シナリオ詳細
再現性東京2010:仙狸のたぬきち闇夜を駆ける
オープニング
●あるネット掲示板にて
『ねぇ知ってる? 最近この辺りでよく見かける人の事』
『ああ、あのへんな耳が付いた人の事?』
『そうそうよく見かけるよね!』
『夜妖の事件をよく解決してるよねー』
『夜妖の噂を信じてるの? 草www』
『なんのコスプレなんだろうか』
『なんでも仙狸って妖怪らしいよ』
『仙狸……へぇ』
たぬきの事なのか――
●そして後日――!
「違う!! 仙狸はねこ!! いいか――仙狸は! ねこ!!」
仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)は再現性東京のネット掲示板で噂の『たぬき』に憤慨する――仙狸(せんり)とは漢字で『狸(たぬき)』と書くが、これは『山猫』という意味であり、たぬきではない。
しかしそれを知らぬ者が『たぬき』と呟いた事を機に『仙狸=たぬき』という図式が今ネット上で大反響を呼んでいた――!!
『仙狸はねこ!』
『草www 仙狸はたぬきだよ、しらねーの?』
『これが義務教育の敗北か』
そんなデマが腐るほど流れているのである! ガチで言ってるのか冗談で言ってるのか……いやまぁ百歩譲ってネット掲示板で収まってる程度ならばどうでもよかったのだが。
「何故だ……何故この噂から発現した夜妖がいるんだ――!?」
しかし広がり続けた噂は止まる勢いを見せず。
やがて――『たぬきの妖怪が夜な夜な現れれて人助けしてる』という形に纏まりを見せ始めていた。しかもその名前は――『たぬきち』!!
『俺見たよ! たぬきちがビルの上を飛んでたんだ!』
『昨日なんてトラックに轢かれそうだったおばあさんを助けてたぜ!』
『ありがとう俺たちのたぬきち! ふぉーえばーたぬきち!!』
『耳も尻尾ももふもふで愛くるしいらしいたぬきち!』
『仙狸のたぬきち――!!』
……これらの噂から発現した夜妖『たぬきち』がいるのだと確認が取れたのはつい先日の事であった。まずい。まずいぞ。本物のたぬきが顕現してしまうとは……このままでは仙狸=たぬきという間違った認識が定着してしまう!
「こんなことを見逃すわけにはいかない! だから皆――力を貸してくれ!!」
だから、本家本元本物の汰磨羈にしては放置しておけぬと立ち上がったのだ――!
たぬきちを捕まえる。捕まえて、ええと、なんというか、そう! 説得するのだ!
『汝は猫! 絶対猫!』だと概念が変わるほどに教えてくれるッ――!
その為に集ったのが。
「やっぱり、たまちゃんはぽんぽこぽん!」
「すずなッ!」
「たまきちはたぬきだよ!」
「マリアッ!」
「そうですわ! ところで冷やしたぬきはいつ始めますの?」
「ヴァリューシャッ!」
「((꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆たぬたぬたぬたぬたぬたぬ」
「((꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆ゼファ――!」
すずな (p3p005307)!
マリア・レイシス (p3p006685)!
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)!
ゼファー (p3p007625)!
そして――あなたであった!
……なんか皆汰磨羈を狸扱いしてる気がするで叩いておくけど、うん! 皆きっと頼りになるメンバーである! うん、きっと、多分、信じれば、うーん……うんッ!!(確信)
「はぁ、はぁ……とにかく! たまきちはこの周辺で目撃情報が挙げられている。なんでも奴は人助けをして去っていくらしい……どうにかおびき出して捕まえるんだ!」
「成程。つまり汰磨羈より人が出来てて優しいのがたぬきちという事ですわね?」
「ヴァリューシャ、今なんて言った???」
「わわ、ヴァリューシャは悪くないよ! ちょっと素直なだけだよ! かわいいでしょ?」
うふふとマリアが自慢するように笑みを見せるので汰磨羈はヴァレーリヤと纏めてぽこぽこしておいた。ともあれ――たぬきちは夜妖だが、善性怪異と言っていいような存在だ……逃げ足は速いかもしれないが、戦闘力はないと考えて良いだろう。
「ただ――これは噂なのだが、たぬきちは変化の術を駆使するらしい」
「変化の術……?」
「そうだ。奴はよほど大きな物体でもない限り、いろんな姿を取る事が出来るらしい。
めっちゃ下手くそらしいが」
「めっちゃ下手な変化……? もしかして、その、アレの事ですかね?」
ゼファーとすずなに説明するように、たまきちの特徴……いや能力とも言える術の事を話せ、ば。
すずなが指さした先にあったのは――一つの郵便受け(ポスト)だ――
赤く目立った特徴的な代物……だ、が。よく見るとなんかめっちゃ歪んでる。
いやよく見えなくてもなんかおかしいぞ? じーっと、様子を見る様に眺めていれば――
「――たぬっ!」
瞬間。変な鳴き声が挙がったと思えばポストが狸へと瞬時に変わった。
どろんっ、という擬音が聞こえてきそうな音と共に。
さすればそこにいたのは……まぎれもない狸! 頭の上に一枚の葉を乗せ、こちらを見据えている――こいつが『たぬきち』か! あっ、闇夜へと駆け抜けていくぞ、こら待て――!!
「逃がさないぞッたぬきち――!! お前は、猫なんだ――!!」
「私は虎!」
「たまちゃんはぽんぽこ!」
「たぬたぬたぬたぬたぬたぬ」
「お主らいい加減にしろ――!!!!!」
仙狸は! ねこ!
汰磨羈の何十回目かの咆哮が――再現性東京の夜の街に響き渡っていた。
- 再現性東京2010:仙狸のたぬきち闇夜を駆ける完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年06月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
たぬっ、たぬっ!
再現性東京の街に一つの声が鳴り響く――その名はたぬきち。
どこからどう見てもたぬきなたぬきちを追うの、は。
「ええ、捕まえるのはタヌキですわよね。タヌキ。
大丈夫、分かっていますわ。だから……観念なさい、この狼藉者――!!
一体何をしでかしましたの! 罪はちゃんと償うものですわよ――!!」
「ぐあ――!! ヴァリューシャ、離せ! 捕まえるのは私ではない、あのたぬきだ――ッ!」
イレギュラーズ達――の筈が。『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の動きを止める様にタックルかましたのは『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)である!
背後からの強襲と同時に取り押さえるヴァレーリヤ。ガッチリホールドして汰磨羈を保健所に突き出す気満々である、が、違う違う違う! 追うのは此処にいるたまきちじゃない! あっちのたぬきち――あッ関節が完全にキマって、あ”ッ――!!
「うおー!! ヴァリューシャ、私も手伝うよ!! これで依頼は解決だね、ヤッター!」
「よっしゃア! あ、まだ抵抗するわよこのたまきち!
くっ、大人しくしなさい! お縄に付けオラッ――!!」
「マ”リ”ア”――ッ!! んんんゼ”フ”ァ”――!!」
次いで『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)と『青嵐』ゼファー(p3p007625)も、天に叫ぶ汰磨羈を抑え込む――! うおー! もう指一本動かせない!!
Congratulation! たまきちの捕獲に成功した!!
これで依頼は成功で終わ……え、違う? え、なんで? えっ!!?
「なにやってるんですかたまちゃ――あれ、たぬちゃんでしたっけ?
ん、んんん? どっちがどっちなのか……どうなってるんですかこれ!」
「いいから早く助けろすずなぁあ!!」
ブチ切れ汰磨羈。すぐ近くに寄ってきたのは『一人前』すずな(p3p005307)である――
再度依頼を説明しよう! この依頼は『たぬきち』を捕まえる依頼であって『たまきち』を捕まえる依頼ではない! そして『たぬきち』は『たまきち』ではなく『たまきち』を捕まえるのは間違いであると知れッ――!
「ええと、つまりたまきがたぬきでたぬきちがたまきち……よくわかんねーけどたぬきはたまきじゃねーってことか! ガッテンだぜ! たぬきをかたるたぁふてぇたまきだ、許せねぇなぁたぬき!」
「ネコだかたぬきだかわからないけどネコは私にゃ! 真のねこにゃ!!」
「ワモン、雪見。お前ら分かってないな??? んっ? 正座するか???」
マリア、ヴァレーリヤ、ゼファーを地に正座させてもう一度説明していた汰磨羈だったが『マスコットのワモ口』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)と『エンターテイナー』秋野 雪見(p3p008507)もやっぱり分かってない様である! 頼む! せめて半分は分かってくれ!!
「なるほどなるほど。汰磨羈は猫、化け猫。分かっているとも。心配しないでくれ。
この目が嘘を言っていると思うか? 俺はしっかりと理解しているとも」
「本当だろうな? 嘘をついていたらヴァリューシャを禁酒させるぞ」
ええ!? どうして私が!? 背後でなにやらそんな風に喚く声が聞こえるが――ともあれ『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)の慈愛に満ちた優しい微笑みと頷きは信用してもいいだろう。多分。タブン!
――ともあれ皆分かったな? 捕まえるのはたぬきちだ! たまきちではない!
「ぜえぜえ、まぁ分かりましたわ。一時休戦と行きましょう……捕まえるのは、弱そうなタヌキから……」
「はぁはぁ……そうだね、たまき君を捕まえるのはなんとも至難だ……流石だね! まずは先に弱いたぬきを捕獲しよう……」
「まずは弱そうなタヌキからってオイ。まるで強そうな方がいるみたいじゃないか?」
汰磨羈を捕まえようとして既に疲れ切ってるヴァレーリヤとマリア。
こんな感じでたまきち――じゃない、たぬきちを捕まえられるだろうか?
今(ようやく)汰磨羈の運命の戦いは始まろうとしていた……!
●
えぇい! 初っ端からとんだグダグダで見失ってしまった気がするぞ!!?
どこだー! どこなんだ、たぬきち――!!
「すずな君! わんこの嗅覚はすごいらしいけど、匂いで追えたりしないのかい? わんこなんだからそれぐらい出来るよね? ああでももし出来ないなら無理しなくていいんだよ! 無理ならねー!」
「はあああああああ? 一体私を何だと思ってるんですか!! 私は狼ですけど!? 犬扱いは心外――って勝手に使えない判断するとか腹立ちますねえ!! 匂いで追う? それぐらいできらぁ!! やってやろうじゃあねーですか!!」
しかし此処にいるは名物わんにゃんコンビ! マリア・レイシスとすずなの二人である! マリアが挨拶のジャブ代わりに囃し立てればすずなは負けじと鼻を鳴らして気配を察知せんとするものだ――!
都会特有の匂いに混じって、微かに香る獣臭さ。
自然に生きる者は決して誤魔化せぬ臭いがあるのだと――
「いやあのこれ野良犬じゃあねーですか!! ていうか今は人並みの嗅覚しかないんですよ、流石に無理めの無理ですって!!」
「ははぁ……そういえばすずなを見ていて思い出したんだけどさ、たぬきってどっちかと云うと犬の仲間なのよねえ」
えっ、そうなんですか!? と振り向いた先にいたのはゼファーで……
ちょっと待って。その手に持ってるのは何? なんでフリスビーを?
「ってことは、犬が反応する様なものを良い感じに使えば引き寄せられるんじゃなくて? ほーら試しにやってみましょうかすずな! そーれ取ってこーい!!」
「わうわう――!!」
これ見よがしに一投。さすればすずなが口でキャッチして急速に戻ってくれば。
「よ~しよしよしよし! 上手くできたわね~ご褒美はジャーキーよ」
「わーい!! って、ちがーう!!!!!!」
思わずノリにノッてしまったすずなだが、ジャーキーを手渡されると同時に思いっきり地面に叩きつけてやった。『ああ! これ結構高かったのに!』ってゼファーが嘆いているが知った事か!!
「くっ、危うく目的を見失いかけてたわ――! これがたぬきちの策略、恐ろしいわね……」
「ふっ。まだまだ甘いですわねゼファー……忘れましたの? たぬきちは『困っている人』がいると見捨てられない性分らしいんですわよ……? 突くならそっちの方ではなくて?」
「そういうの全部忘れてたのヴァリューシャお主だったろ」
額の汗を拭うゼファー。に、言葉を自信満々に紡ぐのはヴァレーリヤだ――真っ先にタックルしてきておいて何言ってんだコイツという視線を汰磨羈が見せてくるが、過去に囚われていては前に進めませんわ!
ともあれヴァレーリヤの智謀が冴え渡り、一つの策を脳内に生み出す。
道端に倒れこむ様に。そしてその手には空の酒瓶(さっき飲み干した)があって――
「うっうっ、どうしましょう。困ってしまいましたわ……まさかちょっと酔っ払って酒場で粗相をしただけで出禁になってしまうだなんて……もう出禁になっていないお店はあそこしか無かったのに……あぁ……明日から一体どこに粗相をしに行けばいいんでしょうか……」
で、出た! 泣き真似だ!!
迫真の演技が再現性東京の街に響き渡る――あの、出禁は作り話ですよね? ガチじゃないですよね? ヴァレーリヤさん? ヴァレーリヤさん!!?
「流石だよヴァリューシャ! 天才かな? 完璧な作戦だ……うぅ、お酒ぐらい私が……間違ってるのは酒場の方だよぉ……ちょっと虹を出すぐらいかわいいものじゃないか……うっ、うっ……」
「だが、周囲に助けを求めてる奴はいねーみたいだし……もしかするともしかするかもしれないぜこいつは。たぬきちが良心の塊なら――」
懐からヴァリューシャ用のスペアお酒を取り出し今にも渡さんとするマリアだが、今はまだ潜まねばならぬ――! ワモンが周囲の救いを求める声を感知せんとしているが、その反応は少ないのだ。
もしもたぬきちがヴァレーリヤを見つければ――もしかするかもしれない――!
「まぁこれがダメでもオイラがいざとなれば手当たり次第に見つけ出してやるけどな――と!?」
そして――見た! 少し離れた路地裏で何やら動く影がある!
……たぬきちだ! 間違いない、たぬきちが泣くヴァレーリヤを見て近寄り――!
「どうしましょう……うっ、うっ、どうしま……………………あれ? ちょっと。ちょっと!! そこのたぬき! こんな美人司祭が泣いて困っているのに無視して通り過ぎようとするとは、どういう了見ですの!?」
で も 通 り 過 ぎ た !!
演技を見破ったのか――!? それとも何か不穏な影でも感じ取ったのか――!?
不明だが、明らかに近寄ろうとしていたたぬきちは途中で何か様子が変わってヴァレーリヤをスルーして立ち去ろうと……したのでヴァレーリヤ、バーサーカーモードです。
酒瓶を片手に全力で追いかける――!
「こらっ、待ちなさい――! 悪いたぬきは捕まえてタヌキ汁にしますわよ――!!」
「たぬっ!? たぬたぬ――!!」
ぴぇっ! と、あまりの形相に涙目になるたぬきちは全力ダッシュ。
美人司祭……美人、司祭……? の面影もない、あれはまるで――マーライオンの形相――!
「さてさて。なんだか逃げる気持ちも分からないではないが……
しかしもう一度逃げられる訳にもいかないのでな」
が、そうはいかないとばかりにエーレンが即座に追う! たぬきちが如何にこの都市の闇夜を駆けるに慣れていると言っても、長く追跡できれば話は別だ。彼は壁を蹴り、最短ルートを突き抜ける――まるでパルクールの様な動きを伴いながら追い詰めよう!
「たぬ――!?」
「よし、追い詰めるぞ皆!
いいか、穏便に捕まえるんだぞ! タヌキ汁にしたら駄目だからな!
分かってるな!!? 絶対だめだからな、絶対だぞ!!」
「大丈夫でございますわ、ちょっとだけなので! このちょーっとお出汁と野菜が入った茶釜に一時的に収納するだけですので! ええ、一時的に! あ、温泉も完備済みですわよ――!」
「狸汁かい? ふふ! 調理なら任せておくれ!
軍属時代に一通りサバイバル技術は学んでいる! 捌き方は分かってるよ!!」
「お前らマジ人の話を聞けッ――!!」
汰磨羈は悟る――
あれ待てよ? よくよく考えたら、ここで一番困っているのは私では?
たぬきちの逃走。たまきちの嘆き。
闇夜に轟きタヌキ汁は完成に至るか、それとも……!?
●
「全く。流石に狸汁は勘弁してあげてくれ。故郷でも刑部狸……
ああいや、狸の妖怪に凄い目で見られたことがあってな……」
それ以来たぬきには気を付けているのだと、語るはエーレンだ。
――たぬきちの姿が突如として消えた。
が、最初と異なりその姿はずっと追い続けていたのだ。
つまり……これは見失ったというよりも、たぬきちが『隠れた』証……!
「そう遠くない所で変化しているに違いないだろう――見つかったか?」
「うぅん、いませんねぇ……あのぅ。いっそのことなんですけど、判断つかないのでどっちも捕まえちゃだめですか。とりあえずたまちゃん捕まえておけば、あと捕まえるのは一匹になりますよね?」
「すずな、お主何言ってるんだ???」
……だめですよね、ちぇっ。
眉を顰めて残念がるすずな――どうしてまだ汰磨羈を捕まえようと……!? さてはぽんぽこを二匹捕まえる気満々だなこのわんこは。
「まぁすずながそう思うのも仕方ないわね……名前が似ているばかりか、姿まで似て……似て? る、し? 私たちも初めは騙されかけたからね……!」
「というか今回の依頼はネコだかたぬきだかめっちゃ多いにゃ……これもう全員捕まえておけばなんとかなるんじゃないかにゃ……? あ、保健所だけはノーセンキューにゃ!」
「ふふん! 私は虎だから関係ないね!」
真面目に捜索してるのか不明だが、ゼファーに雪見、そして全一猫代表のマリアも集ってくる――これだけ包囲の輪が狭まれば、如何にたぬきちと言えど逃走出来まい。
巡らせる視線。
さすれば、なんだか輪郭が怪しきベンチが公園にあって……?
「……ところで。此の椅子なんか温かくてもふもふしてない?」
これ見よがしな感じでゼファーがベンチに腰掛けれ、ば。
たぬっ――! 即座に解く変化! 現れるたぬきち――!!
再度逃げんとするが、逃がすかぁ!
「ええい、風もないのにゆらゆらちょこまかと……大人しく捕まりなさい!
今ならちょっと出汁を取るだけで済ませて差し上げますわよ!!」
「そうです! あんまり抵抗するとたまき汁にしますよ! ……あれ、タヌキ汁でしたっけ? まぁ、その、このっ! どっちでもいいから神妙にお縄につきなさい! ぽんぽこぽんしますよ! たまちゃん早く! 速く取り押さえて――!!」
「やっぱりすずなにはあとで『お話』するとして――
ほ~ら逃げるなよ? 素直に出てきたら、美味しいものをあげちゃうぞ☆」
ヴァレーリヤとすずなが素早く立ち回り、更に雪見が逃げ道を潰す。
そしてそこに汰磨羈が回り込めば――取り出すは一つの菓子だ。
「たぬっ!? たぬぬ……ぬっ!」
「ふふふ、よし捕まえた! ……結構もふもふだな御主?」
それはネコ用おやつのアレをちゅる~~~と取り出した逸品。
たぬきちは瞬時に嗅ぎ付けた匂いに抗えず……引き寄せられるように向かえば即座に捕獲された。気付いてないのかアレを食べ続けてるけど。
「ほへーなるほどな!
やっぱ仙狸っていうくらいだし、コイツもたぬきなんだなー、え? 仙狸は猫?
そんでもってマリアのねーちゃんは虎? すずなのねーちゃんは狼?
オイラよくわかんねーけど、オイラはアシカじゃねーってのだけは確かだぜ! へへ!」
「まあ狸だろうと猫だろうと、愉しくやれるんならそれで良いじゃない。
……ところで今の内に試してみましょうかね、コイツを」
同時。その様子を見るワモンは同時に、やはりちゅる~~~と出てくるアレを取り出したぬきちに繰り出してやる。必死に食べるたぬきちは逃げようという姿勢も見せず……更にゼファーが繰り出すのは――未使用の歯ブラシ。
それをどうするのか? こうするのよ!
「た、たぬぬ~~~♪」
「はは! もし猫ならこいつで眉間を擦ってやれば耐えられまいってね――
ああっ! 手が滑ってたまきちの眉間にも~~ああ手が止められない~~!」
「ゼファー御主、あああぁぁああああ~」
恍惚なる表情を浮かべるたぬきち――とそのまま被害を受ける汰磨羈――
はっ! 違う違う、餌付けして終わりではないのだ、説得せねば!!
辛うじて意識を取り戻した汰磨羈はたぬきちに向き合って。
「さておき! 御主、仙狸を名乗るなら、きちんとした猫になって貰うぞ。
こんな誤解が広まるのは許せんからな……そも、出自には確かな心を抱くべきだ!」
「そう、善性怪異たるもの出自には誇りを持ったほうが活躍できる。(合いの手)
仙狸はヤマネコー。(合いの手)
つまり仙狸の話から生まれた君も当然猫ー(合いの手)
ねこーねこー君はねこー。(バックコーラス)」
「エーレンはそろそろ私が本当に猫だという事を信じてくれッ――!」
唄を歌うエーレン。ぐぐ、さては信じてないな! とたまきちは憤慨して。
しかしたぬきちは汰磨羈の袖を引っ張って何かをアピール。おおさてはこれは……
「ん、どうした? さっきのおやつが気になるのか? 仕方のない奴め~」
「おっ、それならたまきも食うかー?
たまきが食ってるとこみりゃ警戒薄れて、もっとよってくるかもしれねーぜー」
ナチュラルに汰磨羈を同族扱いするワモン。必死に食べるたぬきちの様子は可愛らしいもので……だから違う! こいつの処遇をどうするかを決めねば!!
ただこやつ特に抵抗する様子もなさそうだし、餌付けの結果なんだか懐いている。
……とりあえずこのまま連れて帰る事も十分可能なのでは?
「まぁ、なんだ。とりあえず私のギルドに連れていくか――
放っておいて保健所に捕まるとまずいし、丁度練達にあるしな」
その中途半端な変化の事も教えてやる――と。
「強制はせぬが……ついてくるか?」
「たぬっ!」
まるで敬礼するように、汰磨羈に返答するたぬきち。
目を輝かせる様子はなんとも愛くるしいものだ……
よし、ならば――と。立ち上がったその瞬間――
「そうよ。誰がなんと言おうと、自分らしく在れるなら其れが一番ですもの――
どこへ行こうと『たぬきち』は『たぬきち』……
だから胸を張って生きなさい――たぬきち!」
ゼファーが祝福する。思いっきり背中を叩いて、その人生を――
ただし、叩いた相手は『たまきち』であるが。
刹那の静寂。しかしやがて、汰磨羈とゼファーは――
「…………((꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆ゼファ――!」
「((꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆たぬたぬたぬたぬたぬたぬ」
始まる攻防! 熾烈なたぬき合戦ははたしてどちらに軍配が挙がるか――!
――仙狸のたぬきち闇夜を駆ける。
たぬきちがはたして猫に至る日は来るのか。それはまた別の物語……
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
たぬっ、たぬたぬ? たぬぬぬ!!
(意訳:ありがとうございました!!)
GMコメント
リクエストありがとうございます!!
仙狸はたぬき、ヨシッ! 以下詳細です!!
●依頼達成条件
たぬきちを捕まえろ!
一応捕まえれば成功です。説得が成功するかはまた別の話です!
がんばれたぬきち! 負けるなたぬきち!
あ、間違えた頑張れイレギュラーズ!!
●フィールド
再現性東京の街中です。時刻は夜。
人の出入りはまばらに。この中でどうにかたぬきちを捕まえてください!
●たぬきち
たぬきちとは噂から発生した夜怪です。
なんでも最近練達で活躍している某イレギュラーズの外見の事が噂となり、ネット掲示板で色々話されている内に……『仙狸』を『たぬき』と読み間違えが発生してしまいました。それを契機に噂が広がって、やがて誕生したのがたぬきちです!
たぬきちは人助けをよくする善性怪異とも言うべき存在です。もしかすると精霊種とかそっちの方に近い存在なのかもしれませんね。ともあれ人々のイメージから具現化したたまきちは結構優しいです。でも捕まえようとするとすぐ逃げます。ぴゅー!
戦闘能力の類はほとんどないらしいです。
が、たぬきちは色んなものに変化する事が出来る能力を宿しているようです。
あまりに大きいサイズなどでなければ何にでもなれるとか……?
……が、実際は滅茶苦茶下手くそな変化しかできないのですぐバレます。
(本人視点ではかなり完璧な変化だと思ってるみたいです。どやぁ顔で)
ともあれたまきちがたまきちとして立派に活動を続けると、『仙狸=たぬき』説がより深まってしまいます……このままでは汰磨羈さんもたぬきだと認識されてしまうかもしれません! 草。もとい、同じイレギュラーズの為にも、なんとかたまきちを捕まえましょう――!
●備考:たまきちの活動記録(噂)
・荷物が多くてこまっていたおばあさんを手伝ってあげた。
・鴉に襲われていた子猫をたすけてあげた。
・酔っ払いに水を持ってきてくれた。
・迷子の子供を案内してあげた。
・空腹で倒れそうになっていた人に、食べようと思っていた『あか~い狐印』のカップめんをあげた。
●ちなみに
あ。ちなみに本来『仙狸(せんり)』とは猫の事なのですが、再現性東京の噂――つまり『仙狸=たぬき』から発生した夜妖であるためか、その姿はどこからどう見てもたぬきです。ぽんぽこ!
頭の上に一枚の葉っぱが乗ってます。これも狸のイメージなのかな……?
ただ、元々の概念である猫と、狸の要素が色々混じっているとか……?
猫のおやつとかにも弱いかもしれません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はTANUKIです。
想定外の事態はぽんぽこの範囲で起こりません。ぽんぽこー!
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