣?」
 ここで予想外の情報が現れた。
 剣、という単語にシャルレィスが反応を示すが、最も先に気になったのはそれ寄りも狼という単語だった。
「ふむ……では、少しばかり聞いてみますか」
 『再咲の』フォーガ・ブロッサム(p3p005334)がその言葉を聞くなり、狼と戦闘開始前に対話を試みることを説明した。
「話が通じればいいですが……」
 僅かに不安をよぎらせたルミリアが、森の奥を見通す。
 もう少しで、話に合った地点へとたどり着く。
「ふふ、だが相手はなかなかそうもいかないようだ」
 全身が漆黒で、赤い三日月のような口を浮かべた『Eraboonehotep』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)が含んだ笑みを浮かべる。
「……来た!」
 森の奥を見やれば、こちらを睨みつける狼の姿。
 話に聞いていた通り、巨大で凄まじい威圧感を見せつける相手。
「……お待ちを」
 一歩前に出たフォーガがイレギュラーズの歩みを止めるように腕を伸ばして制する。
 狼はまだ踏み込んではこない。だが、これ以上踏み込めば容赦はしないという意志だけはひしひしと感じ取れる。
「私はフォーガ・ブロッサム。そして我々は、この先に何があるのか、その調査を依頼された者共です」
 礼儀正しく、一礼したフォーガは狼を見てはっきりと告げる。
「貴方は、この先に居るとされている英雄に関わるお方ですか?」
 狼は頷く、返事はあった。
 動物疎通を行えるフォーガには、これがそうだという意思表示であることがはっきりと通じた。
「我々はこの先に何が在るのかをこの目で確かめたい。貴方が番人であるならば、その役目に敬意を払い、その礼節に従います」
 望むものはない。踏み入るな。
 答えはそうだった。
 せめて荒らすな、持ち去るな、であればそのまま依頼を進める事も出来はした。
 だが、踏み入るなであればこちらも依頼を達成することが出来なくなってしまう。
 狼は牙を剥く。もはや話すつもりはないという事だろうか。
「狼討伐と宝発掘の二本立て。物語的な要素は充分に満たして在る。故に此度も頁も我等『物語』が彩るべき。視るが好い。此処に在るのは冒険と殺害の王道。特異の放った得意の類」
 だが、それを見て愉しそうにオラボナが一歩踏み出した。
 これより始まる物語を楽しむかのように。


 だが、オラボナよりも早く狼に接近したのはシャルレィスだった。
 もともと警戒していたのもあり、漆黒の剣を構えて狼の前に飛び出る。
「私はシャルレィス。守る物はあると思うけど……私もやることがあるから、戦わせてもらうよ!」
 名乗りをあげれば、狼は答えるように唸り声をあげる。
「申し訳ないですが……」
 シャルレィスの名乗りに合わせて、ルミリアが神の依り代を手に舞い始める。
 その神聖な舞いは戦う仲間達の力となり、その身体能力を高めていく。
「優しい優しいなりそこないさん、か弱い私を守ってね」
 横で対照的に身の守りを固めるモニカの姿があった。
 この地に沈んだ動物達か、はたまた被害者はかわからないが、アンデットを呼び出し自分の周囲に盾として呼び出す。
 続けてナキがオーラを用いて縄を形成、遠距離から狼の捕縛を試みるが、狼は宙を飛び、器用に樹を蹴ってそれを回避すると、シャルレィスに突っ込んでいく。
「はやい……です」
 単純に特殊な能力を持たぬという話はあったが、それを全て補うかのような身体能力。
 あれを阻害しなければ、こちらの優位に事を運ぶのは難しいだろう。
「うわっ、早い……!?」
「ふふ、ではこうだ!」
 予想以上の速度にシャルレィスは対応が遅れるが、割り込んだオラボナが形容しがたい巨大な盾を持ち、振り下ろされた爪を受け止めた。
「おおっと……これは手ごわい」
 受け止めた。だが、その一撃は重い。
 盾をもってしても、斬撃がオラボナを傷つける。
 傷は彼自身の再生力をもって再生していく。
「だが、攻撃した隙を狙うのは出来る、という事じゃ!」
 隙を見てルアが雷撃を放つ。
 雷撃は狼を撃ち抜き、その身体に電流を通す。
「よし……ならこうだ」
 追撃の如く、超遠距離からエメスが術式を展開、銃から魔力が形となり狼へと迫る。
 対する狼は痺れる身体を猛らせ一撃を回避、そのままシャルレィスへ反撃を行うが、再びオラボナが庇いに入り、受け止めた。
「……これはなかなか」
 一撃、二撃と受け止めてはいるが、オラボナから余裕が消える。
 純粋な回復はなく、自己回復だけという点もあり、確実に今、余力は無くなっていた。
「ふっ!」
 一撃、二撃と今度は踏み込んだフォーガが打撃をテンポよく打ち込む。
 確かに手ごたえはあるが、これでも動きを緩めないのは狼がタフだからということは間違いなさそうだった。
「加減は………」
 今の自分の手札では難しいだろう。この相手は並ではない。
「加減して倒すのは余裕が出来てからがいいでしょう。今は集中を……」
 ひとしきり舞いを終えたルミリアがバラッドを奏でだす。
 フルートによる演奏はこの森に優しく響き渡り、聞く者の戦意が高揚していく。
「よぉし、ここまで来たら……!」
 攻撃に集中したシャルレィスが、黒剣を振るい、狼の前足へと刺突を繰り出しそのまま繋げるような動きで薙ぎ払う。
 軽い一閃だったが、一撃は確実に狼とを捉え、ダメージを与えていく。
 相手の動きは徐々に疲労が見え、鈍りだしている。
 高速で動き合うシャルレィスと狼、仲間達でさえ追うのがやっとの状態だったが、焦る心を落ち着かせて、ナキはその動きをじっと見つめ直す。
「……え、攻撃した後……離れる、隙?」
 ふと、声が届いた。
 霊魂の声だろうか。優しい男性の声で伝えられたそれは、対峙する狼の隙を教えるような言葉。
「……ありがとう、です」
 誰のものかはわからない、それっきり声は無くなってしまったがナキはその声の主に礼を告げ、狼の様子を見直した。
 シャルレィスとオラボナに猛攻をかける狼だが、攻撃の後に必ず離脱を行い被害を最小限に抑えている。
 その距離をとる行動こそが、大きな隙であることははっきりと見て取れた。
「狙える……もう少し……です」
 次の機会を逃さぬために、ナキは狼の様子をじっと観察する。
「……くっ。重い!」
 前線では、オラボナの手が回り切っていないフォーガが腕に狼の一撃を受けていた。
 並の相手ならば耐えきれる一撃だろうに、この狼は的確に自身の無力化を図ってくる。
「まるで人のよう……」
 そんな感想が浮かび、零す。
 仕留めきるわけでもなく、自身の攻撃方法を把握してそれを無力化するように立ち回ってくる。
「ですが!」
 簡単にやられるフォーガでもない。
 腕に走る痛みを抑えながら、打撃を展開し、銃撃をもって距離を取る。
「フォーガさん、ちょっと身をかがめてねー」
 眠たげな声と共に、モニカが遠距離術式を発動させる。
 フォーガへ追撃を行おうとした狼は回避のために行動を中断し、飛びのく。
 ついで連続で術式を炸裂させるが、狼の巨大な体躯には軽く攻撃が当たっても大きなダメージにはなっていないようだった。
「うーん、遠術じゃああまり効果ないかなぁ?」
「にしても、持ち込まれたものが狼っていう事はどういう事だろうね、レジア」
 エメトはずっとそれが気がかりだった。
 しかし、前線が危機に陥っている以上、答えをまとめる暇もない。
 銃撃を牽制、そして魔力弾の本命の一撃を叩き込むが、狼は器用に致命傷を避けてかける。
「こちらにも来ない……本当に獣というより、あれは……」
 人のようだ。そう思えて仕方がなかった。
「デカイだけに狙い易い、と言えれば良いのじゃがな」
 巨大な狼である以上、狙いやすいというのは事実だったが、相手もそれを確実に捉えさせてはくれない。
 ここが拓けた戦場で平野であれば事実ルアならば確実に捉えられただろうが、相手は木々を利用して立体的に動いている。
 それが狙いづらい要因となってはいるが、全員の波状攻撃で生まれた隙を狙い撃つことは出来ている。
「だが、このままではまずいのぅ」
 一斉に攻撃を続けている以上、息切れが待っているのもある。
 前線を抑えているオラボナもこれ以上被害を受け続ければ倒れてしまうだろう。
 そうすれば次はシャルレィスとフォーガに集中して被害が及ぶだろう。
「……そこっ」
 氷の鎖が飛び、狼の前足を絡めとる。
 完璧にからめとれたわけではないが、この一手は大きく状況を傾けた。
「ルミリアか!」
 一通りの支援を終えたルミリアが、狼が一瞬だけでも動きを止める瞬間、攻撃の直後を狙ったものだ。
「ここ……です!」
 それに合わせ、ナキが魔力の縄を編み、狼へ放つ。
 氷の鎖と魔力の縄が狼を完全にからめとり、動きを止める。
「狼討伐、その終幕の時が来た。さぁ、終わらせるとしよう」
 ふらりと体を揺らすオラボナが言い放つ。
 その身に蓄積したダメージは隠しきれないが、もう守りに注力する必要もない。
「終わらせようか、レジア」
 ふわりと植物が答えたように揺れると同時に、魔力弾が放たれる。
 炸裂する一撃が、動きの止まった狼へ突き刺さり、狼は唸り声をあげた。
「……怨念、じゃないですけど。少しだけ、力を貸してください」
 ナキが自分に話しかけてきた霊魂に問いかけると、小さいながらに矢が虚空へ生まれていく。
「飼い主……いや、お友達?」
 その様子を見て、モニカはふとそんなことを思った。
 狼に向けられる矢は、狼を止めようとしているのか若干矢尻に殺意を感じない。
「ま、いいか。それじゃ、手伝おうか、いってらっしゃい、私の可愛い死霊さん」
 ナキに合わせるようにモニカも同様の矢を生み出し、二人で同時に放つ。
 一撃、二撃。降り注ぐ矢の直撃を受けた狼は雄たけびを上げ、強引に拘束を振りほどく。
「……っ! 逃がしません……っ!」
 ルミリアが再び氷の鎖を放ち、動きを阻害する。
 それに合わせるように、ルアが別方面から魔力の縄を展開し、抑え込んだ。
「これでいいかの、シャルレィス!」
「うん!」
 確実に仕留める追撃を行う事も出来た。
 だが、シャルレィスの考えをこちらの方が面白くなるかもとふと思ったが故だった。
「ごめんね、でも今は!」
 真っ直ぐ突撃するシャルレィスは盾を投げ捨て、剣までも投げ捨てて真っ直ぐ突撃する。
 動きを止めた狼に、それを阻害するすべはない、至近距離まで近づいた彼女は思い切り拳を狼へと叩きつけた。



「これでよかったのかの?」
「うん、理由はわからなくても……敬意は払いたいんだ」
「そうですね、私もこれで……この地の守護者であるならば、命を奪うわけにも行けません」
 気絶した狼の様子を見ながらルアが問えば、シャルレィスとフォーガは安堵の様子を見せた。
「まぁ、殺すよりはいいよねー」
 力を使いすぎたのか、ぐったりしながら保存食を齧るモニカは、視線を森の奥へと向けた。
「さて、今宵の物語は如何様なものが生み出していたか」
「……あれ、でしょうか」
 ダメージを受けてばかりだというのに、オラボナはそれを隠すように最前線を進む。
 それを追ったルミリアは、少し踏み込んだところで、一本の剣が大地に突き刺さっているのを見つけた。
「剣?」
 守護者が守り抜いている剣、それだけで期待するようなものだろう。
 だが、目の前にある剣はぼろぼろで手入れもされている様子はない、さび付いたただの直剣だ。
「ふむ」
 オラボナが剣に触れる。
 慌ててルミリアが止めようとしたが、断固として彼が触れるも、特におかしなことは起きない。
 何の魔力もない、ただの剣。
「……ありがとう、です?」
「お? 確かに、そう聞こえたね」
 ふと、ナキとモニカがふと聞こえてきた霊魂の声を聴いた。
「……持ち込まれた物は、剣と、狼」
 成程、とエメトは頷いた。
「きっと、遺物っていうのは、きっとあれだ」
 エメトが視線を向けたのは剣ではなく、狼。
「まさか」
 フォーガはふと、何か思いついたようにこの地点を探り出す。
「……あった」
 そして、木陰の隅にそれを見つけた。
 座り込むようにして、うなだれた白骨死体。
 経年劣化でボロボロになった様子から長い年月が経っていたことが読み取れる。
「これは……」
「貴方……だったんですね」
 ナキは死体を見て、そんなことを言った。
「……狼にとって大切なもの。それは、この剣の持ち主、この遺体」
「いや、どちらかというと……この場所かな」
 ルミリアとエメトが推測する。
「この場所を護りたかったんだね。友達の、この最後の場所を」
 シャルレィスが周りを見る。
 合わせて全員が周囲を見やれば、差し込む陽光が辺りを照らし、まるで輝くように光の溢れる庭園だった。
 
 
 確かに遺物はあった、イレギュラーズの手の中には錆びた剣が一つ。
 この錆びた剣を持ち帰れば報酬は出るだろう。依頼は完遂したのだ。
 そして森を抜けた彼らに、狼の唸り声が響く。
 それは、君達へ向けられたもののように、感じ取れた。
 感謝のようにも感じ取れる、誇り高くも力強い声だった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お待たせしました、トビネコです。
森での依頼、強力な狼との戦いは皆さまの勝利。
そして森に遺された遺物の回収も無事に終わりました。
なんてことはない錆びた剣で貴族は少しがっかりしていましたが、皆様には特に関係はないでしょう。

狼の護っていたもの、残された狼。
どのようなことがあったのかは、皆様の考え次第でしょう。
これらに関して、こちらから深く語る事はありません。
過去には過去の物語が、今には今の、皆様の物語が続くでしょう。

何はともあれ、皆様お疲れ様でした!

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