シナリオ詳細
ジャムクッキーが食べたいのっ!
オープニング
●なんかどこかで聞いたことあるかもしれない
「クッキーが食べたい! いや食べてるけど。じゃなくてジャムクッキーが食べたい!」
小さな小屋の中で一人の少女が器用にクッキーを口に投げ込みつつ独り言をつぶや……いや、叫んでいた。
何がすごいって叫んでいるにも関わらずクッキーの欠片とかが一切飛び出してないことだよ。クッキーを絶対に無駄にするものかという硬い意志を感じる。
「ジャムクッキー! カラフルで味とりどりのジャムクッキーが食べたぁい!!!」
今度はごろごろ小屋の中を転げまわりながら(そして器用にも手の届く場所にあるクッキーやらてこてこ歩いてたジンジャーマンクッキーやらを口に投げ込みながら)駄々をこねるように少女は叫ぶのであった。
ここは少しばかり変わった世界。
川は水の代わりにジャムが流れ、木にはクッキーが生り、小石はよくよく見るとチョコチップ。
空からは雨の代わりにはちみつが降ってきて、地面はいろんな種類のクッキー生地、ちょこちょこ地面を歩く虫っぽいそれはジンジャーマンクッキー。
コケコッコーと鳴く鶏がクッキーを産み、小麦は小さなクッキーを実らせてしなり、クッキーを嘴いっぱいに詰め込んだペリカンが湖から飛び立つ。
あちらではパチパチと時折焼けたクッキーを吐き出しながらたき火が燃えており、こちらでは突然何もないところから(強いて言えば空気から)クッキーが現れて地面を転がっている。
ほとんどクッキーじゃないかって? 気のせいだよ気のせい。
とにかく、そんな甘い香りしかない世界で少女はただ一人、クッキーはクッキーでもジャムクッキーだけが食べたいという贅沢な悩みを抱えているのであった。
●ジャムクッキーをかき集めよう!
「みんなジャム好き? わたしはー、今はストロベリージャムな気分かな」
甘いものがいいなーと無邪気にイレギュラーズ達に話すのは『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニ。しかしなぜジャムなのか。そんな視線を受けてポルックスはほんのり苦笑した。
「実際のところジャムが好きでも嫌いでもどっちでもいいんだけどね。今回のメインはジャムはジャムでもジャムクッキーだから」
あぁ、それでジャムの好みなのか、と納得したイレギュラーズもいくらかいたが待ってほしい。彼女は言ったのだ『好みは正直関係ない』と。
「あのねー、クッキーに囲まれたような世界でクッキーを食べ続けるのが生きがいな子がいるんだけど……」
どんな子だよ、というツッコミは当然の権利のように無視された。
そんなポルックスの説明を纏めるとこうである。
クッキーを食べるのが大好きな少女がジャムクッキーをたくさん、しかもできるだけ色んなジャムでお腹いっぱい食べたいそう。そんな彼女の願いを叶えてあげてほしいとのことであった。
以前にもイレギュラーズを案内したことのある世界なのでもしかしたら知っている人もいるかもしれないが、少女のいる世界は全てがクッキーに収束する世界である。
地面はクッキー生地だし植物の実りは全部クッキーだし虫っぽい生き物もクッキーだしなんなら動物はクッキー溜め込んだりしてる。
地面は少し掘るだけで掘られた生地が焼かれる前のクッキー生地の大きさになり、それを火の中に投げ込めば焼かれて出てくる。
なんなら何もないところから突然クッキーが沸いて出てきたりもする。無からだって運が良ければクッキーが生まれる可能性があるらしい。
ただし今回少女が求めているのはただのクッキーではなくジャムクッキーだ。
「何をやってもクッキーは出てくるみたいだけど、適当にやっただけだとジャムクッキーだけを集めるの難しそうなんだよね。わたしのおすすめはここの川かな」
トントン、と小さな地図に描かれた一本の川を指す。なんでもこの川はいろんなジャムが流れる川なのだそう。
地面のクッキー生地を形にして川から適当に汲んだジャムを落として焼けば簡単にジャムクッキーが作れるだろうとのことだ。
他にもジャムの川の中を泳ぐ魚を焼くとジャムクッキーになるらしいし、その魚を捕らえる鳥の巣にもジャムクッキー溜め込まれているだろうとポルックスは言う。
「今回は我慢強く女の子は待ってくれるみたいだから、その代わりに『しばらくジャムクッキーは見たくない!』ってレベルまで用意してあげて」
よろしくね。というポルックスの言葉と笑顔と共にイレギュラーズはクッキーだらけの世界へ旅立ったのであった。
- ジャムクッキーが食べたいのっ!完了
- NM名心音マリ
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年07月12日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●お菓子(ほぼクッキーのみ)の国!
鼻をくすぐる甘い香り、実るクッキー。
「まさにお菓子の国!って感じなのですよー!」
おお、と香りを楽しみながら辺りを見渡す『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)の感想はまさにその通りであっただろう。お菓子、ただしクッキー限定、であるのだが。
ルシアと同じようにきょろきょろ辺りを見渡している少女がもう一人。『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)である。
クッキーを作ったことのないキルシェだが、この世界なら作れるのだ、と聞いていてとても楽しみにしている。美味しいジャムクッキーをいっぱい作るのだと気合も十分だ。
「クッキーが無限にある世界ってのも幸せというか、贅沢というか……」
そして『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)は食べるものさえ選ばなければいくらでも食べるものがある、飢えることがない、そんなこの世界を素敵だと思う。
一方、そんな少女たち三人の少し後方、無表情スライム顔を決めている碧い色の少女がいた。彼女……と見た目上はそう呼ぼう、名を『無垢なるプリエール』ロロン・ラプス(p3p007992)という碧いスライムである。いつもは丸っこいスライムなのだが今は少女のような姿を取っている。
「くっきー……じゃむ……くっきー……?」
来たものの理解が追い付かない、と表情で雄弁に語るロロンの背後には来たばかりだというのに宇宙が見えそうだった。
ともあれ、四人はそれぞれの考えの元ジャムクッキーを集めに動き出すのであった。
●材料集めとジャムの川
甘い香りは歩いているうちに自然と慣れるものだが、川の付近はまたクッキーとは違った果物の甘い香りでいっぱいだった。
川の流れを見ているとあちらは赤くこちらは黄色く、混じり合うようにしては別の色が生まれ同時に別の香りも漂ってくる気がする。ジャムの種類自体ごちゃまぜでいろんな顔入りが混じっているはずなのに、なぜだかどうして不快ではない不思議な香りだ。
「全部混じってるんだねぇ……うぅ、環境が独特すぎてぞわぞわするよ」
ぴちゃっと手の部分を川に入れたロロンが眉を顰める。幸いと言うべきなのか混ざることはないのだが、変な感覚であるのは間違いない。
体を起こして望みの味になりそうな色を探しながら移動を始めたロロンの横ではルチアがいろんな種類のガラス瓶に色ごとに分けてジャムを詰めていた。
なお、彼女は最初に念のためとクッキーちゃんにジャムクッキーについて聞きに行ったところ、ジャムクッキーについて永遠と語り尽くされたされたため若干表情が死んでる。
あ、解釈としては『クッキーにジャムが乗ってるのだよ! でもジャムを挟んだジャムサンドもありかなしかで言えばあり寄りのありだよね!!!』だそうです。これを聞き出すのに数時間かかったとかかからなかったとか。
あちこちの木と道中の小麦から実ったクッキーを収穫してきたキルシェは川からジャムを掬ってはクッキーの間に挟んで次々とジャムサンドクッキーを作っていく。
「味見しても良いかしら? あ、リンゴ味」
ちらっと他のメンバーの様子を伺いつつさりげなく味見することも忘れない。
「本当? じゃあそこからジャム貰おうかな」
「どうぞ……ってお魚さんがすごいことになってるのよ!?」
目当てのジャムの味が聞こえたロロンが寄ってきて、ジャムを確保する。そんなロロンを見たキルシェは彼女の前にずらっと並んだ氷槍とそこに大量に突き刺さった虹色の魚を見て目を丸くする。まさに大漁だった。まだぴっちぴっちしてる。捕れたて新鮮。
「いっぱい捕まえたからオーブンで焼くんだ」
「私も必要なジャムは集めたし、そろそろクッキーを作りに戻りましょうか」
小瓶を抱えたルチアの言葉に二人は頷いて、小屋へと戻っていく。
「あ、牛さん!」
通りすがりの牧場で牛を見たキルシェが喜んで駆け寄っていく。
ミルクを少しくださいな、とお願いしてからミルクを受け取りついでにぎゅーっとして満足げ。
「よし、これならルシェにもできるかしら。美味しくなぁれ!」
もらったミルクと、ジャムと、生地を一緒にして近くのたき火に入れて、ぎゅっと目を閉じてお祈りするキルシェ。しばらくするとポンっとクッキーが飛び出してくる。
「……ぴぁ! ほ、本当にクッキーが出来たのよ!?」
火から飛び出してきたのに普通に触れる熱さのクッキーからはほのかにミルクの香りが漂い、ちょんと乗ったジャムが宝石のように輝いている。
挟むのではなく乗せるタイプで出てくるんだ、と思いながらもちゃんとできてうれしいキルシェ。鳴きながらすり寄ってきた牛にミルクのお礼に出来立てのミルクジャムクッキーをお裾分け。
「……あ、そうだわ!」
ふと頭に浮かんだ思い付きに喜んでもらえるかなとキルシェの笑顔はさらに深くなった。
●パワーすらもクッキーに!
小屋に戻ったロロンはさっそく氷槍ごと魚をオーブンに突っ込み(入るのかと言われたら入ったんだからいいやと思った)スイッチオン!
しばらく待つといい匂いが漂ってきて、開けてみると槍で穴あきにされたからかジャムを乗せる手前の状態になったクッキーが焼き上がっていた。
「わぁ、すごい。成形する手間が省けたよ」
喜んでるような言葉だが実際は割と棒読み、魚がクッキーになったことにただ混乱しているだけである。そろそろ彼女の精神状態が心配になってきたのでスライム生に平穏があってほしいと願うばかりです。
再びの無表情スライム顔になったロロンは確保したリンゴ味のジャムと譲ってもらったアンズ味のジャムを乗せていくのであった。
「いっただっきまーす!」
なお、ジャムが乗せられたものから次々とクッキーちゃんが手を出して食べていた模様。
その時、ルシアに電撃が走った。否、おかしいとは思ってはいたのだ。だが、その事実を認識した時に彼女に走る衝撃はどれほどだっただろうか。
きっかけは小屋でごくごく普通にクッキーを作っていた時、ルチアが持ち帰ってきた小さなジャム入りの小瓶がプレートの上に置かれているのに気づかぬままオーブンに入れて焼いてしまったのだ。
「あら? 私のジャムを知らないかしら」
「え、知らないのです、よ?!」
ボフン! 答えきる前にオーブンが聞いたことのない音を立てて開いた。
オーブンの中には明らかに容量オーバーのジャムクッキー(しかも同じ味)が詰まって焼き上がっていた。隙間に小さな小瓶が埋まっている。
「たくさんと言われたから20個ぐらいしか作ってないはずなのですよ!?」
「まさか……」
そのまさかですね。この世界は全て、例えクッキーにならないものを焼こうがみんなクッキーになるんですよ。そういう世界なんですよ。世界の法則は全てクッキーのクッキーによるクッキーのために働いてるんですよ。
つまりどういうことかというと、ジャムが焼かれたのでジャムクッキーが出来ました。簡単だね!
「クッキーに、なってる……のでして?」
念のため謎ジャムクッキーを一口齧るルシア。その桃色の目が見開かれる。
(な、なんでちゃんとクッキーになってるのですよーー!?)
世界の法則と深淵に降れたような衝撃を受けるルシアであった。
そんな衝撃を受けるルシアの横で、小屋にあった小麦粉とバター等々を混ぜ合わせ、形を作ってとごくごく一般的なジャムクッキー作りにいそしむルチア。こんなことだったらエプロンをお願いすればよかったなって思いました。服汚れちゃうからね!
毎秒食べていたい系女子のクッキーちゃんのためにできたものから渡そうとすると、どこからともなくクッキーちゃんがやってきてはクッキーを食べて消えていく。っていうかさっきロロンのところでクッキー食べてたよね。どれだけ高速移動してるのっていう往復っぷりを見せるクッキーちゃん。
「……器用ね」
小さな溜息ひとつ。手元にジャムはまだたくさんあるからしばらく作り続けることが出来るだろう。
「クッキーちゃんお待たせ! ルシェもルシェなりにいっぱいジャムクッキー作ってみたわ!」
外から山盛りのジャムクッキーを抱えてキルシェも帰ってくる。ただ不思議なのは一部のジャムクッキーがこう、光ってるのだ。ちょっと神聖そうなオーラを纏ってるのだ。「きらきらしてるしおーいーしー! いろんな味する!!!」
「お口に合ったのなら嬉しいわ!」
にこにこ笑顔のクッキーちゃんに同じく笑顔のキルシェ。ちなみにきらきらジャムクッキーの材料はジャムではなく聖水。キルシェがギフトで生み出した果物の味のする聖水です。
思い付きで混ぜて焼いた結果、ちょっと神聖な雰囲気を纏ったジャムクッキーができたのでした。ちょっと健康になりそう。
「なるほど、わかったのですよ!」
世界の法則を完全に理解した顔でキルシェの横をすり抜けてルシアが飛び出していく。
全ての法則はクッキーに向かう。何をしても、変なものを焼こうともクッキーになる。全てを理解したルシアの出した答え、それは……。
「多分これが一番早いと思うのですよ!」
外へ飛び出したルシアはおもむろに魔砲を撃った。威力で言うと神秘で威力が1200弱で放たれた魔砲が通ったところから爆音がして、クッキーの道が出来上がる。
打てるだけ打ち放った後にはジャムクッキーを含めていろんなクッキーの道が出来上がっていた。何も考えずに山ほど作るのには正しかっただろう、ただ問題はこの山のようなクッキーをどう運ぶかとお望みのジャムクッキーを選び取るかであり……。
「て、手伝ってほしいのですよーーー!」
困り顔で小屋へと取って返したのであった。
イレギュラーズ全員で作って運んだジャムクッキーにクッキーちゃんが大満足したのは言うまでもない。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
お久しぶりです、心音マリと申します。久しぶりのライブノベルでございます。
こちらは前作の『クッキーが食べたいのっ!』の続編となりますが、読んでいなくても全く問題ございません。
そして前作と変わらずギャグでございます。
ただただジャムクッキーをいろんな方法で集め、少女を満足させる依頼です。ジャムの味は問いませんが、いろんな種類があると嬉しいようです。
・舞台について
地面がクッキー生地でできていて、クッキーが実っていたり、動物がクッキーを生み出したり溜め込んだり、ジャムの川やチョコチップの小石があったりするお菓子好きの人歓喜の世界です。
小屋の中にはクッキーを作るための素材と大きめのオーブンが一台あります。ジャムも素材の中にはありますが、種類はあまり多くないようです。また少女はこの中で待っています。
小屋の東側には牧場があり、その入り口にはたき火が置いてあります。こちらで直火でクッキーを焼くこともできます。
小屋の奥にはクッキーを実らせた小麦畑が広がっており、さらに奥にジャムの川とクッキーをどっさりつけた木があります。
木の上には鳥の巣らしきものが見え、ジャムの川には色とりどりの魚が泳いでいます。ちょっとした道具があれば捕まえられそうです。
世界の法則はクッキーのために収束しているので、適当な大きさのクッキー生地をオーブンで焼こうが直火で焼こうが魔法で焼こうが美味しくできます。
そのため壊滅的に料理が下手な人でもクッキーが焼けます!
(ただし作り方がめちゃくちゃな場合、思ったクッキーと違うものができる可能性があります)
例1:適当に地面のクッキー生地とジャムを纏めてたき火に投げ込んでみよう!
→大半ジャムクッキーだけどチョコチップクッキーとか混じってる?!
例2:クッキーじゃないけどジャムの川で捕まえた魚を焼いてみよう!
→焼き上がった魚が目の前でジャムクッキーに変化した!?
・登場人物について
少女:クッキーを食べたくて食べたくてしょうがない子。名前はないですが『クッキーちゃん』と呼ぶと明確に反応します。
一秒に一枚はクッキーを口に入れていたい系女子ですが、今回はすごく我が儘を言っている自覚があるのでお望みのジャムクッキーが用意されるまではその辺りのクッキーを食べて我慢してます。
無限の胃袋かってぐらいたくさん食べるので、持ってきてくれたジャムクッキーは全部食べちゃうことでしょう。
マイブームは当然ジャムクッキー。
・イレギュラーズについて
少女は『食べたかったジャムクッキーを用意してくれるいい人』と認識しており、特別なにも疑いません。ただただ与えられるクッキーを食します。
前述の通り全ての法則がクッキーのために収束しているので(特に今回は)ジャムクッキーを焼く、作る、手に入れるという意思があればすべてプラスに働きます。
それでは皆様のご参加と素敵なプレイングをお待ちしております。
(そろそろジャムとクッキーがゲシュタルト崩壊しそうな心音マリでした)
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