PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ぬくもりの在処へ

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ぬくもりの在処へ
 この日、産声をあげた赤ん坊の周囲には、我が子を抱く母親、妻に感謝を述べる父親、赤ん坊の誕生のために尽力した者達の他に、ちいさないのち達が居た。
 獅子、熊、狼、猫。どれもやわらかな毛並みに身を包み、ちいさな体躯で喜びを精一杯表している。
 そんな一家に、また新たな家族が加わる知らせが届く。
 必死に泣く赤ん坊の目の前に、ほわりとあたたかい光が燈る。

「お、来たな」
「この子のパートナーはどんな子かしらね」
「犬じゃないか?」
「女の子だもの、兎かもしれないわ」

 光を前に、口々とお喋りを始めた大人達に微笑んで、母親が光を見つめる。

「どんな子だって構わないわ。だって、この子と一生を共にすることを選んだのなら、きっといい子だもの」

●きみのちいさな相棒
「こんにちは、迷子の家族探しのお手伝いしてくれるかしら!」
 境界案内人ポルックスは、クラシカルなワンピースの裾を揺らしてイレギュラーズに微笑みかける。

「今回みんなに行ってもらいたいのは、とてもちいさな世界なの。街並みは幻想に近いかも。その世界は人間が一人誕生すると、必ずパートナーになる動物が一匹誕生して、一人と一匹が生涯ずっと一緒に生きていくの」
 人間が恋人をつくり夫婦になれば、動物達も共にひとつの家で生活するのだという。なんだか優しくて素敵な理でしょう、と、少女は説明を続ける。

「けど、うっかり何匹かの動物が、パートナーから離れて迷子になってしまったの。これはよくあることらしいんだけど、動物達はパートナーに逢いたくて仕方がないし、人間達もとっても心配してるわ! だからみんなは、迷子の動物達をパートナーの元に連れていってあげてちょうだい。迷子になった範囲自体は狭くって、そんなに苦労はしないから。動物と遊んだり散歩して、情報を集めて歩いていれば、パートナーにも逢えるはずだよ!」
 よろしくね、とイレギュラーズに手を振れば、境界案内人のスカートが再び揺れた。

NMコメント

 はじめまして、NMの遅咲です。
 一話完結型のラリーシナリオとなります。
 どなたかとご一緒に参加される場合、プレイング冒頭に呼び名とID記載をお願いします。

●目標
 迷子の動物達をパートナーの元へ連れていく

●できること
 迷子の動物と触れあい遊びつつ、情報を集める、街並みを散歩するなど。

●世界について
 「幻想」に似た西洋ファンタジー寄りの平和な世界。
 ヨーロッパ風の外観の街並みです。
 人間が誕生すると必ず相棒の動物が一匹誕生し、生涯を共にします。

●動物
 プレイングは動物の指定が可能です。無記載の場合は此方で動物を選びます。
 「毛のある動物」なら何でもOK。大きさはどんな種類の動物も等しく小さくなります。
 クマ、パンダ、ライオン、虎、全て小型化します。

●サンプルプレイング1
 迷子の黒猫を助けてあげたいな。まずはお近づきのしるしに猫用おやつをあげちゃう!
 仲良くなれたら、一緒に街を散歩して住民に訊き込みしていくよ。

●サンプルプレイング2
 動物には好かれないと思っていたが、この狼は人懐っこいな。
 公園で追いかけっこをして暫く過ごそう。此処なら、動物達と過ごす人間も多いからな。

 初シナリオのため、採用人数は少ないかと思います。
 皆さんのプレイング楽しみにしております。

  • ぬくもりの在処へ完了
  • NM名遅咲
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月08日 21時40分
  • 章数1章
  • 総採用数10人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー

 人々がそれぞれの相棒と共に行き交う道を、少年が一人ゆく。ほんの少し浮いた足元は石畳を歩くことなく、ふわふわと宙を漂いながら。
「迷子の動物……猫さん、いるかな」
 きょろきょろと祝音が辺りを見渡せば、家と家の間、一本の細い路地。にゃあ、と寂しげな鳴き声が聴こえて、そこにはちいさな茶虎の猫が、耳と尻尾をぺちゃりと下げていた。
「こんにちは。お腹すいてる?」
 猫用おやつを差し出せば、猫は鼻を動かしはぐはぐと平らげる。祝音が優しい手つきで撫でてやれば、嬉しそうに喉を鳴らしてすり寄った。猫を抱っこして、一人と一匹は大通りへと出る。
「すみません……この猫さんのパートナーさん、知りませんか?」
 住民達はちいさなこどもがふわふわと浮いたまま、猫を抱きかかえる姿を不思議がることなく、祝音の問いに丁寧に答えを返す。何人もの住民に声をかけては、首を横に振られる繰り返し。不安そうに鳴いた茶虎をそっと撫でて、魚のぬいぐるみを揺らしてやる。
「可愛いね、猫さん。……不安だよね、ごめんね」
 見つけてあげるからね、と約束をして、ふと住民への質問を変えてみた。
「迷子の相棒を探している人、知りませんか?」
「ああ、それなら。さっき女の子が一人、猫を探していたよ。ちょうど君の抱いてるような、茶虎について訊いてきたなぁ」
 ぱ、と一人と一匹の顔が明るくなって、少女の住む家へと向かう。
 猫がパートナーと再会するのは、もうすぐ。

成否

成功


第1章 第2節

冬越 弾正(p3p007105)
終音

 人殺しで血生臭い。その強面で、こどもにはよく泣かれる。そんな不審者三大特徴が、弾正という男の姿。
「果たしてこの俺に、動物のような純粋な生き物が大人しく捕まってくれるだろうか?」
 懸念通り、声をかけるより速くぴゅうっと逃げ出す犬、兎、猫。とはいえ情報収集を諦めるつもりはなく、道ゆく住民にも迷子の動物が居ないか根気よく話しかける。
 休憩をとろうと、公園のベンチに腰掛ける。せめて顔が怖くなければよかったろうか、それとも血生臭さか。ほんのちょっぴり落ち込んでいた弾正の耳に、しゃこしゃこと不思議な音が届く。
「ん?」
 見上げた先、噴水が美しい虹を咲かせている。噴水の淵にふわふわのお尻をのせて、アライグマが何かを一生懸命洗っていた。怯えさせぬよう、顔が向き合える正面から近付く。視界にようやく拾えた洗い物はドッグタグ。名前と連絡先が記載されたそれを、彼は大事そうにしていて。
「お前、この人の所に向かいたいのか?」
 つぶらな瞳が物言いたげに弾正を見つめているから、勇気を出して恐る恐る抱き上げる。暴れることなくドッグタグを握りしめている姿に、自然と男の気持ちもやわらぐ。
「大人しいな」
 この間はROOで散々アライグマに引っかかれて噛みつかれたりしたものだから、この子の性格に安堵した。確かなぬくもりを楽しむように、優しく撫でてやる。
 お前の飼い主まで案内してやるからな、と。一人と一匹は公園を後にする。

成否

成功


第1章 第3節

星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束

 常人よりも背丈のおおきな少女に、住民達は快く挨拶する。ちいさな世界ときいていたから少し不安だったけれど、朝顔を怖がる人間は此処には居ない。可愛らしい動物と触れあえるときいて、ゆきかう人々と動物の姿に、少女は胸を弾ませる。
「……あれ?」
 ちょこん。本当にそんな言葉が似合うような。街を彩る花壇の上、ハムスターが身を縮こまらせている。かわいい、と思わず口に出して、は、と手で隠す。いきなり大声で呼びかけては、きっと怖がらせてしまうから。
「こんにちは、迷子ですか?」
 しゃがみこんで、可能な限り視線を合わせて。ふわり微笑む少女に安心したのか、ハムスターは朝顔の指にぴと、とくっつく。圧し潰さぬよう両手で包みこむと、それは驚くほど温かい。
「迷子のハムスターを探している人、居ませんかー?」
 掌で包み込んだまま、朝顔は辺りをうろうろ、迷子のパートナーを探す。途中見つけた動物用のお菓子屋さんで、ヒマワリの種を購入すると、片手にハムスターをのせて空いた手で種を与える。
「おいしい?」
 そう問うた少女にちいさないのちは、これが答えと言わんばかりに種を頬張る姿を見せる。あまりに一生懸命だから、ふふ、と笑みが零れて。やっぱり食べてる姿が一番かわいい、と指先で撫でつつ、再び人探し。
 大声をあげて暫く、向こうから朝顔めがけて駆け寄る青年の姿が在る。彼女の背丈が役立って、ハムスターは無事にパートナーと再会した。

成否

成功


第1章 第4節

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽

 石畳の道に、鮮やかな花壇の彩。ゆきかう人々の隣に居るのは、ふわふわとした毛並みの様々な動物達。なるほどこういう感じか、とカイトは頷いて、彼らの表情を見る。
「どいつもこいつも、いい顔をしてるな」
 ふと、とある店の硝子に映るのは鷹獣人の姿。もしや俺も動物枠になるのか?
「うーん、まあいっか!」
 住民達は一度驚いた表情をするも、カイトを旅人だと認識するらしく快く挨拶を交わす。
 暫くして、ちゅん、とちいさな鳴き声が聴こえた。店先の看板の下を覗き込めば、雀が一羽、ぱたぱたと羽搏いている。
「お? 迷子か坊主?」
 パートナーになるのは『毛のある動物』なら、羽毛だって有りなのだろう。どこか慌てた様子の雀に、おいおいと優しく笑う。
「猛禽だが流石に喰わんぞ? 一緒にパートナーを探させてくれ」
 頼もしさが伝わったのか、雀は看板の下からおずおずと抜け出す。せっかく翼があるのだから、と、鷹獣人は雀を掌に包み一気に空へ。
 赤い西洋瓦で統一された屋根が連なる街の上、ここからでもカイトの目には人々の顔がよく見えた。見下ろして数分、青年の勘にぴんと来るものがある。一陣の風と共に舞い降りて、集まった人々に声をかける。
「この雀に見覚えはないか? 迷子なんだ」
 途端、あ、と声をあげる女性がカイトに近寄る。雀はカイトの手から女性の肩へと飛び乗った。
「パートナーは大事にするんだぞ! その翼は、きっと祝福されているからな!」

成否

成功


第1章 第5節

すみれ(p3p009752)
薄紫の花香

 この世界にも季節はあるようで、晴れた空は清々しい。道ゆく人々も軽やかな薄手の服装が多く、散歩日和を楽しんでいるようだった。
 けれど突然、白い塊が道端に落ちていたものだから、すみれは瞳を瞬きさせる。季節外れの雪が降ったのかと思うほどまっしろなそれは、すみれを見て、きゅ、とひと鳴きしてみせた。
「あらあら、迷子さんでしょうか」
 まだ赤ん坊のアザラシを優しく抱きあげれば、ふわふわとした肌触りが心地よい。何処に居ても目立ってしまいそうな姿を、彼女は放っておくことなどできなかった。
「すみません、この子のパートナーを探しているんです」
 思い思いに過ごす住民達に声をかけては、抱きかかえたアザラシを見せてみる。その度、アザラシはきゅっきゅと愛らしい鳴き声をあげては目をぱちくり。暫くして、ふんふんと鼻を動かす仕草に、そういえば、とアザラシの嗅覚の鋭さを思い出す。
「向こうに行きたいんですね」
 頭を動かし物言いたげなアザラシの言う通り、すみれは街をゆるやかに進んでいく。それにしても、抱きしめたいのちはとてもあたたかい。本来寒さの厳しい氷の世界で過ごすためのもふもふは、膚にすいつくように馴染んで、女を優しい気持ちにさせてくれる。きっと、パートナーも動物を探して不安だろう。
「はやく会わせてあげて、この子の温もりで癒されてほしいですね」
 そっと背中を撫でてやると、アザラシは嬉しそうに尾をぺちぺちと動かした。

成否

成功


第1章 第6節

ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

「だりぃ」
 木陰でサボる黒獅子は、めんどくさそうに呟いた。迷子の相手など、もっと気の利いた者に任せたほうがいいに決まっている。自分のような者は、迷子の世話には不向きだ。
「だからよ、おい、お前――さっさと俺の足から離れろや」
 優しくないルナの声に、ちいさなライオンは怯えることなく彼の足にじゃれついたまま。いくら小型であろうと、獅子なら少しは警戒する素振りだって見せるべきだろうに。
「……ハァ。情けねぇな」
 立派なたてがみを生やしたいのちは、ルナの呆れた言葉を気にする様子は微塵もない。猫のようにぐるる、と喉を鳴らしている。
 再び大きなため息を出しかけて、ふと思う。考えてみれば彼らは親が居ない。ヒトが生まれるとどこからともなく現れる、血筋のない一匹だけの獣達。
 上半身をゆっくりと起き上がらせ、瞳を隠したままライオンへ視線を向ける。
「……おう、お前に一つレクチャーしてやる。匂いだ。てめぇにゃ嫌ってほどついてんだろ、てめぇの相棒の匂いがよ」
 じっと見つめるライオンに、そいつを辿れと男はアドバイスを投げつける。
「悪ィが、俺は案内しねぇぜ。俺はこの世界の、てめぇの群れのモンじゃねぇ」
 てめぇのことは、てめぇでなんとかしろ。
「――できるだろ?」
 獅子同士、想いは通じたようで。行け、と背中を押せば、ライオンはにおいを追い始める。案内はしないものの、黒獅子もため息ひとつ、その後ろを適度な距離で追う。

成否

成功


第1章 第7節

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞

 パートナーの動物と共に過ごす人々を見かける度に、津々流はやわらかな気持ちになる。生涯ずっと一緒に生きていく相手がいるのは、素敵なことだと思う。だからこそ、はぐれてしまえばとても不安で、心配に違いない。
「おや」
 おろおろと周囲を見渡しては、その場に座り込むクマを見つけた。そっと近寄れば、黒い瞳が津々流を見上げている。
「すごい、本当にちっちゃいや」
 大丈夫だよ、と声をかけて頭を撫でてやる。安心したように息をついた姿を見て、青年は優しい笑みを返す。
「よしよし……君、こういうのは食べるかな」
 懐から取り出した木の実を見せれば、クマはちいさな手で器用に木の実を掴む。口に合ったようで、少しずつ美味しそうに平らげる。完食した頃には、ぐ、ぐ、と嬉しげな鳴き声をあげていた。
「元気になったかな。よし、それじゃあ相棒探しに出発!」
 津々流にぴったりくっついて、クマはよちよちと赤ん坊のように四つ足で歩く。それが可愛らしいものだから、津々流も自然と笑顔が零れて。
「君の鼻は、パートナーを知ってるかもしれないね」
 そう話せば、クマもふんふん鼻を動かす。クマの行きたい方角へと進み、住民達に声をかけての繰り返し。
「大丈夫、絶対見つかるからだいじょうぶ!」
 時折クマが不安そうに津々流を見上げる度に言葉を返すと、突然クマが走り出す。向こう側からも、クマめがけて少年が走ってきたのが見えたから。
「ほら、見つかっただろ?」

成否

成功


第1章 第8節

ノア・マクレシア(p3p000713)
墓場の黒兎

 夏の始まりを感じさせる晴天に、爽やかな風。クマのぬいぐるみを抱きかかえて、ノアは様々な動物達を珍しそうに見ていた。
「動物さん……いっぱい」
 そう呟いた途端、草を食む白いふわふわの塊と目が合った。兎が、黒い兎耳のフードを被った少女を見上げ小首を傾げている。しゃがみ込んで、目線を近いものにする。
「君も、迷子になった、のかな」
 ノアの問いに返事代わりのやわらかな頭突きを繰り出したのを見て、少女もなるほどと頷く。
「……同じうさぎのよしみ」
 一緒にパートナーさんを探しに行こうか、と抱きあげようとして、その手は既にぬいぐるみの五郎さんでふさがっている。ならば、と一度五郎さんを草の上に、兎を自分の頭へと乗せて、再び両手はしっかりと五郎さんを抱く。
 とてとて、ちいさな黒兎は、これまたちいさな白兎を乗せて街をゆく。住民達は微笑ましさからか、自然とノアに声をかけてくれた。
「おや、かわいいパートナーだね」
「この子は、迷子。白いうさぎさんを、探してるパートナーさん。知らない?」
 とてとてとてとて、兎達のちいさな旅は続く。休憩ついでにベンチに座って、そうだ、と少女はポケットを探る。
「……ところで君、人参は食べる?」
 僕は嫌いなんだけど、いっぱい貰っちゃったから。スティック状の人参を差し出せば、兎はなかなかのスピードで食んでいく。
「……見つけてあげるね」
 そう呟いて頭を撫でると、長い耳がぴこぴことはねた。

成否

成功


第1章 第9節

ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣

「うーん……」
 ヴェルグリーズは困っていた。先程から自身の足元に乗っている生き物が、彼の動きを制限しているから。
「君は確か……ペンギンとかいう鳥の……」
 もふもふだから雛だろう。大人になると水に耐えうる艶やかな毛並みになるはずだ。
「まずはそこから降りようか」
 歩けないからね、と語りかけてみると、ペンギンの雛は青年の脚の間に更に潜り込む。
「……君も歩くのは得意じゃなさそうだね」
 青年はそっと抱きあげ、街を散策し始める。ふわふわのいのちと共に、住民への聞き込みを開始した。
「どうも迷子みたいで、ご存知の方はいらっしゃいませんか?」
 丁寧な物腰で迷子探しを続けるヴェルグリーズに、住民達も親身に受け答えしてくれる。それでもすぐには見つからないもので、ふと見上げた空は雲が消えていた。
「それにしても今日は天気がいいね……君には少し暑いかな?」
 声をかけると、その身体は熱を持っている。ぱ、と目についた噴水と、近くの日陰へと歩みを進める。
「ちょっと休もうか……あれ?」
 こっちがいい、とペンギンがよじよじ動くのを、そっと噴水の縁に座らせてやる。
「あまり覗き込んでは落ちてしまうよ」
 君はまだ泳げないだろう、と心配する声も気にせず、ペンギンはじっと噴水を見つめている。再び周囲に目を配れば、幼子達と動物達の為の水場が目についた。
「そこでちょっと遊んでいこうか」
 彼の提案に、嬉しそうに鳴いた雛は再び抱かれる。

成否

成功


第1章 第10節

朔(p3p009861)
旅人と魔種の三重奏

 街を散策して、ふぅんと朔は一人頷く。この世界に来てから、やたらとよく動物を見るとは思っていたが。
「パートナー、ねぇ」
 生まれた時からずっと一緒なら、逸れてしまえば大層心細いだろう。さっさと探してやらにゃな、と誰にでもなく呟いて、吸っていたキセルを懐にしまう。
「ん、あれは……」
 ふいに視線を感じた方角へ振り返れば、耳と尻尾をしょんぼりとさせた動物が一匹。それは犬ではなくて、むしろ。
「狼……狼?」
 小せぇな。青年が思わずそう溢すほど、子犬のようにちいさな狼がそこに居た。近付くと、それまで垂れていた尻尾をぶんぶんと振っている。
「おい、迷子か? ……ってこら、じゃれるな」
 わふわふと朔の足元から離れない姿に内心首を傾げる。狼とはこんな感じだったろうか。あるいは、この狼の性格がパートナーに似たのか。なんにせよ、嫌われるよりはずっと良い。嫌う奴の助けはしたくないものだし。
 パートナーを探しに行くぜ、と朔が頭をひと撫ですると、狼は尻尾を振って共に歩き出す。
「お前、鼻は利くか?」
 ずっと一緒に居た人間の匂いを、思い出しながら進むのがいい。言葉を理解したのか、狼は鼻を動かし道をゆく。朔もゆく先々で、住民達に声をかけては情報を集める。匂いをたどるのに夢中な狼に声もかけて。
「危ない場所に出んなよ……って言ったそばから」
 突然走り出す狼の後ろを、やれやれとゆっくり追いかける。
 この調子なら、再会はすぐ。

成否

成功


第1章 第11節

 イレギュラーズ達の活躍によって、迷子の動物達は無事にパートナーとの再会を果たした。
 お礼と言わんばかりに、全ての動物達がそれぞれの案内人に感謝のハグをしてみせて、それはそれはふわふわだったのだとか。

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