PandoraPartyProject

シナリオ詳細

毒とギャングとガスマスク

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 モノづくりの町「レガシオン」。
 工場地帯から七色の煙が立ち込めるこの町の人々は、機械部品の製造や組み立ての仕事で生計を立てており、出稼ぎの労働者も多くいる。
 給料は安いが工場ごとの寮や職人たちのギルド「ユニオンズ」がこの町の自治を粗方取り仕切っていたこともあり、贅沢は出来ないながらもそれなりの生活を送ることができるのだ。
 そんな製造業の街で最近、「グリップス」というギャングたちが幅を利かせるようになってきた。
 最初こそ「来るもの拒まず」の精神でグリップスを迎え入れていたユニオンズだったが、稼ぎの少ない工場に「融資」と称し、金を貸しつけ法外な利子を請求したり、気に入らない町工場を破壊したりしている。
 そのような無法地帯化が酷くなってきたこともあり、ユニオンズを仕切るジェームズは、グリップスと双方の今後の活動について交渉の場を設けることとした。

 ーーが、その直前になって事件が起きた。

 ジェームズが所有・管理している工場が、グリップスによって占拠されてしまったのだ。
 しかも、占拠されたのはただものを作るだけの工場ではない。
 その工場は、製造工程の最中に有毒なガスが発生する工場なのだ。
 ジェームズをはじめ労働者たちもこの工場で発生する有毒ガスが発生するのを知っていたため、ガスマスクを装着して工場に出入りしている。
 このガスは、吸い込めば最悪の場合死に至る有毒ガス。グリップスはこの町を牛耳る為、有毒ガスをネタにしてユニオンズを脅しているのだ。
 今回の事件の主犯格だろうか、筋肉質でガタイのいい男が、工場の屋根の上から高らかに宣言する。

「俺の名はクラーク! この工場は俺たちグリップスが占拠した! 交渉だなんだ言ってるイイとこの『お坊ちゃん』がいるようだがなぁ、ガスをバラ撒かれたくなかったら、俺たちの言うことを聞いてもらわねぇと、なァ?」
 確かに、ジェームズはレガシオンの住民に顔が効くのは事実だ。しかし、それは職人でありギルドを取り仕切っている人物としての話だ。グリップスのように腕っぷしが強いわけではない。

「このままでは、ガスのせいで周囲に危害が及ぶ。しかしどうする? 言いなりになることが、皆の生活を守ることになるとは、とても思えない。」
 労働者として、ギルドのまとめ役として、ジェームズは頭を抱える。
 ひとまずは周辺の住民を避難させることとし、工場についてはまずは奪還を試みるべく助けを求めることとしたのだった。


「なるほど。いわゆる弱い者いじめ、ということだね。」
 カストルは呆れた顔をしている。
「戦えない労働者に対して戦うことに特化したギャング。どちらが強いかなんて、火を見るよりも明らかじゃないか。そこで、だ。君たちには戦うことのできない労働者の代わりに、工場を奪還してきてほしいんだ。」
 しかし、乗り込むのは有毒ガスが発生する工場。何の準備も無しに乗り込むのは、愚策といえる。
 一瞬イレギュラーズ達が困った顔をしたからか、それと、とカストルが続ける。
「ガスマスクは、職人ギルド……ユニオンズ、だったかな。そこが貸し出してくれるとのことだ。近くに住んでる人たちも退避させたということだし、何も心配はいらないさ。頼んだよ、イレギュラーズの諸君。」
 普段見ることのないガスマスクがなんとなく仰々しく見えながら、イレギュラーズはレガシオンへと向かうのだった。

NMコメント

 こんにちは、水野弥生です。
 スチームパンク系のアクセサリー作ってたらこのお話のネタが降ってきたので、せっかくならと形にしました!
 ぜひ頑張って工場を奪還していただければと思います。

●世界観
 雰囲気としては近代化が進んだ産業革命の時代をイメージしてもらえれば分かり易いかと思います。
 この世界にはきちんと職業ごとのギルドがあり、今回の依頼人であるジェームズが取りまとめる「ユニオンズ」も、製造業の労働者・職人のギルドです。
 
●すべきこと
 ・工場の中にいるギャング集団「グリップス」のリーダーであるクラークを倒し、ジェームズの工場を奪還してください。
 ・ガスの発生源になっている製造装置(以下装置)の破壊を防いでください。

●工場について
 工場は、2階建てです
 製造を行うのが2階、検品・出荷を行うのが1Fです。
 いずれのフロアも、機械や机の下に身を隠すことができます。
 物を作る際に2Fから有毒ガスが発生していますが、ガスマスクをつけている限り問題はありませんし、ガスマスクについてもユニオンズが貸してくれるので、その点については心配する必要はありません。
 ただし、ガスの発生源となっている装置を破壊されると、製造の仕事は愚かこの町での生活ができなくなってしまいます。装置を破壊されないように、工場を奪還しましょう。

●敵について
 ①グリップスのリーダー・クラーク
 魔法が使えるわけでもない、ガタイのいい筋肉質な男性です。
 鉄砲を持っていますが、まあその程度です。基本的に己の肉体で戦います。
 ガスマスクを着けて2階にいます。
 
 ②その他グリップスメンバー
 とどのつまり雑兵です。1階、2階にざっと15人ずつくらいいます。
 持ってる武器はナイフだったり飛び道具だったりします。
 この辺りは自由に設定いただいて大丈夫です。(特になければプレイングに合わせて描写します。)

  • 毒とギャングとガスマスク完了
  • NM名水野弥生
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月14日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
エーミール・アーベントロート(p3p009344)
夕焼けに立つヒト

リプレイ

●あるべき関係
「表に出せない付き合いというものは、あってもおかしくないし、こういうところで生きていくにはまた必要な事なのでしょう。」
「まあ……。武力を持っていて行使に躊躇の無い利益の対立する集団に対して対抗できる武力も無しに交渉が成り立つ筈もない、というのは何処の世界でも真理という事かしらね。」
「ですが、それは利害関係や恩恵があればこその話。管理ではなくただひたすらに搾取するのならば、それは筋も通らない圧制です。一宿一飯の恩を仇で返すような方達に手加減は必要ありません。」
 シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の言葉に、久住・舞花(p3p005056)は頷く。
 ギャングと一般市民との間のあるべき姿としては、表に出せなくても持ちつ持たれつの関係であるのが正解なのだろうが、今はとてもそのような状況ではない。
「弱い者いじめですか。確かにそんな感じですよね、今の状況。」
 丸腰の相手に対し、一方的に脅しをかけている状況に、エーミール・アーベントロート(p3p009344)はため息交じりに呟く。
「ふん。数頼みの雑兵なぞ、ものの数ではないわ。」
 クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)は、ギャングとは言え相手はただの人間であるが故、早くカタをつけるつもりだ。
「まぁでも、今度はギャングのリーダーがいじめられる側になってしまうんですもの。因果応報とはこういう事を言うんですよ。」
 呆れたようなエーミールの言葉に、確かになとユニオンズの労働者達から声が上がる。一行はジェームズからガスマスクを借り、早速工場へ向かうのだった。

●作戦会議
「さて、隠れる場所も多そうですし、まず私が隠れながら工場の中の様子を伝えます。その後、行動を起こしましょうか。」
 ガスマスクを着け、エーミールは気配を消して工場の中に潜入する。工場は2階建てで、1階にいるのはざっと数えたところ15人、2階にも同じくらいの人数がいる。
 彼は他のイレギュラーズに彼が見たものを伝える。
「では、奇襲を仕掛けて1階部分を殲滅し、2回目向かいましょうか。」
「あぁ。基本的には戦法で良かろう。じゃが……。」
 舞花の提案に、クレマァダは一つ気を付けておかないといけないことを追加する。
「エーミールが隠れることができた、ということは、他にも隠れている敵がいるかもしれぬ。」
「自分が隠れることできるということは、相手も奇襲を仕掛けることができる。十分に気を引き締めていきましょう。」
 クレマァダの補足に乗るように、エーミールは面々に気を引き締めるように呼びかける。
「では、舞花さんがそのように奇襲を仕掛けるのであれば、私は敢えて2階に向かいましょう。」
 シフォリィは3人の話を聞き、自らの作戦について説明する。
「1Fから制圧し2Fへ乗り込む……というのが定石ですが、下の階で戦闘が行われている状態なら迎撃の準備を進めるであろうこと、そして私のような女が1人で乗り込めば、たった一人で乗り込んできた無謀な奴と油断を誘える可能性があるからです。」
「であれば、シフォリィのやることは陽動ということだな。であれば、我は様子を見て、味方を増やすとしよう。」
 シフォリィの陽動を中心に、グリップスの戦力を削ぎ、工場を奪還する作戦に落ち着く。
 1人1人が気を引き締め、ガスマスクを装着する。
 イレギュラーズは各々工場に忍び込み、機械や机などの物陰に隠れる。

●奪還開始!!
 エーミールの事前情報は勿論のことだが、クレマァダが音の反響で突き止めたグリップスのメンバーの位置関係により、各々が最適な場所に隠れることができた。
 彼らの存在に気付くこともなく、ギャングたちは工場の中で大声で話をしている。
「しかし、働きアリは大変だよな!」
「でも『アリ』であることに違いねぇ。俺たちは地べたを這う虫のことなんて気にしねーだろ!」
「だな!! ギャハハハ!!!!」
 気づかない彼らの背後から、先陣を切って奇襲を仕掛けるのは舞花だ。
 刹那、彼女の放つ一撃がギャングの後頭部を直撃。彼は反撃する暇もなく地面に倒れ伏す。
「武力を用いてする事が毒ガスを奪っての脅迫とは……情けないですね。」
 次々と彼女に襲い掛かるギャングたちを蹴散らしていく。
「女だからって調子に乗るじゃねーぞ!」
 そう舞花に殴りかかろうとする男の前に、癖のある長い金髪を編み込みを揺らして背の高い男がぬらりと現れる。
「あんまり弱い者いじめはしたくないんですよ、私。だから引いてくれません?」
「エーミールさん……!」
 エーミールはナイフを両手に構え、相手に優しく諭すように声を掛ける。
「舞花さんは2階に行こうとする人たちをお願いします。」
 舞花は頷くと、2階の階段方面へ全速力で駆けていく。
「僕が彼女を守りますーってか?! カッコいい坊ちゃんだねぇ!」
 エーミールを煽りながら、先程舞花に殴りかかろうとしていたギャングも獲物を以って仕掛けてくる。殴りかかる男に呆れながらも、彼は息を吸って目の前の相手に集中する。
「ああ、そうですか。じゃあ、これから起こることは全て因果応報ということで、ひとつ。」
 ナイフとナイフが、鋭い金属音を立ててぶつかり合う。たがいに肉薄しながらも、エーミールは他のイレギュラーズを庇いつつ応戦する。
 混戦模様の1階を駆け抜け、シフォリィは1人で2階へと駆け上がっていく。
 たった1人で2階に現れた彼女を、ギャングたちは下卑た目で出迎える。
「お嬢ちゃん、たった一人で随分と勇敢なんだねぇ。」
「おい、こいつ上物だ……あとで美味しくいただこう……グヒヒ。」
 そんな彼らを気にすることなく、彼女は2階で隠れられそうな場所を探す。その際に、『あるもの』を拝借して。
「ウへへ、お嬢ちゃーん、おじさんたちとイイコトしようよー。」
「怖いんだろう子猫ちゃん……ギヒヒ。」
 息を殺し、彼女は近づいてくる男たちに『それ』を投げつけた。
 ――ガシャーン!
 大きな音を立てて、机が一つ壊れる音がする。ギャングたちが振り向くと、その壊れた机のがれきの中にはやや大きめの金づちが埋まっている。2階の陽動は成功しているようだ。
 そして、1階。殴られてもなお立ち上がってくる数名の骨のあるギャングたちに対し、クレマァダは「呼び声」で語り掛ける。
「そもそも、おぬしらは何のためにその『力』を使うのか。」
 不思議とその声は彼らを説き伏せ、魅了する。彼らの中に残された善性が、この工場の制圧という悪に対し心を痛めているのだ。
 彼らは抵抗するでもなく、彼女に付従う。
「1階はこれで落ち着いたようですね。とにかく、2階で陽動しているシフォリィさんに合流しましょう。」
 2階に行こうとする者たちを引き留めていた舞花の呼びかけで、3人は2階へと向かう。

 2階は先にシフォリィが陽動をしていたこともあり、残りの手下たちも手際よく片づけることができた。
 一行はすぐに装置のある部屋へ向かう。
 そこには、流石のこの状況に焦りを隠せずにいるクラークと、2人の部下の姿があった。
「テメーら……こんなことして、工場がどうなってもいいのか?! あぁん?!」
 凄んで銃を向けたその先に、毒ガスが発生するという装置が今も稼働している。
 ――しかし、それも一瞬の出来事だった。
 ふと、凍てつくような空気が部屋の中をかけていったかと思うと、壁に深々と玲瓏たる銀閃剣が突き刺さっている。
 クラークは思わずそちらに気を取られているのを、舞花は見逃さない。
 すかさず、彼の手に向かってさらに銀閃剣を飛ばす。狙いは、手に持っている銃だ。
「なっ……!」
 銃を落とされ、イレギュラーズに持っていた刃物で切りかかろうとするところを、クレマァダは『砕波段波』で波の拳を食らわせる、そこからエーミールがボディブローからのアッパーという鮮やかなコンボを決め。
「ちゃちな防御というのは、まったく意味がないのじゃ。」
「まったく、因果応報とはこのことですかね。」
 クラークはその場に泡を吹いて倒れている。拘束するのは赤子の手を日寝る以上に簡単なことだろう。
「武力で解決しようとしたら武力で対抗されるのは当然の事。実際そうなったというだけの事で、それが出来るとは思っていなかったのなら、甘い見通しと言わざるを得ないかしら。」
 そう言うと舞花は部下たちへ降伏を促す。彼らはおとなしく武器を捨て、両手を上げる。
「……まあなんにせよ、仕事が失われてしまうだけでも大変な事ですからね。無事解決すればそれでいいですから。」
 シフォリィはそう呟き、クラークの拘束を手伝い始める。
 気づけば夜更け。月明りは静かに、工場の中を照らしていた。

●全てを終えて
「本当に、助かりました。これで皆が仕事を失うことなく、生活していくことができます。」
 ユニオンズの代表として、ジェームズは心からの感謝を述べる。
 平和を取り戻したこの町を去る前に、クレマァダは一つ気になることがあった。
「何、好奇心と言えばそれまでじゃが。我は自然と共に生きる海種の貴族。ゆえに何だか気になってしまう。」
 そういって、ジェームズに向き直る。
「この機械……有毒なガスまで出して、お主らは何を作って居るのじゃ? 大事なもの、というのはわかるが。」
「それは、そんなに大事なものなのか?」
 彼らが作っているのは、この世界のあらゆる場所で使われる機械の部品だ。
「どうしてそんなに大事なものなのか?
 それが、彼らの生活の基盤なのだ。
「他の何にも代難い大事なものなのか?」
 ――その問いに答えられる者はいなかった。
「……お主らの世界が、何なのか。我に教えてほしい。」

 そして、彼らが約束したことは「少しずつ、自然とも共存するやり方を考える」というものだ。
 簡単に叶う物でなくとも。彼らはひとつづつ、前に進んでいくことを決意したのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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