＜現想ノ夜妖＞ネヲン差す極彩色の空に

オープニング

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　ジ、ジジジジ、と音が鳴る。
　ビロードのカーテンのその向こう。
　銀幕に映る３の文字。
　モノクロームの文字が瞬いて、それは君達の網膜に焼き付くだろう。

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「た、助け、助けて……！？」
　走る、走る、走る。
　赤色のワンピイス着込んで、少女は引きつった声で叫んでいた。
　声は枯れ、何処から来たか、或いはどこへ行くのかさえいざ知らず。
　息は上がり、よく整えられた髪がばらばらに散らばってしまっていた。
　どこかでぶつけたか、宝ともいえるその顔には、擦れた傷が真新しい。
「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ……あ、あれ？　いない？　良かった、巻けたのかも……」
　振り返りみればそこにあの影はなく。少女はそっと息をする。

　――あぁ、だから。

　だからこそ――

　少女はその一瞬の表情を、その瞬間に張り付けた。

　安堵して、顔を上げたそこにいた。

　真っ黒な影に、真っ赤な目と赤い月。

「ァ、ァぁ――！」

　黒が何かを振り上げて、後は赤く赤く路地を彩る君の色。

　赤煉瓦なんて目じゃない、鮮やかな赤い君の色。

　ぽたり、ぽたりと滴る赤い色。

　ネオンの彩る極彩色の空に、あたかも忘れ去られたかのような漆黒のインバネス。

　手に握る刀から、赤い血が滴り落ちていた。

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「ははぁ、なるほど……あれが『渾天儀【星読幻灯機】――ほしよみキネマ』なんっすね。
　まさかゲームの中で映画を見ることになるなんて思わなかったっす」
　『高天京壱号映画館』、試写室にて、つい先ほどまでモノクロームの光景を見ていた君に、オッドアイの少女――レア（p3y000220）が感心したように声を上げる。
「でも、問題はあの光景、映画じゃなくて『本当にこれから起こること』だってことっすね」

　――新規イベント『帝都星読キネマ譚』現想ノ夜妖が開催されました。
　　　星読幻灯機（ほしよみキネマ）が伝える『未来』を元に、帝都を脅かす夜妖を退治しましょう。
　　　神使となり、悲劇を未然に防ぐのです。

　R.O.Oの2.0――ネクストの内部に広がる新たなステージ、神咒曙光（ヒイズル）。
　混沌世界で言うところの豊穣（カムイグラ）である。
　豊穣とは異なり、霞帝、天香、建葉による三位一体の政は国を善く治め、巫女姫姉妹が伝えた海向こうの風習は帝都に新しい文化を花開かせた。
　――すなわち、文明開化である。

　華やぐ帝都を脅かす脅威――夜妖＜ヨル＞。
　その存在と脅威に対して、双子巫女のつづりとそそぎが見た夢を元に『陰陽頭』月ヶ瀬 庚が作り上げたのが先程の渾天儀【星読幻灯機】であった。
　つまりは、先程の映像はこの先、このままであれば確実に起こる未来ということになる。
「――で、僕達がやるのが、さっきの映像をもとに、あれが起こる前に食い止めること、ってわけっすね」
　情報を整理したレアは、ふむふむ、と頷きながら君達の方を見る。
「でもまさか、R.O.Oの中で夜妖の名前を聞くなんて思いもしなかったっす！
　あいつら、再現性東京でのモンスターの言い方だと思ってたっすよ、僕。
　まぁ、でも、折角の夜妖狩りっす。これは希望ヶ浜の生徒として、両方の意味で見逃せないっすね！
　ほらほら、先輩たち、行きましょ！　さっきの女の子が事件に遭う前にとっとと倒しちゃうっすよ！」
　そういうや、レアが君達に手を振りながら黄昏時の地平を走り出した。

参加者 : 8 人

冒険が終了しました！　リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧（8人）

リプレイ

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　モダンな様式の風景の中を歩いていく。
　現実世界の混沌と比べても少々特殊な風景はここが現実とは異なる進み方をした国であるが故か。
　フィーネ（p3x009867）は路地へ入るまで、ネオンと煉瓦に作られるその町の光景に見とれていた。
　神咒曙光――あるいは神光、ヒイズルはフィーネやその魂たる彼女にとって明らかな異国。
　現実の豊穣ことカムイグラとも異なる、見慣れぬ光景だ。
　ふるりと頭を振って意識を前へ。既に目的地は近い。
　――今日は観光目的じゃない。それは別の機会にしよう。
（慣れ親しんだ豊穣がROOと絡んだ結果が神咒曙光……）
　周囲を見ながら進んでいた『かみさまのかけら』ねこ神さま（p3x008666）の眼には様々な光景が映っている。
　その周囲にはともに歩く３匹の影ねこたちの姿も確認できる。
「豊穣への道が開かれたと思いきや、この様な世界になっているとはな」
　周囲を警戒しながら進んでいた『蒼竜』ベネディクト・ファブニル（p3x008160）は少しばかり考えを纏めるように押し黙る。
（……夜妖も此処で絡んでくるか……
　どうやら、まだまだR.O.Oの世界は俺達にとって未知に溢れているらしい）
「ほんま、いったいなにがあったらこないなことに」
　頷いたのは『31勝44敗11分』入江・星（p3x008000）だった。
　馴染みあるカムイグラの光景とは明らかに違う華の帝都の景色には違和感がある。
「この姿も別時代の『日本的』らしいじゃないですか、この変遷はなかなか興味深いですね」
　考え事をしながら歩いていたベネディクトへ声をかけたのは、ねこ神さまだった。
「知ってる豊穣とだいぶ違うなあ。こういうの、一部のウォーカーさん達の世界だと、大正浪漫とか言うんだっけ」
　ぎらつくネオンに目を細め、『マルク・シリングのアバター』マーク（p3x001309）もぽつりと呟いた。
「ああ、この世界の事については追々知っていくとして──先ずは、あの女の子を助けねばな」
　あの女の子――星読幻灯機で映し出された少女。
　今はまだ起こっていないけれど時期に起こるはずの悲劇に巻き込まれると予言された少女。
　それを思い起こしながらベネディクトは頷いた。
「そうですね。きっちり夜妖を倒して、犠牲者が出るのを防がないと」
「せや、どっちにせよ夜妖は倒さなあかん」
　それにマークと星も頷き。
「――ああ、約束された悲劇ってやつを、ブッ壊してやろうじゃねえか」
　同意を示す『ブッ壊し屋』レニー（p3x005709）は頷きつつも星読幻灯機に想いを馳せる。
「にしても、未来予知とはまた、こっちの巫女様ってのはすげーな。『正夢』っつー民族伝承か？」
　レニーは今回の件――それを伝えた方法について思い返す。
（未来予知……電脳空間だからこそ未来に生じるイベントが決まっていて、それを表示できるって事か）
　レニーの言葉を聞きながら、ロマンこそないもののシステマチックに説明するならば、そう言うことになるのだろうと辺りを付けたのは『ヒーラー』ダブル・ノット（p3x009887）だ。
　元々いた世界でもネクストのような形態――いわゆるVRゲームやMMOの存在を知っている分、この辺り理解しているといえる。
「きな臭い話だが、今はイベントの指示をこなして次に繋げるのが大事だな」
　ノットの言葉に頷いて、レニーは真剣な顔を目的地の方へ向ける。
「悪い夢は夢の中に散らすもんだ。怖い夢見た幼子を宥めるようにな」
　呟きは路地へ響いて消えていった。
「星読幻灯機ねぇ。なんやオシャレな名前やし、縁を感じる名前やん？」
　双子の見た夢を映像にしてイレギュラーズにも見せるカラクリ、星読幻灯機のことを思い浮かべて星は笑う。
　路地を曲がり、映像で見た光景と同じ場所へイレギュラーズは足を踏み入れた。
　暗がりが動いている。
　――否。それは暗がりに合って暗がりに非ず。
　ぼんやりと浮かぶ真っ赤な丸が２つと半月を描いたような赤が浮かぶ。
　見まごうことなどあろうか。これは――これこそが星読幻灯機で見た悪性怪異――夜妖に違いあるまい。
「ご登場みたいっすよ、先輩がた！」
　レアが剣を構えた。
「夜妖、全く不気味な面構えしてるな……！」
　突如として姿を見せた夜妖にノットは思わず心臓が跳ねるのを感じた。
　分かっていても、この手のビックリホラー系は心臓に悪い。
「勘弁してほしいぜ」
「ほな、気張っていこか！」
　続くように星は光を放つ。発光する光は辺りを照らすが、唯一夜妖だけはそれを呑むように暗かった。
　バグ――そうとしか形容しがたい『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧（p3x001107）がホニャホニャと音を立てた。
　それに答えでもするかのように夜妖の周囲に影が姿を見せる。
（さぁて、観察しよう、観測しよう）
　形容しがたき縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧は再びホニャホニャと音を立てて、影の方へ意識を向けたように見えた。

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（ここでも遭遇するとは興味深い。
　運営と通ずる何かが夜妖の発生の要因と結びつけたのか……
　この瓦斯灯と薄闇の中で見出した者が何なのか……ええ、ええ、とてもとても興味深い）
　ねこ神さまの足元にいた黒ねこが不意に伸びた。
　それは正しく、伸びた、或いは溶けたとでもいうべきか。直線状に伸びた黒ねこは影絵鬼の幾つかを貫き、するどいキバとツメを以って切り裂いていく。
　攻撃を受けた幾つかの影絵鬼が次々に動き出し、ねこ神様へとのしかかるように動く。
　その一連の流れの一瞬の隙を突くように、フィーネが動く。
「これが終わったら、みんなで観光に行きたいので……早めに倒しましょう！」
　そう言いながら、フィーネはマークへポーションの入った小瓶を差し出した。
　あおるようにそれを飲んだマークは香りと成分により集中力を高めることができた。
「キィエエエエ」
　脳髄を揺らすような深いな音が鳴り響く。
　それは黒死猿叫が上げた叫び声だった。
　夜空を裂くように音が響く。
　ベネディクトはそれに一瞬遅れながらも声を張り上げた。
　竜の咆哮を思わせる大音量の大声は微かばかりとは言え、黒死猿叫の声に対抗する。
「貴様もまた、刀を扱うか──彼女には手出しはさせん、お前には消えて貰うぞ。黒死猿叫」
　振り払うと同時、ベネディクトは黒死猿叫へと肉薄。
　握りしめた竜刀を閃かせた。
　苛烈なる斬撃は鋭さよりも大胆さを重視し、目の前の黒死猿叫に自身の存在を印象付ける。
　星の握りしめた拳に光が宿る。
「これが星の力を纏った拳」
　瞬く閃光は夜空を照らすべき輝き。
「血に濡れた夜なのが残念やけど、きっちり瞬かせて貰おうやないか
　その挙動は流星の如く。
　文字通りの閃光を放ちながら、尾を引いた拳が影絵鬼の１体を打ち据えた。
　星の打撃が芯を突き、ぐらりと影絵鬼を揺るがせた。
「後に続けるかい？」
　星が視線を向けたのは、剣を構えていたレアだった。
　頷かれたのを見て、星は笑って。
「ならレアちゃんにも一緒に狙ってもらお！」
「了解っす！」
　頷いたレアが剣を振って影絵鬼を斬りつけていく。
　ノットは仲間たちの動きを見据えスキルを行使する。
　周囲のイレギュラーズの足元へ、次々に魔方陣が浮かび上がる。
　魔方陣が激しく輝いた。輝きはイレギュラーズに外付けの強化データを適用する。
「悪いなぁ！　次はてめぇらの強みは潰させてもらうぜ！」
「まずは数を減らすのが先決だな！」
　ノットの支援を受け、レニーも前へ走る。
　手に握るはDX超合金剣ノルン。未知の金属によって作られたおもちゃの剣。
　けれど、侮ることなかれ。刃こそついていないが、それは高密度な合金の剣。
　鋼の打撃はそれだけで脅威となる。
　振り抜いた刃は大振りに――目の前に揺らめく影絵鬼めがけ、振り下ろした斬撃がその個体の動きを乱す。
　そこにあるソレが揺らめく。
　縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧が不定形の動きを見せ、影絵鬼の集団へと肉薄する。
（さて……これはどんなものか）
　眼前の影のような夜妖へ近づき、縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧が動く。
　そうして、何かが起きた。
　それはそれさえもバグなのか。
　起きたことすら分からず、気付いたときには複数の影絵鬼の身体に強烈な傷が刻み付けられていた。
　「頼りにしてるよ、よろしくね」
　通りすがり、近くにいたレアへそう声をかけて、マークも複数の影絵鬼がいる場所めがけて飛びこんでいく。
　周囲にいる敵を斬りつけて、敵の集団目がけて剣を突きつけるようにして構えた。
「僕はここにいるぞ。お前達みたいに倒されはしない！」
　騎士の宣誓の如き言の葉に反応したのか、複数の影絵鬼がこちらを向いた。

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　戦いは続いている。
　開戦当初は全体的な反応速度の遅さからくる先制を受け、思ったような動きが取れなくなったときもあった。
　しかし、それも纏わりつく状態異常が払われてから徐々に挽回しつつある。
　それまでベネディクトの前にいた黒死猿叫の姿がふ、と掻き消え、別の影絵鬼と入れ替わる。
　これまでの間に何度か行われてきた面倒極まる敵の能力だ。
　一見すると逃亡のために見えたが――その射線の先には、ねこ神さまの姿があった。
「つくづく、懐かしさを覚えますね……」
　一足飛びに動いた黒死猿叫の刃が、ねこ神様に突き立つ。
　覗く赤い双眸には明確な悪意を感じ取る。
「かような存在、カムイグラの妖とも違う……まさに夜妖と言う他ないものなのですよ」
　ぴしりと割れた自分のグラフィックが解けていく。
　それを見て、初めて敵の表情により一層と深い『笑み』が見えた気がした。
「貴様はどこまで悪意に満ちている！」
　それを見届けたベネディクトの眼に爬虫類を思わせる瞳孔が覗く。
　それは逆鱗に触れられた竜の如き獰猛さを見せ、竜刀は竜が尾を振り払うようにしなりを帯びて斬り払う。
　影を切るような視覚情報と裏腹に、確かな手応えが腕を伝わった。
「存分に攻撃に集中してください！　私がしっかりと回復します！」
　癒杖『ウルルナルル』を構えたフィーネは声を上げ、バッグから取り出した瓶を空めがけて放り投げた。
　くるくると回転しながら空を舞ったポーションがネオンの光に反射してきらきらと輝き、疲労を取り除く薬剤が仲間達を癒していく。
　秘蔵のポーションは肉体的疲労を癒し、精神的疲労を取り除く。
　癒杖の魔力により、自然と強化された癒しのポーションは魔術にも等しいのだろう。
　縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧は立ち位置を変えた黒死猿叫を中心に据えるように、再びアクティブスキルを起こす。
　何にもない、致命的なバグにより何が齎されているかもわからぬ深淵の攻撃は、周囲にいる２体の影絵鬼もろとも痛撃を加えた。
　受けた攻撃を最後に、巻き込んだ２体の影絵鬼がデータの藻屑と消えていく。
　それを受け、巻き込まれていなかった２体の影絵鬼が縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧にお返しとばかりにのしかかる。
（底がしれるねェ）
　見飽きた敵の攻撃へ、縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧――否、その向こう側のソレが嗤い、ホニャホニャと音を立てた。
「チェックメイト後のキャスリングは、ルール違反なんだよね」
　チェックメイトの宣告は、既に鳴っている。
　それはあと２体の影絵鬼はそれぞれ別の仲間に任せても大丈夫だろう。
　踏み込んだマークは剣を払った。
　熟練の域にまで到達したただの振り下ろしが、闇のような黒死猿叫の身体を斬り伏せる。
　蓄積された報復の火力の分、その太刀筋は苛烈な物だった。
　不敵に笑む敵の顔は、歪むという事もない。
　けれど、確かに敵の身体が揺らぐ。
「あと少しだ！　一気に決めてやろうぜ！」
　ノットは周辺に聖域を張り巡らせ、最後となるであろう応酬を支援する。
　美しき神聖なる領域は仲間の精神的疲労感と状態異常を消し飛ばした。
「どうぞ！」
　フィーネは最後となるであろうポーションに癒杖の魔力を込めて、縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧めかけてそれを放つ。
　集中力を高め、命中精度を上げるポーションは、縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧のバグに溶けていく。
　支援を受けた縺薙?荳也阜縺ｮ繝舌げ繧はのしかかる２体の影絵鬼へ、スキルを発動する。
　ジリリとノイズがかったようになった後、まるで何かに呑まれたように影絵鬼が掻き消えた。
「散々やってくれたが、生憎と、俺も行儀の悪い戦い方なら扱えるのでな……！」
　竜眼を見開き、竜の闘志のままに、ベネディクトが竜刀を払う。
　追い詰められた竜の暴力が如き苛烈な斬撃が叩きつけられる。
　それに続くように、マークも剣を握り締めた。
「今度こそ――チェックメイトだ！」
　真っすぐな斜めに放たれた斬り下ろしが、強かに闇のような黒死猿叫の身体を削っていく。
　顔の変わらぬ黒死猿叫が絶叫する。
　それはイレギュラーズの多くを巻き込むが、それだけだった。
　対応できた敵の咆哮など恐ろしくもなんともない。
　それを悟り、黒死猿叫がくるりと身を翻した。
　それは本能的に見えた動きだったが――星はそれを見ていた。
「逃がさへんで」
　支援を受けた星が踏み込む。
　星を纏う拳は、文字通りの空を行く流星のように。
　でなければ地を穿つ隕石のように、黒死猿叫に突き立った。

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「それにしても、夜妖がR.O.Oの中にまで現れたってのは一体どう言うことなんやろ。うぅむ」
　考え事をする星。
　夜妖といえば希望ヶ浜に存在するモンスターあるいは怪異の総称。
　それが同じ練達内の出来事であるとはいえネクストにも存在しているのはどういったことなのか。
　クエスト終了に伴い再ログインを果たしたねこ神さまは思案顔。
　戦闘終了時に伴うグラフィック処理などからそれがゲーム的な処理なのか、エラーによるものなのか、データに残っていた光景を見ながら観察していた。
　結果はあまり芳しくはない。練達での遭遇パターンや自らの記憶とも照らし合わせながらも、一朝一夕で答えが出るような物ではなさそうだった。
「色々と厄介な相手だったな」
　一息入れたノットも先程まで黒死猿叫の様子を観察していた。
（夜妖って事は、組織的な情報を持ってるとかも期待できねーか？）
　推測を立てようにもその推測に必要なヒントもない。
「結局、イベントを進めてROOのアクションを待つしかなさそうだな」
　分かり切ってはいたが、最終結論はそうなるしかなさそうだ。
「キネマだかシネマだかだったか？
　さっきの夜妖の出るリアリティホラーじゃなく、もちっと明るいのが見たいとこだぜ」
　心臓に悪いと思わず悪態つきたくなりながらもレニーは呟いて、話を切り替えるようにほっと一息つく。
　画面にはクエストクリアの文字がポップしていた。
「しかし、あの双子巫女さんとかは、この手のを夢で見てるんだよな……」
　星読幻灯機はヒイズルの双子巫女の夢を一種の映像に変える。
　そのことを思えばゲームでのＮＰＣと言えども同情を禁じ得ない。
「まっ、気晴らしの口直しにカンフーだのクンフーだの、アクション映画とか見れないかね？」
　なんてことを言いながら、レニーはネオン輝く空に視線を向けるのだった。
「それでは、これから探してみませんか、そのアクション映画？　っていうの！」
　大正浪漫への好奇心にあふれたフィーネが、眼を輝かせていた。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
ヒイズルの夜妖、いったいどういうことなんでしょうね。