PandoraPartyProject

シナリオ詳細

一刺しを構える影

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●一刺しを構える影
 ポツ……ポツ……と、天井から零れ落ちる雫。
 その雫はほんの僅かに地面を濡らす程度で……恐らく地面の間から染み出してくる湧き水の様なものだろう。
 そんな天井からの雨垂れが頬に垂れて。
『……ん……ぅ……?』
 雨垂れにぴくっ、と身体をみじろかせる少女。
 むくっ、と起き上がった彼女の服装は……ローブ風の服と、大きなハット……魔術師のような服装なのは間違い無い。
『……あ、あれ……ここ何処なの? 私……ただ遊びに来ただけなのに……本当に、VRの世界に入ったみたい……』
 先ほど垂れてきた水滴も、本当に垂れてきたように感じたし……何だか蒸し暑さも感じる。
『無いだか、暑いなぁ……それにここ……暗くて……何だか怖い……」
 すっ、と立ち上がった彼女は、周りをぐるりと見渡す。
 ほんの僅かではあるが風の流れを感じ、そちらの方に歩いて行くと……段々と光が漏れてくる。
 ……そんな光を求めるように、真っ暗な洞窟の中を歩いて行くと……。
『……キシャアアァァァ……』
 と、遠くの方から響き渡る、何者かの鳴声。
『え!? な、何何……あの鳴声、今迄聞いた事無い……』
 おっかなびっくりしながらも……でも、本能的に光を求め、歩く彼女。
 でも、そんな彼女の恐怖心を察知したのか、その鳴声を上げた魔物が、サササっ、と地面を這いずり寄る。
 ……僅かな灯に映し出されたのは、とても巨大な蠍の姿。
『……キャアアア!!』
 叫び、慌てて近くに折り重なっていた岩場の影に隠れる彼女。
 だが、その叫び声を聞いた蠍たちは……獲物が隠れた、と認識為たようで、彼女の隠れた岩場へと接近。
『ひ、ひぃぃぃ……』
 岩場から動けずに居る彼女と、それを観察し続ける蠍達。
 そして逃げる事も出来ず、岩場に隠れ続ける彼女は、ただただ救いを待ち続けるのであった。


『うう……あの子が居なくなって、もう一週間も経っているんです……お願いします……娘を、助けてください……!!』
 報道陣に囲まれた母親が、涙を零しながらインタビューを受けて居るシーンが、希望が浜地域のローカルニュースに流れる。
 ここ最近、度々発生している希望が浜の生徒が行方不明になる事件。
 度々起きているけれど、視聴率を取れるニュースとして、報道陣も結構頻繁に報道されている。
 そんな情報を小耳に挟んだルリアが、何処かからそんな情報を聞いてきたようで。
「親御さんからすれば……手塩に掛けた娘さんが、突然行方不明になるだなんて……心が締め付けられるようです……」
 と、悲しそうに声を紡ぐ。
 とは言えそんな事件を解決するのも、イレギュラーズのお仕事……という訳で。
「私も伝え聞いた情報だけで、本当に申し訳ないのですが……私からも御願いします。行方不明になった彼女を救うためにも、R.O.Oにログインして、彼女を助けてきて欲しいのです……」
「恐らく、ログインしたネクストのどこかで、怪我をして動けなくなっているか……出口を塞がれて立ち往生を余儀なくされているか……恐らく、そういった不可避な事故に巻き込まれたのでしょう。その課題を皆様で撃破し、彼女を元の世界に取り戻してきて頂ければ、と思います……」
 そしてルリアは、最後にもう一度皆を見上げながら。
「その……どうか、宜しくお願いします、ね……」
 と、頭を下げた。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
 ROO、今回はサンドストームにおける希望が浜学園の生徒を救出する依頼です。

 ●ROOとは
  練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
  練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
  R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
  練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
  自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
   特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

 ●成功条件
   岩陰に隠れて、身動きが取れない少女『ルリ』を救出し、ログインポイントに連れて行って彼女をログアウトさせる事です。

 ●情報精度
   このシナリオの情報精度はBです。
   依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   ROO世界で、一面に砂漠が広がる『サンドストーム』地域。
   そんなサンドストームのとある所にある地下迷宮……所謂ダンジョンが舞台となります。
   ダンジョンの中は一切の灯がなく、外から差し込む光だけしか視界がありません。
   そして、今回の敵はそんな暗闇でも不自由なく動ける暗視持ちなので、灯を消して動きを鈍くする……という事は出来ません。
   
   ちなみに彼女が隠れているのは、外から少し洞窟の中に入った所で、岩場地帯です。
   岩が折り重なるようになっており、彼女はその岩場に姿を隠している状態です。
   そこから出れば、直ぐに蠍に襲われてしまうので、彼女はそこから出る事が一切出来ない様な状態ですので……蠍を倒さなければ、彼女を救うことも出来ないでしょう。

 ●NPC情報
   『ルリ』
     希望が浜の学生で、テストプレイヤーとしてROOにログインしています。
     出で立ちは、所謂魔法使い(ローブ、つばの広いハット……等)ですが、戦闘能力は皆無です。
     又、かなり怖がりな性格の様で……蠍を倒しても、すぐ出てこないでしょう。
     彼女を安心させるような呼びかけの一押しも重要です。

 ●討伐目標
   ・巨大蠍『ポイズンスコーピオン』 x 15体
     一体の体躯が5m程と、かなり巨大な図体をした蠍たちです。
     彼らは岩場地帯の近くで密集しており、常に毒牙に掛ける相手を探している状態です。
     皆様も視界に入れば、即座に攻撃を仕掛けてくるでしょう。
     尚、その尻尾には致死毒が仕組まれており、その一刺しで戦況が変わる事すらありえるでしょう。
     又、その両手の挟も強烈な武器であり切断しようと、強力な力で挟み込んできますので、その攻撃を喰らった場合は身動きが取れず、呪縛の効果も付与されます。
     (両腕があるので、同時に最大2名まで常に呪縛、という事が可能です)

※重要な備考

 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

   それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 一刺しを構える影完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月10日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

梨尾(p3x000561)
不転の境界
ミーナ・シルバー(p3x005003)
死神の過去
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
ネコモ(p3x008783)
ニャンラトテップ
コーダ(p3x009240)
狐の尾
ダブル・ノット(p3x009887)
ヒーラー

リプレイ

●命を救う手
 R.O.Oの世界において、一面砂が地を覆い隠すネクスト、サンドストーム。
 そんな乾いた大地へと迷い込んでしまったのは……希望ヶ浜の学校に通う、極々普通の少女、ルリ。
 彼女がこの世界に降り立ち、どの位の日数が経過したのかは分からない……だが希望ヶ浜地域のニュースでも取り沙汰されているのだから、数日は経過している事だろう。
「うーん……うら若き女子高生がゲームとは言え、暗い場所でたくさんの大きなモンスターに囲まれたら、怖くてしょうがいないだろうにゃー……」
 と『にゃーん』ネコモ(p3x008783)が呟くと、それに頷く『ヒーラー』ダブル・ノット(p3x009887)。
「そうだね。怖いゲームもあるけど、それは安全を保証されてこそ……だからね。これでゲームに苦手意識を持たれると悲しいな」
「全くだにゃー! ゲームは楽しいものなのに、これが原因でゲーム嫌いになったら悲しいのにゃ!」
 そんなネコモとダブルの会話に耳を傾けつつ、『ただの』梨尾(p3x000561)は遠い目で空を見上げる。
「……家族が離ればなれになるのは、新生活の門出とかだけでいいんだ。突然行方不明になって、そのままお別れだなんて……絶対にさせたくない」
 そんな梨尾の強い決意に、ダブルも。
「そうだね。何とかアフターケアもしてあげたいけど、まずは助けるコトが先決だね」
 と笑い、そして『殉教者』九重ツルギ(p3x007105)と『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)も。
「ええ……このような事、学生にはとても恐ろしい経験でしょう。現実世界では私も希望ヶ浜の教師……必ず救い出します!」
「そうですね。二重の意味で場所が場所です。それは心配ですよね……これはイレギュラーズとして、冒険者として放っておく訳にはいきません。救助依頼も冒険者にお任せ、ですよっ!」
 そして『狐の尾』コーダ(p3x009240)とネコモも。
「ああ。こんな所に一人残されりゃ怖いもんさ。戦う力がないなら尚更だ。仕事でもあるが、さっさと救出してやらないとな?」
「そうにゃ! こっちがやられない範囲でなるはやの救助を頑張るにゃ! あ、でも今回タンクに自信が有る人が多いみたいだし、ボクはアタッカーに専念でも大丈夫そうかにゃー……?」
「うん、自分達に任せてくれればいいです。絶対に……負けたりはしません!」
 ぐっと拳を握りしめる梨尾、そして『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)が。
「分かった。私は的の呪縛を緩和出来るように動くよ。
 と頷く、そして『死神の過去』ミーナ・シルバー(p3x005003)が。
「良し。取りあえずその洞窟に急ぎ向かうとしよう……彼女が衰弱し、蠍の被害に既に有っている……という事も可能性としてはあるからな」
 と仲間達を促し、そしてイレギュラーズ達は指定された、巨大蠍たちの生息する洞窟へと急ぐのであった。

●薄幸の救い
 そしてイレギュラーズ達は砂漠を進み……かの洞窟へと辿り着く。
 洞窟の入口に立ち止まり、息を潜めて中を確認……すると。
『シィィ……シィィィ……』
 と、蠍たちが鳴き声を上げながら、入口から少し進んだ辺りの所をぐるりぐるり……と動き回っている。
 まるで何かを警戒しているかのような……そんな動きにミーナが。
「ああ……やれやれ、なんだってこんな所にいるんだかねぇ?」
 と肩を竦めると、イズルが。
「蠍たちがあんなに纏まってうろうろしている……あの辺りで、ルリさんを見失ったのかもしれないな。もしかして、視覚と聴覚で索敵しているのかな? 蠍にあったら動くな、と言うから、振動を探知しているのかもしれないね」」
「そうだな。まぁ仕事だから、やるだけの事はやるんだけどさ」
 肩を竦めるミーナ……ともあれ、あの辺りに蠍が固まっているので、あの辺りに彼女がいるのは間違い無いだろう。
「それじゃ、早速だけど始めるよ?」
「ええ……気をつけて下さいね」
「うん……大丈夫!」
 ツルギの言葉に頷き、そして梨尾は洞窟に先陣切って突撃。
『あおぉぉーーん!!』
 と、力強く咆吼を響き渡らせながら、蠍たちの注意を一気に惹きつける。
『シィィィ……!!』
 そして蠍たちは威嚇の声を上げながら、イレギュラーズ達の方向へ、次々と進軍開始。
 とは言え15匹居るポイズンスコーピオン、全部が全部来るという訳ではない様で……数匹はその位置からは余り動かない。
 そして、レギュラーズ達の声に……。
『ひ、ひぃぃ……た、食べないで下さいいいい……!!』
 と、心底怯えた泣声が上がる。
 ……ほんの僅かではあるが、岩の間にとんがり帽子の様なものがチラリ、と見える。
 あそこに居るのは間違い無い……ただ、下手に驚かせれば、不意に出てくるとも限らないだろう。
「いいか! 顔出すんじゃねぇぞ! 流れ弾があたらねぇとは限らねえからなぁ! ハッハァー!!」
 と、そのとんがり帽子に向けて高笑いを上げるダブル。
 でも、当然そんな声に更に悲鳴を上げる彼女……続けてミーナとツルギが。
「大丈夫だ! だが助けるにはもーちっと時間がかかりそうだ。必ず助けるから、そこで待ってろ。怖くても、そこから動くなよ!」
「希望が浜からここに飛ばされて、何かも分からないままで不安だったんだろう? 必ず助けるから、大人しく隠れていて下さい!」
 と声を掛ける。
 更にカノン、ネコモが灯を手に、洞窟内を灯に包む。
 明るくなれば、少しは恐怖心が和らぐだろう……という想定。
 そんなイレギュラーズの呼びかけに、最初はしゃくりあげるように泣いていた彼女もどうにか耐えて、其の場に立ち止る。
 勿論、いつ蠍たちが彼女の方向に行くかも分からないので、油断は出来ないが……。
「さぁ、あの子を襲おうというのなら、まずはこっちが相手だよ!」
 そして再度梨尾が、蠍たちに錨形の火を敵へ放つ。
 その攻撃に更なる怒りを覚えた敵が、梨尾に向けて間合いを詰める。
 そして……その背の、鋭い尻尾の毒牙を情報からぐさりと刺す。
 左へ右へ、と動き回る梨尾だが……流石に全てを躱すのは難しく、数撃喰らってしまう。
「っ……負けるものか!」
 と梨尾は唇を噛みしめて……決して蠍の前からは退かない。
 そんな梨尾を補助するように、即座にイズルが麻痺を緩和する様にすると、続けてダブルも地面に魔方陣の様なエフェクトを記しながら。
「ハッハァー! わりーな!、蠍ども! 一発逆転の機会なんざ与えねぇよ!」
 と味方の毒を無効化する。
 後衛二人のお陰で、バッドステータスを出来る限り最小限に抑えると、続くはコーダとミーナ。
「さて、俺と遊ぼうか」
 先ずはコーダが梨尾よりも前に割り込み、蠍の攻撃を自分に集中させるよう挑発し、怒らせる。
 そしてコーダに向けて動き回る蠍の群れに、ミーナが強く粘る蜘蛛の糸を酸塊させ、敵を捉える。
 蜘蛛糸の中で蠢く蠍たち。
 行動を上手く阻害出来た所で、最後にネコモとツルギ二人が。
「さぁさぁ、兎に角数を減らして行くにゃよ!」
「ええ。余り長引かせると、ルリさんも衰弱してしまいかねません……出来る限り迅速に、仕留めていきましょう!」
 二人は頷き合い、梨尾とコーダが怒りを惹きつけてくれた蠍を相手に、竜巻の如く自分の身体を回転させながら、連続回し蹴りを繰り出すネコモ。
 ツルギは細剣を掲げ、流れる様な一閃で蠍を斬り付け、更に連続してもう一閃。
 ……そんなイレギュラーズ達の猛襲に、蠍一匹が倒れる。
 だが、まだまだ14匹もの蠍たちが蠢く状態……一匹が5m位の体長をしているので、洞窟の入口はかなりひしめき合っている。
 軽く身体が当たりつつも、次から次へと攻撃を仕掛けてくる蠍達は……正しく獲物に飢えているかの様。
 まぁ、こんだけの巨体で襲いかかってくるのを目の当たりにすれば、常人ならば……恐怖に足が竦むかも知れない。
 でも彼女は命からがら逃げて、どうにか生き残れた……だからこそ、助けなければならない、と強く想う。
「そう……貴方がたの本性(なかみ)は観るまでもありません。可愛い生徒をよくも怖がらせてくれましたね!!」
 キッ、と睨み付けるツルギの叫びは、並々ならぬ怒りを孕んだ視線を向ける。
 とは言え蠍たちに、そんな人の感情を推し量る様な事など出来ない……ただただその蠍の尻尾で、無差別に攻撃し続けてくる。
 そんな敵の重量級の攻撃を何度も食らうのは、ツルギと梨尾。
 カノン、イズル、ダブルの後衛三人が、全力で回復するのだが……さすがに14匹の集中攻撃の前では回復仕切れず、ドンドンと体力が削れていく。
 蠍たちは入れ替わり立ち替わり攻撃してきて……イレギュラーズの壁役二人も、入れ替わり立ち替わりで立ち回る。
 しかし立ち回ろうとも、蠍の一刺しの攻撃力はかなり高い。
 ……蠍3匹を倒した所で、耐えきれずに倒れるコーダ。
 すぐさまツルギが一人、壁になり、蠍たちが散開したり、逆に洞窟内に戻ってしまわない様に押さえ込む。
 しかしながらまだまだ敵は多く、一人壁ではそう長くないうちに倒れてしまうだろう……。
「少しだけ下がりましょうか……もうちょっと入口側に行けば、あの巨体だから詰まる筈です!」
「確かにニャ! でも、ルリちゃんは大丈夫かにゃ!?」
「ああ……だから、全員の怒りを全力で惹きつけてから行くぜ!」
 と、ネコモにニッ、と笑いながら少し入口側へと下がっていく。
 それに誘われるよう蠍たちは前に出て……洞窟の入口という、最も狭い場所に、蠍同士の身体が詰まる。
 一匹が攻撃すると、別の蠍が長く伸ばした尻尾で攻撃するが……その二撃の後には別の蠍たちは、攻撃が出来ないという状態。
『シィ……シィィイ!!』
 と蠍同士が鳴き合う。
 ……邪魔するな、と言っているかの様な気もするが、勿論蠍の鳴声を判別出来る訳も無い。
 ともあれ蠍たちの攻撃の手数を少し減らせた結果、体力が削られるペースも減少し……後衛の仲間達からの回復で、どうにか壁は維持出来る。
 そして暫く堪えていると……リポップしたコーダが、再度戦線復帰。
『待たせたな! ったく、痛かったぞこの野郎が!」
 コーダが怒りを吐き捨てつつ、再度ツルギと二枚壁になって蠍たちを押し切るべく、前へと進む。
 そして壁の後ろで梨尾が、敵に纏わり付く炎を与え、敵に恍惚効果を付与し、その敵をネコモとミーナ、更にはカノンが集中砲火。
「障害としてたちはだかり、立ち向かってくると言うなら是非もありません。速やかに討伐するのみです!」
「そうにゃ! 絶対に負けたりしないのニャ!! 蠍の一刺しなんて、怖くないニャー!!」
 カノンの言葉に頷き、壁役二人の間を抜けて、全力全開で周り蹴りを放つネコモ。
 そしてミーナは敵の体力を、その死神の力を持った瞳で見据え……一番体力が少ない相手を判別。
「左の蠍が、一番弱っているみたい。みんな、私に合わせて!」
「ええ、分かりました……!」
 盾役二人も攻撃。
 確実に一匹ずつを集中攻撃で葬り去っていく。
 ……そして、梨尾が咆吼を上げてから数十分。
 イレギュラーズ達の被害もまま在るが……蠍もどうにか、残り1匹。
 最後の一匹となれば、後は全力で倒すのみ。
『シィィ……!!』
 命の危険を察知したのか、それとも……ただの威嚇かは分からないが、鳴声を上げる蠍。
 ……そんな蠍に向けて。
「さぁ、そろそろ終わりにしましょうか……可愛い生徒を苦しめた罪は、重いですよ……!』
 とツルギの最後通告。
 その言葉と共に、渾身の一閃を繰り出し、蠍の尻尾をバサリ、と切り落とす。
 尻尾を失い、体勢を崩した蠍……そこにカノンの魔力の弾幕が打ち放たれる。
 その一弾は蠍の頭部を撃ち貫き……そのまま地面へ臥して、全て動きを止めるのであった。

●恐怖に打ち勝ち
 そして……どうにか無事に蠍たちを倒し切ったイレギュラーズ達。
「待たせちまったな。もう出て来ても大丈夫だぜ! 私たちはあんたの味方だ!」
 とミーナは自信満々の口調で、隠れているルリに声を掛ける。
 ……でもルリは、中々姿を現さない。
 流石に隠れ続け、恐怖心を抑えきれずに疑心暗鬼になってしまっているのかもしれない。
「蠍は全部討伐しました。もう安心していいですよー!!」
 更にカノンが、ルリに呼びかける。
 呼び掛け続け……数分後、やっと。
『……ほ、本当に……だ、大丈夫……なんですよね……?』
 びくびくしながら、姿を現すルリ。
 かなり長い間、隠れていたようで……かなりふらふら。
 そんな彼女にネコモが。
「大丈夫にゃ? もう安心して欲しいにゃよ!」
 軽く抱きしめ、頭を撫でながら、励ますネコモ。
 更にイズル、ツルギも。
「怪我はないかな? 生きていれば回復は出来るからね?」
「そうだな……よく頑張ったな。もう大丈夫だ。頑張ったキミに、先生からハナマルをあげよう!」
 と彼女への心配と共に、耐えきった彼女への労いの言葉。
 そんなイレギュラーズ達の言葉に、今迄ずっと堪えていたのだろう……ぽろぽろと涙を零し、その場にへたり込んでしまう。
「ま……かなり長い時間、恐怖にさらされていた様だからな……取りあえず落ちつこう、な?」
 とコーダが彼女の頭を撫でつつ、慰める。
 そして……小一時間程度は掛かっただろうか……やっと、泣き止んだ彼女に。
「どうだ? ……もう、大丈夫か?」
『……』
 ダブルの言葉に、言葉はないが……僅かにコクリ、と頷くルリ。
「そうだなぁ……皆、ちょっとルリ、いいか?」
 とダブルは言いつつ、ルリにサファイアの指輪を渡す。
『……え?』
 きょとんとしている彼女にダブルは。
「どうだ? 気晴らしにちょっと外で、この翼を装備して飛んでみないか? 砂漠だから景色は物足りねーが……良い風吹いてるぜ?」
 ニッ、と笑顔を浮かべるダブル。
 彼に手を引かれて……サンドストームの砂漠を少しの間、二人で飛行。
 勿論、現実世界では体験できないような光景に……わぁっ、と目をキラキラ輝かせて喜ぶ彼女。
 そして、彼女が笑顔を取り戻した所で、ダブルは。
「ま、今回は災難だったが……翼がなくとも、飛ぶ経験だって出来たするんだ。悪くねーぜ、この世界もよ?」
 と語りかけると、そうですね……とルリも僅かに微笑む。
 そして……すっかり元気を取り戻した彼女に、カノンが。
「それじゃ、後はログアウトするだけですね? 最後まで気を抜かずに行きましょうっ!」
 とカノンが彼女の肩をぽん、と叩く。
 そしてイレギュラーズ達は、彼女がログインした、洞窟の奥へ。
 僅かな瞬きに手を触れると……すっ、とその光の中に吸い込まれていく彼女。
「……これで良し……って所か?」
「そうですね……では、俺達もサクラメントに戻って、ログアウトするとしましょう」
 コーダにツルギが頷き、そしてイレギュラーズ達も、静けさに包まれ平和になった洞窟を後にするのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

コーダ(p3x009240)[死亡]
狐の尾

あとがき

R.O.Oサンドストームへのご参加、ありがとうございました!
皆様のお陰で、かなり衰弱していたであろう彼女もどうにか救出出来たようです。
皆さんの励ましが無ければ、きっと息絶えていたでしょう……本当に、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM