PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴィーグリーズ会戦>偽りの勇者の標

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<ヴィーグリーズ会戦>
『全く……お前達は何をやっている!! お前達が勇者となるべく、色々と根回ししてやったのだぞ!!』
 怒り散らかす、恰幅の良い男。
 その前には、若く、何処かゴロツキの雰囲気漂う男達。
『だ、だってよぉ……メダリオンの偽造工場に攻め入るまでは良かったんだよぉ……だが、あいつらが邪魔してきやがったんだ。俺達は悪くねぇって!』
『何を言ってる!! お前達が勇者になりたい、と言ったからその手ほどきをしてやったのはこの我なのだぞ! お前達が失敗したお陰で、これまでの計画が全て台無しだ! イレギュラーズだろうと、三大貴族であろうと関係無い!! このままでは、我の所属するミールミンド派は衰退の一途ではないか!!』
『……』
 項垂れる男達。
 つい二ヶ月ほど前、イレギュラーズの治める領地に密かに侵攻し、ブレイブメダリオンを偽造していた偽勇者達。
 ……その後ろで手を引いていたのが彼……ミールミンド派に属する貴族の一人、ザナドウェル男爵。
 勇者を擁する貴族となれば箔が付き、様々な交渉もやりやすくなったはず。
 しかしレギュラーズによってその目論見が全て打ち砕かれた彼らは、もはや名を馳せる権利を失ったも同然。
 ……だが、彼は諦めたわけではなかった。
「……あ、あのよぉ……男爵ぅ……俺達を酷い目に遭わせたイレギュラーズってのが、この幻想に領地を持って居るみてぇなんだよ。その一つが、どうもこの近くを治めている様なんだわ」
『何!? ……ふむ……』
 少し逡巡する男爵。
『……丁度良いではないか。ミールミンド派は最早潰える先しか見えぬ。ならば……こちらからその土地に攻め入り、完膚なき迄に破壊してやろうではないか!! はっはっは!! そうだそうだ! お前達にも最後のチャンスだ。死ぬ気でその地を破壊するのだ!! 勿論……やるよな?』
 貴族の言葉に、当然断ることなど出来ぬ偽勇者達。
 そしてザナドウェル男爵は。
『良し。では行くぞ! あの丘を越えてな!』
 そして彼らは武器、防具、そして……どこから仕入れたのかも分からない、素性不明の魔物達と、金に物を言わせて雇った傭兵達共に、進路上に存在する『ヴィーグリーズの丘』を目指すのであった。

●偽りの勇者の標
「あ、イレギュラーズの皆さん! 大変なのです! ちょっと、お話聞いて欲しいのですよ!!」
 と、ユリーカは、ローレットに集いしイレギュラーズ達に次々と声を掛ける。
 そして皆が集まってくれた所には、リュティス・ベルンシュタインとベネディクト=レベンディス=マナガルムの姿。
「ええと……二ヶ月ほど前に、偽勇者が偽造ブレイブメダリオンを作る、という事件があったのです! 幸いな事に、偽造事件は未然に防げたのですが……そんな偽勇者の背後で糸を引いていた黒幕が判明したのです!」
「黒幕の男は、ミールミンド派に属する貴族の一人で、『ザナドウェル』男爵という貴族の人の様なのです。ただ、この男爵……黒い噂が耐えず、領民の方々もその圧政に苦しんでいる様なのです」
「そんな悪徳貴族を成敗……したい所なのですが、どうも偽勇者達がリュティスさんの領地を知ってしまったようで、逆恨みも良い所なのですが、その領地を徹底的に破壊しようと行軍開始している様なのです!」
「このままでは、男爵の軍勢によって領地がめちゃくちゃになってしまうのです。そこで、イレギュラーズの皆さんには、友軍の皆さんと共に、逆に迎撃に行って欲しい、って訳なのです!」
「男爵の領地と、リュティスさんの領地に線を引いた限り、恐らく彼らはここ……『ヴィーグリーズの丘』の周域を通る筈なのです。この丘の一角には湖と森が両側に聳える狭い場所があるのです。そこならば、彼らの軍勢も狭まって攻めやすいと思うのです! 男爵側は、総力戦と全ての戦力でもって攻め入って来る様ですから、少しでもこっちの都合の良い立地に誘導するのがいいと思うのです!」
 そして、最後にユリーカはリュティスに振り返りつつ。
「偽勇者を利用する悪い悪ーい悪徳貴族には、イレギュラーズの鉄槌が必要なのです! イレギュラーズの皆さん、宜しく頼むのですよ!!」
 と、ユリーカは目一杯に気合いを入れるのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
 偽勇者を生み出した悪の因子が、とうとう本性を現したようです。

 ●成功条件
   悪徳貴族『ザナドウェル』男爵の軍勢を全滅させる事です。

 ●情報精度
   このシナリオの情報精度はBです。
   依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   戦闘の舞台となるのは、幻想中部にあります『ヴィーグリーズの丘』で、時刻は夕方の夕焼けが湖に照りつける頃合いです。
   ヴィーグリーズの丘には様々な地形がありますが、今回舞台となるのは湖と森に挟まれた草原地帯です。
   当然その様な場所なので、大量の軍勢で攻めてきている敵からすれば不利な立地です。
   とは言え大勢なので、物量作戦で仕掛けてくる可能性が高く、油断は禁物です。
   ちなみに、今回イレギュラーズ側には20人程度の友軍が加勢に着きます。
   ただ、友軍に対する指示もプレイングに記すようにして下さい。

 ●士気ボーナス
   今回のシナリオでは、味方の士気を上げるプレイングをかけると判定にボーナスがかかります。

 ●討伐目標
   ・『双頭の妖獣』ツインベロス x 10匹
     炎を吐き出す頭と、雷撃を放つ頭の双頭を持った魔物です。
     体の大きさはライオンくらいで、かなり獰猛です。
     二つの頭からそれぞれ攻撃するので、常に二回攻撃が可能となります。
     また攻撃手段は扇状の範囲攻撃となります。
   
   ・悪徳貴族に雇われた傭兵 x 30人
     金で雇った雇われ傭兵です。
     25人が重戦士タイプ(攻撃力・防御力・体力高め。単体攻撃が主)、
     5人が魔法使いタイプ(防御力・体力低め。範囲攻撃が主で、魔法攻撃の攻撃力が高め)です。
     なお全員、仲間を回復する手段を持って居る様です。
   
   ・偽勇者一行 x 3人
     先の戦いで、色々あって生き延びた奴らです。
     一時は改心したように見せかけて……どうやら騙していた様です。
     尻に火が付いている状況故、戦闘能力は皆様1人に1対1で相対出来る程度に破れかぶれで攻撃してきます。
     尚魔法使い系はもういません。(こんな主の下は嫌だ、と逃げていったようです)
   
   ・悪徳貴族『ザナドウェル』男爵。
     戦闘能力は殆どありませんが、絶対に仲間達の後ろに居ます。
     自分が危険な目に遭ったら、仲間を盾にする事も一切厭いませんので、倒すためには他のも全員倒す必要があります。

   それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <ヴィーグリーズ会戦>偽りの勇者の標完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
Legend of Asgar
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)
血風妃
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣

リプレイ

●偽りの勇者の標
 勇者を決める為に、幻想の国で繰り広げられたブレイブメダリオン獲得競争。
 既に争奪戦にも決着が付いたのだが……その争奪戦の時に、イレギュラーズの領地でブレイブメダルを偽造させ、トップに立とうとしたのは偽勇者達。
 ……だが、その背後で暗躍していたのは、≪ミールミンド≫派に属する貴族の一つ『ザナドウェル』男爵であり、彼らが復讐の為に、とイレギュラーズの領地を荒らそうとしている、という話を聞いたイレギュラーズ達。
「全く、偽勇者が逆恨みをして襲ってきたのか、ふてぇやろうだな!」
 と憤りを見せるのは、『マスコットのワモ口』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)。
 それに『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)と『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)の二人も。
「本当だ。こんな一大事の時にやる事が逆恨みの奇襲とは……器が知れるね」
「ええ。なんというか、もはや計画性すらも何もないやけっぱちって辺りが、もう後が無いんだな、って感じで、偽勇者騒動ももう終わりかしらって見立てなんだけど。でも後が無い人のやぶれかぶれは、何をやらかすか分からなくて怖いとも言うしね」
「そうだな。破れかぶれに自爆特攻……なんて事も充分に考えられる。注意しておくに越した事は無いだろうさ」
 勿論、彼ら自身も後が無いのを充分に認識為た上での作戦であろう……だから、必死に足掻き、抵抗する事も充分に予測される。
 とは言えこの貴族の後押しを受けて勇者になろうとした彼らも、物わかりの良い数名は彼の元から逃げ出していた。
 そう言った意味でいうと、偽勇者達も被害者……かもしれない。
 彼らは実行犯ではあるが、それを指示したのが貴族だ、という構図。
「でも、勇者になれなかったから何だと言うのかしら……? 勇者とは、在り方そのものだと言うのに……」
 と『Legend of Asgar』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)が小首をかしげると、それに『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が。
「うーん……タブンだけど、この貴族は勇者を後押ししているたった一人の貴族だって事で、自分のケンリョクも上がるとカンチガイしてたんだろうね? そして手頃な話を聞くそこらへんの冒険者一派を勇者にシタテたって事だと想うヨ」
「そうね……まぁ、貴族達に私達のやっている事なんて、理解しようとも想わないだろうし。ともあれ今回は、黒幕のザナドウェル男爵諸共、全てを断罪しなければならないわね」
「うん、そうだね!」
 シャルロットに頷くイグナート。
 ……そうしている間にもイレギュラーズ達は、戦場となる『ヴィーグリースの丘』へと到着。
 とは言えここは丘から少し離れた所……傍らには湖、傍らには森……と、まるで漏斗の様に狭まった地形。
「ここ、か……中々テクニカルな戦場だな」
 と『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が言うと、『貴族騎士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が頷き。
「ああ。今回は森と湖に囲まれた場所での戦いか……なら、ここは挟み撃ちと行こう。幸いにも、水中にも沈むことが出来る仲間が居る事だしな。ここで一気に殲滅だ!」
 シュヴァリエの言葉に、ああ、と頷くヴェルグリーズ。
「そうだな。今回ツインベロスが10匹に、雇われ傭兵30人、そして偽勇者の残りと、悪徳貴族、か……いかんせん数が多い。でもこっちにも友軍が居る。油断はせずに行くけれども、きっちりと対処して、早めにお帰り願おうか」
 そして『血風妃』クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)、ワモン、イリスの三人も。
「まぁ、悪巧みをするにも手が悪かったですね……ここで確実に潰してくれましょう」
「そうだそうだ! こんなわりーやつらはオイラ達がコテンパンに叩きのめしてやるぜ!」
「ええ。ここで逃すと、後々に禍根を残す事にもなりそうだし、頑張らないと……ね」
 と、イレギュラーズ達は覚悟を決めると共に、友軍達と共に戦場への展開を開始するのであった。

●砲戒
 そしてイレギュラーズ達は二手に別れる。
 エイヴァンとイリス、ワモンの三人は水中に潜り、息を潜める。
 そして他のイレギュラーズと友軍達は、森の木々の影に隠れ、息を潜める。
 ……そして空が夕焼けに染まり始めた、夕刻。
『ひっひっひ……! 楽しみだ! あいつらが不意打ちを受け、驚く顔を見るのがよぉ……!!』
 馬車に乗った悪徳貴族『ザナドウェル』男爵は、ククク……と低く笑う。
 そんな彼の周りには魔物と傭兵、そして偽勇者と……かなりの大軍勢。
 ……勿論そんな大軍勢故、遠くからでもその軍勢の姿ははっきりと見えてしまう。
「ん、来たみたいだよ!」
 とイグナートが仲間達に振り返り声を上げると、それに頷く友軍達。
 そんな友軍達に一言シャルロットが。
「マナガルムの領兵たちよ。彼と共に鍛錬しているであろう兵よ! 貴方たちの助力に感謝するわ。今一度、力を貸して頂戴!」
 と声を掛けると、それに友軍達は。
『勿論です! 我らが領地を侵そうとする者共は、必ずや仕留めて見せましょう!』
 と、かなり高い士気を持って居るよう。
 ……そんな心強い友軍達と共に、更に息を潜めて暫し。
 ザナドウェル男爵一行が、丁度狭まった所へ差し掛かった所で……ヴェルグリーズとイグナート事前に仕掛けておいた、足首辺りに張っておいたワイヤートラップや鳴子が発動。
『ぐぁっ!? な、なんでこんな所に……!?』
 と驚く雇われ傭兵のところに、更に。
「総員! かかれ! ここで偽勇者一行とザナドウェル伯爵を討ち取るぞ!」
 とシューヴェルトの号令一下、森から次々とイレギュラーズ達と友軍達が飛びだしてくる。
『何っ……!? おい、敵襲だぞ! 反撃しろ!!』
 と男爵は叫び、傭兵達とツインベロスの一部がその方向へ向かい対抗するが、そこに向けてシューヴェルトは刀を掲げながら、敵陣へと突撃。
 先陣切って、傭兵一人に一閃を喰らわせると共に、周りの友軍達へ。
「いいか! ここには本物の勇者とこの貴族騎士がいる! 偽物の勇者どもに負ける筈がないのだ! 総員、このまま突き進んでいけ!」
 と発破を掛けて、更に士気を挙げる。
 対し、敵陣に向けてはイグナートが声高らかに。
「オレたちローレットのイレギュラーズは一騎当千! 負ける道理はない!」
 と宣言し、敵の注意を惹きつけつつ、シャルロットがツインベロスに攻撃をし、周りの仲間達もツインベロスを相手取る。
 友軍達が主に雇われ傭兵達、イレギュラーズ達がツインベロスへと対峙する事になり……各々の戦力的には、大体互角程度。
 そして、間髪を入れずに逆の湖側からも。
「うなるぜー、オイラのガトリングがうなりをあげるぜー!」
 とワモンが海岸から身を乗り出し、ガトリングガンを乱射。
 意識が逆に向いていた所からの、そんな不意打ちに偽勇者達が。
『な……逆からも来るだと!? くそっ、嵌められたのかっ!!』
『仕方ねえ、俺達はこいつらを倒すぞ!』
 と偽勇者達が湖の方へと向かうと、ワモンの後ろからエイヴァン、イリスも湖から飛び出す。
「さぁ、お前達の相手は俺がしてやるぜ!」
「あんな貴族に従うだなんて、大変だね? もう、一思いに全員、倒れて貰うよ」
「そうだそうだー!!」
 そんな湖側三人の声に、余り頭も宜しく無い偽勇者達は。
『ふざけやがって……! なら、全員纏めて殺してやらぁ!!』
 と怒りと共に、重い武器で持って攻め込んでいく。
 と、両方向に攻め入っていってしまった部下達に対し、ザナドウェル男爵は。
『いいか! 絶対に私に近づかせるんじゃないぞ!! 私が少しでも傷ついたら、お前達のせいだからな!!』
 と怒号で吐き捨て、そして自分は少し後方へと下がる。
 遠隔攻撃で直接ザナドウェルをやれるか、と想いもしたが、下手に傷付ければ一人尻尾を巻いて逃げてしまうかもしれない。
 だから……ここはじっとガマン。
 そして湖側からはワモンがガトリングガンを連射、更にエイヴァンがツインベロスを含ませる形で更に叫びながら挑発し、ツインベロス数匹を湖側に引き寄せ、そしてイリスがそこに追撃の刃を加える。
 そんな三人の刃に対し、偽勇者達は……一度戦った経験もあるからか、ある程度互角に戦う。
 更にツインベロスの双頭から繰り出される炎と雷撃が、偽勇者達を補助するかの如く、吹き付けられていく。
 しかしながら、決して戦陣を下げるような事は無く、三人は確実に偽勇者一人に狙いを集中させ、一人ずつ、まずは倒す事に集中する。
 その一方、森側から攻め入った側は、敵戦力も多く、かなりの混戦の様相を呈する。
 だが、常にシューヴェルトが友軍達の陣頭指揮を執り、決して諦めさせず、鼓舞する事で……推しきられない様に対処。
 そして、厄介なツインベロスには。
「ここを抜かれたら領民にヒガイが出るんだ! 護りたいモノがあるなら、臆しているヒマは無いよ!!」
 己に闘気を奮い立たせつつ、堂々とした所作でツインベロス達に対峙。
「いいか、オレはローレットのイグナート! このクビを取れるというのならかかって来い! オレを殺してみろ!!」
 と宣言。
 魔獣だから、人の言葉を理解して……という訳ではないだろうが、次々と炎と雷の咆吼を噴き出し反撃。
 勿論炎の咆吼は、森の木々に一部火が付いてしまう位の威力。
 着火したての所を脚で分で消し止めながら、シャルロットは。
「本当、躾けのなってないワンちゃんね。その炎は森では厳禁よ……喰らいなさい」
 と反撃の妖刀を一閃し、その一首を叩き落とす。
 ……鮮やかな流れで首一つを落としたシャルロットの動きに、ほんの一瞬目を奪われる友軍。
「マナガルムの友軍たちよ、化け物は私達に任せて、存分に刀を振るいなさい」
 と声を掛けつつ、目前の傭兵達の討伐に集中させる。
 そして、ヴェルグリーズが乱撃を打ち振るい、敵の頭数をどんどん減らし、更にクシュリオーネも鋼の驟雨を降り注がせる事で、敵の逃亡を阻止する様に対処していく。
 両側面からの挟撃により、敵の戦力も大きく二分化せたのは作戦としては成功と言えるだろう。
 だが……いかんせん数が多いし、後ろから。
『おいおい! 押されているじゃないか! もっと気合い入れろ! ほら、絶対に近づかせるな!!』
 後ろからは、少し焦り気味のザナドウェルの叫び声。
 取り巻く状況に、ザナドウェル自身も少しずつ、焦りを感じている様である。
 でも、まだまだ逃げるような気配は無いのは、その物量に任せれば勝ることが出来る、とでも考えて居るのだろう。
「まだ油断している様ですね? ……ならば、今の内に、退路を塞ぐように展開していきましょう」
 とクシュリオーネが仲間達に小声で告げると、森側のイレギュラーズ達は多少、平地側へと広がっていく。
 それに応じるように、敵陣も横に展開。
 広く広がった敵に、個々が確実に敵を仕留ていく……そして、ツインベロス10匹を、全て倒した瞬間に。
「『双頭の妖獣』すべて討ち取ったり! 残るは同じ人のみ! 恐るるに足らず!」
 と声高らかにヴェルグリーズが宣言。
 その宣言に、更に一層士気を挙げた友軍達。
 そして30人の傭兵達の対処を友軍に任せ、ザナドウェルを逃さないように配置を調整しつつ……偽勇者達の方向へイレギュラーズ達は移動。
『クソッ……囲まれたか!』
『だから言ったんだよ、やっぱりあのクソ貴族につくなんて、止めとこうって!』
『今言うなよ!! オレだってそう想ってたんだ!』
 ……と醜い言い争いをしている偽冒険者。
 そんな偽勇者にシャルロットが。
「また遭った……が正しいかしらね? 痛い目を見る覚悟は充分かしら?」
 と問いかけるが。
『あぁ! うるせえ!! てめえらが痛い目見ろってんだよ!!』
 最早自暴自棄気味な偽勇者達が、全力全開で剣を振るう。
 ……しかしその攻撃は、虚しく空を切る。
「貴方たちと私たちの違いは簡単よ。貴方たちはどこまでも志が小さいのよ」
 とこき下ろすシャルロット。
 そしてシューヴェルトも。
「偽勇者、並びにザナドウェル伯爵に告ぐ。このまま降伏すれば命だけは助けてやろう!」
 と最後通牒を突きつける。
『……う、うるせえ!!』
 一瞬揺れ動く心……だが、すぐに反抗する偽勇者達。
 背中にザナドウェルが居たから、というのもあるだろうが……もう、破れかぶれの考えしか出来ない彼ら。
 そんな彼らの言葉にクシュリオーネが。
「仕方ありませんね……ならば、ここで全て、仕留めさせて頂きましょう……ザナドウェルも、逃げられると思わないでくださいね」
 静かな言葉だが……最後の宣告。
 そしてイレギュラーズ達は、傭兵をほぼ倒しきった友軍達の期待を一心に背負いながら……偽勇者達に、最後の一線を喰らわせていくのであった。

●貴族の悪意
『……ひ、ひぃぃぃ……』
 そして、己を護っていた偽冒険者達が全て倒れ……完全に腰を抜かしてしまった男爵。
 逃げようにも、這いずり逃げる事しかできないし、周囲には……イレギュラーズと友軍達の姿も。
『た、助けてくれ……領地を襲うとしたのは、謝る……だから……!』
 命の懇願をする彼に対し、エイヴァンが。
「……謝ってももう遅い。お前達のような奴らが私利私欲に塗れた結果、多数の被害が出たのだからな」
『仕方ないだろう! 誰だって、自分の欲を満たそうとするはずだ! それの何が悪い!!』
 彼の言葉にふぅ、と息を吐くクシュリオーネ。
「……そうですね……何が悪かったといえば、派閥に見切をつけるのが遅すぎたことでしょうか……この先、貴方の属する≪ミールミンド≫派も、滅亡の一途を辿るだけの事ですから」
 その言葉と共に……彼へトドメ。
 息絶えた彼と……その周りの偽勇者達を見渡しながら、ヴェルグリーズは。
「……勇者なら自身の行いで、勇者たり得ることを証明するべきだったんだ。今更公開しても遅いけどね」
 そんなヴェルグリーズの言葉にこくり、と頷くワモン。
「そうだなー。やっぱり勇者ってのは、行いで示すもんだもんなー!」
 ……ともあれ、全ての敵を倒したイレギュラーズ。
 振り返れば、友軍達もとても嬉しそうな表情をしていて……。
「みんな、お疲れ様。格好良かったよ!」
「そうだネ! これなら君達の領地も、暫くはアンタイだね!」
 イリスとイグナートの言葉に、いやいやと謙遜するが……明かに自身を持った彼らが強くなったのは、間違い無いだろう。
 そして。
「本当、ご苦労だった。皆、自信を持って自領へと帰って欲しい……! 君達の戦いは、素晴らしかったぞ!」
 指揮をしていたシューヴェルトの言葉に歓声を上げた友軍達。
 彼らも一皮向けて、領地護衛に励むことになるだろう……そんな彼らの成長をイレギュラーズ達も感じつつ、戦乱漂うヴィーグリースの丘を、皆後にするのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ヴィーグリース大戦に参加頂き、ありがとうございました!
挟撃が出来る土地、という事でしたが、湖から攻めてくるなんて、恐らく男爵も想定しなかったことでしょうね(森からは多少想定していましたが……)。

PAGETOPPAGEBOTTOM