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シナリオ詳細

<ヴィーグリーズ会戦>砲火響轟。或いは、工兵たちの託した願い…。

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●ヴィーグリーズの丘に吹く風
 幻想中部、ヴィーグリーズの丘。
 幻想貴族ミーミルンド家と、その派閥により構成された軍勢が広大な草原を埋め尽くす。
 その中には、数多の魔物の姿もあった。
 
 火炎を纏った岩の塊。
 轟音と共に射出されたのはそれだった。
 その形状を一言で表すのなら、黒い体躯の巨大な蠍。
 短い10の脚部を持ち、その臀部からは湾曲した長く太い尾が伸びている。
 通常の蠍と異なっている点として、尾の先端には針でなく“砲口”が存在していることがあげられる。
 加えて、見るからに頑丈なその身を覆う溶岩の装甲。
 隙間から覗く肌は、焼けたように赤熱していた。
 前肢2本を地面に深く突きさして怪物……ギルタブルはその身を固定。
 再び、轟音と共に火炎岩を射出する。

 着弾地点を中心に、業火と衝撃が撒き散らされた。
 【紅焔】と【必殺】そして【ブレイク】。
 そういった性質を、その砲弾は備えていた。
 退避が送れた兵士たちが、数十名ほど飲み込まれる。
 身体は潰れ、骨は砕け、皮膚は焼け焦げ炭と化す。
 悲鳴をあげる暇もなく。
 苦しむ間もなく息絶えたことは、その者たちが享受した今生最後にして最高の“幸福”であっただろうか。
 
 遠距離からの攻撃手段。
 ただそれがあるだけで戦況は大きく左右される。
 ギルタブルが1つの火炎岩を撃ち出せば、その度に数十名の兵士が死んだ。
 ましてや、それを行うのが1体だけでないとなればなおさらのこと。
 ギルタブルのうち1体は、まるで貴族の邸宅のような大きさだった。
 それが最も巨大な個体。
 さらに、その周辺には馬車ほどの大きさをしたギルタブルが30体ほど存在している。
 都合31。
 戦況を左右しかねないギルタブルの集団を、早期に討伐する必要があるだろう。

●ジャイアント・キリング
 血が染み込んだ鼠色のツナギ。
 腕や脚、顔には隙間なく包帯が巻かれている。
 熱波に焼かれたのか、右の瞳は白濁していた。
 きっと、その眼が光を見ることは二度とないだろう。
 彼の名は“アシュトン”。
 此度の大戦に参加した工兵隊の隊長だ。
 否、隊長だった……と、そう言うべきか。
 彼の率いていた十数名の部下たちは、ギルタブルの前に全滅していた。
 わずかに20名の一般兵は、工作に参加せず後方に待機していたため無事だったが、彼らだけで巨大ギル田ブルの元へ辿り着くことは不可能だろう。
「戦場に着いて、あいつらを見た時すぐにわかったよ。あれは早々に何とかしないとヤバいってさ」
 掠れた声で、アシュトンは言う。
 丘に並ぶ本隊から遠く離れた岩陰に座ったまま、アシュトンは身動きの1つもしない。
 腕や脚に力が入らないのだろう。
 もはや、自力で動くことも出来ないのだろう。
 けれど、彼は命を繋いでやっとの思いで帰還した。
 ただ1つだけ。
 志半ばで散っていった部下たちの想いを、そしてギルタブルの攻略方法を誰かに託すためだけに。
 そして、悔しいことに生き残った20名の兵達の中に、その“誰か”はいなかった。
「小型のギルタブルの砲撃でも【業炎】【致命】【飛】を受ける。僕たちじゃ、それさえも耐え切れなかったけど君たちなら……」
 イレギュラーズの力をもってすれば、馬車サイズのギルタブルなら討ち取れる。
 間近でギルタブルを見て来たのだろうアシュトンは、そのように判断していた。
 だが、大型サイズのギルタブルは別格だ。
「巨躯に違わぬ分厚い外殻。当然のように頑丈だ。ちょっとやそっとの攻撃は通らないと思っていい」
 攻撃を仕掛けている間に、反撃を受け戦闘不能に陥るのがオチだろう。
 イレギュラーズであっても、きっとそうなる。
 アシュトンはそのように予想している。
「けど、僕は……僕たちはアレを倒す手段を持っている」
 そういってアシュトンは自身の背後へ視線を向けた。
 そこにあるのは、鋼鉄で出来た大樽だ。
 樽から漏れる臭いから、中身が大量の火薬であることが分かる。
「力自慢なら1人でも持ち運べるかな。僕たちは5人がかりで運んでいたけど……あぁ、これを持って飛ぶなんてことはきっと無理だ。それぐらいに重たいからね」
 アシュトンたち工兵隊が持ち込んだたった1つの大型爆弾。
 鋼鉄の大樽の正体はそれである。
「半径30メートルほどを焦土に変える程度の威力があるはずだ。僕たちの最高傑作であるこれも用いれば、ギルタブルをきっと倒せる」
 ただし、使用には注意が必要だ。
 味方を巻き込まないためには、ある程度ギルタブルを戦場から遠ざける必要がある。
「こいつをギルタブルの腹の下に仕掛けて、全速力でその場を離れる。上にピンが付いてるだろ? それを引き抜いて20~30秒ほどで爆発するから気をつけてくれ」
 イレギュラーズの速力をもってすれば、時間内に爆破圏内から脱することは簡単だ。
 もっとも、敵に足止めを受けなければという条件付きではあるけれど。
「1つしかないから、ミスは許されない。それでも、やってくれるかい?」
 頼むよ。
 そう呟いて、アシュトンは視線を伏せた。
 ポタリ、と。
 白濁した瞳から、ほんの1滴、涙を零す。
 アシュトンの背後では、生き残った20名の兵士たちが悲壮感と決意を秘めた眼差しでイレギュラーズを見つめていた。
 目の前で仲間たちが散っていく様を、彼らは黙って見ているしか出来なかったのだ。
 それが、どれだけ悔しいことか。
「敵の数は多い。彼らも手伝いにいかせるけど……4、5人でやっと1体を討てるかどうか」
 悔しさも、怒りも、決意も。
 そんなもの、戦場では役に立たない。
 純粋な戦闘力が不足していれば、いかに勇気のある者たちとてあっさりと屍へ成り果てる。
 戦場とは、そういうところだ。

GMコメント

●ミッション
巨大ギルタブルの爆破殲滅

●ターゲット
・巨大ギルタブル×1
屋敷ほどのサイズがある蠍に似た怪物。
分厚く黒い外殻と、短い10本の脚を持つ。
臀部から伸びた太く長い湾曲した尾の先端から、ギルタブルは業火を纏った巨岩を射出する。
移動速度は遅いが非常に頑強。
がんばれば外殻を壊す程度は可能だろうが、通常の手段で討ち倒すことは現実的ではないだろう。

弾岩:物遠域に大ダメージ、紅焔、必殺、ブレイク
 業火と衝撃を撒き散らす砲撃。着弾地点に近いほどにダメージは大きくなる。

・ギルタブル×30
馬車ぐらいのサイズのギルタブル。
巨大ギルタブルよりは速く動ける。
一定の距離を保ってギルタブルの周辺に配置されている。

弾岩:物中範に大ダメージ、業炎、致命、飛
 業火と衝撃を撒き散らす砲撃。巨大ギルタブルに比べ、次弾を撃ち出すまでの間隔が長い。

・アシュトン
工兵隊の隊長だった男。
半径30メートルほどを焦土に変える鋼鉄大樽爆弾を作成した。
鋼鉄大樽爆弾は通常5人以上(力(物理攻撃力)に優れる者であれば1人でも可)でなければ運べないほどに重たい。
設置後、上部のピンを引き抜くことで起爆。爆発まで20~30秒ほどの時間がかかる。

・アシュトン配下の兵士達×20
一般兵。
簡素な鎧を纏い、剣や槍を武器としている。
工作兵たちの補助を目的として編成されているためか、力自慢が多いようだ。

●フィールド
幻想中部、ヴィーグリーズの丘。
ミーミルンド家と、その派閥により構成された軍勢本隊から多少離れた端の方にそれはいる。
ギルタブルの砲撃に巻き込まれないようにか、近くに敵兵の姿はない。
遮蔽物などは存在しないが、砲撃着弾点にはクレーターが生じるため、場合によっては身を隠すことも可能だろう。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●士気ボーナス
 今回のシナリオでは、味方の士気を上げるプレイングをかけると判定にボーナスがかかります。
 

  • <ヴィーグリーズ会戦>砲火響轟。或いは、工兵たちの託した願い…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
鳥籠の画家
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
わんこ(p3p008288)
倫敦の敵
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン

リプレイ

●工兵たちの託した想い
 轟音と共に火柱が上がる。
 業火を纏った岩石の弾が大地に穴を穿った音だ。
 岩に背を預けたままの体勢で、1人の男がそれを見ていた。
「頼むよ、皆。僕たちの変わりに、ギルタブルを討伐してくれ」
 男の名はアシュトン。
 ヴィーグリーズの丘での大戦に参加した、工兵部隊の隊長である。
 
 ギルタブル。
 幻想貴族ミーミルンド家の用意した魔物の名である。
 それは岩の体皮を持ち、蠍の尾に似た砲塔からは業火を纏う岩弾を射出するという特性を備えている。岩弾は着弾地点を中心に、業火と衝撃を撒き散らし、地面には深いクレーターを刻むのだ。
 遠距離から放たれる大威力の砲撃は、こと集団戦において非常に有効な攻撃手段の1つであろう。その一撃で、場合によっては数十名を超える兵士が戦線離脱を余儀なくされる。
 事実、アシュトン率いる工兵部隊はギルタブルを討つ手段を備えていながら、砲撃を突破できずに壊滅の憂き目にあったのだから。
「何とも、不気味な感じのモンスターですねぇ。機械的と言いますか……妙な感覚です」
『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は、ギルタブルの群れを睥睨しそう言った。
 ギルタブルの数は30体。
 特別巨大な1体を中心に、馬車と同等サイズの小型個体が多数配置されている。
 1発の砲弾を撃ち出す度に、幾らかのクールタイムを必要とするようだが、何しろ数が数である。30体という数が、隙間なく砲撃を行うことを可能としていた。
「まずは小型ギルタブルの逐だな。才蔵が爆弾を安全に運べるよう敵陣を食い破る!」
 盾を構えた『束縛は鋭く痛む』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)が、翼を広げ草原を駆けた。ギルタブルの砲弾を回避し、敵陣へと切り込んでいく。
「っと危ねぇ。焼き鳥になっちまったら……その時考えるか」
 ベルナルドの背後へ岩弾が着弾。
 轟音と共に爆炎が吹き荒れる中を、1人の魔女が駆け抜ける。
 両の手首に嵌めた円環が、きらりと魔力の輝きを灯した。
 『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が腕を振るえば、魔力の花弁が宙を泳ぐ。
「炎だろうがなんだろうが、そう簡単にはやられはしないよ! みんなの想いを背負ってるんだから!」
 風に舞うように、花弁は1体のギルタブルを襲う。
 一瞬、ギルタブルは体を痙攣させると、その視線をアレクシアの方へと向けた。
「中々頑丈だね! だけど!」
 高く掲げた尾の先端が赤熱し、ギルタブルは砲撃の準備を開始する。
 しかし、その直後、ギルタブルの姿勢が崩れた。
 見れば、脚の1本が破損している。
 それを成したのは、1つの赤雷……否、『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)の蹴撃であった。
「関節部はどうかな? っとまぁ…私の攻撃は特殊だからね! どんな装甲も貫いてみせる!」
 1撃、2撃と続けざまに蹴りを叩き込む。
 長い射程も、大火力も、懐に潜られてしまえば十全に効果を発揮しない。とはいえ、その頑丈さが厄介なことに変わりはない。
「頑丈な相手デスが…………託されたからにゃ、応えんとなぁ!」
 灰の髪を振り乱し『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)が駆けた。マリアの攻撃により姿勢を崩したギルタブルの脚を踏みつけ、高く跳躍。その顔面へ取りつくと、力任せに腕をそれへ振り下ろす。
 瞬間、わんこの指先よりエネルギー弾が放たれる。0距離から撃ち込まれたそれは、硬い外皮を穿ち、ギルタブルの顔面を焼いた。
 崩れ落ちた装甲の中には、焦げた肉が覗いている。
 それを見て、わんこは嗤う。
「キャヒヒ」
 ギルタブルの眼窩へ拳を突き刺すと、わんこは再びエネルギーを暴発させた。

「堅牢な装甲に地面を抉るほどの火力、そして呆れるほどの大きさと……普通にやり合えばまず全滅しかねない様な相手ではあるが」
 鋼鉄に覆われた樽。
 『同じ傷跡』雑賀 才蔵(p3p009175)の前にある“ソレ”は、そういった形状をしていた。
 アシュトン率いる工兵隊が用意した逆転の1手。
 巨大ギルタブルを妥当し得る爆弾である。
「やらなければならない、いや、やり遂げなければならない」
 爆弾の運搬役を担う才蔵は、後方にて道が開かれるのを待っていた。
 散っていった工兵たちの想いに報いるためにも、それは必ずなさねばならない。
「幸い、ミスタ・練の改造によって幾分運びやすくもなっている。失敗は許されないな」
 そう呟いて才蔵は『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)の後ろ姿を見やるのだった。

 地面に浮かぶ五行の陣。
 その中央で呪符を手にした練は叫んだ。
「さぁ、砲撃勝負ならこちらも負けてないぞ!」
 手にした呪符に炎が灯る。
 疾、とそれを解き放てば、魔力の奔流が業火と化した。
 地面を焼き、空気を焼き、それはギルタブルを飲み込んだ。
 さらに……。
「悪の炎を焼尽させるは愛と正義の熾火! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」
 業火に焼かれたギルタブルの頭部を『魔法少女インフィニティハートC』無限乃 愛(p3p004443)の魔力の砲が撃ち抜いた。
 甲殻が砕け、ギルタブルの巨体が横転。
 射出直前であった岩弾が暴発したのか、尾が中ほどで破裂する。
「さあ皆さん、隊長さんから受け継いだ愛の炎を心に灯し、魔物たちをこの世から蒸発させてあげましょう」
「道は開かれた。仕留めろ!」
「「おぉっ!!」」
 転倒したギルタブルへ、幾人もの兵士が駆け寄っていく。剣を、槍を、剥がれた装甲の隙間へ突き刺し、ギルタブルの命を奪う。
 死んでいった仲間たちに報いるために、彼ら兵士はこの場に集い、戦っているのだ。

●それぞれの想いと戦いの記録
「下がって! クレーターの中へ!! 速く!!」
 フェミニンな衣装を砂埃に汚し、頬や腕に火傷を負った愛が叫んだ。
 その指示を受け、兵士たちはクレーターへ飛び込んでいく。
 直後、轟音と爆風が戦場に吹き荒れる。
 砲撃に飲まれたのは愛と練の2人だ。
 頭から被った土を払って、愛はよろりと身を起こす。
「クレーターに隠れている方は無事のようですね」
 良かった、と。
 安堵の吐息を零した愛は、手にした鎌を一閃させた。
 桃色の刀身が眩く輝き、同色の燐光を撒き散らす。それは、倒れた練の上に降り注ぎ、その身に負った傷を癒した。
「っ……撃たせるのは悪手だな。こちらに狙いを定めているギルタブルを狙う」
 血に濡れた前髪をかき上げながら練は言う。
 懐から取り出した呪符へ魔力を通し、練は戦場へ素早く視線を走らせる。
ちょうどこちらへ尾を向けている個体を見つけると、火炎の呪符を指で弾くように宙へと置いた。
 空気を切り裂き、宙を疾駆する呪符が尾の先端で激しく爆ぜる。
 砲撃を阻害されたギルタブルへ、次いで迫るは愛の放った魔力の砲だ。

 赤雷が草原を駆け抜ける。
 幾度となく、硬い装甲を蹴りつけたマリアの脚は血に濡れていた。
 けれど、彼女は止まらない。
 止まるわけにはいかないのだ。
「恨みはない! 君達を悪だとも思わない! けれど、私達が生き残る為、倒れて貰う!」
 脚の関節を蹴り砕く。
 ギルタブルの体が揺らぐ。
 眉間目掛けて、マリアは踵を振り下ろす。
 外殻に深い亀裂が走った。
 ミシ、と骨の軋む音。
 脚に走る激痛を堪え、マリアは頭部を踏んで跳ぶ。
「人為的に引き起こされる落雷というものお見せしよう!」
 高く跳んだマリアの体から、蒼い稲妻が迸る。
 電光に誘われるように、空には灰の雲がかかった。
 落雷。
「穿て! 天槌裁華!!」
 戦場に降る稲妻が、ギルタブルを貫いた。

 落雷を浴び、ギルタブルが姿勢を崩す。
 発射された岩の砲弾は、明後日の方向へ飛んで行った。
「あれはここで、絶対に倒すよ!」
「おぉ、クリエイターとしてアシュトンの無念、晴らしてやろうじゃねぇか」
 アレクシアの言葉へ応を返したベルナルドが、ギルタブルへと肉薄した。
 赤熱する外殻へ手を触れ、衝撃波を叩き込む。
 精神を搔き乱し【狂気】を付与するその一撃は、きっと戦況を変えただろう。ギルタブルはあろうことか、砲撃を自身の背へと撃ち込んだのだ。
 爆音と共に装甲が砕け、ギルタブルは絶命した。
 爆発に巻き込まれたベルナルドが地面を跳ねる。それを受け止めたアレクシアが、周囲に燐光を撒き散らす。
 降り注ぐ淡く、暖かな光。
 それを浴びたベルナルドの傷が、じくりと癒える。
「わりぃな、助かった」
「いいのよ! 倒れてしまえば、爆発時に危なくなるしね!」
「おぉ。にしてもデケェなぁ。何食ったらこんな風に育つんだ?」
 強打した肩を押さえ、ベルナルドが身を起こす。
 その背を支えるアレクシアは、絶命したギルタブルを一瞥した後、次の獲物へ視線を向けた。付近にいるギルタブルは残り2体。
 片方は兵士たちが。
 もう片方はドラマが相手を務めている。
 僅かに思案した後、アレクシアは兵士の援護へと向かった。
 ドラマであれば、必ずやギルタブルを妥当し得ると信じているのだ。

 落雷によるダメージは、無視できない程に大きいようだ。
 事実、ギルタブルは痛みを堪えるかのように、声なき咆哮をあげていた。
 いかに機械的な外見をしていようと、それは間違いなく生物なのだ。
 当然、生物である以上、生存本能は他の何より優先される。そして、生存の確立を高めるために、痛覚というものは存在するのだ。
 体が発する危険信号に、ギルタブルは数歩、後ろへと下がった。
 その分だけ、ドラマは前へ踏み込んだ。
「もう少し、数を減らさなくてはなりませんね」
 蒼き刀身を持つ剣が、ギルタブルの頭部に突き立つ。
「一体一体潰して行きます……才蔵さんもそろそろ爆弾の運搬を開始するころでしょうか」
 痛みに呻くギルタブルは、ついにその場に倒れ伏す。 
 それを見届け、ドラマは次の獲物へ向けて駆けていく。

 皮膚の裂けた拳から、血に似たオイルと紫電が散った。
 殴打に次ぐ殴打をギルタブルへと叩き込みつつ、わんこはキャヒヒといつも通りに笑ってみせた。
 その様はまるで、命知らずの狂戦士。
 痛みも、自身へのダメージも恐れず、果敢に敵へ向かい続けるその姿は、しかし兵士を鼓舞するに足るものであった。
「さぁ、正念場って奴だぜ!」
「「おぉ!!」」
 わんこの言葉に気勢で応じ、四方から槍を構えた兵士が迫る。
 無数の槍を突き立てられたギルタブルは、そう遠からず命を散らすことだろう。
 既に10を超えるギルタブルを討ち倒した。
 戦況は、イレギュラーズの優位に傾いているはずだ。
 けれど、しかし……。
「後退!! いや、散らばってクダサイ!  固まったら纏めてぶっ飛ばされマスカラネ!」
 わんこの視界で、巨大ギルタブルが動き始めた。
 高熱により景色が揺らぐ。
 地面に脚を突き立てて、その巨体は僅かに姿勢を低くする。
 砲撃の反動に備えてのことか。
「あ、やば……」
 わんこの脳裏で、危険を知らせるアラートが鳴る。
 その直後。
 視界を赤く染める業火と、音を置き去りにした衝撃が、わんこの全身を打ち据える。

 焼けた大地の中央を、才蔵は必死に走り続ける。
 焼け焦げた兵士の遺体を跳び越えて、大地に穿たれたクレーターを迂回して。
 戦場に残る高熱に、身体が熱くて仕方ない。
「アシュトン……お前の無念は晴らしてみせる!」
 誰に告げるわけでもなく、才蔵はそう呟いた。
 先の砲撃により、仲間たちも多くがダメージを負っただろう。中には戦闘不能に陥った者もいるかもしれない。
 事実、才蔵の視界には数人の兵士の遺体が映っている。
 散っていった工兵たちの無念を。
 志半ばに倒れた兵士たちの恨みを。
 そして、才蔵自身の胸に燻る激しい怒りを。
 叩きつけるため、何としてでも彼はギルタブルの元へ辿り着かなければならないのだ。

●戦場に咲く華
 脚に力が入らない。
 体を動かせば、その度に内蔵へ激痛が走る。
 けれど、マリアは生きていた。
 【パンドラ】を消費し、意識を繋ぎ、震える手を戦場へ向ける。
「これで……デコイぐらいにはなるだろう?」
 作り上げるは、才蔵の幻影。
 ギルタブルたちの攻撃を、少しでも彼から逸らすために造り上げたものだった。

 炎と熱に包まれながら、ベルナルドは目を覚ました。
【パンドラ】を消費してしまったが、問題はない。
 今、何よりも大切なのは戦い続けることなのだから。
「逃さねぇ! 俺が……俺達がアイツらの希望なんだ!」
 額から零れる血によって、ベルナルドの顔は朱に濡れている。
 だが、その瞳に宿る戦意は微塵も衰えてはいない。

 才蔵の進路を阻むギルタブルを、ベルナルドが抑え込む。
 合流したわんこを伴い、才蔵はギルタブルの元へと向かっている。
 到着まで、もう少しだけ時間はかかるだろう。
 巨大なギルタブルを絶命せしめる爆弾だ。その威力はきっと絶大なのだろう。
「逃げろ。俺の手当ては……いい」
 怪我を負った兵士は言った。
「いいわけないでしょう! どれだけ危なくても、ここまでこぎつけた多くの人の努力は無駄にはしないし、これ以上犠牲も出させない!」
 アレクシアは怒鳴り返して治癒を続ける。
 生きているのなら、助けられる。
 1人でも多くの仲間を生きて帰還させるため、アレクシアは兵士たちの救助活動を開始した。
「応急処置程度ですが、無いよりはマシでしょう。戦いが終わったら、至急治療施設に送り届けます!」
 アレクシアに並び、ドラマもまた戦場を駆けた。
 淡い燐光が飛び散って、兵士の苦痛と傷を癒す。
 既に道は開かれた。
 後はギルタブルを爆破すれば、作戦は終わりだ。
『魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』
 戦場に響く愛らしくも凛々しい大音声。
 どぉん、と何かの爆ぜる音。
 ピンクの粉塵が巻きあがるのを視界に捉え、ドラマは勝利を確信した。

 5枚の呪符が、巨大ギルタブルの身体を囲む。
 五芒の陣に囚われて、身動きできないギルタブルの脚元へ才蔵とわんこが辿り着いた。
「これで俺たちの……工兵隊の勝利だ」
 練はそう呟いて、愛へと短い合図を送る。
 それを受け、愛はこほんと1つ空咳を打った。
 そして彼女は、鎌を手にしてポーズを決める。
「魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」
 名乗りと共に、ピンクの粉塵が巻き起こる。
 魔法少女が登場するにあたって、エフェクトの存在は不可欠だ。愛もまた、魔法少女の例に漏れず、自身特有のエフェクトを有しているのだ。
 そして、この戦場においてもそのエフェクトはひどく目立つ。
「……まぁ、分かりやすいが」
「さぁ、撤退しましょう」
 仲間や、生き残った兵士へ向けて合図を送った愛と練は即座に撤退へと移る。

 見上げるほどの巨体。
 赤熱する装甲から発された熱が、じりじりと周囲の地面を焼いていく。
「才蔵サマ、頼みマシタゼ!」
 そう告げるわんこの半身は、皮膚がズタズタに裂けている。
 剥き出しになった機械の体には亀裂が走り、絶えず火花を散らしていた。
 その状態で、彼女は必死に駆け抜けた。
 爆弾を運ぶ手伝いをし、ギルタブルの砲撃から身体を張って才蔵を庇った。
 もはや腕は上がらない。
 だが、構わない。
 こうして目的は達成された。
 才蔵と2人、ギルタブルの元へ至った。
「工兵達の誇りと意地が詰まった爆弾だ……人間を無礼るなよ!」
「キャヒ、キャヒヒヒヒ……くたばれ蠍野郎!!」
 樽型爆弾のピンを抜き、わんこと才蔵は撤退を開始。
 五行の陣に囚われて、ギルタブルは動けない。
 爆発までかかる時間はいかほどか。
 どちらにせよ、もはやそれが爆発から逃れることは出来ないだろう。

 轟音が。
 爆風が。
 紅蓮の炎が。
 戦場に業火の華を咲かせた。
 視界を赤に塗り替えるそれは、工兵たちが技術の粋を結集させた、たった1発の爆弾によって起こされたものだ。
「は、はは。なんて威力。なんて、きれいなんだ。やった。やった……」
 ぼやけた視界にそれを捉えたアシュトンは、血を吐きながら、笑っていた。
 涙を流して、とても嬉しそうに、そして少しだけ悲しそうに、笑っていた。
 仲間たちの想いを背負い、アシュトンはここまで生き延びた。
 内臓に負ったダメージは大きい。
 絶えず襲う激痛に耐え、戦場をずっと見つめていた。
 それは、この光景を見るためだ。
 仲間たちの仇が死に絶える瞬間を、この目に焼き付けるためだ。
「僕たちはやった。“やってやった”ぞ!!」
 ただ1つ。
 自分たちの成したことを、冥途の土産とするために、アシュトンは生き永らえたのだ。
 自分たちの活躍で、大勢の仲間が救われた。
「あはは……ざまぁみろ」
 あの世で皆と祝杯でもあげよう。
 そんなことを考えながら、アシュトンは息を引き取った。

成否

成功

MVP

雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン

状態異常

わんこ(p3p008288)[重傷]
倫敦の敵

あとがき

工兵たちより託された想いは、見事達成されました。
やってやったぜ、依頼は成功です。
ギルタブルたちは爆炎に飲まれ死滅しました。

この度はご参加いただきありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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