シナリオ詳細
鉄壁のマッチョ現る!
オープニング
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ネクストの強国、鋼鉄。
鉄騎種を中心とするこの国では、強き者を貴び、強さこそが国をも支配する権限が与えられる。
その強さを示す場所こそ、大闘技場ラド・バウ。
ネクストにおいてもそれは健在であり、鋼鉄の民だけでなく、各地から自らの強さを示すべく戦いに明け暮れる。
そんな国において、一つ伝説にもなっている男の存在がある。
「ハッハッハッ…………」
笑いながら、ブーメランパンツ一丁で鋼鉄の町中を闊歩する黒光りする肌を持つ男。
曰く、「鉄壁のマッチョ」。
ラボー・ジョンという名のその男、3mに迫る体格に恵まれた鉄騎種で、鍛え上げられた肉体を持つ、ボディビルダーかと思わせるような人物である。
その肉体は鋼鉄かと思わせるほどの強度を持ち、下手な刃や弾丸などあっさりとはじき返してしまう。噂によれば、ロケット弾すらもさほどダメージを与えられなかったのだとか。
かといって、鎧の如き筋肉を持つラボーの動きは決して鈍くはない。
「ハアアアアアアッ!!」
その拳から繰り出される拳圧はとてつもない衝撃波を生み出す。
さらに、両腕を広げて回転すれば、天にまで至る竜巻を巻き起こし、全てを呑み込んで巻き上げてしまう。
遠近隙の無いラボ―。攻撃をまともに通じず、相手のペースに持ち込ませることなく重い一撃であっさりとKOする。
まさに鉄壁。彼を傷つける者は数えるほどしかおらず、鋼鉄民の語り草となっている……。
ハッハッハッ……。
そんな彼がまたも鋼鉄へと現れる。
己の硬さを、強さを見せつける為に。
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『Rapid Origin Online』……略称『R.O.O』。
仮想空間ではあるが、ベースとなっているのが無辜なる混沌であるのは間違いない。
その為、鉄帝をベースとした国、鋼鉄に大闘技場ラド・バウだって、ネクストには存在する。
「えっと、ラド・バウに参加する必要はありませんが、鋼鉄の民に語り継がれる男性と交戦を願いたいのです」
鋼鉄の地へとメンバーを呼び寄せた『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が言うには、『鉄壁のマッチョ』という二つ名を持つラボー・ジョンなる巨躯の男。
隆々としたその筋肉は攻防に優れており、よほどの手練れでなければ傷すらつけることすらできないのだとか。
ただ、問題はそこではない。おそらく、ただ強いだけなら、皆に賞賛されていたことだろう。
「ただ、なんというか。ほとんど全裸に近い姿で移動しているそうで……」
アクアベルのギフトはアクセスファンタズムとしても機能しており、動揺することなく淡々と語っていたが、やはり男性の姿には少しばかり戸惑いもあったそうで。
なんと、ラボーという男、普段から半裸にブーメランパンツ姿といういで立ちをしているらしい。
さすがに教育には悪く、ラボーが通るたびに大人が子供の視線を逸らそうと必死になるのだとか。
「教育に悪いので、どうにかできないものかと、鋼鉄の人達も戸惑っているようです」
力が全てなこの地であれば、相手をねじ伏せることで言うことを利かせられる。だから、ラボーを倒してほしいというのが鋼鉄民の願いでもある。
とはいえ、タイマン勝負での賞賛は極めて薄い。チームを編成してこの鉄壁のマッチョを打倒してほしい。
「どうか、よろしくお願いいたします」
そうして、アクアベルはアバターとなったイレギュラーズへとこの依頼を託すのである。
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鋼鉄の町中。
ネクストも初夏に差し掛かってはいたが、まだこの地は少し過ごしやすい陽気となってきており、活動に適した短い期間を無駄なく使おうと忙しなく動き回る。
そんな中、闊歩してくる黒塗りの巨体。
「ハッハッハッ……」
唯一白く煌めくのは綺麗に並ぶ歯くらいのもの。
ラボーは片手を上げて周辺の人々に自らの存在をアピールする。黒いブーメランパンツ一丁という姿で。
そこへ駆けつけてくるイレギュラーズ。
彼らは口々に己の存在をアピールし、ラボー打倒と勝負を挑む。
「いいだろう。相手になってやる」
挑まれたからには、全てを倒すのが鋼鉄流。
ラボーもその類に漏れず、手招きするようにイレギュラーズへと攻撃するよう挑発して見せたのだった。
- 鉄壁のマッチョ現る!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年06月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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混沌に似て非なる仮想空間ネクスト。
R.O.Oにダイブしたイレギュラーズのアバター達は混沌における鉄帝、鋼鉄の地へと至っていた。
「武力のみを強さと誤認する風潮は、こちらでも変わらないのですね」
今回の事件へと取り組むにあたり、『R.O.O tester?』珠緒(p3x004426)は現実とほとんど違わぬ鋼鉄の国民性について口に出す。
それをきっかけとし、皆、今回の敵に対してそれぞれ思いを語って。
「鉄帝じゃないと言っても、似たような国での変態行為は捨て置けない!」
「は、半裸を誇示する大男なんて、ふふふ不潔よ!」
灰色の長い髪をツインテールとした『カニ』Ignat(p3x002377)が熱く力説すると、銀の髪をサイドテールとした眼鏡少女『R.O.O tester?』蛍(p3x003861)は露骨に嫌悪感を見せる。
また、傍で会話を聞いていたスタイリッシュなスーツ姿の『殉教者』九重ツルギ(p3x007105)もまた潔癖症らしく、あまりいい顔をしてはいない。
「実力は一流の戦士であるにも関わらず、傍迷惑な露出狂とはな」
徒花に実は生らぬという言葉もある。蒼紅の光を舞わせ、悪魔の翼を背に持つ美男子、『狐の尾』コーダ(p3x009240)も呆れを見せていて。
「ほんの少しの配慮で解決しそうな話ではあるが、これも仕事だ」
引き締まった体つきをしたどこかで見たような姿の彼は致し方ないと、討伐に前向きな姿勢を見せていた。
ハッハッハッ……。
笑いながら、鋼鉄の街中を闊歩する黒塗りの肌をした筋肉隆々の男。
「また来たわよ……」
「鉄壁のマッチョだ」
ブーメランパンツ一丁で歩くその男は周囲の目を強く引いていた。
彼こそ、ラド・バウでも名を馳せる鉄騎種男性、ラボー・ジョン。ただ、二つ名の方が広く知れ渡っているようだ。
「これがマッチョですか……」
「鉄壁の、マッチョ。情報通りほとんど裸ですのね……まぁ、まぁっ」
牧歌的な印象を抱かせるフィーネ(p3x009867)は相手がなぜあのような格好をしているのか気にし、フローレスが顔を覆う両手の指の隙間から相手の姿を垣間見ていた間に、メンバー達がその前へと飛び出て
「おうおうおう! 随分威勢のいいミドル筋肉ボーイじゃないか! わしが美味しく仕上げてやるから覚悟せぃ!!!!」
「む……?」
巫女服姿の狐少女『きつねうどん』天狐(p3x009798)が意気揚々と相手に告げると、一旦珠緒が天狐を制して。
「迷惑行為による苦情が多数ございます。服を着なさい」
問答無用で攻撃を仕掛けると迷惑行為する輩と同類と考える珠緒は、まずは警告から始めることに。
その傍ら、マッチョを視界に入れるのが汚らわしいと感じていた蛍は、檻を見てそんな珠緒の姿に癒しを求めていたようだ。
さて、マッチョ、ラボーの反応はというと。
「ハッハッハッ。サインかい?」
自らが非難されているとはつゆにも感じず、ファンと判断して握手をと手を差し出してくる始末だ。
「要請拒否を確認。抜刀。討伐へ移行します」
応じぬことは自明と分かっていた珠緒はここまで筋を通していたが、小さく嘆息して刃を煌めかす。
「ん゛んっ!! いけませんわ」
そこで、フローレスも咳払いして、気持ちを切り替える。歩く不適切案件など、どうにかせねばならないと。
「やはり、常時パンツ一丁はいかがなものかと思いますの!」
汗臭そうな方との取っ組み合いに些か気が引けていたツルギだったが、フローレスを守る為にと前に出て。
「可能な限り守りますとも、過保護ですから!」
「マッチョ! しっかり服を着てもらいますからね!」
ポーションを手にし、フィーネもマッチョに呼びかけると、相手は豪快に笑って。
「ハッハッハッ、力比べか。いいだろう」
皆、臨戦態勢に入ったことで、マッチョもスイッチが入ったようだった。
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鋼鉄の街中で始まる騒ぎ。
その戦いを目にしようと、血の気の多い鉄騎種らは距離をとりつつ集まっていたようだ。
「大人しくお縄を頂戴するか爆散するか好きな方を選ぶんだね!」
「さあ、かかってきたまえ」
改めて、Ignatが呼びかけるが、一切聞き入れることのないマッチョ、ラボーは真顔になって構えをとり、筋肉を脈動させる。
「すごい威圧感ですね」
全身から放たれるオーラに小さく身を震わせるフィーネは、ぶつかっただけで吹き飛ばされてしまいそうだと気を引き締める。
圧倒的な力を感じさせるマッチョに対し、アバターとなるイレギュラーズはタンク役3人で交替して抑えに当たることに。
「個としての強さに抗するため、ここはワタクシ達の連携の見せ所、というところですわね!」
フローレスの言葉に頷き、ツルギ、コーダは互いに距離をとる。
「さて、俺たちと遊ぼうか!」
まずはコーダがマッチョに呼びかけ、ワイヤーを仕込んだバトルスカーフを敵の顔面を掠るように振るって。
「言いたい事は色々あるが、どうせ勝負が決まるまで聞く耳も持たないんだろう」
「そうだ。強者こそ鋼鉄では権利」
大きく息を吐くマッチョは次の瞬間、コーダへと剛腕を打ち込む。
強烈な一撃はコーダの体力を大きく削ぎ落とすが、彼もしっかりと耐えて見せていた。
そのコーダの消耗具合を見つつ、一旦攻撃に出るツルギは細剣を握って素早く切り込んでいく。
相手の筋肉は刃や銃弾をも弾くという情報もある為、ツルギは敢えて機械で構成された腕回り、脛辺りといった部分……特に肉体との接合部を優先して狙う。
「ほう、いい狙いだ」
目を見張るマッチョは小さく笑うが、すぐに表情を引き締める。戦いに関しては一切手を抜かぬのが鉄帝、もとい、鋼鉄の民らしい。
「個ではできぬ輝き、それが勝利の鍵ですわ!」
後方へと攻撃が行かぬよう注意しながらも、フローレスは強靭な筋肉へと拳を叩き付ける。
まるで鉄を殴ったような感覚をフローレスは覚えるものの、向こうもダメージ皆無とはいかぬはずだ。
タンク役となるメンバーを、フィーネや蛍が支える。
「私がしっかり回復します! 皆様安心してください!」
そう呼びかけるフィーネは、強打を浴びたコーダへと用意していたポーション薬を振りまく。
多少離れても、射程を十分に保てるのがこのポーション(中)の長所。
フィーネはマッチョとの距離を維持しながらも戦線を維持する仲間をすかさず回復する。
「あの歩く公然わいせつ罪、聞く限り敵としては相当実力者のようだから、侮れないのよね」
蛍も、嫌悪感すら抱く相手なれど、その実力は肌で感じていた様子。
その為、蛍は相手を注視する敵の攻撃方法や威力など情報収集にも努める。
「いくら死亡が単なるログアウトだとしても、目の前で仲間が倒れることに心が動かないわけがないんだから」
事前情報も考慮し、彼女は的確に体力の減った仲間の癒しに努める。初手はフィーネと同じく、コーダの回復をと魔方陣を展開していた。
他3人は全力で鋼鉄のマッチョへと攻撃を行う。
珠緒は攻撃を引き付け、回復支援を行う仲間達を目にしてから、妖刀を構えて。
「……やるべきことは、明確です」
その刃に籠めるは霊の力。珠緒はその刃を一度納刀してから鋭い視線をマッチョへと向けて。
「蛍さんも気分を害されていますし、特に容赦をする必要はないでしょう」
踏み込む珠緒は抜刀し、鉄の如き相手の肉体へと切りかかる。
(腕を振り回す技は、恐らく自身の周囲を広く殴るもの)
反撃を警戒し、すぐさまその場を離れる珠緒は、相手の体に傷が入っていることを確認する。優れた武器と卓越した技術があれば、いくら鉄壁の二つ名がある相手でも戦えぬほどではないと彼女は確信していた。
「多勢に無勢じゃが、猛者は猛者、手は抜かんぞ!」
1対8という状況であってもまるで臆しない相手と対し、天狐は自らへとゴリ押しの強化術式を施してから、ダブルジェット付きリヤカー屋台を特攻させる。
「例え自慢の防御だろうとブチ抜いてやるから、ガンガン行くぞい!」
リアルではないから、天狐は屋台の中身などはまるで気にせず、徹底的に相手の体へとリヤカー屋台をぶつけていく。
さらに、Ignatが追撃をかけて。
「FIRE IN THE HOLE! 鋼鉄は身体を鍛えた変態が多い国でしょ? みたいなイメージごと吹き飛ばしてやる!」
前線メンバーがうまく相手の攻撃を引き付けてくれていることもあり、Ignatは移動しながらもメンバー達の隙間を縫うように位置取る。
そして、Ignatはアクセスファンタズム、アーリーチェンジの効果で素早く戦車アバターへと変化し、「ドローン・ライフル」の咆哮を向けて……主砲を発射する。
定めた照準は、筋肉が少ないと思われる腰、股間、頭部といった部位。
激しい爆音に周囲の人々が驚いていたが、実際にIgnatの砲撃を受けたマッチョは全身に傷を負って少し身を竦めていた。
すぐに女性アバターへと戻ったIgnatは光学迷彩を自身に施して路地に身を隠し、相手の目を眩ませていた。
そこで、攻撃を受け続けていたマッチョが豪快に笑う。
「ハッハッハッ、これが俺の力だ!」
両腕を広げた彼は回転し始め、加速する。
旋回するマッチョの体から激しい竜巻が巻き起こり、近場にいたタンク役メンバーが巻き込まれた。
大きく吹っ飛ぶ彼らの姿に、マッチョはドヤ顔をして見せるのである。
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巨躯の鉄騎種、ラボー・ジョン。
その出で立ちはまさに鉄壁であり、身を包む筋肉は強固な鎧を思わせる。
「そらそらそら!」
振り上げた拳からは衝撃波が発し、確実に抑え役となるメンバーへと叩き込まれる。
コーダはそれに苦しみ、身を引きながら。
「強者だからこそ、自分勝手にならず周りを見ろ。羨望の眼差しどころかドン引きされてるぞアンタ」
この戦いに興味を抱く鋼鉄民は多いが、周囲を見れば、目を背けようとする通行民の姿がちらほらと目に入る。
依頼でなければ自分もそうだったろうと感じていた蛍は、衝撃波が通り過ぎるのを見届けていた。直線上に立てば、間違いなく巻き込まれていたからだ。
そうして、安全を確保してから、蛍はコーダに唯一用意したアクティブスキルで癒しをもたらす。
代わりに前に出たツルギは銀光を放ち、マッチョの気を引く。
それだけではない。敵の攻撃を受けながらも、ツルギもスーツを脱いで上半身を露わにしてみせて。
「見なさい、この無駄のない肉体美!」
素肌を晒すツルギの体も実に引き締まっており、観客となる鉄騎種らからもおおっと驚きと絶賛の声が聞こえてくる。
「能ある鷹は爪を隠す。真のボディービルダーは、クールなスーツの下に鋼の身体を隠しておくものなのです!」
「ふむ……」
一理あると唸るマッチョ……の死角へと回り込んでいた珠緒。
いくら肉体を鍛えようが、関節には稼働限界というものがあり、攻撃を察知したとしても対応不能な領域が存在している。
さらに、筋繊維も緊張と弛緩の状況差異があり、常時強度を保つことは不可能だと珠緒は把握している。
「自覚はないでしょうが……貴方の肉体、隙間だらけですよ」
それを確実につけるわけではないが、煽りながらであればより効果的だと珠緒は考え、がっしりとしたラボーの体へと飛び込む。
目に見える速度ではあったが、繰り出される斬撃は非常に強力だ。鍛え上げたマッチョの肉体をも珠緒は切り裂いて見せた。
「筋力体躯気迫自信剛毅さ頑健さ! アナタは多くを持っているのでしょう! けれど、足りない! 足りませんわ!」
傷に気をとられてばかりもいられない。フローレスが間髪入れずに仕掛けてきたからだ。
「アナタに足りないもの、それは! 道徳教養気品慈愛優美さ流麗さ! そして、何より――輝きが足りませんわ!!!」
そこで、フローレスはアクセスファンタズムを全開にし、全身を輝かせる。
「なにっ!」
「鉄壁の肉体なんのその、こちとら金剛の肉体ですもの! 筋肉の輝きに負けていられませんわ!!!」
フローレスは両目を狭めたマッチョの筋肉へと渾身の力を込めて殴りつけていく。
しかし、にやりと笑うマッチョは反撃をとフローレスを殴りつける。
気を失いかけないほど強烈な打撃にフローレスは目を回しそうになってしまうが、フィーネがすぐさま癒しをもたらす。
ここまでの間、フィーネは目に良いポーションも振舞っていた。彼女はフローレスの怒りを安定させようとしていたのだ。
効果は覿面。今度はフローレスへとマッチョは意識を強く向けたというわけだ。
仲間達がうまく抑え続けている間、敵の周囲を移動していたIgnatは戦車アバターとなりながらも訪ねる。
「ところで一応聞いておきたいんだけれど、何でそんな裸に等しい格好なんだ!? 見せるべき場だけで脱げばいいだろ!」
直後、Ignatが狙撃したのは腰部。巻き起こる爆炎、爆風の中から黒い影が現れる。
「この肉体こそ強者の証。それがお前達にはわからんのか?」
相変わらず、己の肉体を誇示するマッチョへと天狐がなおもリヤカー屋台をぶつけていく。
なお、天狐は攻撃の際、アクセスファンタズム「麺神の手」も使っていて。
「お主の筋肉達に【食材適性】を付与して、歩く飯テロの如きマッチョメンにしてやるぞ!」
鍛えた肉体をひけらかすマッチョの体を、天狐はしこたま叩いていく。
「…………!」
少しずつ傷つく鋼鉄の肉体。徐々に、マッチョ……ラボ―は怒りを漲らせていくのだった。
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ラボーを追い込んでいるのは間違いない。
しかし、相手を叩く度、その力は増していて。
「おおおおおおおおっ!」
「うっ……」
叩き付けられる強打に、コーダは危険を感じて再び身を引く。
入れ替わりで前に出たツルギも激しい拳の連打に、全力で細剣を繰り出して応酬を行う。
「たまには獣になるのもいいですね。貴方の本性(なかみ)、ブチまけさせて戴きます!」
強く踏み込み、彼の刃が銃弾すらも弾くというラボーの腹筋へと突き入れられる。
……刹那、動きを止めたかと思われたが。
「ぐ、ぐおおおおおっ!」
猛るラボーはダブルスレッジハンマーをツルギへと叩き込み、彼を昏倒させてしまう。
しかし、敵の攻撃はそれだけでは終わらない。
回復役メンバーへと目をつけていた敵は、すかさず蛍へと衝撃波を打ち込む。
それに珠緒も巻き込まれてしまい、2人は体ごと吹き飛ばされ、この場から消え去ってしまった。
ただ、ここは街中だ。サクラメントとの距離は非常に近く、すぐに戻ってくることができる。
その間はフローレスが繋ぐ。
あっさりと3人が倒されてしまった状況もあり、フローレスはコーダと密に連携して場を持たせる。
攻撃の手を止めれば、被害はさらに広がると判断し、フローレスは拳で相手の筋肉を貫かんとする。
ただ、本気になったラボーは鉄壁の名をこれでもかと見せつける。
前線に空いた穴によってタンクとなる2人の疲弊も激しく、フィーネは特大のポーションで皆の体力を持たせる。
ここが正念場。一時の油断も許されない。
いつの間にか、蛍も回復を再開しており、荒ぶるラボーから受ける傷を少しでも癒そうと光を輝かせていた。
さらに、ツルギも戻り、再び布陣を整える。これで幾分か持つはずだ。
「上腕二頭筋か! 大胸筋が良いか! それとも腹筋か!? 全部か!? 全部なのか!? いやしんぼマッスルめ!」
その間、天狐は部位名を言いながら相手をフルボッコしようとする。
「暫く街中歩く度に『やだぁー! あの筋肉焼きたての黒糖パンみたいで美味しいそうー! きゃー!』とか言われるが良いぞ!」
ただ、今のラボーは天狐の言葉に聞く耳を持たない。本気でこの場のメンバー全員を力でねじ伏せようとしている。己の生き方を曲げぬ為に。
しかしながら、それで皆が迷惑していれば世話ないのだ。
仲間に気をとられるラボーを、Ignatは遠距離から狙って。
「往生しろよ!!」
発射した砲弾は傷つくラボーの傷口を大きく広げる。
そこに駆け付けてきた珠緒が死角から刃を振り上げ、その背を大きく切り裂いて見せた。
「ぐあぁぁ……っ」
地面へと赤いものが大量に飛び散る。
さすがのラボーも大きく目を見開いて膝を折り、そのまま戦意を喪失してしまったのだった。
●
両膝を折った鋼鉄のマッチョ、ラボー・ジョンに、フィーネがそっと服を着せる。
根を上げた彼に、蛍は大きく嘆息して。
「これに懲りたらこれからはちゃんとオシャレをしなさいよね! 見せびらかすだけが筋肉美じゃないのよ!」
それに大きく同意する珠緒に、蛍は自身の浄化を求めてすぐ視線を向けていた。
「勝利すれば、こちらの言うことを聞いてくださるのですよね?」
珠緒はラボーに同意を求め、その日ごとに見せる部位を絞るよう提案する。
「強者ならば、改善し先を目指すのです」
「そうだな……」
天狐もうんうん頷き、露出を控えるよう重ねて告げる。
「それに、闘技場だけで披露すれば、プレミア感が出てもっとファンが増えるかもしれんぞ?」
先程、ツルギも言っていたが、再興の肉体美は安売りするものではなく、最高のステージでさらすべきだ、と。
「そう、だな」
立ち上がったラボーは一切の提案を受け入れ、ゆっくりとこの場を去っていったのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは敵の死角から決定打を叩き込んでいた貴女へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
『Rapid Origin Online』のシナリオをお届けします。
●目的
鉄壁のマッチョ討伐。
なお、報酬として何かを得られるかは不明。
●敵
○鉄壁のマッチョ:ラボー・ジョン
鋼鉄の闘技場にも現れる噂のマッチョ。
身長3m弱もある鉄騎種で、首や腕回り、脛辺りこそ機械となってますが、生身である肉体の筋肉はまさに鋼鉄。下手な刃や銃弾ははじき返すと有名です。
その巨体から繰り出される拳や襲撃は非常に重く、強烈です。
また、その肉体は旋回するだけで竜巻を生み、振り上げた打撃からは衝撃波が飛ぶ為、遠距離でも油断なりません。
余談ですが、ブーメランパンツは絶対に破れませんし、脱がせることはできません。念の為。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
それでは、よろしくお願いします。
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