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シナリオ詳細

<Liar Break>蠍から未来の奪還

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●サーカス、その足跡
 幻想蜂起を鎮圧した事から連なるノーブル・レバレッジ作戦は大成功を収めた。これにより、貴族や民衆は味方となり、国王が動く事へと繋がった。
 具体的にはサーカスの公演取り消しだ。
 それに伴い、身の危険を察したか、サーカスは王都から逃走。
 だが、幻想はそれを見逃さない。
 ローレットに協力的な貴族派や民衆が、各地で検閲を張っており、封鎖を行なっている。これにより、サーカスは幻想に釘づけになった状態のままとなっている。
 このままいけば、彼等が捕捉され、壊滅させられるのは時間の問題となるだろう。
 今こうしている間にも、彼らへの包囲網は狭まってきているのだから。
 しかし、彼等も今このままでいる事を良しとしない。一部だけでも国外へ逃れる為に、乾坤一擲の反撃へと出た為に、今幻想では様々な事件が起きている。
 自分達が魔種及びそれに連なるもの<終焉(ラスト・ラスト)>の勢力である事、それらを隠そうとしていないのは、それだけ切羽詰まっているからか。
 そして、サーカスに注目される裏で動く別の事態が動いている。

●砂に潜んだ蠍の今は
 『黒猫の』ショウは、集められたイレギュラーズ達を眺めると、相変わらずの愛想のよい声のトーンで話しかけてきた。
「集まってくれたかい? 今回、来てもらったのはサーカスとは関係があるようで無いような話なのさ」
 眉を顰めるイレギュラーズなど気にも留めず、彼は「依頼さ」と短く発した後、その内容を説明する。
「砂蠍って覚えてるかい? 実は、その残党が未だに燻っているらしくてさ、どうも今、村を狙って活動しようとしているようだ。今の状況を見て好機とでも思ったんだろう」
 立てられる一本指。
 ショウはその指を左右に振る。
「けど、それを見逃す訳にはいかない。ここらで一つ、村を助けてやってほしい。何、事前にその村を調べた所、サーカスの奴らの手も入ってないみたいだし、砂蠍のみとの勝負になるさ。という訳で、すぐに向かってほしいんだ」
 狙われるであろう村が記した用紙を渡され、イレギュラーズは急いで向かう。
 彼らに火事場泥棒など、させはしない。

●奪われた未来を奪(と)り戻せ!
 ショウが提示した用紙に記載されていた村にイレギュラーズが着いた時、既にその場所は何かが暴れた痕跡を残していた。
 絶命している大人達が何人かおり、重軽傷を負っている者も少なくない。
 イレギュラーズに対して怯える住民達へ素性を明かし、何が起こったのか尋ねると、「村の子供達が連れ去られた」という。
 彼らが語る経緯を纏めると次のようになる。
 盗賊が突然やってきて、村長を見せしめに銃で殺害。
 混乱する中、盗賊達は「命が惜しければ子供を全て寄越せ」と告げた。
 子供を守ろうと抵抗する大人だが、戦慣れしていない者が挑めばその差は明白。
 傷つく大人が増える度、子供達が消えていく。
 泣き叫ぶ子供達が盗賊達の手によって連れ去られるのを見ているしか出来なかったのだという。
「ここで会ったのも何かの縁。どうか子供達を奪還してほしい」
 動ける者達が頭を下げて頼み込むその姿を見てしまうと、断るという気は起きない。
 イレギュラーズ達は地面に残った轍の跡を頼りに向かう。
 子供という未来の礎を奪い返せ!

●砂の蠍と未来の危機
 荷馬車の数は二台。
 泣き喚く声があちこちから上がる。声を上げているのは幼い者が多い。
 血気盛んな者達で構成された砂蠍の残党達は、そんな彼らに武器を突き付けている。
「うるせぇぞ! 黙らねえと親みてえな事になるぞ!」
「てめえらはこれから俺達の資金になってもらうんだ。あんまり手間かけさせるんじゃねえ!」
 恐怖から一度その泣き声は止んだが、このままの状態が続けばまた子供達は泣くだろう。
 今度また子供達が泣けば、その命が刈り取られる事は想像に難くない。
 未来が摘み取られる危機は、そこまで迫っている。

GMコメント

 今作は砂蠍残党との戦闘がメインとなりますが、子供の奪還も重要となります。
 子供は大切な未来の礎。無事に取り返してください。
 情報については以下のようになります。

●補足
 情報確度:B
 村の子供達の数:幼児から成人手前まで合計二十~二十五名程。
 砂蠍の残党:十名~不明。ナイフや斧などの近接武器だけでなく、銃や弓などを扱っていると見られる。

●達成条件
・誘拐された子供達の奪還(子供達が殺されない事が第一です)
・砂蠍残党の殲滅

●合流地点
 イレギュラーズ達が彼らと戦闘になると思われる場所は、荷馬車が一台分やっと通れる程の狭い道が続く森の中です。
 森の中は木々ばかりが目立ち、草花には人が隠れるほどの高さがありません。
 広くない場所の為、活動出来る範囲について注意が必要です。

 皆様とのご縁をお待ちしております。

  • <Liar Break>蠍から未来の奪還完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月29日 22時46分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
アト・サイン(p3p001394)
観光客
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
ヴィエラ・オルスタンツ(p3p004222)
特異運命座標
西園寺 姫乃(p3p005034)
想拳
クリュン・ミア・クリュン(p3p005046)
ちいさな姫騎士
飛騨・沙愛那(p3p005488)
小さき首狩り白兎

リプレイ

●準備は念入りに
 村人達に頼まれ、蠍の後を追う事になったイレギュラーズ。
 向かう前に、轍の跡を見つけたのは『観光客』アト・サイン(p3p001394)だった。
 轍の跡から見て、その数は二台と見たアトは、村人達に確認をとる。
「もしかして、盗賊達は荷馬車で逃走したのかい?」
「は、はい!」
「なら、ここに馬車引き用の器具や鎖はあるかい? あるなら幾つか、僕達が乗ってきた馬達に括りつけて追いかけたいんだけど」
「探して参ります! おい、皆! 馬車引き用の器具や鎖を探そう!」
 動ける村人達が一度散り散りになり、目的の物を探す。
 アトが、自分が連れてきた軍馬を撫でて待っていると、『儚き雫』ティミ・リリナール(p3p002042)が心配そうに聞いてきた。
「間に合いそうですか?」
「軍馬だからね。大丈夫だと思うよ」
「はい」
 ギュッと服の裾を握る彼女の姿に深くは聞かない事にして、アトは馬の手入れを始めた。
 ティミは俯き、地面を睨みつけながら子供達を思う。
(何処に連れていかれるか分からない恐怖を味わっているはずです。私もそうでしたから。気持ちが痛い程分かる。……だから、助けないと!)
 強く決意する彼女の近くでは、馬車が出来るまでの間に作戦を練る一部のイレギュラーズの姿がある。
 『神格者』御堂・D・豪斗(p3p001181)は、騎乗動物達を怯えさせる事が無いよう、努めて声を抑えて話す。
「ゴッドがゴッドの名を告げて敵を引き付けよう!」
 訂正。声はやや大きいが、それでも彼なりに声を抑えた結果だ。
 自分の名を告げて敵を引きつけるという作戦に乗ったのは、『ちいさな姫騎士』クリュン・ミア・クリュン(p3p005046)と『小さき首狩り白兎』飛騨・沙愛那(p3p005488)の二人の少女。
「わらわも手伝おう。囮は多い方が良い」
「私にも任せてくださいなのです!」
 頼りがいのある両名を見て、『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は大きく頷いた。
「頼んだぞ」
 託した彼女の髪は揺らめいている。彼女もまた、今回の盗賊の仕業に怒っているのが窺い知れる。
 『真っ赤な想い』西園寺 姫乃(p3p005034)と『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981)が、離れていた場所から戻ってきた。二人は村の人達から盗賊達が逃走した先の道について詳しい事を聞いてきたのだ。
「盗賊達が走っていると思われる道は、狭いみたいね。私達も満足に動けない事を考えた方がいいかもしれない」
「狭い道となると、回り込むのも厳しそうね。でも、追いつくのは可能そうよ。子供達を多く乗せていて、その上に装備を持った大人達が乗っているのなら、そんなに早くは走れないはず」
 二人の話を聞き、『黒キ幻影』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)が作戦の一つとして提案する。
「なら、追いついたら、ガキ共の救助を先にして確保が良さそうだな。その方が砂蠍の野郎どもを駆除するのに専念できるだろ」
 それに対し、補足するように言葉を重ねたのは『特異運命座標』ヴィエラ・オルスタンツ(p3p004222)。
「生かすか殺すかは各自に任せるとして。子供達の救助組と戦闘組の二手に分かれた方が良いかも。その方が私達も各々の役目に集中できると思うわ」
 ヴィエラの意見を聞いていたか、アトとティミがやってきて、「子供達の救助は自分達が」と名乗り出た。
 彼らの手には村人達がかき集めてきてくれた、馬車引き用の器具類がある。
 準備は整った。
 イレギュラーズはそれぞれの移動手段を用いて、砂蠍の後を追いかけていく。

●追いつかれた砂蠍
 アトとティミを先頭にして、次に囮薬の豪斗、クリュン、沙愛那が走る。彼らの後方を後の五人が走っていた。
 駆足の騎乗動物は、性質上遅く走らざるを得ない荷馬車に比べれば遥かに速く。
 しばらく走って、件の荷馬車らしき物を先頭の二人が発見した。
「荷馬車です!」
 アトが後方に告げ、それによりイレギュラーズに緊張が走る。
 姫乃が何かを察知したように叫んだ。
「泣いている子が居る! 距離的にアレだわ!」
 人を助けたい想いが捕えた声を仲間に伝え、それを聞いたイレギュラーズが手に力を込める。
 先頭を走る二人が左右に移動して道を開けた。それにより、名乗りを上げる三人が相手にも見えやすくなる。
 すぅ、と息を吸い、豪斗が目前に迫る荷馬車へと口を開いた。
「ゴッドの名は御堂・デウス・豪斗! フューチャー溢れるキッズを返してもらうぞ!」
 後光と共にされる宣戦布告。
 返されたのは言葉では無く、鉛玉。当てる気でいた球はしかし、荷馬車が突然乗り上げた衝撃によって地面を穿つのみとなった。
「くそっ! 応戦だ! 戦える奴は降りて戦え! 二、三人程残って、子供連れていけ!」
 残党の中でのリーダー格なのか、男が叫ぶと荷馬車は速度を少し緩め、盗賊達が降りてくる。
 斧や剣、それに加えて銃や弓を持っている。防具も持ってはいるが、さほど上質ではなさそうというのが見てとれた。
 アトとティミが荷馬車を追う。すれ違いざまに攻撃するのを防ぐ為、クリュンと沙愛那が己の名前を読み上げた。
「よそ見は厳禁である! わらわはクリュン・ミア・クリュン、貴様達を成敗しに来た! 覚悟せよ!」
「私の名は飛騨・沙愛那! 悪人さん達、今すぐ子供達を解放するのです! さもなくば……首狩り白兎の名に懸けて貴方達の首を狩るのです。今宵のマジ狩る★首狩り包丁は首に飢えてるんです!」
 可愛らしくもどこか凛とした佇まいなクリュンと、可愛らしい上にどこか色気のある沙愛那。
 容姿だけ見れば可愛いが、二人の武器は物々しい。片や片手用の長剣、片や巨大な包丁のような刀。
 砂蠍の残党達は二人を見ても怯む事無く、戦いの構えを取った。
 イレギュラーズが次々と軍馬やパカダクラから降りていく。アトとティミは無事に通過して荷馬車へと先行している。
 降りてきた賊の数は、目測で数えただけで、ざっと十五名程か。対してイレギュラーズは八名。
「テメェらにはここで倒れてもらう!」
 賊の言葉が開戦の合図となり、雪崩れ込んでくる。
 銃を構えている敵に向けて、前に出てきたエクスマリアが髪で作った砲塔からエネルギーを放つ。
 左角から放たれたのは雷に似たエネルギー。
 弾幕のように張り巡らされたそれが、賊や地面を穿ち、それにより土埃が舞う。
 土埃の中で、エクスマリアの声がする。
「ローレットより、蠍の駆除に来た。おとなしくさらった子供達を返すことを奨めるぞ? でなければ、恐らくかなり痛い思いをすることになる……まあ、痛みを感じる間もなく、ということも在り得るが」
「馬鹿にしやがって!」
 逆上する気配を感じた。
 イレギュラーズが足を前に踏み出す。それは向こうも同時のようで。
 入り乱れる足音が響く。
 一番に一撃をお見舞いしたのはシュバルツの拳だった。右手に持った白蛇の名を持つナイフを握りしめたままお見舞いしたその一撃は、斧を持つ敵の左頬へ。
「おいおい? サーカスの裏でコソコソと火事場泥棒かぁ? 随分とダセェなお前ら」
 口元や声音は笑っているように聞こえるが、目は笑っておらず、鋭く睨みつけている。
 予想以上に重い一撃を貰ったか、足元がフラついた賊は足を踏みしめるのに精一杯の様子だった。
 シュバルツとほぼ同時に別の賊へ一撃をお見舞いしたのは、姫乃。
「危ないところだったね!」
 彼女が撃った相手は弓の使い手の一人。姫乃が手出ししてくれなければ、今頃シュバルツの体に矢が生えていただろう。
 「サンキュー」と短く告げ、シュバルツは周りを見回す。
 しかし、切り結び始めたイレギュラーズをのんびり見ている暇は無く、すぐに別の賊が襲いかかって来た。
 迎え討つべく、彼は左手のナイフを閃かせた。

●未来の確保
 二台の荷馬車を追うアトとティミは、先頭の方から先に狙いを定めた。
 先頭での荷馬車に御者は居た。こちらも賊とわかる姿形をしており、手綱から手を離す事は無い。
 剣では届かない為、Model873で狙いを定め、引き金を引いた。
 大きな音に軍馬が驚くも、その足のリズムを崩す事はしない。普通の馬との差を見せつけられる。
 手首を撃たれて痛みから手を離した御者は、そのままバランスを崩して御者台から落ちていく。どうなったのか、知るのは終わった後になるだろう。
 荷馬車の馬が暴れそうになり、飛び乗ったティミがその御者台に乗ってその荷馬車を制御する。
 ティミの操作で少しずつ荷馬車が減速していく。
 最終的に止まった荷馬車の前に移動し、アトは銃をティミの後ろへ向けた。
 ティミの後頭部を狙う銃の使い手――――先程命令を出していたリーダー格。
 アトが撃ちこむより先に、賊が引き金を引いた方が早かった。
 そのままなら、ティミは後頭部に鉛玉を受けていたはずだった。
 しかし、ティミは生きている。しっかりと。撃った後に振り向いてまで。
「な、なんでだ!?」
 賊には分からない。彼女が妖精から守護を貰ったおかげでその身を守れたのだということを。
 そして、生まれたその隙が、彼の命を刈り取る結果となったことを、認識するには時間が遅かった。
 ティミが改めて振り返り、先頭の馬車での賊の数を確認する。
「こちらに乗っていたのはこれだけでしたね」
「うん。あとは後ろの馬車の賊だけだね。ティミ、此処は頼んだよ」
「はい」
 短いやり取りの後、アトが軍馬の向きを変えさせて後ろの荷馬車へ。
 馬が闊歩する音は、よく響く。
 それでもなお前に進んでいった馬。
 アトが顔を覗かせる前に荷馬車の中から発された銃声。
 しかし、その銃弾は空振りに終わった。何故なら、馬にアトは乗っていなかったから。
 呆気にとられている賊の後ろで、荷馬車に乗り込んだアト。
 子供達を背後にして、賊と向き合う。
 気付いた賊が振り向いた時にはもう遅い。
 アトが剣を持って相手の懐に深く入った。
 そのまま振り抜き、身体に深い一撃を与える。
「首よこしなよ、死体を辱めればあの村人も溜飲を下げるだろう? 丁度君の死体を積む馬車もあることだ」
 血を体から吐いて倒れる賊へ告げたが、既に物言わぬ躯となっていた。
 首を貰おうと思ったが、こちらにもあちらにも子供が居るのでは教育に悪かろうと判断し、その剣を収める。
 他に賊が居ない事を確認し、アトは子供達に話しかけた。
「大丈夫かな? 村の人達に頼まれて来たんだ。村まで戻るよ」
 伸ばされた手を、子供の一人がおずおずと伸ばす。その手をアトが握りしめた事で、一気に涙腺が緩んだのだろう。
 感情が崩壊したように泣きわめく子供達を、アトは持て余し気味に見るしか出来なかった。

●未来の子供達
 盾を打つ斧の音が響く。
「はぁっ!」
 クリュンの長剣が横へと薙ぎ払われる。目前の賊の体に浮かんだ赤い筋の太さが、怪我の深さを表していた。
 出来るだけ己へと敵の注意を誘うべく、声を張り上げる。
「この、クリュン・ミア・クリュン! 逃げも隠れもせぬぞ! かかってこい!」
 その彼女へ銃弾を打ち込もうとする賊へは、ヴィエラが渾身の一撃を持ってその意識を刈り取った。
「余り長期戦をする気はないの、悪いけれどこれで沈みなさいッ!」
 彼女の望む通りにその体は地面へと倒れていく。
 その様子を視界の端で見ていたアルテミアが「恐ろしいわね……」と呟く。
 ノービスシールドで賊の剣を防ぐ。返す刃で賊と切り結ぶ。
 今は一人だが、先程二人掛かりで来られた時は流石の彼女も傷を負った。
 しかし、彼女が自らの力で回復する前に、豪斗の簡単な治癒術が癒してくれた。
 戦いの最中なので流石に簡単に礼を言うと、
「ゴッドに礼は不要である! だがまあ、礼を言われるのも悪くはない!」
 と、何ともまあ、彼らしい言葉が返ってきた。
 今も彼は、負傷者の治癒に専念している所だ。
 逆に見ていて心配になったのは沙愛那の姿。
 彼女は巨大な包丁のような刃を両手に持って振り回している。
 狙っているのは、敵の首。
 その刃を閃かせ、時には傷を負いながらも、その首を刈り取ろうとする仕草は、年齢とのアンバランスさもあって危うい雰囲気を醸し出していた。
 賊も流石に首を執拗に狙われている事に対して恐怖を覚え始めているらしく、やや尻込みしつつある。
 だが、反撃を諦めなかった賊の剣が、彼女の肩を刺した。
 しかし、更に諦めなかったのが沙愛那という少女だった。
 両手を無理やり動かし、その刃で首を刎ねた。
 理解出来ないというように目を見開いた賊の顔を見下ろして、少女は無邪気に笑う。
「だって悪い事したら命で償う……それが当たり前ですよね?」
 血しぶきを浴びながら笑う彼女。白い兎に赤がとても良く映えた。

●子供達の笑顔
 アトとティミに連れられて戻ってきた荷馬車。
 子供達は戦場の様子に驚いた様子だったが、倒れているのが全て賊だと分かると、イレギュラーズに尊敬の眼差しを向けた。
 出来るだけ血を拭った沙愛那が、子供達の無事を喜び、抱きしめる。
「よく頑張ったね……親御さんたちの仇は私達が取ったのです……だから君達は強く……幸せになる様に生きて。それがパパやママの願いだと思うから」
 クリュンもまた、子供達を抱きしめ、その頭を撫でた。
「よく耐えた、よく頑張ったな」
 彼女に言われて、また泣きそうになった子供達だが、先程散々泣いたからか、それをグッと堪える様子がうかがえた。
 その様子を見て、姫乃がポツリと呟く。
「帰り道、話し相手になってあげたいな。……ううん、なりたい」
 聞こえていたシュバルツが、「いいんじゃねえの」と返して。
 戦場を見返して、ヴィエラが「しかし……」と苦笑する。
「一人ぐらい生かすつもりが、誰も生かしてなかったな……」
 リーダーについて聞こうとしたが、これでは掴めないままになってしまった。
 アルテミラが、「仕方ないわ」と肩をすくめる。
 アトもまた、「同意見」と賛同の声を上げた。
 ティミを見やれば、彼女もクリュン達に混じって子供達をあやしている。
 ホッとした空間の中で、豪斗が子供達に向かって声を張り上げた。
「キッズ達よ、まずはユー達の無事を喜ぼう! しかし、いつまた斯様な事が起きるとも知れぬ……。その時の為、強く在れよ!」
「……はいっ!」
 豪斗の言葉に、子供達の背が伸びる。
 その目に尊敬の眼差しがあったのを、イレギュラーズは確かに見たのだった。

成否

成功

MVP

アト・サイン(p3p001394)
観光客

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
皆さんのお陰で子供達は無事に確保出来ました。
これにて未来は守られた事だと思います。
皆さん、ありがとうございました。

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