PandoraPartyProject

シナリオ詳細

大絶叫!スプーキー・ホスピタル!!

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●始まりはこんにゃくから
 その日は『竜剣』シラスス(p3p004421)が境界図書館を訪れた時から、何やらあちこち騒がしかった。
 時折きこえる悲鳴や叫び声に何事かと怪訝そうに眉を寄せ、声のする方へと足を向けた――まさにその直後。

 べちゃっ!!

「うわぁっ、なんだ!?」

 冷たくてプルプルした何かが頬にあたり、振り向くと同時に身構える。
 勢いを受けてゆらゆら目の前で揺れるこんにゃく。釣り竿に釣り糸でくくりつけられたソレを握りしめている人物が誰なのか、シラスは最初こそ分からなかったが、時折この場所で顔を合わせる人物だと気づく。

「どうしたんだ蒼矢、ずいぶんとボロボロだね?」
「いやぁ~えへへ……。特異運命座標って危険察知能力たかいよね。背後にまわるだけで殺気を向けられたり、こんにゃくでイタズラするだけで回し蹴りが返ってきたり……」
「そんなに痛い思いするなら、イタズラなんか止めときゃいいだろ」
「だっ、駄目だよ! これだって立派なお仕事なんだから――あっ」

 そこまで話すと、蒼矢はハッと何かに気づいたような顔をする。そしてすぐにワルいヒトの笑みに変わり、一冊の本を取り出した。

「さっき、いいリアクションしてくれたよねぇ。もしかして怖かった?」
「はぁ!? べ、別にあの程度で怖がるわけ……」

 何やら悪巧み顔でシラスの腕を引く蒼矢。この境界案内人と関わる時は大体こうだ。いつの間にか巻き込まれて……それでもまあ、前に訪れた遊園地は悪くなかった。


●潜入!恐怖のお化け病棟!?
「スプーキー・ホスピタル?」
「そう! この境界世界のホテルはね、お医者さんも患者さんも皆、誰かを怖がらせるのが大好きなんだ!
 怖がらせるのに夢中になるあまり、本物のお化けになった人もいるし。怖い空気に引き寄せられて、外部からヤバげな怪物がまぎれ込んだりして!
 とにかくもう、恐怖と脅威のアラベスク! ホラーの宝石箱や~~! ……って感じなんだよねぇ!」

 蒼矢の説明はどことなく緊張感に欠けるが、本の表紙に描かれた病棟は薄暗く、肌にまとわり付く様な薄気味悪い雰囲気を漂わせている。

 おまけにこの世界、一度入ると脱出するまで、混沌で使えたはずの技術も能力も一切を忘れてしまうらしいのだ。
 依頼の達成条件はただ、病室にお見舞いの花束を届けるだけ。
 なのに誰も彼も、気味悪がったり面倒くさがったりで、引き受けてくれないのだという。

「正直、仕方ないと思ってはいるよ。怖い思いをする事になっちゃうし、危険じゃないとも言えないから――」
「引き受けるぜ、この依頼」
「やっぱりね。それじゃあ……、え?」
「受けるって言ったんだよ。ただし参加するのは俺とアレクシアの2人だけ。……いいよね?」
 
――延長戦だ!

 シラスは内心ガッツポーズをきめていた。待ち望んでいたホラー! 
 怖いものが好きだという訳ではないが、『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)と"決着"をつけるにはまたと無い好機だ。

『そういえばシラス君、もうおばけは大丈夫なの~?』
『その話ここでするのっ!?』

 アレクシアのニマニマ笑顔が今でも頭から離れない。お化けなんか怖くない。だから見返してやりたい!
 そのために前回2人で挑んだ肝試し代わりの空き家探索は散々な結果だった。

 わざわざ中で起きる現象を事前に予習し、アレクシアを怖がらせようとシラス自ら姿を隠したりもした。
 なのに彼女はわりと平気で、隠れたシラスを隠れ返してビックリさせてしまうほど!

 話の流れで肝試し勝負は引き分けという形になったが、事前にアドバンテージを得ていたシラスにとって、限りなくグレーな引き分けだったのは言うまでもない。

(今度こそ怖がってもらうぜ、アレクシア!!)

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! NMの芳董(ほうとう)です。
 リクエストありがとうございました。人生で初めて見に行ったホラー映画は病院モノでした。

●目標
 病棟にある"90E号室"に花束を届けること

●場所・説明
異世界『スプーキー・ホスピタル』
 ホラーとスリル満ち溢れる病棟の世界です。医者も患者も引き寄せられたモノも、みんな怖がらせる事が大好き!
 無害なものから質の悪いものまで様々いるようです。
 年中真夜中のように外は真っ暗。光源を何か持ち込むもよし、その場で探してみるもよしです。

 お2人には1階の病棟入口からスタートし、目的の部屋まで向かっていただきます。
 まっすぐ廊下と階段を歩いて向かう事は恐らく難しいでしょう。より沢山の恐怖を与えようと、
 病棟の住人達は回り道の手段をこうじて色々な部屋に導きます。

 診察室、レントゲン室、リハビリ室、手術室――
 どんな部屋でどんな怪奇現象と遭遇するかは、お2人のプレイング次第です。
 せっかく病棟に潜入(?)するので白衣やナース服なんか着ちゃってもいいでしょう!

●その他
 お2人のプレイングを中心にアドリブをきかせて構成していきます。
 オープニングや説明に登場していなかった部屋でも、お化けでも、プレイングに登場すればどんどこ出てきます。
 怪奇現象を見た時のリアクションも、ぜひ書いて戴けると嬉しいです!

●情報精度
 このシナリオの情報精度 は あくうるむしにしましょうぞ

  • 大絶叫!スプーキー・ホスピタル!!完了
  • NM名芳董
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月20日 22時05分
  • 参加人数2/2人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女

リプレイ


「クソッ、白衣が裏目じゃあないか!」
『竜剣』シラス(p3p004421)は激怒した。必ず生還し、あのテキトーな境界案内人をしばき倒さねばならぬ。
 行き先が病院だから医者に変装していくといい――助言を鵜呑みにした結果がこれだ。後ろから目の落ちくぼんだ患者服の亡者が怨嗟の言葉を吐きながら、背後から沢山おいかけてくる。坊やは何処とか、よくもこんな……とか。呻きのひとつひとつを拾おうとしたらキリがなく、一人が二人、二人が四人と増え始めてからわらわらわらわら。
「どこに居たんだよあんな数ッ!?」
「シラス君、足元に気をつけて!」
 ビビり倒すシラスと並走する『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は、ライトで廊下を照らしながら冷静なまま注意した。
「とにかくこのままじゃ、行き止まりに追い詰められる!」
「あの部屋に逃げ込もうよ!」
 逃走ルートに半開きの扉が見え、せーので息を合わせて二人一緒に滑り込む。急いで扉を閉めた直後――
 ドババババンッ!!
「「――ッ!?」」
 血まみれの手形が扉の磨りガラスにいくつも付いて、やがてシーンと静まり返った。脅威が去ったか定かでないが、幸いな事に扉の先まで追っては来ないようだ。
「ははーん、こう来たか!」
 慣れてる。俺はもうこの手のものは慣れてる。手形とか、前回の肝試しで見たことあるし! ……あれは子供だったけど。
 大味なパニックホラーにシラスの声は震え気味だが、まだ虚勢を張るくらいの余裕はあるようだ。軽口を叩いてアレクシアの方へ視線を流した。
「今回こそ怖かったら素直に頼っていいからね」
「わ、私もまだ大丈夫っ……シラス君こそ、怖かったら素直に言うんだよ!」
「別に、怖かないけどさ。なんていうか、ひたすら不気味だよな」
 病院の入口を潜るなり、重苦しく籠もった空気が身体じゅうにべったりと纏わり付いた。亡者一人に感知されれば、あっという間にさっきの様な大混乱。廃病院の住人たちは驚かすのが好きだと聞いたが、それ以上に殺意も高い。
「そうだね。何かに怒ってたり、悲しんでいたみたいだし……何が患者さん達をそうさせてるんだろう」
「患者さんのカルテがあるけど、健常な状態から何か……これ、投薬実験?」
「こっちには新聞の切り抜きがある。少年が飛び降り事故だって。映ってる建物、ここだよな」
 滑り込んだ先は書類の並ぶ資料室で、理由を探るにはうってつけだ。新たな情報が見つかり始めれば、お互いに資料漁りに気を取られてしまい、同時に本棚のファイルへと手を伸ばす。
「あっ」「んっ」
 互いに触れる指先。思わず顔を見合わせて、アレクシアは照れを誤魔化すように頬を緩めた。
「叩くほど埃が出て来ちゃって、よく分からなくなってきたね」
「追われる原因より先に、目的を果たした方が早そうだよな」
 つられて気恥ずかしくなり、頬を人差し指で掻くシラス。改めて手に取ったファイルは院内の見取り図だ。これで目的の部屋が見つかる。そう思って仲良く図面を広げたものの――
「シラス君、この建物って……」
「9階なんてフロア無いな」
 手がかりを見つけたと思えば、あっという間に振り出しへ戻された。とにかく上がれる階まで登ってみようと相談しあい、手形の付いた扉の先に気配が何もない事を確認しつつ、そろりと二人で資料室を後にする。
「目の前の階段を上がったら、まっすぐ屋上まで行けるみたい」
「最短ルートで行こう。鍵が必用とかになってから、辺りを探せばいいさ」
『登っては、だめ』
 急に聞こえた少女に声に、シラスは思わず身構えた。
 睨みつけた暗がりにの先には、患者衣の少女がぽつんと独り。どうやら足が悪いようで、車椅子に座している。
「どうして駄目なの?」
「構うなよアレクシア、アイツも患者だぞ」
『……』
 少女は答えない。ただアレクシア達を見つめるだけだ。返事を待ってみたものの、ついにシラスが痺れを切らして階段に足をかける。
「行こうぜ。どの道、目的地にたどり着くには登らないと行けないだろ?」
「うん。……ごめんね。危険な場所でも、頼まれたことは果たさなきゃ」
 彼女の視線を背に受けて一段登った二人の視界が――ブツ、と途切れた。


 暗転。
「……ッ!?」
「どうした、アレクシア?」
 声をかけられ我に返れば、特に変わった事はない。シラスが心配そうにこちらを覗き込んでいる事以外には。
(さっき意識が遠のいた気がしたけど、気のせいだったかな?)
「ごめんね、何でもないよ」
 気づけばもう4階だ。ここまでは順調に進めている。はやる鼓動を抑えようと深呼吸――し終えた時だった。

 ぞる、とナニカが滑る音がして。

「……え?」

 シラスの目元が墨のような物で塗りつぶされた。

「シラス君?」
「なんて顔してるんだよ、お化けが出たんじゃあるまいし」
 シラスがこちらに話しかけてくる間にも、墨はどんどん彼の姿を塗り潰す。
 腕を、腹を、足を首を。
「やだ、待って……どうして!」
「大丈夫だよ。俺はアレクシアの――」
 口さえも潰れてしまえば、残るは沈黙。黒く染まりきった身体は薄くなり、夜の闇へと溶けていく。
「落ち着かなきゃ。これはきっと幻で、シラス君とはぐれちゃったんだ」
 特別な力がなくたって、シラス君は強いんだ。
 だからきっと、大丈夫――そう自分に言い聞かせても、独りぼっちの孤独さがチクリと胸を傷ませる。

 もし、本当にいなくなってしまったら?
 二度と会えなかったら?

 一度開いた傷口は不安ばかりを募らせて、焦燥感が喉の奥からせり上がる。吐き出しそうになるのを堪えながら、アレクシアは上の階へと弾かれたように駆け出した。

「どこに行ったの!? シラス君……シラス君ーー!!!」


 錆びた鉄の扉がギイィと軋んだ音を立てる。差し込んできた月明かりに一度目を細めてから、シラスは屋上へと踏み入った。
「ここが病院の最上階か。すぐ下の階は6階だし、90E号室なんて無いじゃないか」
 空を見上げれば血を吸った様な赤い満月が揺蕩うばかりで隠し部屋すら見当たらない。
 ただでさえ肝試しが厄介なのに、謎解きまでしなければいけないのかと彼が頭を掻いた時……とん、と背中に温もりが触れた。
「アレクシア?」
 戸惑い気味に声をかけても、返ってくるのは怯えた様な啜り泣き。ドキリ、と心臓が跳ねた。
 未だかつて、彼女がこんなにも怯えた事があっただろうか。
――勝った!
 いや、それ以前にここは男の見せ所だ。
「泣くなよ。俺がちゃんと側にいるから」

 スンスン……クス。クスクスクスクス!

「アレクシ――」

 ギャアアアア!! と耳を塞ぎたくなる様な悲鳴が辺りに響き渡った。突如、炎に包まれて燃え上がるアレクシアの身体。
"この世界ではスキルが一切使えない"
「あ、ぁ……!」
 蒼矢の説明を思い出し、ゾクリと背筋が凍る。着ていた白衣を素早く脱いで、消化しようとアレクシアを仰いでみるが、火の勢いは増すばかり。
 彼女の悲鳴は止まらず、弱ったようにヨロヨロと後退していく。やがて背中が屋上の手すりに当たり、そして――
「──ッ!!」
 さよなら、と彼女の唇が動いた気がした。伸ばした手が届く前に、手すりの外へ投げ出されるアレクシアの身体。
 頭の中が真っ白になっていく。何か叫んだかも知れない。分からない分かりたくもない知りたくない俺は俺は俺は――

「シラス君ッ!!」

 燃え落ちた屋上の手すりに向かってフラフラと歩いていたシラスを、アレクシアが引き止めた。
「アレクシ、ア……?」
「いきなり居なくなって、本当に心配したんだから!」
「……怖かった」
 零された言葉を聞き返す前に、ぎゅうと強く抱きしめられる。
 温もりを確かめるような動きに、もう大丈夫とアレクシアも抱きかえして応えてみせた。
「今度は本物だ」
「うん」
「もう肝試しなんてこれっきりにしよ。流石に懲りた……」
「私もだよ。早く90E号室にお花を届けに行こう」
 そうは言ったものの、未だ目的地の場所は分からないままだ。存在しない筈の9階、そんな場所に果たして辿り着けるのだろうか。
 ふと、アレクシアは床に落ちていた紙切れに目を留めた。消火に使った白衣のポケットには、集めた書類も入っていたのだろう。燃え残ったそれには、この病院で屋上から患者が飛び降りた事件の報告が記されている。
「飛び降りたのは、手すりが焼け落ちてる場所かな。……あっ」
 もしも依頼人が飛び降りた人物だとしたら。落ちる最中、目にした部屋のプレートは逆さのまま記憶に焼き付いて――


 90E――もとい306号室は、一人用の病室だった。
 窓辺に置かれた車椅子の少女と少年の写真。その横にある細い花瓶から枯れた花を抜いて、新しい花へ差し替える。
「はぁ……終わった……!」
 緊張の糸が切れ、シラスはその場にへなへなと座り込んだ。すぐ隣ではアレクシアが静かに手を合わせている。
「お大事に。……いたずらも、ほどほどにしてね」
『はーい。ごめんなさい』
 背後から突然返事がかえってきて、二人はバッ! とそちらに振り向く。
「何だ蒼矢か、ビックリさせるなよ」
「待ってシラス君。蒼矢さんの身体が!」
 アレクシアが言葉で示す前に、薄ぼんやりと光っていた蒼矢の姿が、写真の少年の姿に変わっていく。

『あの子に届けたいのに、部屋が分からなくて。……本当にありがとう。またね!』

 そう言い残して姿が薄れ、フッと何処かへ消えていく。

「そういえば、依頼を受けた時……蒼矢、俺の名前を知ってるのに、一度も呼ばなかった」
「蒼矢さんってホラー苦手なんだよね。こんな怖い依頼、勧めるのも変な話だったかも」

 情報を出し合うほど本物とは程遠い。おまけに"彼ら"が姿を他人に真似られる事は、嫌というほど知っている。
 つまり受けた時から、依頼なんて物すら――

「またね、じゃねえぇぇぇーー!!!」

 大絶叫が、夜の病院に木霊した。

成否

成功

状態異常

なし

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